詭弁ですよ!ヤオヨロちゃん!   作:名は体を表す

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クズ「んにぁ……」
心は18「女子部屋で寝るなんてなかなか豪胆なキティね!」
姉御肌「そ、そっすね」
クズ「ピクシーボブはねぇ……明るいムードメーカーで凄い頑張ってるねぇ……偉い、偉い……」なでなで
心は18「……えっ、これ私口説かれてる!??」
姉御肌「それただの寝言なんで気にしないでください!!」


肝試しですよ!ヤオヨロちゃん!

 

 昨日に引き続き気がついたら男子部屋に転がされていた。おかしいな、B組女子部屋に居たのは覚えてるんだが……。

 そしておかしいついでに、男子部屋の様子もおかしい。なんでカッちゃん、しょーちゃん、いずくちゃんと俺の4人しか居ないん?まだ5時前よ?

 

「つー訳でなんか知らないカッちゃん?」

 

「知るか!」

 

「あっ、起きてた。ダメだよカッちゃん、いずくちゃんとしょーちゃん寝てるんだから静かにしないと」

 

「テメェが話しかけてきたんだろ!!」

 

 だから起きるっつってんだろ。寝転がってるカッちゃんの口を両手でふさいだる。

 

「……」

 

「っ……!!!」

 

「カッちゃんって意外と綺麗な目だよねぇ」

 

「ふ"ん"っ!!!」

 

「うぐぅ」

 

 カッちゃんの両拳を警戒してたら、まさかの足。みぞおちに突き刺さった蹴りに悶える。

 

「死ねやクソホモ野郎!!」

 

「誉めただけでホモは言いすぎでは?あ、めっちゃ痛い」

 

 俺の口が軽いことは認めるけど、割りと女の子だけじゃなく男も誉めるよ?いやまあ女の子の方が9割なのは認めるけどもさぁ。

 あぁー、カッちゃんが騒ぐからしょーちゃんといずくちゃん起きちゃったじゃーん。

 

 その後食堂に降りてったら女子ーズが談話してたので挨拶した。B組女子ーズ全員に顔を逸らされた。悲しいなぁ。

 

「おはようございますわ詭弁さん。ちょっとお話が」

 

「おはようモモちゃん。今日も『ガチャン』かわい……あの、この手錠は?」

 

「うふふ」

 

「モモちゃん?ちょ、ご飯前ですよ?ねぇ、ちょっと、どこに連れてく気!?」

 

「うふふふふ」

 

 そのまま外に連れ出されて、昨日の夜は何時まで何処で何をしていたのかをキリキリ吐かされた。モモちゃん、朝から拷問器具はだめですよ。

 

 フラフラになって食堂に戻れば、同じようにフラフラの男子勢が揃っていた。

 

「お、おう詭弁……おはよう……」

 

「おはようえいちゃん……なんでそんなやつれてんの?」

 

「ちょっと早朝練をな……ってか、詭弁お前昨日の夜どこ行ってたんだよ!なんかピクシーボブが寝てるお前運んできてたし!」

 

「あとピクシーボブのおっぱいガン揉みしてたなお前ェ!!感触はどうでしたか教えてくださいやがれ!!!」

 

「うるさいみっちー。……えっ?俺がピクシーボブの胸を揉んだ?」

 

「詭弁さん」

 

「ひえっ、いつの間に真後ろに!?ち、違うですよモモちゃん!」

 

 本日二度目の拷問器具。あぁ、もう馴れちまったよ……。

 

「ひぇぇ……ヤオモモ怒らせないようにしよ……」

 

「詭弁あれよく生きていられるな……」

 

 結局なんで皆朝から居なかったか聞けなかった。……んまぁいいか。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 朝飯を食べたら即個性訓練。今日も今日とて声張るぞーおー。

 

「詭弁、ちょっと来い」

 

 なんでしょう先生、日頃の行いを叱られるのでしょうか(自業自得)

 

「詭弁、個性を使う時何を考えて使っている?」

 

「何を……ですか。一応相手に効きそうな言葉を使うことを考えてますが……」

 

 俺の個性は、大前提として言葉の意味を理解できるだけの知能を相手が持っている必要がある。だから犬や猫といった動物には効きづらいし、一見頭悪そうな脳無相手に効いたりもする。

 

「なら、自分の個性の発動プロセスは理解してるか?」

 

「個性の発動ぷりょぇす?」

 

「……」

 

 ちゃうねん。わざとや無いんや。そんな目で見ぃんといて。

 

「んぁー、えぇ~……発動ぷりぉしぇしゅはですね、俺の言葉……正確に言えば喉の振動が相手の脳に色々作用して、限界を越えさせたり認識を誤魔化したり、まあ色々脳に作用するって聞いてます…………個性発動ぷるぉれす!!」

 

「プロレスになってるじゃねえか」

 

「ちゃうねん……」

 

 えーいこうなったら相澤先生も噛み噛みになぁれ!

