読みにくかったらすいません・・・
感想良ければ書いてください
服の上からでも分かる痛々しい傷の数々を見下ろし、改めて自分の過ちの重さを感じる。
「さてサクッとクリアしてやるか」
誰に言うわけでもなく、開始の合図を上げる。
『マスター具体的にはどういった作戦で?』
敵のガルドも他の味方も傍にいない以上できることは限られてしまう。
「とにかくコイツを安全な場所に連れて行く、久遠は…あいつどこに行きやがった?」
後ろに下がれと言っておいたが、部屋の中はおろか建物の中は物音もしない。
『リーダーの子と合流したのでは?』
正確にはジンを逃がそうとギフトを使って自分も巻き込まれてしまったのだが、二人はそれを知らない。
「チッ、こんな時に援軍0かよ」
しかしこのまま動かないのではゲームをクリアすることはできない。
「とりあえず春日部とその剣を持って二人と合流するとするか」
華奢な少女を両手で抱え、開いている指で剣を挟む。
「案外重いじゃねェかコイツ」
『…女性を抱えて一言目にそれはいささか失礼ではないでしょうか』
呆れたような声音で注意する様子は人間と大差なかった。
というか流石の
「違ェよ、重いってのはこの剣の方だ」
銃に関してはそれなりの知識がある彼だが、剣や刀はサッパリだった。
しかし手元にある剣は、そんな彼から見ても大きさと不釣合いな重量を持っていた。
『これはギフトですね。使用者によって性質が変わる類の』
持ち手が限られる剣、ゲームの妨害のつもりだろうか。
『これはチャンスですよ!マスターとは相性が悪いようですが、残りの二人に適性があるかもしれません』
「これからの方針はリーダークンとの合流に決定したみてェだな」
床を蹴り、一歩で先ほどいた位置から100mほど前に進み停止する。
言うまでもないがそこは辺りに足を着く場がない空中だ。
「見つけた」
空中から俯瞰したおかげで思ったよりも早く二人を発見した。
「チッ、ガルドの方は隠れてんのか遠くまで行ったのか見えねェな」
あわよくば敵の位置も確認するつもりだったが、重症者を抱えて索敵をするのはあまりに無謀。
ガルドの方は諦めて二人のもとに降下を始めた。
「飛鳥さん二人のもとに戻りましょう。今ならまだ間に合います」
飛鳥のギフトにより無意識とはいえ、戦場からダッシュで逃げたというのは彼を傷つけるに値したらしい。
「聞いてジン君!今のガルドは獣も同然、私たちが行ったら二人の足手まといになるのよ」
彼女だって悔しかった、初ゲームを皆と協力してクリアしたかった。
しかしそんな夢物語はガルドと相対してすぐに壊れた。
自らのギフトは10秒と待たずに効果が切れ、彼が飛び出してこなかったら今頃あの爪で肉薄されていただろう。
だが彼女が最も悔しかったのはそこではない。
自分を守ってくれた彼が発した言葉「下がれ」の一言。
そこで確信した、自分は邪魔になってしまうと。
「で、でも」
ジンは引き下がらない。何やら昨日コソコソと十六夜と何かしていると思ったが、何か吹き込まれでもしたのだろうか。
「あなただって分かるでしょ。誰も傷つかずにクリアするのが方針でしょ」
彼女だって本当は戦いたい。白髪の彼にかけてもらいたかった言葉は手伝ってくれだった。
しかし物事は二人が思っているより早くさらに悪く進んでいた。
「おい」
声をかけると、なんで上にという風にキョトンと彼を見ていたが、その視線はすぐに傷ついた春日部に向けられた。
「春日部さん!」
「いったい何があったの?」
二人とも慌てた様子でこちらを窺うが、今は答える余裕がない。
「手当は俺がやる。二人はこの剣で奴を倒してくれ」
傷だらけの少女を手早く床に寝かせ、剣を向けて注文をする。
「頼む、お前らしかいないんだ」
目の前の現状に彼女は理解が追い付かなかった。
しかし心はひどく冷静で、怒りを抱いていた。
「分かったわ、すぐに終わらせる。それまで春日部さんを頼んだわよ」
ガルドは自らの手で葬る、葬らなけれべならない。それが戦場から逃げてしまった罪滅ぼしだった。
