綺麗な君に恋をした   作:(TADA)

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式守さんの新刊に狼谷さんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!


つまりそういうことです


デート

 「変な恰好ではないよな……?」

トイレの鏡の前で最後の身だしなみチェック。

さて、普段だったらまったく気にしない身だしなみを気にする理由は当然ある。

今日はこれから狼谷さんとデートなのだ!!

最近は恒例になっている夜の狼谷さんとのline連絡で、勇気を振り絞ってデートに誘ってみたところまさかのOKをもらったのである(奇声をあげた結果美優母さんを心配させた)

デートは定番かもしれないが映画館。というかそれ以外の選択肢がない。

何せ父親から「デートの定番映画だ。これだったら一発よ」と言われてチケットを渡されたのだ。

中身は確認していないが、まぁ、父親もキチガイだけど鬼ではないから息子の恋路を邪魔するチョイスはしないだろう。

最後に髪の毛をちょいちょいと弄ると俺は待ち合わせ場所に向かう。

そして愕然とした。

 「狼谷さんがもう来てる……!?」

狼谷さんを待たせるとか完全に切腹案件なのでダッシュで向かう。

 「ごめん、狼谷さん!!」

 「ああ、塩見くん早かった待って待って、土下座はしなくていいから!!」

速攻で土下座を決めようとしたのだが、狼谷さんに止められてしまった。

 「いやでも誘っておいて狼谷さんを待たせるとか完全に土下座案件だと思うんだよ」

 「私が勝手に先に来ていただけだから気にしないでいいよ」

 「女神か……」

 「え?」

余計なことを口走った自分に頬パンチ。

とりあえず二人で歩き出す。

 「狼谷さん、今日部活は?」

 「私は休みだよ。塩見くんは?」

 「うちも休み」

 「……さっき、学校に向かう吹奏楽の娘がいたけど?」

 「きっと自主練だな。なんか知らないけどみんなが急にやる気出してきて俺が迷惑」

俺の言葉に狼谷さんは苦笑している。そのお姿もお美しい。

ちなみに今日は吹奏楽部はバリバリある。さっきからスマホが鳴りやまないのは果たして誰からの連絡だろうか。

 「今日行く映画館、私も少し調べてみようと思ったんだけど、ネットに情報がなかったんだよ」

 「ああ、あそこはホームページとか持ってないから。昔の名作を定期的に入れ替えて並べて、映画ファンを集めている感じ」

 「へぇ。詳しいんだね」

 「うちと仲野家はよく連れていかれていたんだ。父親と叔母曰く『名作もクソ作品も両方知っておかないとダメ』とかいう謎理論で大量のクソ映画も見せられたけど」

俺の昔話に狼谷さんはくすくすと笑う。

そのお姿もお美しい……

そんな狼谷さんとイチャラブ会話を楽しんでいたら映画館に到着する。

 「色々な映画がやっているね……タイトルは聞いたことがある作品ばっかりだ」

 「割と名作は名前だけ有名っていうのも多いからなぁ。ああ、ちょうどやってるウェストサイドストーリーは有名だよ」

 「そうなのかい?」

狼谷さんの言葉に頷いてから口を開く。

 「いわゆる歌って踊るの走りなんだけど、内容は超差別的で黒人の出番はいっさいなし。これは黒人は人として扱ってなかったからって言われてる」

 「……それはすごいね」

 「内容は簡単に言うとロミオとジュリエットなんだけどね」

俺はそう言いながら父親が用意してくれたチケットを見る。今日の上映ラインナップを見る限りどれでも当たりだ。この映画館でこんなに当たりがあるのは珍しいくらいである。

 『プラン9・フロム・アウタースペース』

俺は一度チケットを封筒に戻しながら再びチケットを確認する。

 『プラン9・フロム・アウタースペース』

 「っていやクソ映画ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

俺は怒りのあまりチケットを引き裂いてしまう。だが仕方ない。まさかの息子の記念すべき初デートに特大急の地雷を仕込んでくる父親がいるだろうが。

 「ど、どうかしたのかい?」

突然の変貌に驚いたであろう狼谷さんの声に俺は正気に戻る。

 「ご、ごめん。父親から特大急の嫌がらせをされてちょっと正気を保っていられなかった」

そして俺は一回大きく深呼吸する。

 「ごめん、狼谷さん。うちの父親の勧めてきた映画が控え目に言ってクソ映画だったから、別のを見よう。何かみたいのはない?」

 「そうなのかい? それだったら……」

そういいながら今日の上映予定のラインナップを確認する狼谷さん。ぶっちゃけその美しい横顔をスマホで写真に収めておきたいが、我慢する。

 (今日の上映予定を見る限り地雷はプラン9・フロム・アウタースペースくらい……残りは普通に楽しめる作品ばかりだ。勝ったな、風呂入ってくる)

 「それじゃあこの『プラン9・フロム・アウタースペース』って作品かな」

 『ざわ!!』

狼谷さんの発言に周囲の映画ファンがざわつき、チケット売りのおじさんがカモーンポーズをとっている。

そんな周囲の反応に狼谷さんは不思議そうに首を傾げる。

 「狼谷さん」

 「な、なんだい?」

 「それは金と時間の浪費だ。もちろん狼谷さんがその地獄を体験したいというのなら俺も覚悟を決めるけど、先に言っておくとその作品はクソだ」

 「塩見くんがそこまで言うのかい?」

 「いやガチで。小さい頃に夢月や式守と一緒になって父親と叔母に見せられたけど、幼い心で『こんなクソ映画があるのか』ってある種の感動を覚えたから」

 「……仲野はともかく式守さんも一緒になってみたのかい?」

 「たまたまうちに遊びに来ていて巻き込まれたとも言う」

その時は式守のお兄さんも一緒に地獄に落ちた。

そして狼谷さんは笑顔で告げる。

 「よし、この作品を見よう」

 「狼谷さん!?」

 「いいかい塩見くん。人はたまには下を知ったほうがいいんだ。名作ばっかり見ていたら人は逆にダメになってしまう。だから今日はクソ映画を見よう。これは決して君と式守さんには共通の話題があって羨ましいなんて気持ちから出たわけではないんだ」

ぶっちゃけ狼谷さん『クソ映画を見る!!』宣言のせいで言葉の後半は聞いていなかったが、いいだろう、覚悟を決めろ塩見周!!

