問題児達と第一位が異世界に来るそうですよ   作:デクナッツ

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続きをまだ待っている人が居ましたら、更新をせずに申し訳ございませんでした。感想欄にも書きましたが、一巻部分が終了したら中身を手直ししたいと思います。


第十五話 決着

妹達の一人である少女の前に躍り出る間も無く、視界にあるものは全て光に侵食されていく。

 

破壊ではなく固定、もっと具体的に言えば石化の力。

 

触れたものを舐めずりますかのように振るう力は、まさに暴君のそれだ。

 

そんな説明不可能な力の前では大型銃も役には立たず、少女は自らを客分として招いている味方の攻撃に晒された。

 

少女だけでは無い、敵味方も弱者強者も平等に巻き込む攻撃が目の前で起きている。

 

だが驚きはしない、『ペルセウスとは       』

 

そうして、少女の全身の自由と感覚が失われる寸前に、納得とこれから戦いを挑むであろう少年に心痛な面持ちで見つめていた。

 

 

 

指先は思考を巡らす必要もなく、条件反射で電極に吸い込まれる。しかし、問題はこれからだ。石化の光は所謂『魔術』に近しい類であるため反射は不可能。より詳しく言えば、反射を実行するために光を解析することが超能力者である彼には不可能だ。さらに、よしんば解析出来たとしても、伴う副作用に蝕まれ、攻勢に転じることが出来なくなる。

 

とはいえ、ベクトル変換は石化の光に対して全くの無力かと言えば、答えは否だ。ノーネームの領地での戦闘からも分かる通り、不完全で不確かな変換なら行える。最悪の場合、変換の角度が浅くなると、自分に突き刺さるというリスクを覚悟すればだが。

 

右手を前に差し出す動作に躊躇いは存在せず、2つは静かに衝突する。

 

彼が選んだ選択は、前者でも後者でも無い完璧な反射だった。

 

少しだけ昔話をしよう、ロシアで水流を操る魔術師に襲われたことがあった。形を持たない筈のそれは鋭利に変形され、飛来してきた。つまりこの時点で自然界では不可能な挙動が施され、反射する際に、水を槍に変形するプロセスが解明できず、不完全な反射となってしまった。

 

けれども、今彼を襲う光はどうだろう。光は屈折もしなければ、物質を貫通する訳でもない。ただ『触れた先から徐々に石化していく』だけだ。

 

ならば、『触れた光の性質だけを反射』すればよい。つまり、ある意味で自殺行為のようなものだ。

 

理解できる自然現象(この場合は光線)のみを反射するのに副作用は発生しない。けれども、その一瞬で体内に注がれる恩恵(この場合は石化の呪い)を防ぐことも、勿論出来ない。

 

例えばその恩恵が、必殺の呪いならば意味の無い行為になってしまう。けれども今回は『徐々に』石化していくのだ。

 

光は指先から綺麗に反転する。

 

神魔が蔓延る箱庭では、一方通行という能力を、真正面から打ち砕く恩恵が溢れているのだろう。

 

しかし、それは前の世界でも少なからず存在していた。木原数多も、垣根帝督も、彼の能力を上回ってきたはずなのだ。それでも勝利を掴んできたのは、一重に能力を支える彼の頭脳による成果だ。

 

それはこの箱庭でも変わらない。足りないものを補い、敵の心理を揺さぶり、確実で下劣に勝利を掴む。

 

この戦闘もそうだ、一度の敗北から、敵の手の内を把握して現状の手札の最適解を導きだす。

 

だが、石化の光に蝕まれた爪先を眺めると、異物を付着した部分と生身との境界が言いようのない違和感を生み出す。

 

ところが、不思議とその違和感から不快感は浮かんでこない。石化の光の正体、十六夜曰く、白夜叉と同じ星霊という存在で、箱庭でさえ三種しか存在しないという最強種の一柱なのだそうだ。そんな化け物を相手取り、湧いてくる感情がこの程度のものなら、むしろ僥倖なのかもしれない。

 

今ごろ十六夜とジンはルイオスと戦っている頃だろう。十六夜なら間違っても番狂わせが起こさないという妙な信頼が持ててしまう、それほどにあいつは自信家で傲慢で、宣言通りに行動する。

 

力量の面で見ても、女連中と比べれば自分の戦い方を理解している。それどころか彼の恩恵は未だ底が見えないという点で、敵よりも警戒するべきではないかとさえ思えてしまう。

 

