戦姫絶唱シンフォギア -月華の旅人-   作:乾燥海藻類

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第37話 天鳥船

サンジェルマンからの報告通り、遺跡内部の造りはフロンティアに酷似していた。規模はフロンティアよりも小さそうだが、それでも星間航行船というだけあって、それなりに大きい。

フロンティアが複数あるのではないかという考えは当初からあった。あれはアヌンナキたちが用いるには大きすぎる。だとすればあれは人類のために用意されたものではないかと考えた。となれば、自分たち用のものがあると考えるのが普通だ。これがそうとは断言できないが、フロンティアが複数あるという考察は当たっていた。

『彼』から送られた知識や記憶には偏りがあり、必要だと思われることしか送られなかった。また『彼』が消失したことが影響しているのか、それらがゆっくりと忘却していくのを感じている。

フロンティアの構造を思い浮かべながら、遺跡の中を進む。懸念していたガーディアンの類はいなかった。絶対的な力をもつアヌンナキには不要だったのかしれない。ほどなくして、制御室に辿り着いた。ここもフロンティアのものと似通っている。

「これが神の船……興味深いワケダ」

無理矢理ついてきたプレラーティは喜色満面の様子だ。周辺の機器類を無警戒にペタペタと触り始めた。

それを横目で見ながら、亜空間部屋から取り出したネフィリムを制御盤の上に乗せる。

「それを媒体にするワケダ」

「ヤントラ・サルヴァスパは日本政府に抑えられているからな。使用許可をとるのは面倒だ。借りを作ることにもなるからな」

借用だけで済むとも思えない。場合によっては譲渡か買取になる可能性もある。聖遺物の値段などいくらになるか想像もつかない。

「力ずくで奪えばいいワケダ」

「そうしたら本格的に敵対することになるだろ」

S.O.N.G.は政府や鎌倉の要請は断れないだろう。弦十郎さんは抵抗するだろうが、面倒事になるのは目に見えている。

「どうせ二度と会わないワケダ」

そう言ってプレラーティはククッと笑う。俺がやるわけがないと分かった上でからかっているだけだろう。

「立つ鳥跡を濁さず、だよ」

ネフィリムからのエネルギーに刺激され、相互作用によって遺跡が息を吹き返した。プレラーティとともに各種異常がないかをチェックしていく。

「流石の一言だな。これだけの年月を経ても、異常らしき異常はほとんどないワケダ」

諸々の政治的な手続きや積み込む荷物などは、すでにサンジェルマンに託してある。今では頭が上がらない存在になったな。

「最終チェックまで任せてもいいか」

「任せるワケダ」

プレラーティは自信満々にそう言った。

 

 

 

遺跡の前には満載の荷物を積み込んだトラックが複数台停車していた。大きい荷物はキャロルが作ったゴーレムが運び、小さい荷物はオートスコアラーと響ちゃんが運んでいる。

「S.O.N.G.に要請した覚えはないが……」

「水臭いですよ、紫音さん。それにこれは個人的な協力です。こう見えてもわたし力持ちなんですよ」

おそらくはキャロルに引っ付いてきたであろう響ちゃんが胸を張って答える。そりゃあ、ギアを装着すれば大抵の荷物は持てるだろう。それにしても個人的な協力でギアを使用してもいいのだろうか。

「まさかテスト勉強が嫌で避難してきたわけじゃあ、ないよな?」

「――ッ!! そ、そんなわけないじゃないですか。いやだなぁ紫音さんってば。あ、あははは」

どうやら急所を突いたらしい。今頃未来ちゃんは頭をかかえているだろうな。

「そんなことより紫音さんっ! 宇宙船の名前を募集してるんですよね!」

「何か案があるのかい?」

誰から聞いたのか、響ちゃんは鼻息を荒くしてこちらに詰め寄ってきた。別に募集をかけていたわけではないのだが、案があると言うのなら一応聞いておこう。

「『ジャスティス』ってどうですか?」

なるほど、実に響ちゃんらしいネーミングだ。まあ、プレラーティが候補に挙げた舌を噛みそうな名前よりは、幾分かはマシかもしれない。

なにより、あんなキラキラした目で提案されては無下にすることもできない。

「いい名前だな。ではそれを採用させてもらおう」

改めて彼女の提案を反芻する。星間航行船『ジャスティス』。

少々大仰ではあるが、ま、悪くはない。

 

 

 

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