問題児達と第一位が異世界に来るそうですよ   作:デクナッツ

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大変長らくお待たせしました。
なんと1ヵ月投稿をしていませんでした。
中には失踪したと思われた方もいると思います。
申し訳ございませんでした。



第八話 ガルド戦序盤

現在時刻 20:30  

 

彼は一人で大浴場の湯船に浸かっていた。

 

別に彼が一人を望んだわけではないが、戦力外の餓鬼は自分達プレイヤーの世話を全力で行うという理由で一緒に風呂には入ることができないらしい。

 

当然女子組とはいることはない。

 

そうして上記に該当しない人物といったら坂廻とジンだが、

 

坂廻はコミュニティの敷地内にいる「お客様」の始末にノリノリで行ってしまった。

 

噂をすればドゴーンと暴力というにはあまりに強大な音が聞こえてきた。

 

結果が見えてるからこうして風呂に入っているのだ。

 

ジンに関してはどこにいるかさえ分からない。

 

大方この音に反応して外にでも向かったか。

 

というわけで彼は一人で大浴場を堪能して明日に英気を養うのだった。

 

 

翌朝彼は叩き起こされた。彼専用の世話係によって。

 

「全く早く起きてください。ゲームがあるのでしょう!」

 

その者の名はコッペリア。人のサイズには及ばないがパワーが桁違いだ。自分の何倍もある毛布を放り投げるのは一体どれくらいの電力が必要なのだろうか。

 

「分かってる。くそ朝はよえェンだよ」

 

こんな時、常時能力が使えないのが恨めしい。

 

そのあと彼女をカードに入れて未練たらたらで自室を後にした。

 

待ち合わせの外にたどり着くとそこには妙に力んだジンが待っていた。

 

「遅いですよ一方通行(アクセラレータ)さん!あなたはゲームへのやる気がないんですか」

 

寝起きの彼の気分を害すには十分な言葉だった。

 

そんな不穏な空気を感じたのかひょっこり黒ウサギが出てきて、

 

「まあまあ、全員そろった訳ですし遅刻する前に向かいましょう!」

 

どうやら彼が最後だったらしく、黒ウサギの後ろには三人が綺麗に整列していた。彼女にトラウマでも持ったのだろうか。

 

道中、六本傷のカフェで激励されたが、奇妙なことを言っていた。

 

「配下を敷地内から一匹残らず追い出したそうですよ」

 

これは彼の視点からだが、正直あの虎と一対一をやってもジン以外は負けることはないだろう。

 

それは多分あの虎も理解したはずだ。それなのにわずかでも希望がある数の利を自ら棒にふったというのだ。これも何かの作戦なのだろうか。

 

わずかな疑問が残る中、一同はフォレス・ガロ本拠に到着した。

 

目の前にあるのはフォレス・ガロの本拠のはずだ、しかし無数の木が生い茂り、ツタが住居の壁に絡まっており幽霊屋敷もいいところだ。

 

「さすがァ虎のコミュニティ。ジャングルにお住まいかよ」

 

「い、いえフォレス・ガロのコミュニティは一般的な住居のはずだったのですが・・・それにこの草たちまさか彼女が?」

 

分からないことは多いがそれよりゲームに集中しなくてはならない。

 

「皆さんギフトロールがあったのですよ!」

 

 

ギフトゲーム名「断罪か黙秘」

 

ゲームマスター ガルド=ガスパー

 

プレイヤー ジン=ラッセル

      久遠飛鳥

      春日部耀

      一方通行

 

クリア条件 プレイヤー側はギフトの使用は可能だがギフトでゲームマスターに攻撃を与えること          はできない。

      

      ゲームマスターを殺害するには指定された武具を使用する。

 

クリア方法 ゲームマスタの殺害

 

敗北条件  プレイヤー側の全滅

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                          フォレス・ガロ印

 

 

 

 

「単純明快でよかったじゃねえか」

 

「よくありません!敗北条件が全滅で、ガルドにギフト効果がないも同然。これのどこが良かったのですか!」

 

どうやら配下を追い出したのも人数差を契約で対等になるようにわざとやったらしい。

 

「こうなったら飛鳥さんが一番不利になります」

 

身体能力0でギフトが相手の直接支配とはお荷物と変わらないな。

 

悔しそうにしているが今回の場合はゲームとギフトの相性が悪いそれだけの話だ。

 

「精々頑張れよ」

 

「ご武運を」

 

坂廻と黒ウサギが消え、ゲーム開始の合図のように鳥たちが羽ばたいていった。

 

「とりあえず指定されたギフトを探しましょう」

 

まだ若干の緊張は残っているようだがリーダーとして引っ張っていくつもりらしい。

 

 

 

「あァだりィなんで目の前に宝箱おいてねェんだよ」

 

「あなたまだ開始三分よ」

 

