詭弁ですよ!ヤオヨロちゃん! 作:名は体を表す
B組女子ーズに囲まれて尋問されたい人生でした。
そして唐突な過去編ですがあっさり塩味。
「それで、小大と塩崎どっちが好きなの?」
もう俺の耳を舐めてるんじゃないかって程に近くで囁くせっちゃん。
どうしてこうなった?
「Heyキベンさん!シロクロはっきりオサメどきデス!」
「それを言うならシロクロはっきりしろ、か年貢の納め時のどっちかだぞポニーちゃん」
「こーら、話をそらすな」
ふにっと耳をつねられると同時に背中に柔らかい感触が当たる。んもーほんとなんでコイツらパーソナルスペースガン狭なの?俺は嬉しいけど!!
嬉しいついでに言うけど全員が無防備に近い寝間着で俺を囲み、部屋全体を女の子特有の良い香りが包む。これで反応しないとか逆に失礼では!?
「……邪な色欲を感じました」
ジト目で睨み付けてくるいっちゃんの眼光が怖い。俺の詭弁くんがステイした。
あれ?これ調教されてね?
「本命はどっち?あ、八百万ってのは無しだから」
せっちゃんの声色がさっきから性的で大変お困りになられるんですがぁぁぁ!!?耳元で囁くのは止めて!
「ノコノコノコ……詭弁ってもしかして耳が弱点なノコ?」
「きーちゃん君そんなあざとい笑い方だったっけ!?」
そう言うときーちゃん改め小森希乃子は顔を両手で隠した。
「や、やっぱアイドルヒーロー目指すならキャラ付けは大事ノコ……」
「ワイプシに影響されたか!?」
自分の事可愛いって思ってるヤツはこれだからよぉ!カワイイ!!!!
周りの女子ーズも暖かい目で見ている。多感な時期ね!
「よし、今日はきーちゃんの今後の進路相談会ということで!」
「あっ、それはまた今度で」
いつかちゃんがあっさり止める。ちくしょう。
「ま、あんたが八百万の事が好きなのは知ってるよ。でもほんとに誰か一人選べって言われたら……即答できんの?」
「ぐっ……」
鋭い視線が俺を貫く。……いや、鋭くは無い。ただ、俺の弱い心がいつかちゃんの目を怖がっているだけだ。
……即答は、出来る。出来るはずだ。今までだってそうだったじゃないか。俺の軽い行動に釣られてしまった女の子に、絶望を叩きつけてきたじゃないか。
浮わついてた心が一気に沈んでいく。俺が、誰かを選ぶ権利なんてあるはずが無い。
「ははは。いやー難しいなぁー、だって皆カワイイから甲乙付けがたいぜ!」
沈んだ心とは裏腹に口調は軽くなる。多くの人を傷つけた言葉を紡ぎ続ける。軽い言葉、軽い意思を紡いで、繋いで、積み重ねて、詭弁が出来る。
「皆違うタイプでカワイイし、一人を選ぶのは難しいって!うん、こういう時にやっぱ大事なのって安心感じゃない?包み込むような母性と言うか……とにかくそう言ったのが大事だね!だから簡単に安心感を感じられるようなハグをして決めるってのは」
「ん」
すっと、頭を抱き締められた。
「ぅえっ、ちょ、唯!?」
「Wow、ダイタン!!」
「だ、だいちゃん?あ、良い匂い」
「嘘は、だめ」
「……や、良い匂いですよ?」
「そっちじゃない」
責めるような、慰めるような、軽い俺では判別付かないような複雑な感情が小大唯の目に宿っていた。
「皆、自分に嘘は吐けない。貴方も、そう」
自分に嘘は吐けない。その言葉が俺の中に沁みていく。思わず泣きそうになる。
「嫌なら、嫌で良い。好きなら、好きで良い。正直に言って?」
そう言って俺に柔らかく笑いかける小大唯。
色々ともう限界だった。ポロポロと涙が零れ、本音が口から吐き出される。
「っ……好きだよ!ああ!皆好きだよ!!俺はクズだから、色んな女の子が好きになっちゃうんだよ!!でもっ、俺の、俺の口が軽いせいでモモちゃんを傷つけた!!俺がっ、モモちゃんを狂わせたんだ!!!なら、俺がモモちゃんを守らなきゃ、俺が守らなきゃ、それこそ嘘だろうっ!!!」
小大唯の胸の内で、俺の慟哭が響く。
俺が壊してしまったモモちゃんの平和は、俺のせいで狂ってしまったモモちゃんの人生は、俺の人生全てで償わなければいけない。モモちゃんがヒーローになると言うのなら、全霊で支えなければいけない。弱い俺が出来ることなんて、それしかないから。
◆
夏休み前
放課後 B組
「……何?詭弁に昔何かあったか、知ってることを教えろって?」
「うん、物間なら何か調べてるかなって」
「あのねぇ拳藤、僕が何でも知ってると思ってるのかい?……まあ、知ってるけど」
「ほら知ってるじゃん」
「うるさいよ。……聞いてて気持ちの良い話じゃないが、それでも聞くかい?」
「……うん。アイツの痛々しそうな笑顔が頭に残るんだ。……お節介かもしんないけど、何かしてあげたいって思って」
