理桜変態注意報。
霊夢Sido
「トリック・or・トリート!」
何の催しかはわからないけれど、緋乃が急に手を広げて謎の呪文を唱えた。
頭や腕、胴体、足にかけて、ほどけかけた包帯が巻かれている。右目は何でかはよくわからないけど紅く光る。
服は着てなくはないけれど、黒いタンクトップに黒いジーンズを着ていた。
なんの格好なのかしら?
「あ、やっぱ伝わんねーか。お菓子くれなきゃイタズラするぞっ」
「・・・なんの催し?」
「ハロウィンだぜ、ハロウィン!子供が大人から菓子をもらえる日さ。本来ならもっと言い伝えとかあるらしいけど知らねー」
「はろ・・・うぃん・・・。へぇ。ま、あげないけどね」
「へぇ?それでいいのか?」
ニタリ、と緋乃は笑んだ。
何か言っていたかしら?なんか・・・大切なことを・・・。
「ええ。私が甘味や食糧を渡すと思う?」
「じゃあ、イタズラだな」
私は選択を間違えたらしい。一個でもいいかと聞いて、渡せば良かったのに。
どうやら・・・どうやら、私は緋乃を甘く見ていたようだった。
「ほら、いくぜ?」
「え、ちょ!?」
緋乃が私を押し倒した。
包帯を引きちぎり、抵抗を抑えるためかそれで私の腕を縛る。所詮包帯・・・と思っていたがバカだった。
幾重も重ねられていたらしい包帯はそれなりの強度を持っていて、少しばかり締め上げられる。
「紫とキス一個で交換して手に入れた能力を思い知ったか?」
「・・・?今、なんて」
「あああああいや何でもない気にするな」
するとそんな時、ドンガラガッシャーンという音が境内に響き渡る。何かが落ちたようだ。
そこを見やると、二人の男がいた。
一人は眠たげな青年。そしてもう一人は・・・ファッションとやらだろうか、モグラの帽子をかぶったやつ。
「・・・あれ?ここ、幻想郷じゃん。なんだ、身構えちゃったよ・・・ん?誰?」
「いや、こっちのセリフなんだが。・・・俺は篠崎緋乃。お前らは?」
「緋乃か。ええっと・・・」
そいつ(眠たげなやつ)は私を一瞥する。期待するように、じぃっと。
「ほら、さっさと自己紹介しなさいよ。私は霊夢。・・・まあ、幻想郷がわかるんなら、他の幻想郷からきたんでしょうけど」
「・・・やっぱり、別の幻想郷なんすか」
モグラ帽子は口を開いた。羽ばたいた黒い羽はあのガセ新聞記者、射命丸のものと似ていた。
私は頷く。
「あ、申し遅れたっすね、オイラは園瀬良」
「瀬良・・・」
「んで僕が白野想鵐。よろしく、二人とも・・・ん?緋乃?」
「想鵐・・・か?」
緋乃と想鵐の様子がおかしいのだけれど。
お互い見合ったまま、静止した。
「「あああああ!!!!」」
途端、大きな声をあげて指を差し合う。
瀬良はハテナを浮かべながら笑っていて、私はただ二人を見ているだけしかできない。
「あの苦労性の想鵐!」
「あの公平な緋乃君!・・・そして、ここはもうハロウィンなんだ?」
「そうだな。ちょうどいい、親友たちに会いに行こうぜ!」
「へえ、彼らもここに?そして、ハロウィンをやってるんだ・・・」
想鵐が額に手を当てため息をついた。緋乃はケラケラと笑う。
・・・私の前でそんな笑い、したことないのに。
「召喚『砂暗』!・・・さて、いこっか」
札を構えた想鵐が凛とした声で言い放つと札は燃え、それから黒い鳥の形になる。
なかなか面白い札ね。紫が考えたのかしら?
