問題児達と第一位が異世界に来るそうですよ   作:デクナッツ

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長文になってしまい、投稿間隔が空いてしまいました。
本当にすいません。


第十四話 殺し合い

1周間という時は長いようで短い、それを証明するようにペルセウスとの会談後のギスギスした雰

 

囲気は一向に晴れ無かった。

 

ゲーム開始前であるのに、流れる会話は最低限のものでしかない。

 

「お嬢様、不満があるのは分かるが役割はこなしてくれよ」

 

「分かっているわ囮でしょ、悔しいけど黒ウサギが景品なのだから手を抜く気はないわ」

 

十六夜の交渉手段は最善のものだと思えるが、飛鳥の態度は未だに尖っている。

 

「私も、全力でサポートする」

 

口ではこう言っているが、耀も、ここにはいないレティシアも思うところがあるようだ。

 

「それで、お前はどうするつもりなんだ?」

 

自分に向けられた指、それに釣られる複数の視線から問われる。

 

「俺は敵の脳(ブレイン)を潰す。」

 

敵の脳、それが示すのは作戦司令部や本部と呼ばれる、敵の中枢の部分。

 

そこを叩くことのみを意識して、入念に準備を行ってきた。

 

その成果こそが、杖の内側に隠し持っているソレだ。

 

チラチラと見える黒は無機質さを醸し出し、それが命を刈り取るために作られた事を主張している。

 

「ふ~ん、まぁ俺からのプレゼントも活躍させてくれよ」

 

意味深とも取れる笑みを最後に各自の持ち場にバラけた。

 

 

 

視認されると、ゲームマスターを打倒する権利が剥奪されるゲーム。難易度の高さ言わずもがなだ

 

が、それはどんな実力者でも不慮の事故で失う可能性を示唆している。

 

故に囮の飛鳥はともかく、なるべく見つからないように立ちまわなければならない。

 

先程から轟音が鳴り響いている城内、多分飛鳥による陽動だろう。

 

そんな中、最低限まで息を潜め柱に背を寄せる。

 

城内の二階で指揮系統の位置を探っていると、中央を真っ直ぐ突き進む道から、怒声と共に兵士た

 

ちが送り出されている。

 

去り際に作戦司令部の悪態を吐く兵から推測するに、その奥に本部が居座っているのだろう。

 

そう当たりをつけ、次にどうやって攻め落とすかをシミュレーションする。

 

幸い、その道に兵士の姿は無く、強行突破も狙える可能性がある。

 

城の奥行きを考えると、能力を使えば五秒と掛からないで走り抜けることができる。

 

しかし、一本道であるために隠れる場所が無い。敵と出くわすと、ゲームの縛りを受け入れなけれ

 

ばならなくなる。

 

さらに、一定間隔で吐き出される兵士は底が見えず、敵の数も予測できない。

 

そうやって脳内で叩きだした結論から、その後の行動を決定する。

 

自分という戦力を無駄にする可能性を極限まで下げなければならない。つまり待機だ。

 

今も戦っている飛鳥には悪いが、雑兵の数を搾り取るまで働くことになるだろう。

 

 

 

お願いします、どうか皆様ご無事で。届かないことは承知で何度も祈り続ける。

 

「そう心配するな黒ウサギ、彼らなら有象無象にやられまい」

 

ノーネームのメンバーの安否を耳を使って随時気にしている黒ウサギにレティシアが話しかける。

 

「しかし、耀さんは怪我をしたばかりですし、人数差だってあるのですよ」

 

徐々に尻すぼみになっていくが、それは最もだ。

 

人数差はもちろん、敵は五桁のコミュニティの兵士、つまり訓練によって磨かれた戦闘集団なのだ。

 

ノーネームの四人も常軌を逸した恩恵を保有しているが、それを扱っているのは年端もいかない子

 

どもたちである。

 

考えこんでしまう二人に外野から声が投げかけられる。

 

「おいおい、せめて僕のところに来てもらわないと面白く無いだろ。そして僕と戦って見せてやる

 

よ最強種の一片を」

 

厭らしく首元を指さすルイオスに、最大限の嫌悪を向け皆の無事を祈った。

 

 

 

現状維持を決定してからどれほどの時間が経っただろうか。

 

音は静まり返り、勝敗があらかたついたのか、先ほどから打って変わって静寂が支配している。

 

好機だ。

 

どちらが勝利したにせよ、戦力の逐次投入は一度収まった。

 

ならば今が突入の数少ないチャンスだろう。

 

「マスター、見つからず、殺さずなんて縛りを作ると自分の身を滅ぼします」

 

脳内に忠告が告げられる。自分の仕事に集中しろと。

 

「フン、誰が殺し御法度って言った、すぐに片付けてやる」

 