と言われても杖を突くには根やツタの自己主張激しい道は何度もバランスを挫きそうになるのだが。

 

「もしかするとガルドが武器を傍に置いているのかもしれません」

 

自分を唯一打倒できる存在、それを相手に取らせたくない。その心理は理解できる。

 

「それもルール違反にならないのかしら?」

 

指定された武器がないとこっちの攻撃は無意味。その上武器を自らの懐に入れておけばこちらは詰みだ。

 

「はい。ルール違反にはなりません」

 

諦めているようにも見えた。だがその眼は死んでなかった。

 

「しかしこれはチャンスです。ガルドが武器にひどく執着している今、彼の優先事項はこちらの攻撃への防御ではなく、武器の略奪を防ぐことだけでしょう」

 

「…それは分かるけど肝心の攻撃が通らないんじゃ何をしても」

 

「そォいうことか。それなら僅かだが勝機がある」

 

『こちら』の攻撃が通らないから奴は屠れない。なら目標は奴の殺害ではなく

 

「こちらの攻撃が通らなくても、バランスを崩せばあの巨体は倒れます。それに通らないのは『こちら』の攻撃だけです。高所からの落下や意図しない落下物はその限りではありません」

 

これで4人のプランが完成した。

 

ジン=ラッセル 退路の確保

久遠飛鳥    ガルドの注意を引く囮

一方通行    死角からの激しいアタック

春日部耀    建物等への攻撃による落下物の誘発、指定武具の確保

 

「なぜですか僕だってギフトを持っています。皆さんと戦います」

 

ジンは退路の確保という役に納得がいかないようだ。

 

「ならお前は他の役を俺達より十全にこなせるのか?」

 

これにはジンも言葉が詰まる。人類最高規模のギフト保持者と自分とではあまりに開きがあった。

 

「ただこの作戦だと春日部さんの攻撃をあなたも躱さないといけないわよ」

 

多数の瓦礫の回避(というか防御)これは彼の十八番といっても過言ではない。

 

「そっちは心配すんな。ただ奴の居場所が掴めねェのが問題だ」

 

彼は自分への殺気についてはかなり敏感なほうだ。その彼に悟らせないとは場所探しにも骨を折りそうだ。うんざりと考えていると、隣にいたはずの春日部が天高く上昇していた。

 

彼女の眼は人の眼をしていなかった。生命の目録に記憶されている友達の眼を借り、普段ならぼやけて見える距離にいるガルドをはっきりと視認した。

 

「見えた。あの建物の中」

 

空から指をさす方向には確かに大きな建物がある。距離は100Mと少しといったところだろうか、

 

「じゃあ早速行こうかしら。罪深い虎の退治に」

 

三人が躊躇無く足を進めた。しかし彼には一方通行(アクセラレータ)にはどうにも引っかかることがあった。

 

(奴はこちらを警戒していないのか?)

 

「なァ春日部。ガルドはどこにどんなふうにいた?」

 

「えっと建物の三階で脱力して立っているみたいな感じだった」

 

そうかと呟きもう一度考えたが答えは出なかった。

 

上から見下ろせるガルドなら容易にこちらの動きを窺えたはずだ。

 

しかしそれをしなかった。こちらの察知を恐れたのだろうか?

 

「ではみなさん僕はここに残ります。皆さんも危険を冒さず武器を入手したら一旦撤収してください」

 

ガルド邸に着きジンとは別れた。

 

今は建物の二階。ここで三人も別れる。

 

「ジン君はああ言ってたけど3人で決着をつけましょう」

 

「うん。あの子はガルドと戦って勝てる確率はほとんどないと思う」

 

「それなら誰もしくじるんじゃねェぞ」

 

三人で意志を確定し各々の持ち場へ向かった。

 

彼はガルドがいる部屋の隣にいた。隣といってもドアはなく厚さ15cm程の壁があるだけだ。しかしこの程度能力を使う彼には障害物にもならない。

 

ここで彼は自分の役割の最終確認をしていた。

 

ガルドは殺す。仲間に傷一つつけさせない。

 

彼が昔に犯した罪はどう足掻いても、帳消しにはならない。ならこの世界でせめての罪滅ぼし。害は駆逐し、他は救う。単純であり難しい目標。

 

(それがどうした。できるできないじゃねェこれは義務なんだよ)

 

決意を決め作戦は決行された。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAA」

 

「薄汚い虎止まりなさい」

 

久遠がドアを開けた瞬間雄叫び上げ突進した一匹の虎。

 

今は音がやんだが彼女の拘束は長くは持たないはずだ。

 

瞬時に判断し、チョーカーのスイッチをオンにする。

 

床を蹴り前に進む。だが目の前の光景は予定とは違っていた。

 

部屋の後ろには確かに剣が刺さっている。

 

しかしそれを無視して久遠に飛びつこうとした。

 

(こいつ武器に見向きもしねェのか!?)

