亀更新気味ですが、痺れを切らされていないか心配です…汗
今回はアッシュとロナートの話ですね。
あと、かなりのオリジナル展開です。
では、どうぞ。
「いやはや、まさか雷霆のカトリーヌさんとご一緒とは、光栄の至りですね」
「光栄に思うのは自由だが、それで自分の役目を厳かにするなよ? ちゃんとお前らのセンセイからは伝達されてるはずだからな」
現在俺たちはロナート達の反乱を鎮圧するためにガスパール城付近へと来ている。やけに木々が生い茂っており、心做しか視界もぼやけている気がする。に、しても雷霆とは何なんだ?
「おい、お前今雷霆とは何だとか言ったか?」
なんでスラッと心を読むんだよ。怖いわエスパーちゃんが居るよここに。
『…雷霆…ねぇ』
…最近重要人物はそんなつぶやきしか出来ないのか?
『おい、それ以上は止めな』
「いいか、雷霆ってのは英雄の遺産の一つだ。遥か昔、神々より力を授かりし10人の英雄…その子孫に伝わる聖なる武器さ。つっても今回雷霆を振るう機会はないさ。アタシらの任務は事後処理ってとこだからね」
『…英雄?』
(おい、どうした急に。声にドス黒い何かが入り混じってるが)
『…いや、気にしないでくれ。ところでエリス。あのやけに態度が鼻につくマドレーヌと言う奴は始末していいのか?』
(カトリーヌな! そして止めろ! 更に気になる事ありまくり過ぎだろ!!)
カトリーヌが雷霆の話をし始めた辺りからやけに不機嫌なトーンで話すとは思っていたが、何であたりまで強くなってんだ?
まぁ、俺も何だか知らないがあの剣には良い印象を持てないんだが。
…それはそれとして、
「一応大丈夫だとは思うが、準備は万全だな?
アッシュ」
「はい。ちゃんと、自分のやるべきことに目を逸らさずやり遂げる為に、ここに来ました」
「よし。なら後は分かるな?」
「はい!」
アッシュは、この前の迷いの中にある顔持ちではなく、何事にも左右されない堂々たる面持ちでその場に立っている。どうやら、覚悟を決めたようだ。
…なら出来る限りの援護をしてやらなくてはな。
『でも自分も気をつけなよ? 後ろから刺されたりしたら元も子もないからね』
分かってるっての。それに、十分注意しなけりゃ行けないやつも居るし。っと、どうやら先に向かっていた騎士が現状を報告しに来たようだ。
「さて、そろそろ向かうか。クロード。他の奴らを呼んできてくれ」
「りょーかい。それと、腰の防御は固めとけよ?」
「おお。って腰? 何故に…」
クロードの不安要素満載の返答には何も返せなかったが、頭の中の奴の注意の源でもある、今俺に向かってハッキリとした敵意を向けられていることに気が向いてしまい、それ以上考えることは出来なかった。
「先生! 出番ですか!? 任せてください! 何人たりとも近づけさせませんから!」
「ぐぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「あ、気を付けとけって言ったのにとかふざけてる場合じゃないか。おーいリシテア、その辺にしとけ。先生が綺麗に曲がってるぞ腰中心に」
うん。何かあるかとは一瞬思い付いたけど、まさか本当に腰を折られるとは思わねぇだろ。痛てぇ。
「…」
案内されたところまで固まって行くと、段々と霧の濃さが増していき、あっという間に視界が真っ白になってしまった。この中途半端な霧のかかり方…。明らかに人の手が加えられてるな。とすれば…。
「敵の中には間違いなく魔術師が居るだろうな。怪しいやつを見つけたら無力化してくれ。こんな状況じゃ探すこともままならねぇ」
「これが人の手でか…。だいぶ濃いが、相手側はこちらを発見できるのかねぇ」
「この手の策略ならばこちらが不利になればどうということは無いんだろうな。ただまぁ」
俺は一旦会話を中断すると、片手に魔力を集中させ、密かに近づいてくる気配の方角に対してサンダーを放つ。
「グァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
着弾したのだろう。体が痙攣しているように声を震わせながら断末魔が上がる。明らかに俺達の位置やら何やらを把握していた
「…なるほどな。こりゃ、だいぶ目を鍛えてあるな。今度の講義の課題にしてみるか…?」
「止めたまえ先生…。セテス殿からまた苦情が来るぞ…」
ほんと、なんであの人俺がやる事なす事全てにつっこんで来るんだろう。何、恨まれてんの俺?