無造作に腕を振り、壁にぶつけることで石となった部分を強引に削る。そうして電極を元の状態に戻せば今日のノルマは完了だ。

 

完了のはずだ、頭では理解できているのにコツンコツンと杖が地面を叩き、自然と足も前に出る。

 

「妹達は俺が殺した、だがなァ生き返らせたンなら、最低限の誠意ってものがあるだろォが」

 

妹達が生き返ったところで、彼が行った行為は有耶無耶に出来るわけがない。ならば、殺した責任はとる。

 

具体的には、客分として招待しているルイオスには教育が必要だろう。

 

もし、万が一にそれが彼女達を呼び出し、援助している大派閥も同罪であったなら・・・

 

「サービス残業だ、とりあえずスクラップは確定なンで、覚悟しとけよ坊っちゃん野朗」

 

今は目の前の問題を片付ける、糞野郎の炙り出しなんざその後ですむ、気負うこともはない今までと何も変わらないのだから。

 

 

 

「何なんだお前はァァァ!?」

 

こんな台詞を吐き出す時点で、思考を放棄しましたと宣言しているようなものだが、それも仕方ないのかもしれない。

 

ノーネームに所属するただの人間は、最強種の星霊と相対して、撹乱するでも遠距離から攻撃するでもなく、正面から掴み合いを始めたのだから。

 

本来星霊とは、星の運行を司ることを目的に生まれてきているため、星の上でのみ生命を育むことで生きながらえる人間では、霊格で勝ることはまずありえない。

 

そして、勝敗に関わる要因として次に考えられるのは恩恵の効果だろう。しかし、星と人という戦うことがバカバカしく思える差、スケールの違いを埋めるほどの恩恵など存在するのであろうか。

 

恩恵とは文字通り、その者を神、星、あるいは世界が讃え、その者の偉業を形作って生まれる。

 

ならば、逆廻十六夜が残した偉業とは一体どれほどのレベルなのだ。

 

既に自暴自棄に陥り欠けているルイオスは、無策で翼の靴を利用した空中からの攻撃を仕掛ける。勿論、十六夜ならこの程度ではアルゴールを掴みながら対処出来たが、その必要はなくなった。

 

「ッッ!」

 

突然飛来してきた拳大もある石を急旋回して回避する。

 

何事だと、飛んできた方角を警戒すると、色は白く体も細い少年が杖に身体を預け立っていた。

 

 

 

「なかなか愉快な光景じゃねェか」

 

十六夜と掴み合う星霊アルゴーンは、名前負けしない巨体で、人間など煩わしいハエのようだ。しかし口からは苦痛が漏れ、表情にも余裕はなさそうだ。

 

その戦闘から目線を外し、ゆっくりとしゃがみ込み石を拾う。

 

援護は要らなそうに見えるが、彼が用があるのはペルセウスの当主の方だ。十六夜は一対二を望んでいるのかもしれないが、今回は我慢してもらう。

 

能力を使用モードに変え、学園都市最強の片鱗を引き出す。そうして、華奢な腕には似合わない石塊を手首のスナップのみで放る。

 

ベクトル変換されたそれは、当たれば致命傷は必須の速度で突き進む。ルイオスは咄嗟に気付いて回避するが、そこに目は向けない。あくまで石は牽制に過ぎない。

 

目を瞑り、脳内に語りかけるような感覚でコッペリアと話す。

 

「全力の使用は後どのくらい持つ?」

 

ここに来るまでの戦闘で、節約しながらも使い続けたため余裕はないだろう。

 

「10分ほどですね、時間を気にして戦ってくださいね」

 

十六夜の方も真面目に戦い始めたのか、振動が戦況の激化を物語っている。勝敗が決まるのも時間の問題だ。ならば、こちらも問答を含め手短に済ませるとしよう。

 

視線をルイオスに戻すと、外見から判断したのか、表情に油断が露骨に現れている。

 

「おいおい、味方でも盾にして石化の光を防いだのか?石を投げるだけの恩恵じゃあ、僕は倒せないよ」

 

ペルセウス座の伝説なら彼も少しは知識がある。要は十六夜が戦っているアルゴールを倒して英雄となったのがペルセウス。ルイオスはその末裔ということだ。

 

そんな歴史は彼にはどうでもいいのだが、油断は命を脅かす。重要なのは10分以内に倒せるか否かだ。

 

視線を固定したまま臨戦態勢を解かずに、電極を戻す。彼の目的は妹達の置かれている実態を確認することだ

 

