「ジョーカー!ジョーカー!」
自分の両手が真っ赤な花びらでいっぱいになっていることに気が付いた時、彼は大きく両手を広げまた赤の旋律を奏でるのだった。
“現在、ゴッサムシティはアーカム州立病院の入り口に大勢のピエロマスクを被った暴徒たちであふれかえっています…カメラがとらえているのは…アーサー・フレックだと思われるジョーカーです、暴徒たちに囲まれているようです。”
「なんだと?!」
シリウスが飲みかけのコーヒーを机に叩き付け、テレビと睨みあった。
「ジョーカーが脱走している…確か患者は他の病院に移されているらしいが、残った職員は何をしているんだ!」
「シリウス…アーサー・フレックが全員殺したとしか思えんな。全員彼の罠にはまったんだ。」
マイケルがゆっくりと指揮官室に入ってきた。
「罠…くそ、あと1時間後だぞ?このまま二人のジョーカーが出会えばより勢力は増し、この街は終わりだ。一体どうすればいいんだ!」
シリウスは頭に血が上り、一体どうしたものかと怒りを見えない何かにぶつけている
と、書類を渡しに来たソフィが入るのを戸惑う。
「そこで…アーカムにジョーカーが現れた時、我々は新たなSWATチームと一斉攻撃を仕掛ける。」
マイケルはそういうとトランプのカードを出し、破り捨てた。
ソフィは、それを聞き息を飲んだ。一斉攻撃?、それは最終手段であり街中心にそびえたつアーカム周辺には多くの市民がすんでいるはずだ。その人たちを巻き込むなど…そして、
「一斉攻撃だと…?そんな、無茶だ!危険すぎる、一般市民を巻き込むのだぞ!」
シリウスは声を荒げた。
「…仕方がない。勝利に犠牲はつきものさ、それにこのままだと俺たち警察のトップの立場も危うい。」
ソフィは、いてもたってもいられず
「…ならば、マークの死は!!」
思わず書類を投げ捨て、ソフィはシリウスとマイケルに詰めよる。
「無駄死にだったのですか…?最初からその手があったのではないのですか!」
マイケルはソフィから目線をそらし、落とした。拳を握り、ただ歯をくいしばっていた。
「おとり捜査など無意味だったのです…」
ソフィは泣き崩れ、マイケルがゆっくり口を開く。
「ソフィくん…すべての者が善良だと信じるかね?すまない、これは“彼”のためでもあるのだ。」
マイケルは、一枚の診断書をソフィに渡した。
「マイケル、これは…?」
シリウスがおそるおそる診断書を見る。
「マークの…精神診断書ですって?一体、どうゆうことなのですか?彼は精神に異常が?」
シリウスも驚いた表情をしている。
「彼は確かに警察学校ではトップクラスの成績であった…が、その学校で銃乱射事件を起こし8人を殺していたことが隠蔽されていたのだよ。」
ソフィは何が起こったかわからず、ただ診断書を漠然と見るだけであった。
「マイケル、これは本当か?本当に、銃さえも持てないマークが…」
「あ…ああ、嫌。こんなの信じられません、マークは銃を持つのさえ必死であったのにあれはすべて演技で、彼の本当の顔は…ただの快楽殺人者とでもおっしゃるのですか!?」
ソフィは息を吸うのに必死で、呼吸が荒々しくなっていた。
「ソフィ君、そうだ。私はこの診断書を見つけ彼のおとり捜査を進めたのだよ。おそらく、この事件を隠蔽したのは警察学校だ。自分たちの監視の甘さが世間にしれ渡れば自分達の立場が危うくなるのだ。」
シリウスはただ目の前を見つめ、一体何が起こっているのかと自問自答するばかりであった。
「彼は多重人格障害に悩まされていたらしい。幼少期のあらゆる事件が根本的なトラウマとなって…」
「…マイケルさん、SWAT隊と一斉攻撃を仕掛けるのです。ただ一般市民への被害は最小限に。」
マイケルは震えるソフィの手を固く握り、「大丈夫だ」と声をかけSWAT隊の指揮へと向かった。
「さてさてさて~…?あと30分でお約束のお迎えの時間だが…マーク、準備はできたか?」ジョーカー達は、大きなトラックに乗り車道を走る車たちを次々と跳ねていった。
跳ねるたびに車体が大きく揺れる。
「…この爆弾をもって、アーカムの最上階へ行けと?」
「ああ、そうさ。俺がプリンセスをお迎えしたらすぐに、爆弾を置いたお前も迎えにいってやるよ。ただし爆弾は誰にも見つからないところへ置くんだ…俺が起爆装置を持っている。」
マークは顔をしかめた。
「なぜ俺が起爆装置を持てない?」
ジョーカーはナイフ磨きをはじめ、何も答えなかった。
“殺せるときに殺すため…か、”
マークはぽつりと考えた。と、その時思いもよらぬ感情の波が押し寄せてきた。
「ならば…ならば俺は犬か?しつけされている都合のいい捨て犬か?」
ジョーカーはナイフ磨きをピタリと止めた。
と、その瞬間アーカム州立精神病院に着く手前で大きな銃声がトラック内を駆け抜けた。
「SWAT隊!トラックを撃ちぬけ!命令があり次第、突入する。」
銃声が鳴りやまず、ジョーカーの手下は慌てて窓から出ようとしている。
「う、わぁあああ…死にたくない!」
手下が運転席の窓を壊し脱出しようとしたとき、ジョーカーはためらいもせず、まるで虫を払うかのようにその手下を撃ち殺した。
「答えろ!俺は犬のままなんて嫌だ!」
マークが大声を張り上げる…と同時に、「ぐはっ…」というマークのうめき声が聞こえる。
ジョーカーはお気に入りナイフで、マークの腹を刺したのだ。
「なら自分が狼になれるとでも…?だったら君は最高の負け犬さ。」
ジョーカーがそういうと、手下たちはトラックの隠し扉を開き裏側から脱出した。
マークは腹を刺され、トラックの中でぐったりと横たわり、爆弾を持っている。
「ヒヒ…」
ジョーカーは不吉な笑みを残し、マークはトラックの中に取り残されてしまった。