秋企画の執筆中ですが、今日(昨日か)が中秋の名月?と父から聞いたのでいてもたってもいられず。
日付は変わってしまいましたが、短編として執筆いたしました!
久方ぶりの糖度アリかと思われます。
地の文が多めだったり少なめだったり、久しぶりの幻想招待録メンバーなので性格が思い出せていなかったりと、散々かと思いますが、どうぞお読みくださいませ!
月がぽっかりと浮かぶ、夜空を眺めて杯傾け。
あなたと共にありたいと願い、中身を啜る。
今この時間が永遠でありますように。
今、あなたと共にある時間が、永遠に続きますように。
願って、願って、杯を交わす。
あなたはどんな思いをしているだろう。
月に思いを寄せているのだろうか。
それともそばにいる我を思ってくれているのだろうか。
あなたは我をどう思っているのだろうか。
月を見上げ我は杯を傾ける。
無表情で浮かぶ月に願いながら。
あなたとともにありますように。
あなたとともにあれますように。
あなたの微笑みを酒の肴に、杯をより傾ける。
――――――――――――――――――――――――――――――――
中秋の名月。お月見の日。
俺は縁側に出て、浮かんでいる月を見上げた。
境内ではわいのわいのと妖怪や人間どもが集い、弾幕ごっこに宴会に、大忙しである。
「・・・なあ、なんでお前らは決まって博麗神社に集まるんだ」
「ま、まあまあ。いいじゃないか」
「どこが!」
「どこが・・・って、さあ?」
肩をすくめて、隣で茶を啜っていた琴羽が言った。
その辺等に俺は落胆しながら、茶を近くに置く。
「・・・琴羽、お前をまともだと思ってた俺がバカだったのか・・・?」
「失礼な。僕だって魔理沙さんと二人でお月見したかったよ」
「じゃあしろよ!くるなよ!」
「魔理沙さんが連れてきたんだよ!しかたないでしょう?!」
若干の涙目。
琴羽は俺に悲痛な叫びを訴えていた。
「ったく。いつまで琴羽は文句たれてんだよ。ほら、酒飲むか?」
「ねえ、緋乃。僕らって今何歳・・・?」
「おそらくもう大学生であることは確かだ」
「成人してたっけ・・・」
「してないとは思われる。結婚していい年ではあると思うが」
「・・・じゃあ、魔理沙さん。遠慮しとくよ」
「はぁ?!ひどくないか?私の酒が飲めないって言うのか??」
杯と酒瓶を持った魔理沙が近づいてきて、頬を膨らませて文句を言う。
琴羽は困ったように笑いながら、「すいません」と断った。
こちらに魔理沙の視線が向いても、俺は無視して茶を啜った。
未成年が飲酒したら罰則があるんだよ。
・・・理桜は普通に呑んでるけど、別に
今は、とにかく月見をしたい気分なんだ。
とある店で『月見○ーガー』なんぞを買ってここで食いたいけれど、幻想郷にはあの店はないのだし、そんなことを思ってても仕方ないな。
俺は肩を魔理沙にゆすられ、ちょっと視界がぐわんぐわんしながらも、彼女から香る匂いに眉間にしわを寄せてやる。
「酒臭い」
「酒を飲んでるからな」
「飲むな」
「この幻想郷で、酒を飲まないほうがおかしいんだぜ?」
「変な常識を持つな」
「この幻想郷では、常識にとらわれてはいけない。・・・どこぞの守矢の巫女が言ってたろ?」
「じゃあ酒を飲むなよ」
「おっと、それとこれとは話が別だぜ」
魔理沙と軽く話ながら、俺は変わらず茶を啜った。
おっと、中身がなくなったようだ。
俺は茶を淹れに急須を持ってこようと席を立つ。
神社の中には誰もおらず―――というわけではなく、台所には宴会料理を作る従者勢の姿があって―――、境内に比べたら結構静かだ。
縁側で口論してるような声も聞こえたが、気にせず台所に失礼して、急須を探す。
「すまない、藍さん。急須をしらないか?」
「急須か?・・・なら、そこにあると思うぞ」
「おお、助かる。ありがとうな」
「緋乃さん、少しいいですか?」
藍さんに問うて、急須を見つけた俺は満足げに台所から出ようとすると、俺のパーカーの裾をつままれる。
つまんだ人は妖夢で、お皿を片手に持ちながら、不安げにこちらを見上げてきた。
「・・・ん?なんだ?」
「その・・・
おそらく、とわざわざつけ加えたってことは、現代にある料理なのかは不安だってことか?