「お前に一つ問う、ペルセウスに客分として招かれている妹達・・・つっても分からねェか、ライフルを構えた電気系能力者をどのような待遇で扱っている」

 

聞かれている質問の意図が分からないのか、首を傾げながら、とりあえず答える。

 

「どのようって、あの通信機だろ?便利な物だよ、商談は出向くことなく行えるし、あれを考案したコミュニティの頭主は、相当頭がキレる奴だろうね」

 

『便利な物』と言った時点で青筋が浮かび上がり、処分は決定したが話はまだ終わっていない。

 

「俺が聞ィてんのは待遇だ、あのウスノロの光を浴びて、今石化してンのはどう思う」

 

その質問を聞くとルイオスはニタニタと厭らしく笑い出す。

 

「何だお前あの機械に惚れたのか?いやぁ傑作だ、女の一つや二つ分け与えるぐらいは寛大な僕だけど、あれはダメだ。借り物だし、莫大な利益を生み出しているしね」

 

急に饒舌になったルイオスの口は止まらない。

 

「一応は客分という身分だから、普段は良い物を食べさせ自由も与えているよ。でも彼女は客であって仲間じゃない、言ってみれば、壊れないでくれればそれでいい」

 

人間味が薄くて僕はああいうの嫌いなんだよね、と付け加えてようやく口が止まる。

 

ああやはりそうか、妹達を箱庭に呼び出したコミュニティは、彼女達を機械として扱うことも厭わないということだろう。六本傷の18888号は充実した生活を送っていたようだが、冷遇されている者は確かにいるのだ。

 

「・・・くていだ」

 

何だ?と聞き返してくるルイオスを、真紅の瞳で射抜き応える。

 

「スクラップ確定だつったんだ、このクソ野郎がァァァ」

 

間髪を容れずに電極を押し、勢い良く足元を蹴り飛ばす。石畳が突然弾幕に切り替わり、速度を出して飛来してきた事に面食らったようだが、距離と高さの優位がルイオスに味方する。

 

「その速さは脅威だが、空も飛べないようじゃこの僕は倒せ―――」

 

「誰が空も飛べないっつったんだァ?」

 

ルイオスは英雄の末裔として決して身体能力は低くは無いが、目と鼻の先に接近して来たのを、知覚すら出来なかった。

 

「1分だ、1分で調理して挽き肉同然にしてやる」

 

腕を顔の横に持ち上げ、裏拳のようなスタイルで顔に叩きつける。そのすべての動作はゆっくりで、威力を感じさせない。故に、ルイオスも回避を忘れ一挙手一投足に目が釘付けになる。

 

しかし、それは悪手だ。ベクトルの変換の値を変化させるだけで威力はどうにでもなる。結果、ルイオスは無抵抗の身体に、顔面の左を殴打され意識を奪われて落ちてゆく。一方通行という能力を初見で把握するのは不可能に近いため、本質を知るためには授業料が高く付く。

 

だが、腐っても高位生命体のルイオスも簡単には死なない。常人なら首の骨を折っているかもしれない攻撃を食らい、起き上がれるのは賞賛するべきだ。

 

しかし、武芸も積まず、修行で身体を磨いてもいない、先祖の血だけでは彼には遠く及ばない。一切の容赦無く攻撃を飛ばす。

 

竜巻を背中に従えるかのようにして飛行しているため、武器が常時用意されているようなものだ。四本の竜巻を器用に操作して、回避される予測先を計算して配置する。

 

先ほどの一撃と竜巻を自由に操る恩恵を前にして、ルイオスは自分と敵の実力差を思い知らされる。隙無く飛んでくる竜巻を具足の力をフルに発揮して、転げ回るようにして直撃だけを避ける。しかし、この至近距離で爆風が吹けば、削れた地面さえ無数の凶器となり、ルイオスに牙をむく。

 

「グッ・・ウッ・・・カァッ・・・」

 

声にならない悲鳴を上げながら、荒れ狂う竜巻の支配下を脱する。腕、足、額からも血は滲み、あらゆる方向から圧力を受けたために、平衡感覚も狂わされた。それでも、圧倒的な命の危機から脱したことを僅かに安堵する。

 

そして、その張本人が目の前に居て再度絶望する。

 

先ほどと同じようにゆっくりと手が近づき、まるで、恐怖の本能が反応したかの様に大きく後ろに飛ぶ。しかし、彼は床を蹴るだけでその距離を零にして腹を撫でる。

 