 

今回久遠を囮にしたのは言うまでもなく、このゲームに適さないギフトだったからだ。

 

しかし采配ミスだった。彼女の肉体は虎に掴まれるだけで四散する脆い肉体だ。

 

彼は自身のギフトの効果を信じ、久遠と虎の間に飛び込んだ。

 

「GYAAAAAAAA」

 

やはり久遠のギフトの効果はすぐに切れて虎が突撃してくる。

 

敵のタックルを諸に浴びる。普段の彼の能力が発動すれば、虎は全身の骨を砕き即死だっただろう。

 

だがこのゲームでは反射が正常に発動しなかった。

 

彼の能力は自身の体を絶対に守る。

 

このゲームで彼の能力はガルドに絶対に通らない。

 

その二つの絶対の掟どうしの衝突は相殺で終わった。

 

ガルドの巨体は彼を傷つけることができず見えない壁に当たるようになった。

 

しかし反射は発動せずガルドの体は五体満足のままである。

 

両者の攻防は決定打がなく拮抗しているように見える。だが一方通行(アクセラレータ)のほうが明らかに不利に戦闘は続けられた。制限時間の枷によって。

 

(マスター、電力の消費が異様に早いです。このままでは!)

 

脳内にテレパシーのようにコッペリアの警告が発せられる。

 

「チッこのままじゃジリ貧だあの剣がねェと意味がない。久遠、部屋の入口まで下がれ!」

 

 

 

 

今の自分には何もできないことぐらいは彼女にも理解ができた。

 

大人しく彼に従って下がるとそこにはこの建物の入り口にいるはずのジンがいた。

 

「ジン君なんでここにいるの!」

 

「僕だって戦える。少しでも戦力があったほうがいいはずだ」

 

彼女には今の戦闘で一つ分かった。強者は弱い味方がいることで全力を発揮できないと。

 

仲間にギフトを使うのは乗り気ではなかったが、止むを得ない。

 

「ジン君全速力でこの建物から脱出しなさい」

 

どんなに強い意志があっても彼女の支配からは逃れられない。

 

しかしジンはある意味では彼女のギフトに背いたことになるのかもしれない。

 

ジン一人を逃がしたつもりの彼女を突然抱き上げ一目散で走り出したのだから。

 

「ちょっジン君下しなさい止まって」

 

久遠飛鳥とジン=ラッセルは戦闘から脱出した。

 

 

 

 

久遠を下がらせた彼はタイミングを伺っていた。

 

剣を奪うチャンスを。

 

だが同時に思想は違った謎に走っていた。

 

(こいつこんな強力な一撃だったか?)

 

明らかに昨日とは威力が違う。そして狂ったように腕を上げ振り下ろす。

 

先ほどから攻撃は効いていないのに単調にただ攻撃する。

 

(どうなっていやがる、まるで理性がねェ野獣みたいに…『野獣』?)

 

昨日と違う点、紳士然とした姿ではなくただの虎。人の面影は見る影もなかった。

 

(こいつ人の全てを失ってただの虎になったのか?)

 

この答えは50点だった。なぜならガルドは人を失い、鬼という一つの種族手に入れたのだから。

 

ただの虎なら彼にも勝ち目があった。虎になく人にあるもの、それはかなり多いが、この戦闘で重大な役目を果たすのは知能だった。

 

(自分が武器でやられることすら忘れている今なら!)

 

ガルドの猛攻は止まらないが、彼は背中から暴風を生み出した。

 

ガルドを武器との対角線上から退けるために。

 

暴風は収束され指向性のある二対の竜巻となりガルドを襲う。

 

本能的に危険だと判断したガルドは右に大きく跳んだ。ゲームにより傷つくことはないのに。

 

だが一方通行の思考はそこで停止した。剣は壁に刺さっていなかった。

 

そこまでなら春日部が作戦通り剣を手に入れたのだろうと考える。

 

だが剣を持って真っ直ぐこちらに向かっていたら?

 

きっとガルドが彼に猛攻を繰り出している背後を攻撃しようとしたのだろう。

 

しかし彼女の目の前にあるのは隙だらけのガルドの背中ではなく、自分に向かってくる暴力的な竜巻。避けることも、防ぐこともできない。精錬された威力。そもそも敵の背後を討とうと突撃している春日部には、そんなことができる訳がなかった。

 

爆発にも似た轟音が当たり一体に響き渡った。

 

彼には信じられなかった。今は粉塵が舞い視界が悪い。だから彼は願った。目の前に春日部がいないでくれと、叶わないと脳では理解しながら。

 

数秒して良好になった視界の先には。床に血をぶちまけ、腹に穴を穿った少女が剣とともに横たわっていた。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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5月16日金曜の23時59分までやってるので良かったら是非!
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