「条件としてはあちらも同じなんだろうが、俺達は地理に関して疎いのが多いからな…。明らかに不利だな」
「不用意につっこむなよ? 狙ってきた奴から仕留め続ければそうする必要が無いからな」
指示通り、俺達を発見し襲撃せんと向かってくる人々が増えてきており、俺達はそいつらを教えた通りのやり方や戦法で対処していく。確かに視界を奪うというやり方は1枚上手かもしれないが、純粋な戦闘ではこちらの方が経験値の差で有利なのかもしれないな。
ただ、そうするとやはり気になることがある。先程から攻撃を仕掛けてくるヤツら。まるで武器の振り方が素人そのものだ。とても騎士やら兵士やらの戦い方とは思えないやり方で、俺より少し上手いくらいの振り方だ。
おまけに、相手側はなにかと言葉に違和感があり、
「うぉぉぉぉぉ!! 領主様を死なせてたまるかァァァァァ!」
「ロナート様の悲しみと怒りは…おら達がこの手で晴らすんだァァァ!!」
「コイツら…この訛りようと一人称…まさかとは思うが…」
クロードが何かに気づいたように敵兵の手と足スレスレに矢を放ち、それを避けようとして掠った相手がヅルンと転倒する。
咄嗟にローレンツが相手の手に取っている武器を退かし、敵兵の手を見やると、その手は明らかに武器を持って戦う騎士達とは思えない手つきだった。
「このマメの入り方…そして土がこびりついて茶色く汚れた爪や掌…。コイツら、農民か!?」
「そんな…!? まさか、街や村のみんなまで戦場に!?」
「もはや手段は選ばないってか…。やはりこれは修羅の道に入った結果か? だが何故…」
『どうせなら、使ってみれば? なにか分かると思うよ』
イージスの言葉通りにし、俺は倒れている農民の記憶に干渉し、何が起こっているかの情報を集め始めた。
街のような場所で、明らかにカリスマ溢れる中年の甲冑に身を包んだ男が、どこかへ向かって進撃していく。それを引き留める農民達、そして団結する一行。
そして、その怒りの矛先は…。
レア率いる教会に対しての怒りだった。
頭が揺さぶられるような感覚と共に現実へと引き戻される。幸いに今回は誰にも違和感を感じられていないようで、俺が農民を少し調べているように解釈されたようだ。
「どうした、先生。なんか分かったのか?」
「いや、特には。それよりも、なんだか前方の方に少し強力な魔力を感じる。もしかしたらこの霧の発動者がいるかもしれない。ゆっくり接近してみるとしよう」
俺の言葉に全員が賛同する。しかしこの発言には6割の事実、そして4割の嘘が含まれている。たしかに少しばかりの魔力の違和感はあるが、結果的には干渉時に場所バレしてしまっただけなんですけどね。
そしてこの発言はしなければ良かったと思いました。何故ならば、今俺の右腕付近へと近づき俺へアッツーいキラキラした目を向けている優等生ちゃんの顔がまともに見れないからです。
「そんな…さりげなく魔力を感知するなんて…!!!!」
あー。もう。何も言うまい。なんか純粋な子を騙してる気がして胃が痛いですよぼかぁ。
と、ここで何も居なければ俺の勘違いで済んだのかもしれないが、本当に居るもんだから余計に眩しい目線が俺を痛めました。なんで何もしてないのに自分の首を絞めなくちゃいけないのだ。
「せ、先生。ちょっとリシテア君の顔が近すぎる気がするのだが…」
「止めてくれローレンツ。それよりも前の敵に集中しろって、あれ? ダークメイジは?」
「あのー、先生大変申し上げにくいんですけど〜。先生を熱く見上げながらリシテアちゃんが片手で相殺してました…」
「ゑ」