でもまあほとんどの料理はこっちで作れるし、現代の料理だろうが幻想郷の料理だろうがそんなに変わらないと思うけどな。
俺は妖夢の言葉を聞いて笑みを作る。
「へえ!そりゃいい!楽しみだ」
「それでですね。これを皆さんの胃にいれる前に、ぜひとも
「師匠って・・・。まあいいや。食えるなら食うぞ」
「よかった!それでは、箸を持ってきますね!」
にこやかに笑んだ妖夢は、台所に近い居間のちゃぶ台に皿を置いた後、台所へ走っていった。
ふむ、皿の中身は『ミートソーススパゲッティ』。
咲夜が教えられたのも、きっとレミリアたちに出してるからだろうな。
きっと洋風なあいつらなら食っててもおかしくない。
「箸・・・麺類だし食えないこともないけど・・・やっぱ見栄え的にはフォークだよなぁ」
とぼやくと、聞いていたらしい妖夢が箸を片手に「あっ!そちらの方がよかったですか?!」とあたふたしていた。
「あ、いや。箸でも食えるから大丈夫だ。妖夢が持ってきたんだし、文句ではないから大丈夫」
「それならよいのですが・・・。さあさあ!」
「ういうい。じゃあいただきます」
手を合わせ、妖夢の目の前でスパゲッティを口に入れ、咀嚼する。
ほう、なかなか。
あまり俺も人に言えるほど料理に詳しいわけでもないけれど、普通に美味い。
ミートソースもうまいし、麺の固さもばっちりで食いやすい。
咲夜が教えてたんだっけと思いだすと、この美味さは当たり前かと苦笑する。
ただ、でもそこには妖夢の頑張りも見えるので、純粋にこれは妖夢の腕だと思った。
「美味い。これなら、あいつらに出しても問題ないんじゃないか?」
「そうですか?!よかったです!」
「おう。じゃあ、飯係がんばれよ。咲夜と藍さんもな!」
「はい!」
「もちろんだとも。緋乃はゆっくりしているといい」
「うちのお嬢様にもご挨拶を忘れないようにね」
急須を再びもって、俺は琴羽と魔理沙のほうに戻った。
「あれ、遅かったね。どうしたの?」
「妖夢の作ったスパゲッティ食ってた」
「へえ。洋食に手を出し始めたんだ。何の影響?」
「理桜のためだとさ。咲夜に聞けばいいものを、わざわざ俺に聞いてきた。それで教えた。それだけさ」
「理桜くんの、ねぇ・・・。まあいいんじゃない?楽しみだな、妖夢さんの料理」
俺と琴羽がそれについて話してると、目の前で立っていた魔理沙が不機嫌になる。
むうっと頬を膨らませ、ぼそぼそと何かをつぶやいたかと思うと、酒瓶をもって脱兎のごとく逃げ出してしまった。
「あーあー」と俺が技といってやると、琴羽は驚いてその場で固まってしまった。
「・・・いいのか?」
「よくないよ!追いかけてくる!」
「おう。その勢いでキスとかもしてこいよー」
「む!り!」
力強く否定していった琴羽を見送り、俺は再び茶を啜ろうと湯呑に口をつける。
―――と、ここで俺は急須のお茶を淹れていないのに、湯呑に液体が入っていることに気づかなかった。
コクリ、とそれを嚥下する。
口内のその液体の苦さについ湯呑を投げた。
「まっず!!!!!!!!じゃねえ、これ酒か!畜生、魔理沙のやつか・・・余計なことしやがって・・・」
ゲホゲホとむせながら、俺は口元をぬぐった。
噴き出さなかっただけ及第点だろう。きっと投げて割った湯呑の弁償をさせられるだろうけれどな。
「おやおや、どうしたんだい?狩人くん」
ニタニタと瓢箪をあおりながら近づいてきた鬼、萃香。
割った湯呑の破片を回収しながら、「なんだお前か」とため息をついた。
「おい、何だその言い方は。もう少し喜んだっていいだろう?」
「神社で普通に見かけるじゃないか」
「そうだなぁ。霊夢が気に入ってるからね」
「はいはい、わかったよ。んで、俺になんか用か?」
「いや?声が聞こえたから何かと思って」
幼女鬼がケタケタと笑いをこぼしながら、瓢箪をまたあおる。
その酒臭さに、今日は一段と飲んでるなと俺は溜息をつく。
此奴といると、俺はどうしても調子が崩されて仕方がない。