「惚れた弱みってヤツかい?」
「なっ!?ち、違うよ!!ただ私は……!」
「分かってる分かってる……ハァ、拳藤
「……も?」
「塩崎と小大はもちろん、取蔭と小森、男子なら鉄哲、黒色、庄田に同じようなことを聞かれたよ。ホントにモテモテで羨ましいよ全く」
「……後、物間にも好かれてるみたいだしね」
「う、うるさいな……アイツの
「……うん、聞かせて。私は、アイツの力になりたい」
「……はぁぁ~。本当にアイツはタラシだな……分かったよ。……これを見てくれ」
「ん?これは……新聞?」
「昔のスクラップをスマホで撮ったんだ。この記事を見てくれ」
「……『八百万財閥の一人娘、無事救出!』……これは?」
「これより前の記事は見つからなかったけど、小学生の時にヴィランに拉致されたそうだよ」
「なっ……!」
「財閥の一人娘だ、身代金目的
「それは……まさかっ」
「『創造』、貴金属や宝石なんて作り放題だっただろうね。どんな大人でも悪用をすぐに思い付いてしまうような個性さ。そしてその時に個性をバラしてしまったのが……」
「詭弁……」
「……実際のところは、詭弁を人質にして八百万に言うことを無理やり聞かせてたんだろう。記事には『男の子を保護した』と書いてあるけど、こっちは怪我云々が書いてない。八百万の方には『無事で』と書いてあってこれは……まあ、良い想像しないよね。……そして、記事には一切書いてないけど、八百万を救出する時に何人も死んだのは間違いない。それも恐らく、二人の前で」
「っっっ!!!」
「『喋るしか能がない』なんて、なんの自虐かと思ってたけど……当人にとっては本当にそうだったんだろう。自分は何も出来ないで、目の前で人が死んでいく。そりゃトラウマにもなるさ」
「……」
「……拳藤。僕から見てだけど、詭弁と八百万の関係はかなり歪で、複雑だ。正直、僕や鉄哲、庄田も黒色も……僕たちじゃ手におえない。たぶん、男と女のシンプルな関係でぶった切る方が良い。無理にとは言わない。拳藤が良ければ、アイツを八百万から奪い取っていけ」
「なっ、それとこれは違うだろ!?」
「違わないよ。詭弁にとって、八百万は『自分の罪』の象徴だ。そして八百万にとっては、共に地獄を生きた『依存相手』だ。……もしかしたら、このままでも良くなるかもしれない、だけど悪くなる可能性は非常に高いよ。だったら、いっそのこと関係を壊して作り直した方が良いはずだ」
「……だけど」
「拳藤、僕は同じことを塩崎と小大、取蔭、小森の四人に伝えた。……それと、影で聞いてる柳とポニーにも今伝えた」
「っ!?」
「……盗み聞きする気は無かったの……ごめんなさい」
「Sorry……」
「後は、君たち次第だよ。自分がどうしたいかって思いに、正直になれよ」
「……自分が、どうしたいか……」
「……はぁー、なんかギャルゲー主人公の友達役になった気分だ」
「……ギャルゲー、やるんだ」
「詭弁に会うまではやったこともやるつもりも無かったよ!なんだよアイツ初対面でいきなり『うわ、ギャルゲーの相談役っぽい顔』って良いやがって!そんなに僕はモブ顔かっ!?」
「モノマさんもNiceguyだけど、キベンさんのほうがモアモアイケメンデスねー!」
「傷つくからそう言うこと思っても言わないでくれ。ポニーさんや……」
「あ、なんか今の詭弁さんっぽい」
「あ"ぁ~!!もう!何でアイツの口調はこうも感染しやすいんだ!!」
◆
唯の胸の中でボロボロ泣く今のアイツに、普段のニヤけ面や痛みを堪えるような笑顔の面影はなく、ただの子供のような顔で泣き叫ぶ。追いかけたかった詭弁の背中が、今はどうしようもなく小さく見えた。
「俺がモモちゃんを守らなきゃいけないんだ!!俺が狂わせたからっ!!」
わんわんと泣く彼を抱き締める唯と、その横で子供をあやす様に頭を撫でる茨。
普段アイツの
「変なこと考えてるでしょ一佳」
急に耳元で切奈の声が聞こえた。振り向けば切奈の口だけが浮いていた。
「いいのかなぁ?うじうじしてる内に機会、逃しちゃうよ?」
「機会……って」
ふと見れば、切奈が詭弁の背中に自身の胸を押し付けていた。
私の顔が気恥ずかしさやら怒りやらで赤くなっていくが、切奈の口はニヤニヤと笑い続けて
「ほらほら、右隣に小森が来ちゃった。レイ子かポニーが左隣に来るのも時間の問題かもよ?気が弱ってるときに優しくされるとコロッと落ちちゃうのは男女一緒なんだってさ」
心臓が跳ねた気がした。その言葉が聞こえたのか、レイ子とポニーが焦るように詭弁の左隣に向かって動き出す。