「僕も協力します、囮ぐらいはできるでしょう」
まだあちらの世界では小学生の高学年といった年頃なのに、ジンは大人も躊躇うほどの覚悟を持っていた。
「行きましょう、友達を傷つけた代償は大きいわよ虎風情が!」
2:1のハンティングが今始まった。
森の中をジンと二人でゆっくりと警戒しながら進む。
剣は彼女が持ち、ジンは液体の入ったバケツを持っている。
最初は剣は僕が持ちますっと言っていたジンだが、いざ持とうとするとあまりの重さに持ち上げるすらできなかった。
しかし彼女が持つと剣の性質は打って変わり、何も持っていないと思うほど軽く、さらにもう一つ特殊な恩恵が使えるようになったのだ。
二人の作戦は先にガルドを見つけてからの奇襲から成り立っていた。
そのためガルドに先に発見されるとこの作戦は成り立たない。
頭上から降ってくる虎により作戦は変更が余儀なくされた。
「ッ! ジン君避けて!」
その爪で肉を切り裂かんと向けている姿からは危険だというのが容易に感じられた。
このままではジンが殺されてしまう、すぐに理解した彼女はギフトを使用した。
「ジン君、前方に走って頭を守りなさい」
言うや否やすぐにジンは命じられたとおりに動く。
それの確認も惜しんで、彼女も大きく後ろに跳ぶ。
予想より上をいく獣の攻撃は、地面に小さなクレーターを作る。
「これほどなの・・・」
この威力には彼女も正気に戻ったジンも戦慄を覚える。
「一方通行さんの言った通り、その剣に臆することなく突っ込んできますね」
「ええ、そうね・・・」
自分を殺すことのできる唯一の武器に恐れを抱かないのは、少しばかり引っかかりを感じるが、今はどうにかして攻撃を避けるかに全神経を注いで戦う。
「せめてワンテンポ彼の注意をひければ・・・」
何かないか、何かないかと必死に考える。しかしその思考が油断につながった。
「飛鳥さん!!!」
気が付いた時には獣は目の前で拳を振り上げていた。
『マスター急いでください、この出血量では一瞬も命取りになります』
コッペリアから見ても春日部はなぜ生きているのか不思議に思うほどの状態だ。
『しかしマスターは一体何ができるのですか?』
これは一方通行を愚弄している訳でなく、どう見ても戦闘系ギフトの彼に医療の術が無いのは明白だからだ。
「お前も言っただろ一刻の余裕もこいつにはねェンだよ」
言いながら春日部の傷の大まかな位置を確認する。
「右側の腹部と左のわき腹が一番大きな傷だな」
すまねえェ一言謝り、自分で言った傷に両手を近づける
『どうするの______________
ですかの声は出なかった。
『なっ!!』
あまりの衝撃にコッペリアも声が出せずにいる。
このままではそこらじゅうの傷口から彼の指の圧迫によりさらに多い血を流すだろう。
止めなければなない、先ほどの様に強制停止による能力の停止を試みる。
「・・・ま・・て・・よく見ろ」
力の籠ってない彼の声から、何事だと現状に目を向ける。
『血が・・・出ていない?』
「血の向きを操作している。腹部は動脈を、わき腹は静脈を一滴も零してやるものか」
『マスターの恩恵は一体なにが・・・」
先ほどの戦闘からコッペリアは自らのマスターの、
しかし今目の前で、同じ恩恵は治療という全く違うベクトルの最高峰のスペックを発揮している。
彼のギフトの本質が掴めなかった。
「おい、おい聞いてんのかコッペリア」
『ハッハイどうしました』
あまりの驚きに意識を自分の中に閉じ込めていたため、声をかけられ素っ頓狂な声を上げてしまった。
「どうもこうもねェよ、お前のギフト使いながら俺の能力は後どンくらい使えんだ」
言われて初めて気付いた、先の能力使用とは比べ物にならないほどの電力を使用している。
『・・・後3分程です』
3分これを聞きやはりと思う。
今までのゆうに2倍を超える量の演算が求められている。
それはひとえに、二つの向きの向き操作だけが原因ではない。
今やっていることは血管の穴に透明なホースを作っているようなもの。