 

「個性発生ぷろぇふ!」

 

「何が言いたいんだ……とにかく詭弁、これからの訓練は相手の感情を刺激することを意識してみろ。お前の個性発動プロレ……プロレス……詭弁、お前何しやがった……!」

 

「おこなの?」

 

「お前も補習組と一緒に補習するか?」

 

「すんません!!!感情の刺激っすね!かぁしこまっ!!!」

 

 あー個性訓練で忙し~い~な~!!!

 

 あっ、何で感情を刺激させるのかを聞いてない!でも今のセンセには近付けねぇな!

 

 

 

 

 

「個性発動プロフェス…………治らねぇ……」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 さて、ついに来ましたか。……肝試しタイム!!!!

 

「肝試ェェェーーー!!!」

 

「いえー!!!!」

 

「肝試しってそんなテンションでやるもんだっけ?」

 

「つーか、マジで詭弁まだ叫ぶ気力残ってるのかよ……」

 

「詭弁君って朝から叫び続けてなかったっけ……」

 

 はい。まあぶっ飛んだテンション戻して、と。

 

「では肝試し恒例、肝を冷やすタイムです」

 

「肝を冷やすタイムってなんだよ。素直に怪談って言え」

 

「お、良く分かったねジロちゃん。護身用のお守りを一つ贈呈しよう」

 

「準備万端か」

 

 ちなみに中身は俺特性の笑い袋。狂ったように笑い続けてテンション上がってくるよ。

 俺の個性は電子機器通すと効果が半減するけど、無いよりましですわ?

 

「……さて、こういった怪談話はマクラに『これは私の友達の話なんですが』とか、『先輩から聞いた話なんだけど』とか、何処かの誰かの話が、んまぁ常套句とでも言いますか。いわゆる『ありきたり』って奴だな」

 

「おぉ……なかなか雰囲気あるな……」

 

「んでも詭弁の話だぜ?ぜってぇ最後に笑いに走るだろ」

 

「……どしたの、ヤオモモ。顔色悪いよ?」

 

「……いえ、何でもありませんわ……」

 

 

「今から話すのは、『誰か』の話じゃない。誰でもない『俺の』話だ。俺がまだ、小学校に上がる前の、豆粒みたいな子供の頃の話だ。舞台はそう、丁度ここいらみたいな暗い、暗ぁい森の中での出来事だ」

 

 

 

「目を閉じてみれば、あぁ……聞こえる聞こえる。虫のさざめき。虫には詳しくないが、りーん、りーん、と鳴く音は鈴虫か?ざぁ、ざぁ、と風が木の葉を打つ音も聞こえる。少し離れた場所で、さらさらさらさら……あぁ、これは川の音だ。もぉっと耳を澄ませば、ひぅ、ひぅ、緩やかな風の音も聞こえて来た。俺は昔からこういう自然の音ってのが好きでね、家族で遠くにキャンプしにいったら、夜な夜な抜け出して静かな自然の音色を聞いていた。まあ自分でもマセたガキだと思うけどな」

 

 

 

「その日も、両親が寝静まったのを確認したらゆっくりゆぅっくり、音を立てないように、テントから抜け出して、月明かりの中暗い森の中に身体を沈め、気を静めた。りーん、りーん、ざぁ、ざぁ、さらさらさらさら……ひぅ、ひぅ。あぁ、なんていい音なのだろうか。目を閉じて、さらに耳を澄ませる。すると、遥か遠くで子供の無邪気な笑い声がしたんだ。ああ、きっとその声の場所で、今の俺達みたいにキャンプをしてるんだなぁ……って、その時は思った」

 

 

 

「月が更に昇り、真夜中。たまたまその時、明るい月に分厚い雲がかかった。月明かりに照らされた暗い森は、一気に真っ暗。闇の世界へと姿を変えた。足元すらおぼつかない闇の森でも、俺の心はまだ落ち着いていた。耳を澄ませば、自然の音が聞こえてくるから。りーん、りーん、ざぁ、ざぁ、さらさらさらさら……ひぅ、ひぅ。自然は、いつも味方だ。それに無邪気な子供の笑い声だって聞こえる。何にも怖くは無い」

 

 

 

「その時、そっ……と、俺の中の好奇心が『この笑い声の所に行ってみよう』と囁く。月はまだ厚い雲の中でも、何度も訪れたキャンプ場だ。そうそう道には迷わない。好奇心に身を委ねて、その笑い声の場所に向かっていった」

 

 

 

「『あははははは』『あははははは』よくよく聞けば、どうやら複数人の子供の声がする。そこで何やら楽し気に遊んでいるようだ。すると俺も真夜中だっていうのにウキウキしてきて、つい笑い声の場所に走っていった」

 

 

 