「あーあ、埋まっちゃった。一佳は戦闘訓練だと行動が早いのに、なんでこう言ったことにはうじうじすんの?」
「だ、だって、私は、別に、詭弁の事をそう言う目で見てないしっ!」
「あ~ん?耳が遠くて聞こえないわ?物理的に」
ケラケラと笑うその声に、自分の感情がふつふつ、グツグツと煮え立ってくる。それが怒りなのか、悲しさなのか、悔しさなのか、自分でも判断がつかない。
「……一佳はさ、難しく考えすぎなのよ。『好き』になるのに、難しい理屈や劇的な運命なんていらないでしょ」
「……切奈は、なんで詭弁の事が好きになったの……?」
「……何の事はないよ。アタシみたいなヒネクレモノに、真っ正面から可愛いって何度も言われたから。自分でもどうかって思うけどさぁ、……それで好きになっちゃったんだもん」
思わず、詭弁越しに切奈の顔を見る。そこには、見たこと無いような乙女の顔をしてる切奈がいた。
「……あー、もー恥ずかしいな……ほら一佳!みんな詭弁を慰めてんだよ、アンタも一言くらい声掛けろ!」
そう言って、背中を押される。まだ胸の内でよく分からない感情が煮えているが、一度そっと蓋をする。
立ち上がって詭弁に近づき、詭弁の周りに取り付いているみんなを引き剥がす。……特に切奈は叩くように引き剥がしてやった。
「詭弁っ!!」
自分で思った以上に大きな声が出た。だが、そのまま続ける。
「わ、私は……私は詭弁の事が好きだっ!!だからっ!好きなヤツが守りたいモンは私も一緒に守ってやる!!詭弁!お前は一人じゃないよ!!!」
「いつかちゃんがイケメン過ぎて死ねる……」
いつの間にか泣き止んでた詭弁が、そのまま後ろに倒れながら両手で顔を隠す。
……うん、私、今なんて言った?
「うーん……。焚き付けたのはアタシだけど、まさかそんなダイタンな告白するかな普通……」
「み、MEもまけないデース!ヘェイキベンさん!私もI Love youデス!!!」
感情のままに口から出た言葉を思い出し、つい思わず詭弁を叩いてしまった。
「いつかちゃん、照れ隠しは良いがめっちゃ痛い」
「っ、あ、ご、ごめん!!」
「ああ、くそ……痛くてまた涙が出てきた……っ、みんな……なんでこう……本気で惚れちゃうじゃん……辛いじゃんよぅ……」
「ん、惚れさせた報い。甘んじて」
「だいちゃんもさっきからイケメン過ぎる……」
床に撃沈した詭弁の頭を、自身の膝に乗せる茨。そして慈愛の掌で詭弁の頭を撫でる。、
「詭弁さん。私たちは貴方の力になりたいのです。貴方がどういう選択をしても、私は尊重します。ですからどうか……私たちを、拒絶しないでください」
「いっちゃん……」
「……みんな、ごめん。クズの俺を好いてくれる気持ちは、凄く嬉しいよ。……でも、やっぱり俺の一番はモモちゃんなんだ」
「そうですか……」
「ですが、一番が変わる可能性はありますよね?」
「……はへぃ?」
……茨?
「
そう言って、普段からでは考えられないほどに、歯を見せるほどに大きく笑いかける茨。
「ん。……私も、獲りに行く」
「あーた達人の心を優勝旗かなんかと勘違いしてましぇんかねぇ」
「同じようなものでしょう。詭弁さんの一番の座は一つしかないのですから。覚悟、しててくださいね?」
「……うん、なんかとんでもないことになっちゃったぞ?」
……身から出た錆ってやつだ。
「……さて、もう9時回っちゃってるし、消灯まで後30分も無いわね。……どうしようかなぁ?詭弁を部屋に返さず、ここで寝かしちゃおうか?」
ニヤニヤと切奈が切り出し、全員に戦慄が走る。まさかの、同じ部屋でお泊まり会である。いや、頭ではみんなただの冗談だと分かっているが、それでもその光景を想像しない訳にはいかなかった。
「……んぇ、9時……?」
たった一人を除いては……。
詭弁くんは9時になったら、というより9時回ってることを認識したらおねむモードになります。フシギダナー。
走り書きモード。後で修正の嵐かもしれん。
ワタクシが創造するのに最も得意なものはマトリョーシカですが、次に得意なのが拳銃ですわ。詭弁さんを何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も撃ち抜いた自動式拳銃が、私の夢に何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も出てきて、いつしか何も思わなくても創造出来るようになりましたの。-闇モモちゃん
全身銃創で酷いことになってたけど、ヤオヨロちゃんのお父さんによる財力パワーで身体には傷一つ残ってないよ。最近の整形外科ってすごいよなぁ。あっ!顔は整形してないからな!?-クズ