一滴も零さない、この言葉は比喩などでなく本当に実現させようとしている。
反射は相手の攻撃をそのまま返すだけで、演算の量は意識することもないぐらいだ。
単に向きを操作するだけなら、それに変数を加えるだけで可能だ。
しかし今それをやると、大きな二つの傷からの出血は防げるが、血液に加えた力はそのまま無数の傷口から勢いよく噴出するだけだ。
そのため今やらなければならないのは、触れた血の量から最適な角度で、圧力で変数に入力する。
それを常時、さらに二つ傷口から操作するために並列に考えなければならない。
昔の彼でも頭を抱える量の操作だ。首の機器にも、妹達にも相応の負荷がかかるのは予想できた。
「足りねェくそッどうすりゃいい・・・」
何か突破口を考えなければならない、しかし少しでも思考を別に割けば能力の維持は不可能になる。
そんな時コッペリアは、第三永久機関として、元人類最終試練として決意していた。
人類の、彼の能力を最後まで視ると。
『マスター私に制限時間を延ばす方法があります。』
コッペリアからの突然のカミングアウトから危うく能力を停止させるところだった。
「・・・な・に?」
言語能力も代理演算に依存しているせいで、能力に全てのキャパシティを割くと言葉が片言になるが彼女の言ったことは理解できた。
『白夜叉様も言っていた通り私がカードから出て顕現すれば、供給できる量は飛躍的に上昇します』
「・・・・」
確かにコッペリアはこちらに出せば充電の残量を気にする必要はなくなる。しかしそれは
「あの・・あ・と・・白夜叉との契約で・・戦闘中、ゲーム中は・・お前を外に出さないと」
第三永久機関として異常なほどのエネルギーを生み出す彼女だが、その分決して彼女自体は強くも、丈夫でもない。
『構いません、私の意志で出るんです。白夜叉様も気にし過ぎなんですよ』
後半は不貞腐れたように言い放ったが、前半のは彼女の決意なのだろう。
『あと1分程です。決めてください。』
「・・・頼む・・お前の力を貸してくれ」
彼の目の前にあまりに緻密で綺麗な人形が現れる。
『仰せのままに』
人造の中で最高峰の人形が
「どのくらい持ちそうだ?」
先ほどとは違い言葉はしっかりと出て来る。何でもこの機器の欠陥らしく、充分な電力があれば起きないようだ。
『良かった。私の供給電力の方が消費電力を上回っています』
「なら時間は・・・」
『ハイ。時間を気にせず使っていただいて結構ですよ』
何とか勝機が見えてきた。心に少しの余裕ができたその時
ゴォォォン あたりに轟音が鳴り響く。
「チッ、奇襲には失敗したのかよ」
『マスター気持ちは分かりますが参戦は不可能ですよ』
今の春日部を放置することなど出来ないし、両立すると演算が追い付かない。
ゴォォォン また同じ音が鳴る。
「このままだと、あいつらがくたばるンのも」
絶望の雰囲気が飲み込むほんの手前に、打破できる可能性が目覚める。
体中が痛い。いっそ神経が切れてほしい、そう思えるほどに体全体が痛い。
そんな中でも意識の奥深くからの音が彼女に届いた。
聞き覚えのある声。昨日であったばかりで彼女は少し怖がっていた主の声だった。
しかし不思議なことに今聞こえてくるのは、今までと違いひどく弱弱しく聞こえた。
彼女自身も衰弱しているというのに。
意識を取り戻せば痛みはさらに増すだろう。
だが現状が知りたかった。今何が起きているのかを。
クッッッ
苦悶の声 と共に春日部耀の体は僅かに動く。
彼は急いで血流の変数を操作する。
「私は一体・・・あなたは」
目を覚ました春日部は空を仰ぎ視界に入った存在に驚いているようだった。
「ゲームはどうなったの」
上体を起こそうとするが無理な動きで傷口から血が垂れる。
「無理すんじャねェまだゲーム終わってねェよ」
「今久遠とリーダークンがあの剣を持って戦っている」
飛鳥とジンも確かに心配なはずだ。今もゴォォォンと音が鳴りやまない。
「あ、あなたが看病してくれていたの?」
顔をこちらに向けるが、彼は今までにない焦りを覚えていた。