「褒めてとは言いません。こんな状況ですし? でも、空気が読めないとか言わないでくださいね! だって先生を尊敬して見つめてたら魔力ぶっ放してくるんですもん!」
「分かった! 分かったからはい深呼吸! お前先生が絡むと何でそんなに短気になるんだよ!!」
レオニーがお母さんしている…。めっちゃ暴走っ子を宥めんの上手いな…。
『あの、何回も言うけどほぼほぼ全部の原因君だからね?』
察さないでくれ。胃が痛くなる言ってるだろ。
「…! 霧が…晴れてきます…!」
随分と呆気なさがあるが、発動者であった魔術師を倒した事によって、鬱陶しく思い始めていた霧がサァッと音を立てるかのように消えていく。
やがて全ての霧が無くなると、隠れる場所を無くし動揺する兵士達と、カトリーヌに向かって怒りの眼差しを向ける、映像と同じ男が立っていた。
「カサンドラ…!! 雷獄のカサンドラ…!! 我が息子を裏切った狂信者め…!!」
「…カサンドラ…。
アタシの名はカトリーヌだ。神々の僕たるセイロス騎士団の剣…その身で味わいな…!」
…カサンドラ…?視線の矛先からしてカトリーヌの事だろうが…。瓜二つとか?それとも…。
これは後でまた使用しなきゃ行けないか。はぁ…。体力が…。
「…ロナート様…」
どうやら、あの男はロナートと断定していいらしい。アッシュは少し悲しげな目を向けたあと、顔を左右に振り、目の色を入れ替える。
「先生、僕、ロナート様と話します。話して、あの人を止めてみせる…!」
「…任せな。周りの事は他に任せて、行け!」
「はい!」
彼は駆け出し始め、今カトリーヌと激闘を繰り広げようとするロナートの元へと疾走し始めた。当然、自分達の主将な訳だから、周りのヤツらはアッシュを止めようと集団攻撃に乗り出ようとするが、俺達は約束通り阻もうとする奴らを蹴散らしていく。
「悪いけど、ここはアッシュ君の腕の見せどころなんだぁ。おめぇ達の相手は、オデが引き受けるぞぉ!」
ラファエルが俺達の言いたい事を全て宣言する。如何なる理由があろうとも、親子の会話を妨げるなんてことはしちゃいけないからな…!
「さ、かかってこい!!」
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Noside
「貴様だけは…! 貴様だけはこのわしが…!!」
「…随分と荒れてるじゃないか…。目の前にある正義にすら気付けなくなっちまったかい」
「それを貴様が言うか偽善者め!! 我が息子を裏切った貴様こそ、何が正義かを見失ったのではないか!!」
「…っ…何も言えないのが辛いねぇ…。明らかに、アンタを歪めちまったのはアタシだ。…せめてアタシの手で送ってやるよ…。主の見許へね…!」
「それは貴様の方だカサンドラ!! 女狐に化かされた狂信者は、わしがこの手で討つ!!」
憎悪に塗れた剣と、罪の意識が入り混じる剣が交差し、辺りに甲高い音が鳴り響く。荒々しく繰り出されるロナートの剣技と、それを受け流しつつ冷静に仕留めんとするカトリーヌの剣技が何度もお互いの息の根を止めようと相手へと向かい、弾かれ、向かい、弾かれを幾度となく繰り返す。
「全く、アンタはこんな戦い方じゃなかったはずだろ?」
「ふん! 貴様こそ、どうした! 我が息子を手にかけた悪魔とは思えない剣技だな!!」
「…言ってくれるじゃないか。生憎と、憎悪に全てを捧げた奴にやられるアタシじゃない、よ!」
煽りに対して答えるかのように、カトリーヌは勢いを強め、それに加え足払いやステップを上手く扱い、ロナートを手にとるように圧倒していく。