サッカーボールの様に浮かび上がり、綺麗な弧を描き地面に吸い込まれる。腹部を強打したことで、吐き気が我慢出来ずに喉奥から飛び出てくる。

 

「ヴヴヴェェェェいいいヴヴヴェェェ・・・・・ハァハァ…」

 

小刻みに震える身体からは恐怖だけでなく、生まれて初めて血を大量に吐いたことで、熱が体外に流出することを学ばされた。

 

頭の中はとっくに、死にたくないという信号に支配されて、恐怖で身体は硬直している。このままでは死は避けられないと悟り、必死に何かないかを考える。

 

そして思い出す、これはゲームだ。レティシアを手放し、黒ウサギも手にはいらないのは不味いが、死の恐怖の前ではそれも霞んでしまう。

 

無感動に近づいてくる化け物に向かい、両手を挙げ降参の意思を伝え、ゲームは終了に・・・

 

「白旗挙げて降参ってか?甘すぎじゃねェか、手前ェはそんなイージーモードやってんじゃねェンだよ」

 

地面を蹴り抜き、弾丸となった小石を全身で受け、さらに数メートル吹き飛ばされる。地面を転がりながら、降参も受け入れてもらえない事実に、理性が消え去りギフトカードからハルパーを出すと、彼に向かって振り下ろす。

 

頭上に振りかぶられた金色の鎌を見る事もなく、ベクトル変換の最もオーソドックスな使い方である、反射を使用する。

 

ゴブリッという刺殺の音とも、まして人体が発するとも思えない音が鳴り響く。カランと床に鎌が落ちる音と、ルイオスの叫び声がハーモニーを奏でる。

 

流石は神造の武器ということか、ハルパーには傷一つ付いていない。しかし、その使い手は肩が不自然に膨らみ、壊した人形のような方向に折れ曲がっている。

 

コミュニティの長として、修羅神仏の集う箱庭の中とは思えないほどに、贅沢で安全に暮らしてきたルイオスは痛みの耐性など皆無だった。

 

半ば屍となったルイオスを見下しながら、顔面を掴むようにして持ち上げるが、寸前の抵抗が嘘のように無抵抗だった。

 

「一応忠告しておくが、これから話すのは懇願でも助言でもねェ、ただの脅迫だ。お前が断れば、脳漿、眼球がどこに飛んでくか保証は出来ねェからな」

 

首を微動だに出来ないようで、口をパクパクするのを肯定と受け止めて話を続ける。

 

「なに、難しィ事は言わねェよ。妹達の待遇の改善を確約しろ、具体的にはお前たちの幹部と同等の扱いにする事、それと、あいつを外敵から命懸けで守れ、石化は勿論、傷の1つでも与えてみろお前たちのコミュニティに落日の痛みってやつを与えてやる」

 

どうすると問うと、『約束します』と搾り出したような声で返答する。

 

十六夜の方も勝敗が決まったのか、倒れ伏したアルゴールの上でふんぞり返り、此方を眺めていた。

 

彼の方も目的は遂行出来たため、掴んでいる坊っちゃんにはもう用は無い。

 

特に考えるでも無く、十六夜に放り投げ、希望通りの一対二の延長戦を黒ウサギ達と外野で観戦して勝負は決着した。

 

 

 

 

以降、ペルセウスは六桁に転落し、ノーネームは報酬としてレティシアを獲得し、黒ウサギを守り抜いた。

 

十六夜とジンはその後も何か画策していたようだが、コミュニティとしては最善の結果を掴んだのではないだろうか。

 

後は己の課題だけだ、ペルセウスでの妹達の待遇改善はクリアしたとして、あと19998人の妹達の現状を彼は把握出来ていない。とりあえずは手当り次第に解決するにしても、いずれ限界を迎えるであろう。

 

彼女達が送り込まれた理由は上層、下層での緊急時等の連絡用途だと聞いている。彼の実力云々の前に、個人の力の及ぶ範疇で無いことは明白だ。

 

それでも、その時が来たら・・・

 

「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」

 

レティシアが帰還した事で、質素ながらパーティーを行っていたのだが、突然問題児三人による宣言により、賑やかなムードは消え去った。

 

それから、黒ウサギとの漫才を横目に、覚悟はその時に決めればいいのかと先送りにして、現状の平和を享受することにした。




次に後日談を書き、一旦更新を止めさせていただきます。春頃に連載を再開できたらと思います。
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