俺が重要視している未成年の飲酒禁止。こいつの年齢は知らないが、見た目的に小学生だと思えるのに、こいつは日中から飲んでる。
それがどうしても許せないのだ。
「今日もまた君は渋い顔だね。そんなに私が飲むのが許せないかい?」
「ああ、許せないね。子供は子供らしくあるべきだ」
「それは、君の好く公平とはちょいとばかし違うんじゃないか?それでは、れっきとした区別・・・差別かねぇ。そうなってしまうよ」
「否定はできないな・・・」
「じゃあ飲むのを許しておくれよ。別に、私だって好きでこの恰好なんじゃないのさ。私は妖怪だからねぇ」
「すまないな。次回からは気をつける」
「そうしてくれ・・・っと、今回は見逃しちゃくれんのか?」
「そうだな・・・お前がそういうのなら見逃さんことにしよう」
「おっと、そりゃ勘弁だ。こんな月がまあるくきれいなのに、酒を呑めないなんて、私がどうかしちまうよ」
楽しそうに笑う鬼は、俺の隣に腰かけて瓢箪をあおる。
だから飲むなといっているのに、と小言のようにつぶやけば、「お前は私の母か父か」と笑われた。
「んで、何で居座る。帰れ」
「やだね。今日は宴会が終わるまで、お前のそばにいると決めた。ほら、飲みなよ」
「断る」
「強情だね。さっきは飲んだくせに・・・魔理沙に騙されて」
「あれはノーカウントだ」
俺は頑固にも酒を飲ませようとする萃香を退け、急須の茶を注いだ。
やがて、萃香がイラッとしたのか、瓢箪をさかさまにして酒を含み始めた。
そして瓢箪はかわいそうに、地に投げられた。
「・・・おい?」
そして、急須や湯呑まで没収され、彼女の真意がつかめないまま、――――――口づけられた。
なんでだ?こいつには確か思い人がいたはず。
なんで俺に・・・と、口に流れてくる酒に気づく。
(酒を飲ますためかよ・・・)
やや期待もあったのだが、そんな期待を裏切る結果に俺は肩を落とす。
俺にはきちんと嫁がいるのだが、男としてはやはり、そういうのも期待しちゃっても仕方ないので。
「ほら、飲んだ!今日はおとなしく飲みなよ」
「強引というかなんというか・・・。まあいい、酒瓶を持ってこいよ・・・あと杯も」
「おっと、やっと乗り気だねェ!」
「その前に・・・。神狩の説教が終わったらな」
「は・・・?え・・・?かがり・・・?」
「萃香、ちょいと我と向うへ行こうか」
「わわっ!すまない!説教だけはやめてくれよ!」
ぶわっと彼女は姿を消し、どこかへ去っていった。
能力のせいか、いかんせん逃げ足が速いというか。
そういえば能力と逃げ足は・・・こいつは関係なかったな。
「神狩、すまないな。俺の不注意で」
「いやいや、いいのさ。萃香が悪いからね。ほら、月見を楽しむがいいさ」
「・・・そうだな。少しだけ、あっちに行ってくる」
俺は神狩の言葉に甘え、縁側から離れ境内へと向かった。
☆ ☆ ☆
理桜side
僕はつまらないなと吐き捨てた。
代わり映えしない夜空を見ながら杯を傾ける。
確かに月はきれいだし、それを見て酒というのも、中々にいいものだろう。
僕には、それができなかった。
「あらあら・・・。やっぱり妖夢がいないとつまらないの?」
「おっと、幽々っち。ごめんね、そう言うつもりじゃないんだ。ただ、月を見て酒を飲むだけの宴会。未成年で本来酒に縁のない僕からすれば、肴もなにもわからないからさ」
「そう・・・。じゃあ、今度春になったら西行妖で花見をしましょう。その時に、楽しみ方を教えてあげるわ」
「そりゃ嬉しい!妖真君も一緒なのかな?」
幽々っちの言葉を聞いて、杯を取り落すほど喜んだ僕は、後ろを見やって、早苗ちゃんと楽しそうに話していた妖真君に聞いた。
「ええ、まあ。幽々子様がお花見をする際には、白玉楼のメンバーは全員集まらないと怒られちゃいますから」
「ふふ・・・。そういうことなのよ~。今回は楽しくなくとも、次回は楽しくなるわよ?」
「そうだね・・・楽しみにしてる。それじゃ、僕は暇だから周りの子たちを茶化してくるね。ちょっと失礼」