「力の差は明らかだ。今投降すれば少しは軽くなるから、してくれないかなぁ」
「ふん、何を今更。どうせお前はクリストフの話もろくに聞かなかった分際で、善人ぶるとはな。さぞかし息子を殺した時に得た名声で作り上げた偽善伝説は気持ちが良かっただろうな!!」
「…っ…」
「ハァ!!」
「ぐっ…!!」
糸が切れたように攻撃に隙が現れ始めたカトリーヌを馬と協力し彼女を突き飛ばし、地に伏せさせる。
彼女が立ち上がろうとすると、首に剣が当てられる。
次の一撃で刈り取ろうという気迫が分かる。
「…息子の…仇だ…。だが、貴様はクリストフの友人だと聞いた…せめて痛くないように一瞬で葬ってやろう…」
「…ふ…まぁ、これも仕方ない…か」
「ロナート様!!」
トドメを刺そうとしたロナートの体に誰かが突進し、馬から体が飛ばされたロナートはそのままその人物とともに地を転がる。
そして、彼を起き上がらせると、その原因であるアッシュは必死に説得を始める。
「ロナート様…! もう、おやめ下さい! 何故、このような…!」
「…どくのだ。アッシュ。わしはもう止まる訳には行かぬのだ」
「答えてくださいロナート様!!」
「レアは! 民を欺き、主を冒涜する背信の徒だ! 大義は我らにあり、主の加護も我らにある!!」
「だからって…! こんな事は絶対に間違っています! 街や村の人達まで動員するなんて…!!」
「ならば…!遠慮なくわしに刃を向けよ! …わしは…もう…止まれぬのだ…後には引けぬのだ!! 全てを覚悟してここに立っている!! お前も説得したいというのであれば、その手でわしを止めて見せよ!!」
「…っ、ロナート様…!」
かつて見た事のない、父親も同然であった男の豹変に、狼狽えてしまうアッシュ。故に、それしか方法がないと分かっているのに、手が弓を取ろうとしない。してくれない。動こうとしてくれない。
再び自分の歩みを止めてしまったアッシュを、ロナートは敵とみなし、問答無用で刃を向けて近づいてくる。
彼が繰り出した一撃一撃を、弓で受け流し、またはベレスに学んで染み込んだ身の子なしで対応しているが、1度も自分から攻撃をしようという姿勢は見られない。
「ハァ!!」
「うわァァァ!!」
痺れを切らしたように一気に薙ぎ払われ、アッシュはそのまままともに喰らい、膝から崩れてしまう。
「情けは捨てよ、アッシュ。ここに来た時点でお前がするべき事は、獲物を捨てるか、わしを討つかの2択しか残されていないのだ…!!」
「ロナート様…!! 一体…どうしたら…!?」
アッシュが迷いに入ってしまった事を視野に捉えると、興味をなくしたようにカトリーヌへと矛先を変え、そのまま去ろうとする。
(…僕は…ロナート様に弓を撃たなければならない。じゃないと、取り返しのつかないことになる…。でも、刃を向けてしまえば…。僕は…。)
自分はどうすればいい、と頭を抱え、もはや本来の目的を遂行することなく役目を終えてしまうかのように思われた。が、ここである言葉がアッシュの頭によぎる。
『刃を向けることが、恩を仇で返すってことになるなんて思ってねぇよな?
後悔してあとから悔やむくらいなら、今本当にすべきだと思うことをやれ。
何時だって、恩人を止められるのは恩を受けた側だ』
(…そうだ…僕は、あの時教えられて、誓ったじゃないか。自分の心に…。
例えどんな事になろうとも、ロナート様を止めるって。
その覚悟もなしにこんな所に来ちゃいけない。後から後悔しないようにすべき事を全てやり遂げる。それが、
今僕がすべき事だから…!!)
