ある大晦日、金髪の少女が一人寒空の下マッチを売っていました、少女は言いました。
「マッチは、マッチは入りましたか?」
しかし一向にマッチを買いに来る人は年の瀬の忙しさのせいもあっておらず、このままでは少女は父親に叱られてしまいます。
夜も更けていき、いっそう寒さが増していきます、少女は暖まろうとマッチに火を付けました、すると不思議なことに火の中にガチョウの丸焼きが見えました、少女はそれに手を伸ばしますが火が消えると同時にガチョウの丸焼きも消えてしまいます。
少女は再び火を付けます、今度見えたのはロウソクが枝に飾られたクリスマスツリーです、そしてそれも触れようとすると火と共に消えてしまいます、しかしロウソクの光は消えず天まで昇っていき星となり、その一つが消えました、少女は死んだおばあさんの言葉を思い出しました、『星が一つ落ちる時、一つのたましいが神さまのところへのぼっていくんだよ』。
「あぁ、おばあちゃんに会いたいな」
少女はそう願い、マッチを付けました、そしてそのマッチの火に映ったのはそのおばあちゃんでした。
「おばあさん、わたしも連れてって。火が消えるといなくなるなんて、いやよ。・・・わたし、どこにも行くところがないの」
少女はそう言いながら、残っているマッチを一本、また一本と、どんどん燃やし続けました。
おばあさんは、そっとやさしく少女を抱きあげてくれました。
「わあーっ、おばあさんの体は、とっても暖かい」
やがて二人は光に包まれて、空高くのぼっていきました。
その後、少女は安らかな顔で死んでいるところを新年の朝に見つかり、町の人々は皆、
「かわいそうに、マッチを燃やして暖まろうとしていたんだね」
と、言いました。
少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へのぼった事など、誰も知りませんでした。
○
ジェイル――
それは、突如世界に降ってきた、悪夢の種の萌芽。
空から降ってきたその種は、根を張った大地を腐らせ、建物は歪み、生き物は飲み込まれてその姿を変えた。
そうして地下深く沈んだ、太陽さえ奪われた街で、人々はジェイルが産み出した異形の化け物『メルヒェン』に怯えながら生きることとなった。
そんなジェイルの中で、人類が化け物に対抗するための組織である『
様々な苦難を乗り越え、二人の少年と少女の記憶がよみがえり、悪夢は終わりを迎え、そうして彼女たちは、太陽を取り戻した。
しかし、そうはならなかった。
「けれど、夢の終わりは、別の夢の始まり、……誰かにそう聞いたことは無いかい?」
○
マチは、マチ、一人旅をするしがないマッチ売りの少女。年齢5歳。
とにかく旅がしたかった、家から飛び出して、新しく、変化する日常をおくりたかったからだ。
マッチ
マチは一人、廃村に迷い込む、そこにはメルヒェンがいたけど武器の大きなマッチを使う必要なんて無いくらいには弱い、けど、めんどくさい、とにかく数はいっちょ前に出てくるものだからマッチに火をつけることもできない、これでは凍え死んでしまう、こんなやつらに負けるほどマチは弱くないけど、マチはそれなりに形が残っている家の中に入った、扉を閉め、それを叩くメルヒェン達を尻目に、数分ほど心を落ち着けた辺りで、マチはマッチを―――
「おーい、そこにいるのー?」
「そこにいるんだろ、噂のメルヒェンを狩る代わりにマッチを売ってるっていうやつは」
マチは声がした方向の窓から顔を覗かせる、フードを被った少女、マチと同年代辺りの少女は大きな声でおーいと呼んでいる、マチはお前の友達じゃないんだぞ。
もう一人は眼帯をつけたガラの悪い男、だいたい三十代辺りかな、男は冷静な声音でまだ聴きやすい、けど誰だよいったい、こっちは寒くてしょうがないってのに。
というかさっき叩いていたメルヒェンがいない?、それもまだ数分しか経ってないのに、つまりはそうか、なるほど、マチと同類だな、あの少女。
「まったく、珍しい客がきたものだ、自分の家じゃないけど」
マチは扉を開き、二人に姿を見せる、少女は笑顔をマチに向けて、両手でマチの右手を掴む、結構な力で。
「あたし赤ずきん!、あなたはなんていうの?」
赤ずきん、確か実家にあった古びた本の中にそんな名前のがあったな、マチもマッチ売りの少女から来てるし、マチ達ってもしかしてそういう?。
「あの、名前なんて言うの?」
おっと、そういえば名前聞かれていたな、質問には返答をだな。
「マチはマチだよ、何の用だ、赤ずきん、あと眼帯」
「俺にはハルっていう名前があるぜ、お前、その背中の大きなマッチ、話では20はいたであろうメルヒェン相手に圧倒したっていうことからお前さん、血式少女だろ?」
ほう、そう呼ばれるものなのか、一般人とは一欠片も思ったことなかったがそんな通称が、それにメルヒェンか、メルヘンからきてるだろうけどなんていうかあってない感じがするがまぁいい。
「ふむ、で、あなたらは何をしにここに?」
「あぁ、それでだ、マチだったか、黎明にこないか?、いや、来てもらう」
黎明ねぇ、話では聞いたことあるけど、一回滅びた組織だったけ、まぁついてく義理ないし脅すか。赤ずきんの手を離させ、背中の大きなマッチに手をかける。
「自分で言ってませんでしたか、マチは20のメルヒェン相手に勝てる力があるんですよ」
「そうだな、だがこっちも逃げられるわけにはいけないんだよ、偶然出会ったとはいえな、だからこうしよう、お前さんのマッチを100本買おう」
「・・・ほほう、値段も聞かずにずいぶんとまぁ」
うーむ、マチ、殺すのはメルヒェンだけにしたいんだよね、血を浴びても気持ちよくないし、ただただ汚いだけだからね、このボサボサ頭の30くらいの男、いろんな人見てきたからわかる、悪い人ではない、そう直感できるね、ただ何か隠してる雰囲気するんだよねぇ。
マチは背中のマッチに伸ばす手を止めて、マッチを100本の束を造り出す、大きくため息をすると、それをハルに渡す
「別に行かないとは言ってない、マチもそろそろ旅に疲れましたし、ただし、あまり束縛はしないでくれよ、マチは自由に、現実から背いて生きることがモットーだからね」
それに寒くてやってられん、こんなところにいるよりから安全にマッチの火を見れる機会が多そうだ。
「良いだろう、改めて、俺はハルだ」
「あぁ、これからよろしく頼むよ、ハル」
こうして、マチは黎明の二人目の血式少女に加わった。