「帰るときは呼びかけるから、ちゃんと返事はして頂戴ね?」
「りょーうかーい♪」
そうして、僕は幽々っちの前から立ち去った。
ああやって世話を焼いてくれるのは結構うれしい。
けれど、僕も生い立ちが生い立ちだ。
素直に喜べるかといったらそうでもない。
という謎の思考回路はふっとばして、手近な人たちをおどろかせることにする。
と、そこに紅魔館の連中を発見。ちょうどレミリア様が後ろを見せているね。
「・・・やっほー☆」
「ひゃぁああああああああああ!?・・・なによ、冥界の少年じゃない。私に何か用かしら?」
よっぽど驚いたのか、びっくりしすぎて涙目のレミリア様。肩を振るわえながら冷静に問うてくる。
ワインを飲んでいたのか、そのスカートにはワインが飛び散っている。
あ、これ、早く退散しないと(周りに)殺されるパターンだ。
「ううん、用はないよ。じゃあね!秋兎、咲夜さん、ノアさん!」
「あっ、待ちなさ―――」
「咲夜さん、待って」
「なによ、秋兎」
「ここであなたが離れたら、レミリア様はどうするんだ?」
「・・・それもそうね」
「じゃあ、僕が行ってこようか?」
「・・・レミリア様の精神が」
「・・・わかったよ」
そんな会話を聞きながら、十分効果があったのだとわかってちょっとうれしい。
次の標的を探しながら、僕は妖夢さんを探した。
きっと台所にいるんだろうけど、彼女の料理スキルは日々上がってきてる。
この前だって、ハンバーグを出してくれて僕は心なしか歓喜した(実は好物なのだ)。
洋食にチャレンジしているようで、「咲夜さんにでも習ってるの?」と聞いてみたことがある。
そしたら彼女は・・・彼女は・・・ッ!
問題発言をしたんだ!!!!
『いえ。緋乃さんに、手取り足取り教わっております!』
鼻息荒く。
ふんすと興奮した様子でそう告げて見せた。
よっぽど教え方がいいのか、彼女のスキル向上は彼の貢献によってできているらしくて。
―――あ、今思い出しイライラきましたわー。あー、来ちゃったわー。
心なしか口元がぴくぴくしてる気がする。
いけん、落ち着け、落ち着くのだ理桜よ。
今はまだイライラする時ではない(怒
「・・・いいや、適当にからかったら緋乃を絞めにいこう」
そういった結論に至った俺は、一息ついてまた散策しようと歩いた。
☆ ☆ ☆
sideout
「そういえば、幽々子様」
妖真が幽々子に問う。
「風夜さんはよろしかったので?獣神異変の際にはこちらにいらっしゃってましたが」
「ああ・・・彼ならいいのよ。一層かっこよくなっちゃったから、今は私の部屋よ」
「・・・大丈夫なので?」
「ええ。別に、私縛ったりしてないし」
(・・・そういう問題なのだろうか・・・)
幽々子がのちに語った真実では、「俺幽々子いないと生きてけないんだが・・・。しかたない。お前の部屋で待ってる」としょぼんと落ち込んで部屋に入っていってしまったのだ。
まあ、それを知る由もない妖真は少々疑りつつ、隣で酒をちびちび飲んでいた早苗に話しかけた。
「早苗さん。お酒は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「それならよかった。お楽しみになっているようで」
「ふふ。今回、あなたが教えてくださらなかったら宴会に参加できませんでしたね」
「今日が月見宴会だとあなたがご存じないとは、僕も少しばかり驚きましたよ」
「私だって、神社のことで忙しいことくらいあるんですよ?」
「それは失礼しました」
むすーと頬を含まらす早苗に、妖真はかわいいなぁと思いながら苦笑して謝る。
日々彼女と会う妖真であるが、会うたびに違った表情をする早苗に、やはり彼も惹かれているのであった。
未だ身分違いだと自らを戒めてはいるものの、やはり好きだという感情は表ににじみ出るようで、勘のいい一部の人間や妖怪からは、「付き合っているのか」などとちょっかいを出される始末。