覚悟を思い出し、もう一度決心したアッシュは、1度深呼吸をし、手に力を込めて、
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一気に引き絞った矢を放ち、ロナートの腕へと目掛けて飛ばす。
「ぬぅ!?」
背後の異変に気付いたロナートはその矢を弾いたが、覚悟を決めたアッシュはそれだけで攻撃を止めず、足と手に正確に当たる位置へと連射し、受け流しきれなかったその中の2本が見事にロナートの両腕へと命中する。
「ぬぁぁぁ!!!」
好機と見たアッシュはそのまま全速力でロナートへ突進し、また押し倒して、矢を、今度はロナートの頭へと向けて引き絞る。
一瞬戸惑ったような顔をしたロナートだったが、観念したのか抵抗しようとした足を止め、アッシュの一撃を受け入れようとする。やがて目を閉じ、時期に来る痛みを待った。
が、何時になってもその痛みはこない。どういうことか、と目を開くと、涙を流しながら弓を収めるアッシュの姿があった。
「僕にはっ…できません…! 僕がここに来たのは、貴方を討つためじゃ無いから…!」
「何を言っている…! わしは、そのような事を望んではいない。さぁ、わしを討て…!」
「いやですっ…その言葉には従えません…!」
「何時まで悩んでいる! 言ったであろう! どちらかしか選べないと!」
「例えそうだとしても!! 僕はそれを望まない!」
「…なに?」
どんなに否定されたとしても、アッシュは決して自分の意思を曲げようとはしなかった。ただ、自分の望みを口にする。そのただ1つの行動だが、それを言うにはかなりの覚悟がいる状況。その中でも、曲げようとしなかった。
「僕がここに来たのは、貴方を止めるためです。殺すためじゃない…!」
弓を収めたその震える手を抑えるようにしながら、必死に救うべき者に呼びかける。普段では考えられないように声が上擦っており、以下に必死なのかが分かる。
「僕は、あなたに救われた。僕には触れられないほどに傷付いているのに、苦しんでいるのに、あなたは僕に、僕に無いものを与えてくれた。
生き方を教えてくれた。
優しさをくれた。
居場所を与えてくれた。
今の僕の在り方を作ってくれたのは…貴方なんです…!」
「…アッシュ…」
「僕に代わりとか、そんな事をできるなんて言いませんし、そんなことはしません。だって、貴方にとって息子は、クリストフさんだけだから。でも、僕は少しでも、あなたに貰った恩を返したい。たとえどんな風になったとしても、あなたの心が救えることが僕にも出来るなら…
どうか僕に、恩返しをさせて下さい…!」
普通この状況では、こんな事は言えないだろう。憎しみに飲まれた者が、いくら恩人だからといえども、それで憎しみが消えるなんて事など、無理に等しいのだから。
そう、憎しみは。
「…ふ、愚かなのはわしもだったようだな…。自分が育てると豪語した子にここまで悲しい顔をさせるなど…」
「ロナート様…」
「…心の中では分かっていたのだ。こんな事をしても、クリストフは戻ってこない事など…。それでもわしはそれを言い訳にし、息子を奪った憎き女狐率いる教会を亡き者にしようと立ち上がった…。だが…」
ロナートは溜息をつきながら、手をそっとアッシュの頭へと持っていき、優しく撫で始める。そこには、復讐鬼となった姿もなく、ただの父親のように感じられる物だった。
「同時に大切なものを作りすぎたか…。それすらを押し込めて、復讐へと費やそうとしたが、わしには無理だったようだ…フッ、哀れな復讐者と笑うか。アッシュ」
「そんなことありません…! 僕が貴方を笑うなんてこと、絶対に有り得ません…!」
アッシュはそれを否定する。心から尊敬している人を、笑う事なんて何一つないからだ。
「…だが、わしはもう、止まることが出来ぬ…。何人もの民を犠牲にし、目的を果たせなかったわしは散る以外に道は残されておらぬ…」
「領主様!!」
「なに…?」
ロナートがアッシュではない声の主の方向へと顔を向けると、そこには戦死したはずと思い込んでいた己の仲間達が集まっていた。
「すまねぇ、領主様…!あんたの為に戦うと言ったのに、結局力になれなかった…!」
「…何故だ…いくら農民とはいえ、敵に変わりないのだぞ…?」
ロナートは近くにいたクロードへと語りかける。その様子に彼は苦笑し、自分達の真意を打ち明ける。
「我らが先生の判断さ。あの人、平気で難しいこと言ってくるからなぁ。力の制御を身につけるに丁度いいと思えとか、唐突すぎるだろ…」
「なに、先生だと…?」
「先生、もしかして…」
