バレンタイン、勇季歌録編
バレンタイン 巫女編~
机の上に、何も入ってない袋。
台所から匂う甘い香り。
あれ?ー俺は、神社にいるよな?
明らかに現代日本の行事・・・あ、あれはたしか外国の行事か。
バレンタインを思わせるような目覚めだった。
「れーむ?」
「あら、緋乃。おはよう」
「ああ、おはよう・・・で、なにしてんの?」
袋を持って俺は霊夢の元へ。
俺が問うているのは、彼女が今なにをしているか、だ。
彼女は、鍋で何かをかき混ぜている。
甘い、どろっとした、茶色いーーーチョコ。
「チョコ作り?」
「やっぱりか」
「あら、ダメだった?」
「いや、嬉しいよ」
「そう・・・」
それっきり、霊夢は鍋にむかっていた。
・・・つまらない。
「・・・・なあ、霊夢」
「なにかしら」
「暇」
「そう」
その一点張りだった。
ここから、何を言っても「そう」としか言わなかった。
ただ、「好き」や、「愛してる」と言ったセリフには、ビクリ、と反応してきた。
・・・いじめてやりたい。
俺の加虐心がチラリと見え隠れする。
「ああ、そう」
「なんだ?」
「今なにかしたら、パイ投げ同様顔にチョコ塗りたくってあげるわ」
おいおい、それは鼻がイカレる。
俺がぶー、と唇を尖らすと、手を止めた霊夢がキスをしてくる。
・・・朝から、俺はなんて幸せ者なんだ。
「悪いけど、朝食は自分でやってくれないかしら。ちゃんと片付けて作ってるから・・・」
「ああ、わかった。霊夢の分も作っとくよ」
申し訳なさそうに上目遣いでいってくる。
おい・・・断れるはずないだろ。鬼とか、秋兎じゃあるまいに。
え?秋兎が何故鬼と同様かって?
・・・・・・・・聞くな。
俺は、軽い食事を済ませたのち、霊夢の分にラップをかぶせて、おいて置く。
(発明したのはとあるカッパ。知識はどうやら秋兎が授けたらしい。ナイスだ)
「緋乃、いる?」
「いるぞ」
「はい、コレ。初めてだから上手くいかなかったけど・・・」
「いや、いいよ。気持ちだけで十分もらった。美味しいか美味しくないかは俺の味覚次第だから」
「そう・・・」
霊夢からの初チョコ。
・・・・くそう、涙が込み上げてくる。
いや、だがそこは男。
抑えろ抑えろ。
「・・・・」
「・・・いただきます」
そして俺は、包みを開けて、ハート形の小さいチョコを手に取り、口にいれる。
ふんわりとした甘さと、それに比例するかのように後にくる苦味がマッチしていて美味しい。
俺の好みに沿っている。
「・・・・・・・」
「ひ、緋乃・・?」
黙り込んで咀嚼する俺に、痺れを切らしたのかまたは怖くなったのか。
霊夢が、口を開く。
「・・・・・美味いっ!!」
ニカッと笑いながら、俺はチョコを口にいれ、砕いてから霊夢の頭を引き寄せる。
その行為に疑問を感じていた霊夢の口を塞いで、舌でチョコを流し込む。
「んっ?!・・・・む・・・少し苦いわね」
「うん、まあ俺はチョコだったらこんくらいが気に入ってるけどな」
「己の勘って、頼りになるわね・・・」
「勘?!」
勘で、俺のこの味覚を当てるとは・・さすが巫女。・・いや、さすが俺の彼女。
「俺、霊夢みたいな嫁さんがほしーなぁ・・・」
「?!」
声にならないようなつぶやきを聞き取った霊夢が、これまた声にならないような叫びをあげる。
嫌なのか。
「霊夢?」
「あ、あ、あん、あ、・・・あんた、正気?」
「うん」
「・・・・・善処しておくわ」
真っ赤な顔を背ける霊夢に愛おしさが湧いて、俺はぎゅうっと抱きしめた。
バレンタイン 白黒編~
「ほれ、あーんだ!」
「はい?」
急にチョコを掴んで言ってきた己の彼女を見る。
あーんって・・・ハードルたかっ?!
彼女の目を見て、半目で見る。
「ん?聞こえなかったか?あーん!」
「あーえー」
そんな僕を無視して、魔理沙さんはチョコを近づけてくる。
僕は最後までうろたえる。
だって、急すぎでしょう?!