そのたびに違うのだと誤解を解くのに疲れた妖真。
想いを寄せられているとわかっていても、自らの思いには気づいてもらえないその歯がゆさに、今も胸中では泣いているのだった。
「・・・ところで、妖真さん」
「はい、なんでしょう?」
「なんで私に教えてくださったのです?」
「え?」
「?」
妖真は驚き、答えようとし、口ごもった。
それはもう、無意識に教えにいったといってもおかしくないからである。
理由なんて何もない。この言葉を人の多い宴会で言ったら、どう勘違いされてどう冷やかされるかわかりきっている。
「・・・さあ?なんでしょうねぇ」
「ああもう!あなたは最近秘密が多いです!少しくらいは教えてくださっていいじゃないですか!」
「あなたに言えないことだから黙っているのです!それくらいお察しください!」
「なんだかいつの間にか口調も硬くなって!私はただの巫女だと言ってるでしょう?!」
「あなたが現人神であるからこそです!巫女であるない云々以前の問題です!」
・・・口論が始まる。
これは、酒を飲んだ二人が同じような話題でキレると怒る喧嘩で、酒が抜けると途端に熱も冷める宴会恒例の見世物だ。
周りは「また始まったぞ」「おお、今回はどちらが折れるのだろうか」と楽し気に賭けを始める。
それを見ていた青年は溜息をついて、胡坐をかいていた足を解いて、その上に座っていた少女を退かす。
「すまない、フラン。そこで待っててくれ」
「うん!」
青年、ヴェルディはやや青筋を立てながら喧嘩する二人のもとへ歩み寄る。
と、そこでヴェルディの手がつかまれる。
星熊勇儀だ。
「おいおい、酒の肴になってるっていうのに、止めるんじゃないよ、面白くない」
「ほう・・・。別にお前の肴でなくなろうが、俺には影響がないからな。それなら止めに行く」
「興ざめだよ。まったく、せっかく楽しんでたって言うのに、お前さんと来たらわからないね」
勇儀が姿勢を作ったのを見て、ヴェルディはやや呆れ気味に斧を構える。
「・・・やるかい?」
「お前が止めるんだから、しかたないな」
お互いに笑みを浮かべながら、それは始まった。
宴会のノリではよくある弾幕ごっこ。
周りに流れ弾が来るが、それすらも肴にしてしまう妖怪連中は中々肝が据わっていると思う。
「・・・わぁっ、危ないなぁ・・・。ルーちゃん、大丈夫?」
「大丈夫よ。フェアこそかすってない?」
「俺のほうには来てないから大丈夫だよ」
ルーミアに心配されたフェアが、はにかみながら大丈夫と返す。
「ここは危ないね」と苦笑したフェアはルーミアの顔を覗き込みながら問う。
「どうする?抜け出しちゃう?」
「そしたら、霊夢に挨拶しないとね」
「ああ・・・そうだね。しばらく、俺も狼たちのいる里へ向かわないとだし・・・」
「私もついていくからね」
「わかってるよ・・・それじゃ、霊夢さんのとこいこうか」
「うん!」
二人はそんな会話をしながら、席を立つ。
そんな中、激化する弾幕ごっこ。
鮮やかな彩りで、見ているものを夢中にさせて入るのだが。
本人たちの体術による戦闘は、激化するとともに互いの体に傷を作っていくのだ。
本来、危険はあっても『妖怪と人間が対等に戦闘できるように』と作られた弾幕ごっこだし、その中に体術を組み込むものだって少なくない。
ただ、本人たちは『殺し合い』と『弾幕ごっこ』をまぜこぜにして戦っている。見ている実力者たちはそう思った。
そして、それとともにそんな弾幕ごっこをよろしく思わない者もいた。
「アリスさん、どうしたの?」
「・・・美しくない」
「ああ、あの弾幕ごっこのこと?」
「ええ。別に、巻き込まれないなら好きにやってろとは思うけれど、なにもこんな月の綺麗な日にあんな先頭をしなくてもって思わない?」
「まあね・・・アリスさんとの二人きりのいい時間も、邪魔されたわけだし」
酒をあおりながら、詩季は酔った勢いか否か、そんなことを突拍子もなく言い出した。
アリスは溜息をつきながら杯を傾ける。