久しぶりの感覚、誰かを守るという足枷と殺しを避けるという箍が外れていく。

 

純粋に殺しを求めていく。まるで暗部にいた時のように。

 

左手は杖を首筋にまで持ち上げ、スイッチに手をかける。

 

静寂をぶち壊す轟音を足元に発生させ、前へ突き進む。

 

 

 

「小娘一人に我らの兵力のほとんどを使うことになるとはな」

 

作戦司令部の護衛を任された三人の男は今日はフリーだと予想していた。

 

「相手はリーダーも含めて五人だとさ虐めかよって思ったが」

 

しかし敵はペルセウスの総戦力とぶつかり合い、まだギリギリの均衡を保っているらしい。

 

これが他人事なら手放しで褒め称えたい程の快挙だろう。

 

「昔なら、こんなに手間取らなかっただろう。作戦司令部もリーダーも腐っちまっている証拠さ」

 

人の耳を気にしないでいい場所なら、皆そろって上への愚痴をこぼす。

 

現在の内部状況の悪化が顕著であることは明らかだろう。

 

「どうせ今日はオフなんだ、どうだ酒でも持って来る・・・」

 

最後まで言うことも叶わないで意識が消えていった。

 

 

 

廊下の奥まで進むと両脇に階段、中央に一つのドアを保有するフロアが見えた。

 

さらに、そこにいる三人の兵士も。

 

どうやら作戦司令部の位置はビンゴのようだ。

 

素早く無力化する順番を決め、そのように体を動かす。

 

距離を零にするやいなや、此方に背を向ける男の背中を強めに撫でる。

 

男の体は想定されてない角度に曲がり、骨からは嫌な音が響き、高速で前方のドアに衝突する。

 

ポカンと男の方を向く残りの二人を待たず、予定通り体格のいい男の背後に回り込む。

 

流石はプロということか、すぐに反応して体を反転させようとするが、もう遅い。

 

杖を床に捨て、左手で男の手を掴み、右手を真っ直ぐにして男の首の横に上げる。

 

所謂手刀。しかし鍛え込んだ技ではなく能力を使った力技。

 

故に一瞬とはいかず、肩の接合部と首の骨がミシリと悲鳴を上げ、もう一度力を込め首を落とす。

 

残りの一人は細身の女で恐怖に体を支配され、満足に動くことも出来ないようだ。

 

そこまで計算して決めた順番だったため、予定調和といったところか。

 

既に首のない死体と化した男から、杖から外しておいた黒光りする拳銃の銃身だけ見せ発砲する。

 

銃弾は女の腹部と心臓を打ち抜き予定した工程を完了した。

 

一息つき、殺しを実感する。異世界での日常から洗い流される気分だ。

 

しかし感慨に浸る時間は無いようだ、ドアに男をぶつけるのはやり過ぎだったようで、此方に向か

 

ってくる気配を感じる。

 

左手で構えていた死体を放り捨て、床を蹴り、階段に避難する。

 

 

 

「二人とも見て来なさい」

 

ドンと大きな音と微かな揺れから、部屋の外で何か起きたのは予想できる。

 

部屋の中にはボディガードをいつもしている腕利きの兵士が二人。

 

命令を発した男を含め、兵の重鎮にして作戦指揮を行う三人。

 

そして秘書にしては若すぎるように見える女が一人。

 

外の兵士が言っていたように、相手を侮り、作戦が思うように進行しなかったことで苛立ちが伺え

 

る。

 

ハデスの兜のレプリカを所有している二人のボディガードが目の前で透明となりドアを開ける。

 

そして視界は失われた。圧倒的光量によって。

 

 

 

階段の手すり付近で身を小さくして、存在感を消すと、腰のあたりに手を向ける。

 

そこに一つぶら下がっているのが手榴弾。

 

拳銃は自前のものだが、元から手榴弾は戦闘に用いてなかった。

 

ならば、なぜ存在しているか、それこそがゲーム開始前の十六夜の笑みから読み取れる。

 

敵を追い込むのに、必要な物を頭に思い浮かべ、結局頭を下げ作らせたものだ。

 

威力もさることながら、音は恐怖を誘い、光と煙幕は視界を遮る。

 

狭い部屋を蹂躙するにはちょうど良い産物だろう。

 

上部に付いているピンを外し、ドアが開くのを静かに待つ。

 

そしてその瞬間が来ると、静かに放る。

 

期待通りの効果とともに、爆風が辺りを散らかす。

 

部屋の中からは手に取るように混乱が伝わり、爆心地には二つの死体が顔を見せる。

 

立ち上がると共に、煙幕の効果が切れる前に部屋に突入する。

 

三人の中年の男がそこにはいた。

 

 

 

爆風で目をやられ、聴覚だけで様子を探らなければ無い。

 