「そんなところだが、やり方は最悪だぞ」
腹部に感じる違和感の正体にも気付いるのだろう。
だが彼女は首横にを振り
「ううん。私は即死クラスの重症だったはずだもん・・・ありがとう」
顔を少し赤くして照れているのだろうが感謝する相手を間違えている。
「その傷はもとはといえば・・・俺が・・・・
「私が悪いのコミュニケーションを取らなかったから」
有無を言わせたくない気持ちは分かる、今は怪我人の気持ちを汲み取るべきか。
ゴォォォン また同じ音が鳴る。だが音がこちらに近づいている。
『マスターこのままでは二人が』
コッペリアの声でゲームに意識が移される。
「分かっている・・・だが」
そこで目を春日部に向けてしまった、これは失態だったのだろう。
勘のいい彼女は自分が原因で攻撃できないことを悟ってしまったのだから。
「私に作戦がある」
「本当にいいのか?」
彼女言う作戦は間違いなくギリギリの彼女の体をさらに痛めつけるだろう。
「私はここで出来た友達を見殺しにしたくない」
決意の重さからもう何も言うことができなかった。
「じゃあいくよ後はよろしくね」
彼女の目はガルドを探したとき同様に猛禽類のものとなっていた。
「見つけた・・・ぐぅぅぅ」
彼女の昨日できた友達のギフトの風力操作。その力で久遠達がいるあたりまでの木々が力無く倒れていく。
「・・・・・」
そこで春日部は意識を失う。どこか満足げな顔だ。
『マスター!!』
春日部の力のおかげで視界に入った戦場ではガルドが腕を振り上げ久遠を殺さんとしていた。
「届けぇぇぇぇ」
背中から竜巻を生み出しガルドの腕にぶつける。
やはり傷つけることはできないが警戒させて一歩ひかせることはできた。
後は頼んだぞ心の中でバトンを二人に渡し、再び春日部の止血に力を注ぐ
「血管がそこらじゅうで広がってやがる・・・おいコッペリア演算処理の速度上げるぞ」
はいと一言言い、速度を上げたことで彼女の力も追い付かなくなった。
それでも数秒でも伸ばすと全力を尽くした。
飛鳥は覚悟した自分の最期をこの腕で粉々になるのだろうと。
目を瞑らず、その光景を見ていた。
しかし背中から吹く強風が奇跡を運んでくれた。
後ろにあった木々は左右に分かれて、ガルドの動きも一瞬硬直する。
この風には見覚えがあった、春日部さんの昨日見せてくれたギフト。
もう一つ戦場をかき乱す風が訪れた。次の風は暴風。
否竜巻と呼ばれるほどの風がガルドの腕を打つ。
近くにいる飛鳥にも余波は伝わってくるが、仲間がくれたチャンスを無駄にしないと構える。
そしてそのチャンスが来る。竜巻をを恐れたガルドが後ろに跳んだのだ。
「今よジン君」
ジン君も了解したという体で持っていたバケツの中身をガルドにかける。
GHHHHAAAAAAAAAという叫び声が辺りに響き渡る。
その液体は決して獣に効くものではなかった。
なぜならそれはガソリンだから。
もしかしたら体を汚されたのを怒っているのかもしれない。
「終わりよガルド=ガスパー」
剣を向けて宣言する。
ガルドもそれに応え突進してくる。
彼女の持つ剣、彼女が持った時にだけ発動するギフト。
「燃え上がれ剣よ、我に目の前の罪人を討たせたまえ」
ギフトの正体は業火。その炎が飛鳥のギフトの効果でさらに威力が増す。
「GHAAAAA」
「ハッッッ!!!」
飛鳥の一振りで木々も、草も虎も炎上しだす。ガソリンを撒いたのはこの為だ。
しかしその炎もガルドを倒すには至らない。契約で守られた体はそれでも傷つかない。
だがそれで充分なのだ。
「GHAAAAAAAAAAAA
ガルドは傷つかないにもかかわらず火のついた体を爪で引き裂く。
火は獣の恐れる象徴のようなものだ。
自我も忘れ、ひたすらに炎を払う。
「言ったはずよ終わりと・・・ハッッッ」
全力を込めた突きがガルドの腹部を突き刺す。
断末魔は聞こえなかった。まるで灰のように粉吹雪となり散って行った。
ゲーム終了だ。
ストライク・ザ・ブラッドに似たセリフに気付きましたか?
大仰なセリフって思いつかないんですよね・・・