「・・・何バカなことを言っているの」
「わかってるよ、ここではしない。もちろん、家でゆっっっっっくりと君を愛させてもらうさ」
「・・・あなた、だんだんと兄に言動が似てきたわね」
「だって、アリスさんが大好きだし、あの人の弟だしね」
肩をすくませて苦笑した詩季。
アリスの少しの不機嫌を察して、それ以上は何も言わなかった。
「・・・んじゃ、俺は兄を探してくるよ」
「ええ、わかったわ」
詩季はさりげなく席を立ち、アリスを一人にさせる。
すると、カサカサと茂みから出てきた上海がアリスの膝に座って「シャーンハーイ」といった。
その様子に、アリスは微笑んでしまう・・・・・・詩季は、全力でにやけるのを我慢した。
さてさて、当の理桜はというと。
「妖夢さんに何をしたのかなぁ、緋乃?ちょっと話を聞かせてもらおうか!」
「俺は何もしてねえよ!っていうかパーカーはなせ!のびる!」
「ええい!万年きてるパーカーなんぞ脱いで洗濯してしばらく使えないようにしてやる!」
「万年も生きてない!・・・いや、そのパーカー乾くの早いから、今洗濯してほしても朝には乾く・・・ってか脱がすなド阿呆!」
「阿呆じゃないもん思春期の健全な男子高校生だったもん!今ではもう何年生かわからないけど!」
「んなどうでもいいことはいいんだよ!!離せ!はーなーせー!!!」
緋乃に絡んでいた。
緋乃のパーカーをしっかりとつかみ、理桜は駄々をこねる子供のようにやだやだと首を振りながら文句を言う。
「妖夢さんは僕のだもん~!!!緋乃なんかにゃわたさないもん~~!!!」
「テメェの独占欲なんぞ知るかァ!!!いいから離せってーの!!みんなのとこに行けないだろ?!」
「行かなくていいよ!一生ここに居ろ!!」
「テメーは俺をどうしたいんだよ・・・?」
こぶしを握りながら、緋乃は問う。
と、理桜は嬉々とした表情で言い放った。
「緋乃を調教して妖夢さんの犬にする!!!!」
バキッ
そんな音が聞こえる。
琴羽はそんな音が聞こえたほうを向いて、「ああ」と納得してしまう。
下からは依然「離せよ琴羽!」ともがき続ける魔理沙の姿。
そんな魔理沙を見てか、琴羽は溜息をつきながら「嫌だ」と断った。
「・・・なんでだよぉ・・・」
「君が逃げるからだよ。ほら、なんで怒ってるのか・・・理由を聞かせて?」
「・・・むぅ」
魔理沙はよりもっとむくれ、そっぽを向いてしまった。
「・・・・・・はぁ。もう・・・。魔理沙さん、こっち向いて?」
「・・・なんだよ・・・・・・ッ」
口づけを落とす。
急に口づけされた魔理沙は目をぱちくりと瞬きし、離れた唇を見つめ、言葉にもならない声を上げて口をパクパクする。
徐々にされたことを理解し、彼女はボフンッと顔を赤くさせた。
「な、ななななな・・・?!」
「落ち着いたかな?僕のかわいい人」
「お、おまっ、おまっ?!」
「ん?なに?」
にこやかな笑みを浮かべる彼を魔理沙は直視できず、「うー」だの「あー」だの声を上げて、結局うつむいてしまった。
そんなかわいいかわいい恋人を見た琴羽は「空気に酔ったか」などと苦笑しながら、腕の中の魔理沙をより強く抱きしめる。
「・・・僕、魔理沙さんの手料理も食べたいなぁ、なんて」
「うっ、お、おう・・・。頑張る、けど・・・」
「けど?」
「その、琴羽は―――――――――――」
「はい!今日の宴会料理のメインを持ってきましたよ―――――!」
「頼まれれば別の料理もおつくりしますわ!」
「それじゃあ、咲夜と妖夢。あとは任せたよ」
そんな二人の呼びかけと、藍の二人への声にさえぎられた魔理沙の言葉。
琴羽は、「待ってました!」と笑みを浮かべてから、魔理沙に問う。
「えっと・・・。ごめん、聞いて無かった。もう一回――――」
「琴羽の、馬鹿ぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
月に届くか、と思われたその渾身のマスタースパークは琴羽の身を焼いた。