今日は巷でいうバレンタイン。
・・・こんな風習は、幻想郷にはなかったと思うんだが。
ああ、こういう行事好きな理桜が話したのか。
理桜が住んでる白玉楼の主、西行寺幽々子さんは、幻想郷の賢者?だったっけ?
ーーの、八雲紫さんとお友達だ。
で、ちょくちょく来る紫さんに、「近いから」と教えたのだろう。
あの女の人も、そういうものが好きだから、調子付いて教え回ったのだろう。
その時、二人がきゃいきゃいふざけて、妖夢さんが嫉妬して、それに幽々子さんが萌えて・・・
カオスが生まれる。
「琴羽?」
おおっと、いつのまにかトリップしてたみたいだ。
未だにチョコを手に持っている魔理沙さんを見て、ため息。
「琴羽ー?」
「あーうん。あーー」
口を開けば、チョコを突っ込まれる。
予想してたことだ。
で、手の熱で程よく溶けたチョコを見て、咄嗟に僕はその手を掴み、指を舐めた。
「琴羽?!」
魔理沙さんの声ではっとする。
僕は、今、何を・・・・・・・・・・・。
かぁっと顔に熱が集中する。
「ごめん、ごめんなさい!忘れて!!」
「ふぇ?!あ、ああ、わかった」
魔理沙さんの顔を盗み見る。ほんの少し、ほおが染まってた。
・・・自分だけじゃないことを知って、少しほっとする。
「急に、なにを」
「んー?いや、さっきな?フランにな?」
事の発端は、吸血鬼の妹さんか。
ヴェルディに言っとこう。
「『相手がヘタレさんなら、こっちから攻めればいいんだよ~』というアドバイスをもらったから」
・・・・真剣に、僕はヴェルディに言っておこう。
「ヘタレじゃないんだけどね・・・」
「小心者?」
「・・・かわらない気もするけど」
「いや、小心者は違う」
「・・・・そう」
魔理沙さんは胸を張る。
・・・・・恥ずかしい。
「あ、さっきのチョコついてっぞ」
「ん?どこ?」
「ここーーー」
ペロリと、頬が舐められる。
「・・・・・・は?」
「えへへ・・・舐めちゃったぜ」
照れたようにいう彼女は可愛かった。
可愛かったがーーー。
自分も、顔を赤くしているので、口が裂けても言えない。
「・・・そっか」
顔を背ける。
「なあ、琴羽。私たちさ、何だかんだ言ってキスしてないよな」
ギクリ。
「・・・周りの奴らはしたっていってるのに・・どうしてだ?私にそんな魅力ないか?」
いや、大アリです!!
だから手を出せないんです!!
僕なんかが、いいのだろうか?!?!
魔理沙さんは、己の胸に手を当てて、しょぼんとする。
あああああ!!!可愛い!!
「いや無いんじゃなくって、・・・僕が悪いから」
「なら、してくれよ」
ずいっと顔が迫ってくる。
彼女も、顔が赤い。
恥ずかしいんだなぁ、と思って目頭にキスを送る。
たどたどしくって、余裕なんてありゃしない。
「くち・・・」
「・・・注文が多いなぁ。じゃあ目をつむって待っててよ」
そういうと、魔理沙さんは目をつむっていた。
僕は、彼女の持つチョコの袋からチョコを手にとって、彼女の口へ放り込む。
そして口付ける。
はっきり言おう。恥ずかしい。
「へへ・・・」
「・・・しばらく無しね」
「ええええ?!」
魔理沙さんを置いて、僕は一人森へ出て行った。
・・・己の浮いた頭を沈めるために。
バレンタイン メイド編~
「神居」
「?」
急に、目の前に咲夜さんが。
手には、いっぱいの袋。それから、甘い匂いが香る。
「これ・・・館の皆さんから」
「ああ、いいんですか?」
「いいのよ。多分。ああ、パチュリー様の、薬入ってるかもだから気をつけて」
「・・・ためらわれる」