「言っただろ。後のことは俺らに任せろってな。それに最初からお前の目的が説得だって分かってたからな。無理にトドメを刺す理由なんてなかったし」
エリスは、何かと理由を見つけて自分を卑下しようとしているロナートの元へ行き、声をかける。
「あんたは農民達を死なせてしまった、だから後には引けない等と思ってるんだろうが…ご覧の通り、あんたの農民達は生きてる。それに…あんた、復讐鬼になったにしては随分と味方に対して甘すぎる気がするがな…きっと、あんたにとってアッシュと民達はとてつもなくかけがえのないものになってたんじゃねぇのか? 」
「…だが、わしは民を巻き込み死なせようとしてしまった…。アッシュにまで悲しい思いをさせてしまった…」
「領主様、そう自分を責めねぇでくだせぇよ。オラ達は、あんたが領主様だからついて行ったんだ。復讐をしたいなら最後までお供するし、皆で暮らしたいと言うんなら、途中で武器を捨ててあんたと一緒に平和に暮らすさ」
「そうですよ! いくら巻き込まれようが、利用されようが、地の果てまでついて行きますよ! むしろ、俺達が途中で見限るとでも思ったんですか?」
「…お前達…」
ロナートは、全員を見渡す。もうそこには復讐の火は灯っておらず、優しい領主の顔だった。
「すまぬ…お前達を盛大に巻き込み、悲しませておきながら、わしにはもう、復讐を行うことが出来ないようだ…。お前達という存在が、復讐を行う中で、どれだけ大切なのかという気持ちがどんどんと溢れてきてしまってな…今更何をと思うだろうが…もう一度、わしと共に生きてくれないだろうか…?」
《勿論です!》
「ロナート様、言ったばかりでは無いですか。恩返しがしたいと。貴方がそう望むのであれば、僕はそれを全力で支えます。あなたの心の傷が少しでも和らげるなら、僕は、あなたと共に生きる道を選びますよ」
「…お前達…!」
(あぁ…わしは、こんなにも暖かな存在を手に入れていたのか…。…もしかすると、クリストフからの贈り物なのかも、しれんな…)
その場は、ロナートを中心としてアッシュを含めた民達が集い、全員が涙するという場であったが、誰もそれを邪魔することはなく、ロナートの心を満たす新たな存在を認識した瞬間でもあった。
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sideエリス
「アッシュ…やり遂げたんだな…」
あの場に気を使って遠くまで来てみたが、やはりここからでも嗚咽とかが聞こえてくるな…。どんだけでかいんだ…。
『でも、良かったのかい? 仮に命を助けたとしても、レアが下す判断が緩くなるとは思えないが…』
それは俺がなんとか掛け合っては見るし、だからといってよ。あんな風にまだ笑い合えるのに、命を奪うなんてことの方が無理だと思うけどな…。
『…まぁ、君がそうしたいのであれば何も言わな…! エリス、後ろ!』
「っ!!」
うぉぉ!? なんでいきなり後ろから攻撃されたし…!?
ってあぁ、やっぱりコイツだったか…。
「へぇ、体力ないってレア様から聞いてたけど、反射神経はあるんだね。少し驚いた」
「驚いた…じゃねぇよ。まぁ、警戒してたから対応出来たのもあるけどな…
カトリーヌ」
如何でしょうか。
うーんやっぱり強引感がつおい。
本編ではアッシュを連れて行っても一切の救済がなかったロナート。流石にそれではと思ったので、今回は特別ということでロナートはこういう立ち位置となりました。そして誰やこのイケオジ…。
てか、シリアスなのにガスパール兵長の時だけギャグ風になってしまったのは俺の悪い癖でしょうか。
そして安定のリシテアのキャラ崩壊具合が半端ではない。
そして、まさかのエリスとカトリーヌの相性最悪というね…。今のところ教会レアとフレン以外エリスの事嫌ってますね。
さてこの関係性がどう変わってくのか見物ですね。
今の所、主人公視点で書いていますが、最終的には普通の小説形式になり、たまに○○sideでキャラの心情を書くようになります。今から変えた方が良いでしょうか。
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今は現状維持
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変えてくれ
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そんなのどうでもいい
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それよりもベレス視点を増やせ