緋乃が驚いたように目を丸くする。
「!なんだこりゃ!霊夢たちもいこうぜ!」
「私はパス。めんどいもの」
「菓子もらえるのに?」
「・・・やっぱいくわ」
食費には変えられないわね。
私は緋乃のそばにいく。
「あ、オイラは飛ぶよ、アニキ」
「了解、じゃあ・・・・琴羽君のとこにいこうかな」
「魔理沙の家だな」
「魔理沙かぁ・・・」
砂暗というらしいそいつに私、想鵐、緋乃が乗り込む。
瀬良は大きく羽を広げ、飛び上がった。
少々道のりは短いものの、普段乗らない鳥の乗り心地は最高であった。
想鵐Sido
まさか、ここで友人と会うとは・・・ 。しかも変わりない様子で。
僕は少し笑えてしまう。
ミイラ男に仮装した緋乃君を見やる。緋乃君は砂暗の上から見える景色にあんぐりと口を開けていた。
霊夢も、心なしかそわそわしているようだ。何だか落ち着きない。
「落ちたら助けられないからね」
「うおい?!なんでだよ?!」
緋乃君は前かがみの状態からグンっとこちら側に体を持ってきた。
さて、無視して景色に目をやる。
そろそろ魔法の森だ。アリスの家も近いし・・・。
「アリスのところには誰がいるんだ?」
「?ああ、詩季がいるぜ。ついでに見ていくか」
「うん。よろしくね」
魔理沙の声が聞こえた気がする。砂暗に急降下を指示する。
二人に合図を送る。
真下に急降下を始めた砂暗。緋乃君がうるさい。
「よし、到着。ここで待ってて、な」
小さく鳴いた砂暗を置いて魔理沙の家を訪れた。
「あ、いねぇ。アリスの家行ったか」
「じゃあそっち行こう。あれ?瀬良ーー?」
「アニキ、ごめんっす。妖怪の山いかせてくださいっす!」
「ああ、了解。じゃあ後で!」
瀬良が僕に一言言って山の方へ行ってしまう。
本当に瀬良は山の人たち好きなんだね。・・・ここの人たちは、僕らを知らないっていうのに。
「じゃあいこうか」
☆ ☆ ☆
豪邸の前に着く。
中からワイヤワイヤと賑わっているような声が聞こえる。
『トリック・or・トリート♪お菓子くれなきゃイタズラするぞっ』
『そんな・・・お菓子なんて持ってませんよ?』
『そっか。じゃあイタズラだねっ』
『ふぇ?・・・・キャアッ?!』
『妖夢さんの下着ゲット~』
『理桜さん!また変なことを・・・!変態さんに改名したのち切り刻まれたくなければ返してください!』
『い~や~よ~。だってこれイタズラだもん~』
『あーーー!!!こんなことならお菓子持ってくるべきでした!!』
『そもそもイタズラで下着って・・・なに、サラシじゃない。まだあなたそれ卒業してなかったの?』
『ぶらじゃーというのは、少々・・・気が乗らないので』
『理桜くん・・・』
『え?なに?琴羽くん?期待した?』
『し、してないよ!!ま、まさか!君の行為がセクハラになることはわかってるよね?!』
『しーらんぺー』
『コトハ、マスパイルカ?』
『いらな・・・ぎゃぁああああああ!!!!』
・・・わぁ、もう知り合いと思いたくない。
緋乃君も同じように思っていたようでため息をついていた。
霊夢の耳には緋乃君の手。聞こえていないようだ。
僕は仕方ないと思いながらベルを鳴らす。
チリーンという音が僕を癒してくれる・・・。
『詩季、出なさい』
『はいはい、お待ち~』
しばらくしたのち、詩季君が顔を出す。
「あ、想鵐と篠崎夫婦。いらっしゃい」
「やぁ、詩季君」
「よ。楽しそうだな」
「私が嫁入り・・・?」
詩季君と軽く挨拶をする。
すると、詩季君は「ん?」と首を捻る。
そして僕をじぃっと見る。
「・・・」
「・・・」
「・・・?」
「お、おい!兄さん、琴羽さん!想鵐!想鵐が来た!!」
ドタバタガッシャンキィンドカーン。
↑ ↑ ↑ ↑
焦る ぶつかる 刀 爆発
・・・なんだか安易に想像できるよ。どうしてだろうね。
友人たちがトーテムポール(?)のようになりながらこちらを見た。
「「そーーーーうむぅううううう!!!!」」
詩季君と理桜君が飛びついてくる。
重量感は男二人分のそれ。
な、仲いいなぁ、お二人とも・・・。流石兄弟。
「や、いやちょ!!重い、死ぬ!!」
「ごめ、ごめんなぁあ!一人にしてよぉお!」
「いや詩季君!落ち着いてよ!」
詩季君が僕の肩に目元を擦り付ける。
あれ?理桜君が大人しい・・・?