「『ちゃんと食べなさい』ですって。腹くくりなさい」
「しかたない、か」
一袋一袋、丁寧に受け取る。
中を開くと、少々不恰好なチョコレートが。
なんか、いかにも『手作り!!』て感じだ。
「それ、お嬢様からのよ」
「手作りなのか?」
「みたいね・・・。よかったじゃない」
嬉しい・・・。
喜びで少しにやけるも、貫くような咲夜さんの視線で引き締まる。
恋人?咲夜さんだ。
「あとは・・」
「妹様、小悪魔、妖精メイド数名、ヴェルディ」
「一人男がいた」
「気のせいよ」
「いや・・」
「気のせいよ」
あいつか・・・。まあいいや。
・・・気のせいなのか。
少し、気になったこと。
「咲夜さんからは?」
「欲しいの?」
「用意してくれてるくせに・・・」
メイド服のポケットからのぞく、小さな袋に入った物。
見るからに、本命っぽそ。
「うう・・・ばれちゃったならしかたないわね」
「なんで、隠してたんですか?」
「だって・・・。お嬢様たちからもらえるなら、それでいいかなと・・」
そんなことを考える咲夜さんの口を手で覆う。
その時、手にあったのはレミリア様のチョコレート。
失礼だが、『世間でいうあーんとは少しずれた』あーんをするのに使わせてもらった。
後で美味しくいただこう。
「・・んぐ」
「頂戴」
「え?」
「・・・・ください。貴方からの『ココロ』がほしいんです」
くいっと顔を近づけて、微笑みながら言う。
瞬間、彼女の顔に熱が集中する。
「・・・・・・・わかりました」
たどたどしいように、袋が手渡される。
「食べていいですか?」
「はい」
すると、その袋を開け、中のマフィンを口に放る。
一回咀嚼するだけで、中からトロリとした熱いチョコレートが流れ出してくる。
・・・なんか、ほっかりする。
「さきほど作ったばかりのものです」
顔を背けながら、咲夜さんは言った。
うれしい、かも。
不意に、自然と深い笑みが浮かぶ。
「・・・」
顔を真っ赤にした咲夜さんが、とても愛おしく感じて・・・。
ただ、その頬にキスを送ることしか出来なかった。
バレンタイン 庭師編~
朝から、なにか甘い匂いが?
それと、台所から、悲鳴も。
妖夢さん・・・・なに?どうした?なにがあったんだ?
「理桜さんっ!!」
こちらも笑みをこぼすようなふんわりした笑みを浮かべ、頬を赤らめた妖夢さんが目の前にいる。
ーーーーこの人から、甘い匂いがする。
つい、僕はその首元に顔をうずめて、すん、と嗅ぐ。
変態っていったやつ、挙手。
・・・。重さでも与えてやろうか?!
「り、りり、りり、理桜さん?!」
「うん・・・。なに作ってたの?」
「ちょ、ちょ、チョコを・・・」
「そっか?誰に向けて?」
ちなみに、今にはどでかい袋があった。幽々っちがすがりついてたけど・・・チョコ?
妖夢さんが持ってるのは、中くらいの袋。
充分な量だろう。
「・・・・あ、あなたに、です」
もじもじとした、妖夢さんが袋を押し付けてくる。
可愛いなぁ・・・。
「ありがとね、妖夢さん」
頭を撫でながら、笑みを返してやる。
うーん、顔真っ赤すぎじゃないカナ?
「ねえねえ、食ってい?」
「朝食のあとでもいいのでは?」
「今食べたい」
「はぁ・・・どうぞ?」
「うん、ありがとね」
袋をあけて、チョコトリュフを口に含む。
甘いチョコの味が、ふんわりと口に溶けて行く。
じんわりと、ココアの風味が広がって行く。
「・・・・美味しい」
「本当ですか?!」
「う、うん」
息がかかるほど、至近距離に顔が詰められる。
ーーーーは、恥ずかしいよ?!
