春日部耀の重症を受けたところからのスタートです。
またやってしまったのか?
呆然と彼はそこに立つ。ここが戦場の真ん中だということも忘れ。
何かの間違い・・・そんな現実逃避は目の前の少女から発せられる情報が許さない。
赤い液体から出る鉄の異臭然り、床を少しずつ侵食する生々しい光景然り。
彼は昨日、妹達の一人と交わした周りを守るという約束は彼の手でことごとく破壊された。
頭の中には悲しみが湧いてこない、それどころかショックもない。
そこにあるのは一つの自己嫌悪のみ。
「…ソヵ クソガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア 」
自己を否定し、能力を恨み、そんな自分も否定する。
否定を否定で上書きする。今の彼の精神は正常とは対極の位置にいた。
どっぷりと精神が黒に染まっていく______
その結果起きるのは能力の暴走だった。
能力使用モードのままの彼の暴走はここにいる人間には止められない。
まるで生きた鎌鼬が生成されたようだ。甲高い音を立て窓ガラスは割れ、棚の中の本は埃の様に舞い上がる。
床には所々に亀裂が入り、建物からも異様な音が鳴る。
だがこの場には一体彼を止めることができる『もの』が存在した。
『落ち着いてくださいマスター!そこの少女はまだ息があります。恩恵を止めてください』
その声は彼には伝わらない。精神が黒に閉ざされた彼に外部からの情報は通らない。無論目の前の傷だらけの少女も。
仕方ありません。その言葉を最後に暴風は嘘のように止んだ。
それだけでない。彼は立っていることもままならず、床に崩れ落ちる。
『…情ケナキ…主人……電…切レル…糸セズ…待ツベキ』
今の彼は脳内に響く言語を理解することもできない。
以前に鉛玉を頭にブチ込まれた影響、それは彼から言語能力と能力の基盤となる演算能力を失わせた。
そんな彼を日常で暮せるようにしたのが首の周辺にあるチョーカーだ。
「アァァxtb…ヒキ…krガァア」
しかし今の彼は歩くことも話すことも、勿論能力を使うことすらできない。つまり代理演算の恩恵が正常に機能していなかった。
だがその状況は長く続かなかった。
『すいませんマスター、無理やり停止させたら悪影響が』
今度はしっかりとコッペリアの声が聞こえ、理解できた。
「お前…コイツに何をしやがった?」
首を指で突き、いつも以上にドスの聞いた声で尋ねる。
『今申し上げたように強制終了させただけですよ。』
謝るというには全く悪気を感じさせない謝罪。
「チッ、あの餓鬼みてェな真似すんじァねェよ」
打ち止めは妹達の最上位個体としてネットワークを束ね、好きなように操れた。そのため彼から能力を奪う芸当も可能だった。
しかしコッペリアにはネットワークに干渉する術は持ち合わせていなかった。
だが彼女は今、電極の電源装置とでもいうべき存在だ。電気の流れを断ち切り一時的に能力を取り上げることができた。
使用中の電化製品のコンセントを引き抜くのと同じ行為だ。
『しかしあのままでは春日部さんがさらに危険に晒されてましたよ?』
言うまでもなくボロボロだった春日部は先ほどよりもまた生傷ができていた。
『後悔は後にして下さい。それよりあの虎を消してゲームを・・・逃げられましたか』
見渡してもガルドの姿は視認できなかった。あちこちの窓が割れているため逃走は容易だったのだろう。
『ック!ゲームが終わるまで治療もできません、このままでは彼女は出血で』
言っている今も彼女の体からは血が出続けていた。
どうしますかマスターと尋ねようとしていたコッペリアだが、彼の顔を見て行動が変わった。
『何か策がおありで?』
「あァ誰一人殺してたまるか…コイツは俺が何とかする」
先ほどの絶望に塗れた顔ではなく、真剣に現状と目を合わせていた。
「能力を使うが・・・今度は邪魔すんじャねェぞ」
第三永久機関は確信した、このゲームの勝利を。
『はい!ご存分に』
ピッという現代的な電子音と共に学園都市最強の能力が目覚める。
しかし今度は殺戮のためではない。今までも数回行った誰かを助けるという行為のために。
「悪りィなァ…虎が誰に喧嘩うったかァ分かってんのかァ」
今までの自分への違和感、彼は打ち止めをも手にかけた自分の能力を恐れていた。
だがそれでは守るなんて行為が成立するわけもない。
彼は乗り越えた自分の能力への恐怖を。
「さァ全部守ってやる、それを邪魔すンなら獣だろうが天使だろうが神様だってブッコロシテやる」
彼の覚醒を終えてゲームは終盤を迎える___________
あっれれ~おっかしいぞ~ガルド戦終わるはずだったのにな~
本当にすいません全然話が出てきませんでした。
近いうちに次話出します。