魔理沙は涙をぽろぽろとこぼしながら、箒に乗って自宅へ帰って行ってしまう。
マスタースパークの火力に焼かれた琴羽は生きてることを確認し、「・・・魔理沙さんナニしたかったんだろ?」と首を傾げ、ひとまず忘れることとした。
☆ ☆ ☆
緋乃side
理桜から逃れた俺は、琴羽と魔理沙の一連のやり取りを聞いて、嘆息した。
(おいおい、恋人そっちのけで飯かよ・・・まあ、別に俺には関係ないけどな)
今しがた、神社へ入ったのだろう、霊夢を探すべく、俺は理桜たちのもとから足早に立ち去る。
神社の中を少々探すと、容易に目的の人物は見つかった。
縁側へ向かおうとしていたらしく、それに俺もとついていく。
「・・・緋乃とは、今日初めてしゃべったかもね」
「今日というか、今日一日ではな。俺もお前も、宴会で忙しかったし」
「まったくね」
「はは、まあいいじゃないか。みんなも楽しんでいるし」
「・・・そうだといいのだけれど」
杯を傾けながら、霊夢は月を仰ぎ見た。
まあるい満月。
綺麗に黄色に見え、黒い暗闇に見える夜空の中で、光を放ち、その姿は鮮やかに目に映る。
ぴちゃんと酒瓶から落ちる水滴が、彼女の杯を満たそうと頑張るも、その量は微々たるものだ。
「・・・きれいだな」
「月見に最適な月夜ね」
「まあ、あいつらは酒飲みたいだけだろうし・・・なァ」
「ん?」
「・・・宴会終わって、二人になったら・・・聞かせたい歌があるんだ」
「あら、それは楽しみね。どんなものなの?」
「それは聞いてからのお楽しみってやつだな。博麗の巫女様のお好みかは知らないけれど」
「ふふ・・・好みだといいわね?」
「そうだな。それを祈るよ」
それきり会話はなかった。
ただ、互いに飲むものを飲んで、月を見上げていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたが月を見る姿。
とても美しくて我は杯取り落す。
驚きこちらを見つめる彼女に。
口づけ送りてほほえみ合いたい。
今日はまだ見ぬあなたの顔を。
求めては願い月見上げ。
あなたの面影がどこかにあるのかと。
我は探して一人涙する。
一万文字超えたよ!!!
改行少な目の少々読みにくい文だったかと思いますが、ここまで読んでくださってありがとうございます。
えっとですね、書き終わってからやっちゃったなって言うのが何か所か。
萃香の口移しシーン。
あれ書き終わったから神狩くんのこと思い出しました。「いいや、このままで」とそのままで行きましたが、神狩君には悪いことをしました。
妖夢の洋食開拓。
本来なら、短編か妖美伝でいれようと思っていた小ネタでした。
おそらくまた妖美伝の日常話で使うかとは思いますが、まあそれを見てから「あ、これってああいう掛け合いがあってからこうなってるんだ」とでも。
一言で言えば、好きな人の好物知って頑張る妖夢ちゃんです。
妖真の早苗さんに対する態度と周りの反応。
書いてる途中でも思いました。
「あれ?これ、一歩間違えれば二人が主役のお話になっちゃうぞ」と。
とりあえずほどほどに触れるだけにして(るはず)、サラッと流しました。
出番のない風夜くん。
はい、理桜との絡みとか考えるのがめんどくさくて飛ばしましたはい。
一応、オリキャラは出せるのは全部出しているつもりです。
本編にも出ていない掛け合いやキャラがいて、妖美伝を書き始めてるからかと苦笑してしまいますね。
今日、僕も満月を見て思うのですが、月ってきれいなんだなぁと。
この言葉、あまり入れませんでしたけど、途中の情景描写は大丈夫だったでしょうか?
はじめと最後の謎の文は、緋乃の聞かせたかった歌・・・のつもりでした。
最初、それにまつわるお話にしようかと思ってたらなんかずれちゃったのであきらめましたが。
では、日付が変わってしまいましたが(二回目)、お月見話はいかがだったでしょうか?
秋企画、または妖美伝、二鬼噺でまたお会いしましょう!