2枚のトランプカード   作:sao.m

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2枚のトランプカード(3)

「Why so serious?!」

口は裂け、髪は乱れ大きな紫色のマントを着たジョーカーと呼ばれる男は自身の部下の口元にナイフをかざし口元に大きな裂けた傷をアジトにて負わせていた。アジトの壁は、いつも赤い血で染まっている。

「ボス、今日は何だが気分が悪いらしい。」

ジョーカーは、そんな些細な声を聞き逃しはしない。

ダァアアアアアアアン 

アジトに響く、マシンガンの音が部下のうめき声を消していく。

「…また、アイツに来てもらわないと。“ゴミ回収車”の奴を頼む。」

ピエロの仮面をかぶった一人の男が、電話を掛けた。

ジョーカーの“右腕‘ともいえる、クランピーはいつも忠実であるがゆえに彼に気に入れられている。彼が、笑えと言われれば笑い、死ねと言われれば死ぬのである。

「もうすぐ、到着するそうです。」

「ジョーカー、またこれは派手な入団テストだな。」

 

黒いニット帽をかぶった年寄りの男が、大きな袋をのっそのっそともって現れた。

「…どうも、誰もしっくりこない。唯一の右腕と数人残したが本命じゃぁない。なぁ、サムさんとやら。入団しないか?いい殺し屋として、雇ってやるよ。」

ジョーカーは、唇をぐるりと舌で嘗め回した。

「わりぃが、俺は殺し屋じゃない。“あの時”、お前さんは俺を救ってくれた。あの日から俺は、お前さんの見受けとしてやっているが。。妻子がいるんでね。」

ジョーカーは、下を向いたまま何も話さなかった。

「妻子ねぇ…、面白い傷の話は聞きたいか?」

ジョーカーがナイフを持ち、サムに駆け寄る。サムは、死体が入っている袋を持ちながら後ずさる…

「待て、待てジョーカー。お前が本当に欲しいものをいい当ててやるぞ。」

ジョーカーは、はっと我に返ったように目を見開き興味深そうにサムの顔を除いた。

「俺が本当に欲しいものだと…?」

「ああ。そうだ、お前さんが欲しいもの。それは、“ジョーカー”だ。アーカムに収容されている、あのピエロの暴動を起こした先導者、アーサー・フレック…。俺たちを引き合わせ、お前さんを生んだ元凶さ。1枚目のジョーカーだ。」

ジョーカーはその名を聞いたとき、体に電気が流されたように何かを感じた。

「アーサー・フレックだと…ああ、ああ、ヒャハハハハ…!!!」

「なぁ?どうだ、当たっているだろう?」

サムは、ジョーカーが高笑いをしている間に死体を集め終えていた。

「お、俺はこれで…」

「待て、サム。」

ジョーカーは、興奮し息が荒立っていた。今彼の指は、部下たちを殺したあのマシンガンの引き金をまさに引こうとしている。

「…そうだったよ。思わず、今の俺に気を取られていて愛しいハッピーちゃんのことを忘れていた。」

サムは、息をのんだ。ジョーカーは、奇想天外で彼が何をしでかすかわからない。彼の気を損ねれば、マシンガンの弾が彼の体を貫通してしまう。

「なぁ、プリンセスには何が必要だと思う?クランピー、」

急に話を振られ、クランピーは動揺していた。

 

ダダダダダダダダ…!!

右腕とさえ言われたクランピーの体をマシンガンの銃が一気貫いた。

「ヒヒッ…かぼちゃの馬車と、素敵な素敵な王子様だよ。サム、嫁さんと子供を銃弾の雨に頬りだしたくなかったら協力することだな。」

サムは、重い首を縦に振った。

 

タッ…タッタ…タッタタ

真っ白な壁一面に鼓動のように響く、男のタップダンス。彼の足元は、際立つほどの赤色で染まっていた。

「優しい人だったなぁ…、僕にあんなにやさしくしてくれたのに。ああ。またやってしまった。つい癖でね。」

鉄格子のかかった窓の外からは、アーカムの前に座り込んでいる奴らが見える。今日も仮面をかぶった道化師たちが「ジョーカー」という看板をもって立っている。

「ジョーカー!!あなたを待っている!」

「あなたこそが、我々の希望だ!」

男は、うっすら白いひげを生やした自身の顎を血で染められた親指でゆっくりなぞると、

うつろな瞳で彼らを見つめ笑った。時々、のどをつまらせながらも彼は腹を抱えて笑った。

「…僕を探しに行かなくちゃ。」

 

男はそういうと、ナースルームへ向かい自身のカルテを手に取った。上の階からか、2名ほどの職員の話し声がする。

「…懐かしい、あの時ペニーのカルテを取ってきてくれた黒人の事務職さんはどこにいるんだろうか。ああ、」

男は、ふぅと深いため息をついてから目をつむりもう一度目を開いた。

「これが僕さ。」

旋律が奏でる赤、音楽にのせて揺れる緑、虚ろなエメラルドグリーンの瞳…彼は、ジョーカーだ。

「ここの階にいる人はみーんな、僕の笑顔の一部になったんだ。」

ジョーカーは満足そうに、またタップダンスを始めた。ナースセンターの血が塗りたくられたテレビからニュースの画面が映し出された。

…新たな犯罪組織ジョーカーについてです。リーダーだと思われる男、ジョーカーは明日アーカム州立精神病院に爆弾を仕掛け爆破する、という犯行予告を出してきました…交換条件として“現在アーカムに収容されているジョーカーを引き渡せ”ということです。

「ジョーカーだって…?ジョーカーはこの僕一人だけだけど…」

ジョーカーは、興味津々に目を輝かせ画面を見つめた。そして、自分と同じ人間、いやそれ以上の人間が自分を求めていることにとても心躍った。彼のタップダンスは、激しくなるばかり…

「フフ…ジョーカー、君は僕の王子様だよ。」

真っ白な廊下に飛び散った赤色のペンキを、ジョーカーは自身の口元のメイクに一筆塗った。

「ねぇ…どんなとびきり面白いジョークをしてくれるの?」

 

アーカム病院内から、銃声が2発聞こえた。

 

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