「この距離、キスされてもおかしくないよね?」
「ぇ?!みょん!」
久しぶりに聞いた『みょん』・・・。
うん、可愛い可愛い。
叫んで飛び退く妖夢さんをぐいっと引き寄せ、口付ける。
「むぐぅ」と反抗の声をあげた妖夢さんは、きゅっと目をつむった。
「甘いよ、妖夢」
「!!!!」
カアッと顔を真っ赤にし、頭から湯気を出す彼女に、途端、好きだという再認識をする。
ぎゅううっと抱き寄せてやれば、あわあわと妖夢さんが暴れ出す。
「~~っ!」
震える手が、僕の背中を捉える。
そうして、ぎゅっと服が握られる。
「あはは、妖夢さん、可愛いよ~?」
「か、か、可愛くなんて・・・」
ん?と、僕は向こう(視線先)を見る。
幽々っちが、にまにまとにやけていた。
「・・・・・・・あーー、うん」
「?」
「幽々っち、入ってこないの?」
「みょん?!」
「あら~つまらないわね~」
くすくすとしながら、こちらへ近寄りーーー
「えいっ!」
反対側から、幽々っちが妖夢さんを抱きしめる。
おいおい?!そ、その・・・手が・・・・。
「きゃうっ・・・。・・・?・・・・」
僕の頭が煩悩だらけになると、妖夢さんから鋭い視線が向けられた。
うん、ごめんね?妖夢さんが好きだから許してよ~。
「こうしてみると、妖夢ってば子どもね~」
「・・・っ!!!!」
「おー。うー。幽々っち~僕は妖夢さんを好きなんだぞ?」
「わかってるわよ~。当たり前じゃない~」
どうだか。
幽々っちが妖夢を好きなのは知ってるけど、渡さん。
いや、返さん。
「さて、朝食にしましょう?」
「は、はい!今すぐ用意します!」
「あ~。僕も手伝う~」
そうして、日常が始まった。
バレンタイン 人形師編~
家へ帰ってくる。
うん、やっぱりここだな~。
すると、ふと漂う洋菓子の匂い。
甘い、甘い。
香水とはまた違う匂いが辺りを包む。
「アリス、なにつくってるんだ?」
ビクゥっと肩を震わせるアリスの頭に顎を乗せる。
すると、茶色い何かが煮えたつ鍋に指をいれて、それを俺の口へ突っ込んだ。
「んぐぅ?!」
しゃぶるように、俺はそれを吸う。
顔を赤くしたアリスは、俺の口から指を引き抜く。
「なにこれチョコ?」
「ええ、バレンタインでしょう?」
「ああ・・・そうだな」
何もしてないのに、親友軍らがチョコを配られる日。
俺も例外ではない。
「うん、同じチョコでもお前のだけが特にうまい」
「なによ・・・もらってるの?」
「いいや、去年までのこと」
「・・・彼女でもいたの?」
心外だ。俺は、てっきり・・・。
まあ、いいか。今は誤解を解く時。
抱き寄せて、耳に顔を寄せる。
「いない。俺は、ーーー忘れていても、お前しか興味ない」
「っ・・」
顔を背けるアリスに、口付ける。
不意に、アリスがこちらを向きーーー
「私も好き」
早口で告げた瞬間、頬に柔らかい感触。
やばい、頬が緩む。
「アリス」
「なによ」
「俺は・・・」
「?」
「お前がくれるなら、ガラクタだってタカラモノにするぞ?」
「捨てなさいよ?!そんなの、あげないし・・・」
「うん。くれないってわかってるから」
ジョークだよ、と笑って流す。
台所から離れると、アリスが急にーーー
「チョコ、もう少し待っていて?」
「!!」
「・・・・・すぐ、出来るから」
ふんわりと、微笑む彼女に、赤面必死だった。
バレンタイン 吸血鬼編~
パタパタとかけてくる彼女に、笑みを絶やさない。
敵だったはずの俺を信じてくれた幼い吸血鬼の子。
ーーーそんなフランに、俺は恋した。
「あ!お兄様!!」
「ん?フラーーーーン?」
チョコまみれのフランが、形が崩れそうなチョコを手に駆けてくる。
うん、可愛い。
ニパッと笑うフランに愛おしさが湧く。
「ハッピーバレンタイン!!」
「うん、ありがとね」
「えへへ~。食べて食べて~!!」
手を出し、チョコを提示してくる。
うん、受け取ったらこぼれそう。
俺はとっさの判断で、生チョコが中に入ったもろそうなマフィンを口にいれる。
ーーー咲夜が、そんなの持ってたな。
教わったのかな?
口にいれた瞬間、ボロリと崩れたマフィンから流れ出すチョコが、ホクホクとする。
熱い?!
「うん・・・美味しいよ。ありがとね」
そして、手を舐め、頬も舐める。
チョコがついてたからね。
このままチョコプr・・・ゲホン。
なにもないよ。
「うん!よかった~!!」
ホッとしたように笑みを浮かべるフランに、不安だったんだなと思う。
まあ、フランがくれたのに「不味い」なんて言えないよなぁ・・・。
「・・・フランが頑張ったんだろ?無下にできないさ」
「頑張ったよ!えへへ~」
頭を撫でると、ネチョリとつくチョコを舐め上げる。
なんかーーーー
「ちょっと、フラン。二人で話そう?」
「うん!!」
フランと、二人でいたい。
みなさん、チョコはもらえましたか~!!