僕が視線を下にすると、そこには。
「・・・・理桜君!?」
「・・・っ」
理桜君は静かに涙を流していた。
唇を噛み締めて、嗚咽を堪えて僕のジャージに顔をうずめていた。
こんな大人しく泣く子だっけ・・・?と思ってやめる。
これは理桜君なりの配慮なのだ。
「ご、ごめんなさい二人とも、落ち着いて・・・!」
「久しぶり。ずいぶんな再会だね」
「琴羽君・・・」
やっと起き上がれた僕の近くには苦笑してる琴羽君の姿が。
口元を抑えて笑いを抑えているようにも見えた。
声をあげて助けを求める。・・・しかし、その声は突然のひんやりとした殺意によって邪魔された。
「・・・・はい?」
「理桜さんを・・・・」
妖夢の声だった。やや期待して探す。
近くに刺さった刀らしいひんやりとしたものが方向を変えた。
こちら向きになっている。刀を抜いた妖夢がこちらに詰め寄る。
「・・・・っ?!」
僕はすぐ口笛を吹く。理桜君らを退けて、来た砂暗に乗り込む。
「秋兎は紅魔館だ!」
「ありがとう、緋乃!あとで博麗神社に行くよ!」
「おう!」
そして僕はアリスの家から立ち去った。
・・・まさか大切な人から殺されかけるとは。あれ?
僕、死にたがりじゃなかったっけ?
なんで、命の危険を察知して逃げちゃったんだ?
というかそもそも妖夢はなんで怒っていたんだ?
よくわからないことはあるが、とりあえず紅魔館へ行こう。
「・・・危なかったなぁ」
☆ ☆ ☆
門の前。
僕は寝ている美鈴を起こそうとつつく。
つん、つん。
「ひゃぁ?!」
飛び起きた美鈴に、僕は声をかけた。
できるだけフレンドリーに、気だるげにしたらダメだ。
僕はやや上目遣いで美鈴を見る。
キョトンとした顔。・・・なんか、安心した。
「初めまして、白野想鵐ともうします。ここに、神居秋兎君はいますか?」
「神居さん?・・・・・・・いたんじゃないでしょうか?ん?あ、咲夜さーん。神居さんはー」
「・・・?お客様?まあいいわ。神居ね。呼んでくるわ」
咲夜は能力を使って秋兎君を召喚してくださいました。
秋兎君?その腕の物騒な装置は?
「・・・想鵐か」
「や、秋兎君」
「・・・久しぶりだ。・・・咲夜さん、少し話をしても」
「今日のあなたの仕事は終わってるから安心して。ほら、いってきなさい」
「ありがとうございます。では・・・・」
僕の腕を引いて、秋兎君は紅魔館から出た。
どこへ行くんだろう?
「今、アリスの家d「もう行きました」・・・そうか」
しょんぼりしたように秋兎君は肩を落とした。
うう、そこまで傷つかなくても・・・。
「まあいい。どうせ次は博麗神社だろう?行こうか」
「あ、うん。行こう」
僕は地面を圧迫してまで飛び上がった秋兎君を砂暗で拾い、僕も乗り込んで博麗神社へと戻った。
☆ ☆ ☆
博麗神社へ行くと、もうそこに緋乃君と霊夢、瀬良がいた。
なんで緋乃君、ボッコボコになってるの?
そして瀬良・・・幸せそうだね。
思えば、今日はハロウィンなんだよね。
「緋乃君、霊夢!」
「ん?」
「なによ」
「トリック・or・トリート!」
「「!!」」
まさか、言われるとは思うまい。
僕は両手を差し出す。
二人は顔を見合わせたあと、苦笑しながらクッキーとチョコレートを自らの手のひらに乗せた。
「ほーれ、お菓子だぞ」
「さっさと受け取りなさい」
瀬良を見る。瀬良は、ただ「良かったっすねー」と言った感じで見ていた。機嫌がいいんだな、ホント。
「ありがとう、二人とも!」
僕はそれを受け取る。
ハロウィンの日に、彼らと再会できたこと。
僕はこの日を忘れないよ。だって、だって————
——枯らしたくない世界が、もう一つできたから。
4500ピッタリですってよ奥様
想鵐「僕らの関係性がわかった短編だったね」
緋乃「うーん、ハロウィンか?」
・・・一応ハロウィンだよ。
緋乃「そ、そうか。大体妖夢はなんで」
自分がさせたことのない顔をさせたから。
緋乃「・・・」
想鵐「好きな人が初めて怖いと思った瞬間」
緋乃「確かにな・・・。じゃあそろそろ締めるか」
ですねー。次はクリスマス!!
サンタ様!サンタ様ーーー!!!
緋乃「ちなみに、今、博麗軍VS妖怪軍っていうので、昔の武士達・将軍のお話しを考えているらしい。それはこの短編に一話で投稿するらしいから、楽しみに待っててくれ」
想鵐「ではでは~!」