「素晴らしい夜だ、なぁマーク?お前さんのおかげでまとめてゴミを補充できたんだからなぁ…」
アジトの割れた窓ガラスに、月の光が差し込む。
「ジョーカー、それでお前の言うプリンセスとはなんだ。」
マークが威張った声で話した。
ジョーカーは、ヒヒッと不吉な笑いを浮かべ
「ああ、そうだった。目的を見失う所だった。トランプのカードは何枚あるか知ってるか?」
「…2枚か?」
「そうさ、お前さんもゴッサムが暴徒たちであふれたあの日を知っているだろう?町中がまるで火の海さ…旋律が奏でる赤、音楽にのせて揺れる緑、虚ろなエメラルドグリーンの瞳。
そんな、火の海を従える道化師…ジョーカー。とんでもない、迫力さ。」
「そうか、それでジョーカー。お前の作戦は…」
ジョーカーの目が光った。
「お前には教えないぞ?」
ジョーカーは自身の唇を舐めた後部屋を出て行った。マークは、ただしかめる事しかできなかった。
「アーサー・フレックを確保しろ!」
アーカム州立病院の真っ白な廊下で“ジョーカー”は複数人の職員に追われていた。
「はぁ…はぁ、僕体力無いからなぁ。せっかくしたメイクも、崩れてきちゃうよ。」
ジョーカーは角に差し掛かった時自身の涙を表す青色のメイクが赤の衣装に垂れていたことに気が付いた。
「…」
それからは一瞬だった。真っ白な壁は、赤く血塗られた。美しい花びらがはらはらと舞った後テンポの良いステップの音が廊下に響き渡っていた。
「…さあ次はどんな花びらが待ってくれるのかな?」
ザザ…“院内の患者はすべて輸送しました…あとは彼を確保し、もう一人のジョーカーを逮捕すれば収まるかと、”
アーカム内に響く職員の声だ。
「もう一人の…僕?」
もう一人、という言葉がジョーカーを苦しめる。胸の奥から焼けるような感じ、ジョーカーはその場に倒れた。
「ぐはっ…もう一人の僕? ああ僕にはもっとたくさん僕がいたはずなんだ。もう一人、もう一人…」
ジョーカーは胸元を抑えながら立ち上がり、いつのまにか自分の姿がアーカム内に収容されている患者の真っ白な服になっていることに気づく。そして、月の光が真っ白な彼を照らしている。
「…もう一人。」
“なんだと?職員からの応答がない?どうなっている?上にいる職員が全員?”
“まずいです、院長…あと1時間で彼を引き渡さないと病院が爆破、これじゃあ市の予算に問題が、”
アーカム職員の声が院内に響き渡っている。
白い服をまとったジョーカーは、階段を一段ずつゆっくりと降りる。
一つ目の踊り場で、体中きずだらけの小さな少年に出会った。そうだ、とジョーカーは腰を下ろしその少年は自分の幼少期だと悟り、また一つ階段を下りていく。
“アーカム収容患者も一時待機させてもらっている病院しかなく、精神異常者たちを長期に引き受けてくれる病院なんてない…もういっそ彼を引き渡すしか。。”
弐つ目の踊り場で、黄色い看板を持ったピエロと出会った。腰には、今にも落ちそうな銃。ああ、とジョーカーは言い残し彼を置いてまた一つ階段を下りていく。
“だがその後のゴッサムはどうなる?すべて、すべてが終わりだ。また精神異常者たちがゴミを散らかし街は火の海。”
参つ目の踊り場で、赤いチョッキを着たアーサーの姿。ジョーカーは、彼が大事そうに持っているメモ帳を取り上げ、投げ捨てた。
“それでいいんだ…もうこの街は変えられない。すべてが狂ってしまったのは、社会のせいだ。”
最期の階段を下りた時、白い服を着たジョーカーは白い光に包まれている赤い服を着たジョーカーの後ろ姿が見えた。おそるおそる駆け寄ると、赤い服を着たジョーカーには顔が無かった。
「君は僕で、僕は君か?」
白い服を着たジョーカーが問いかけると、顔のない赤い服を着たジョーカーは「ついておいで」というように、白い光の中へと誘い込む。