とは言え、事態を理解することはそれほど難しくも無かった。

 

侵入者は音を隠す気もないのか、一歩一歩が分かる。

 

そして、立ち止まるとすぐに、自分以外の二人を撃ち殺した。

 

発泡とともに短い悲鳴が聞こえ、恐怖で後ずさる。

 

「あとはおっさんだけか、目が潰れているみたいだが・・・」

 

自らの生殺与奪を決めている様子は今までに経験したことの恐怖を感じ、同時に作戦を決める上で

 

最低限の犠牲として自分も行ってきたことを思い出す。

 

「これはゲームじゃないか、命までなぜ奪う」

 

なるべく穏やかな声音で問いかけ生きる道を探す。

 

一瞬敵の動きが鈍るのが確認でき、光明が見えた気分でいた。

 

「そりゃあお前、ゲームっつーのがァ殺し合いだからに決まってンだろ」

 

敵の打倒、それが示すのは敵を殺せと同義である。

 

まるで言っていることが理解できないまま、頭に銃弾を打ち込まれ、死を受け入れた。

 

 

 

「作戦終了か」

 

手榴弾を使ったこともあり、部屋の内部は滅茶苦茶だが、ホワイトボードを見るに、確かに作戦を

 

決める場だったのだろう。

 

緊張の糸が解れる僅かな油断、そこはまだ敵の本拠地であったのだ。

 

「マスター左です」

 

ダッという重い銃声、拳銃程度では生み出せない力が含まれているのだろう。

 

しかし熱風で呼吸系をやられないように、能力は消していなかった。

 

反射により打ち出された銃口に吸い込まれ、持ち主は衝撃に耐えれずに倒れ、銃は床に転がる。

 

今度こそ能力を消し、拳銃を構え仕上げをする。

 

指に力を加える寸前に、床に落ちた銃を一瞥する。

 

「メタルイーターだと」

 

危うく拳銃を手から滑り落とすレベルの驚愕。

 

なまじ銃器に詳しかったのが幸いし、銃の正体が看破できた。

 

学園都市製の対物ライフル。

 

そして、妹達が使用していたメインウェポン。

 

恐怖で歪んでしまいそうな顔をそのまま、床に倒れた女に向ける。

 

茶色の短髪の上に軍用ゴーグルを着け、顔も数日前に見た女と瓜二つであった。

 

「お久しぶりですとミサカは非礼を詫び、治療をお願いします」

 

 

 

部屋にあった治療具で、銃弾で痛めた手を応急処置をした。

 

何でも煙幕により、此方を視認できず攻撃しただけで、敵意は無いということで和解がされた。

 

「それはいい、何でこんなところに居やがった?」

 

どこか言葉を選ぶような表情をして、紡ぎだす。

 

「ミサカたちはそれぞれ、様々なコミュニティに客分として招かれています。」

 

本当に所属しているコミュニティは同一であるが、二万体が別々のコミュニティの客分として生活

 

しているらしい。

 

そして彼女たちは四桁のコミュニティの所属になるらしい。

 

「ミサカ達はある使命のために生き返り、召喚されました。」

 

 

 

オリュンポス十二神の人柱ヘルメスを主神にするコミュニティは情報伝達に重きをおく特徴的なコ

 

ミュニティである。しかし広大な箱庭の情報伝達を一瞬で可能にする手段は未だに整備されていな

 

かった。それで目を着けられたのがミサカネットワーク。主要コミュニティに一人ずつ客分という

 

扱いで送り込まれ、コミュニティ同士の情報伝達手段として重宝されている。

 

 

 

衝撃は先程の比でない。

 

それが事実なら彼女たちは

 

「自由もなく、使われているってことか」

 

それでは奴隷と変わらないではないだろうか。

 

「先ほども言ったとおりミサカ達は客分として無碍にはされていません。自由とは行きませんが皆

 

楽しんでいるのですよ」

 

慌ててフォローする彼女はしかし浮かない顔のまま話が続く。

 

「しかし最近の情報では魔王という箱庭の天災の情報が載せられ、不安はあります」

 

情報伝達をするということは、知りたくない情報も耳に入ってくるということだ。

 

そこで話を切り上げ、無理矢理作ったような笑みでこう嘯く。

 

「ミサカはゲストのためこのゲームに参加していません。その為あなたのゲームマスター打倒の権

 

利はまだあるのでは?」

 

ギフトロールには確かに権利を保有していることが記されている。

 

しかし、このまま背を向けていいのか?

 

この世界でも出会い、共に戦った奴らはいる。

 

妹達と彼らを天秤にかけるような真似をして、結論を出した。

 

室内を埋め尽くす呪いの光が来なければ自らの意思を宣言できたのだが。

 




切りが悪い終わり方で申し訳ございません。
次回は短めになるかと思います
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