「真っ暗闇の森の中だ。何度か転びかけたが、怪我をすることなく笑い声の傍まで来れた。『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』幼い俺は、ようやくそこで異変に気が付いた。子供の声が多すぎる。近づくにつれ、声は二人、三人、四人、五人。もっともっと増えていく。おかしい。何かが変だ。この……この茂みの一つ向こうに、この声の主が居る。俺は嫌な予感がしたが……好奇心に勝てなかった。テントから抜け出した時よりも遥かに慎重に、ゆっくり、ゆぅっくり、茂みを覗いた。その時、雲が晴れて月明かりが森に差し込んだ。そこで見た声の主の姿は」

 

 

 

 

「影を固めたような、真っ黒な大男だった」

 

 

 

 

「その大男から、複数の子供の笑い声が聞こえる。『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』狂ったように笑い続ける子供の声。『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』俺は恐怖した。背中に泥水が降り掛かったかのように、嫌な感じがした。逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。俺の頭にはそれしか無かった。『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』『あはははは』

 

 

 

「笑い声から遠ざかる様に、ゆっくり、ゆっくり、後ろに下がってゆく。一歩、二歩、三歩、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。逃げる、逃げられる。逃げられるんだ。そう、思ったその時。パキッ……っと、木の枝を踏み抜いてしまった。ゾクッと背中に寒気がしたと同時に………………子供の笑い声が、止まった」

 

 

 

 

 

『ヒャハハハハハハハ!!!ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!』

 

 

 

 

 

「狂ったように笑いだす大男の野太い声。俺はすぐに暗い森を走った。目指す所は、俺の両親が居るテント。走って、走って、走って、走って。全力で森を走り抜けていった。もはや自然の音を聞く余裕なんて無かった。暴れ狂う心臓がバクバクと鳴り響く音。ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!走る俺の荒い呼吸音。草や落ち葉を走り蹴る音。そして狂ったように笑う大男の声。一心不乱に笑い声から逃げる。走って、走って、走って、走って。ハァッハァッハァッハァッ!」

 

 

 

「逃げて逃げて逃げて逃げて、足が動かなくなるまで逃げた。地面に倒れるように転がり、息を整えた。ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。未だに心臓はバクバク鳴り響く。滝のように汗が流れる。ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。空を見上げれば、月が再び雲に隠れて闇夜が訪れた。ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。未だに耳がうるさい。心臓が鳴り響く音、荒い呼吸音、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ。違う。その呼吸音は、()()()()()()()()。ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ。荒い呼吸は、後ろから聞こえてくる。ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の後ろからあああああああ!!!!」

 

 

「ぴッ『ワハハハハハハハハハハハハ!!!』くぁwせdrftgyふじこlp;!!!!!」

 

 ジロちゃんが死んだ!!この人でなし!!!

 

「お前の笑い袋じゃねえかあああああああああ!!!!!」

 

 はい。

 と言う訳でジロちゃんにはビックリドッキリアシスタントになってもらいました。こういうのによわよわなジロちゃんに予めお守りという名の笑い袋を持ってもらい、一番の盛り上がる所でジロちゃんを刺激すれば、思わずギュッとしちゃった心の音を、どうぞまだ忘れられない悲鳴になるわ。

 

「ジロちゃん、待って。待って!」

 

「死ねッ!!死ねッッッ!!!!」

 

「すけぁり”ッ”ッ”」

 

 今日もジロちゃんの個性はイキイキしてるじぇ。

 俺はジロちゃんに殺されかかってるけど。

 

 

「いやー……まじかー……」

 

「うむ、あの話の後でこの森は……」

 

       ワハハハハハ……

 

「今なんか聞こえた!!?今なんか聞こえたぁ!!?」

 

「気のせいよ、気のせい」

 

「コレさぁ……怖がらせる方も怖いんだけど……」

 

「……はい!と言う訳でB組が驚かす側先行、A組は二人一組で組んで出発!驚かす側は直接接触禁止で、個性を存分に使って驚かせまくりなさい!」

 

「嘘だろ!?この流れで普通に進めただと!!?」

 

「止めようぜ?な?止めようぜ?」

 

 




ヴィラン連合サイド

「ワハハハハハハ!!!要は適当に暴れまわりゃあ良いんだろ!!!?」

「ちょっとマスキュラー!?声大き過ぎよ!!作戦遂行前にバレちゃ何の意味も無いでしょ!?」

「おお!スマンスマン!!」

「大丈夫かコイツら……」


ジロちゃんは恐怖に引き攣った顔が良き……普段の顔もまた良き……。
俺も書いたんだからさ(同調圧力)

あ、裏でひっそり補修組は回収されていきました。


今回の怪談話は俺の体験談だ。ちなみにオチは、俺の親父が真夜中に俺が外に抜け出す事を止めさせるために親父の友達連中集めて、個性使いまくって俺を脅かした、ってのが真相。その後お袋に全員纏めてバチボコにぶちのめされたけどな。-クズ

詭弁さんの笑い袋は、非常に簡単な作りではありますがお守りとしてはとても効果のある代物ですわ。詭弁さんの笑い声は心を高揚させる効果がありますの。-ヤオヨロちゃん

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