 「おっちゃん、これでいいか?」

 「ああ、その嬢ちゃんの気概に免じて許してやる」

俺が引き裂いたチケットを見せるとおっちゃんは不敵な笑みを浮かべながら許してくれた。

 「嬢ちゃん」

 「あ、はい」

そしておっちゃんは狼谷さんに話しかける。

 「楽しんできな」

 「はい!!」

狼谷さんの眩しい笑顔。俺はその笑顔が曇るのを予想して顔を顰めるのであった。

 

 

 

 (ど、どうしよう)

狼谷は焦っていた。

周と一緒にクソ映画をみたこと?

いやいや、それはあまりにクソ映画すぎて逆に二人でテンション上がって盛り上がったくらいだ。

ならば何かやらかした?

確かに式守と周の共通の思い出に嫉妬してクソ映画を見ることになったが、狼谷も映画館で一緒にみたのでイーブンだ。

ならば何故焦っているのか?

 「悪いな、狼谷ちゃん。周の奴が連行されちゃって」

 「あ!! いえ!! 大丈夫です!!」

つい返事が大きくなってしまったが、目の前の男性はそれを軽く笑う。

目の前の男性こそが狼谷が緊張する一番の理由。

塩見の父親の塩見周介であった。

流石にクソ映画だけ見て終わるのはどうかと思った周はその後にインド映画の『きっと、うまくいく』で口直しをしたのだが、インド映画は総じて長い。そのために暗くなってしまったので、周が狼谷を晩御飯に誘ってきたのだ。

周からの誘いなら即オッケーの狼谷である。内心でラッキータイムに喜んでいたら、連れてこられたのはまさかの周の父親が経営するお店であった。

いつかご両親に挨拶をして『周くんと結婚させてください!!』と頼むイメージトレーニングはかかさない狼谷であったが、まさか初手ラスボスとは思わなかったので緊張しているのだ。

 「しかし、狼谷ちゃんには悪いことしたな。周の奴がデートするっていうから相手はてっきり夢月だと思ってクソ映画チケットを入れておいたんだが」

あ、あれは身内に対する外道行為だったんですねぇ、と内心で思いつつ狼谷は口を開く。

 「い、いえ!! 楽しかったです!!」

言った後に気づく。狼谷的には『周と一緒に映画に行けて楽しかったです』のつもりだったのだが、今のだと『クソ映画が楽しかったです』と受け取られかねないことに。

 「あ!! いえ!! 違うんです!! いえ、違わないんですけど!!」

 「ああ、いや。わかった。うん、クソ映画を楽しめる感性は大事だからな」

 「違うんです!!」

狼谷の言葉に周介は笑った。

 「冗談だよ。しかし、周が夢月以外の女とデートするとはなぁ」

その言葉に狼谷はどこかひっかかりを覚える。

 「式守さんとは出かけないんですか?」

狼谷の言葉に周介は新しい料理を出しながら口を開く。

 「お隣の式守ちゃんとは煽ったり煽られたりする仲だけど、一緒に出掛けるっていうのは聞いてないな。まぁ、お互いの部屋を行き来しているが」

狼谷は周介の料理の美味しさに驚きながらも会話を続ける。

 「仲野と出かけるのは普通なんですか?」

 「うん? まぁ、あの二人は双子だからなぁ」

 「え?」

まさかの爆弾発言である。周介も言った後にやっちまった表情を浮かべている。

 「まぁ、いいか。俺の奥さんが不妊症でな。子供ができなかったんだよ。んで、そしたら俺の妹……塩見周子ってタレント知ってる? そう、そのキチガイ。そいつが『あ、私んところ双子だからどっちか兄ちゃん夫婦にやるわ!』ってなってなぁ」

 「え~と、それはなんていうか……」

狼谷は言葉に困る。何せ本来ならものすごく重たい話のはずなのにものすごく軽く言われてしまった。

発言に困る狼谷。そこにちょうどよく周が戻ってきた。

 「うお……流石にスピリタス連続二杯はきっつい。親父、水」

 「ほれ」

周介が出してきた透明の液体に周は黙ってライターの火を近づける。

液体に火がついた。

 「スピリタスじゃねぇか!!」

 「色は水だ。黙って飲め」

 「だから飲み物を色で判別するな!!」

そう言いながらも周はスピリタスを一気に飲み干す。そして何かに気づいた。

 「おい、クソ親父。狼谷さんに余計なこと言ってないだろうな?」

 「それはお前の初恋が詩音だったこととかか?」

 「余計なことを言うなクソ親父ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

速攻で周介の胸倉を掴む周。煽りの表情を浮かべる周介。そこには本当の親子の絆を感じ取れた。

 「ちなみにお前が夢月ちゃんと双子ってことは言った」

 「あ、それくらいだったら別にいいわ」

 「って!? いいのかい!? 結構重要な話だと思うけど!?」

狼谷の言葉に周はあっけらかと言い放つ。

 「いいのいいの。狼谷さんには知っておいて欲しかったし」

その言葉に狼谷の胸がキュンとしたのは言うまでもないだろう。




塩見くん
部活より狼谷さんとのデートを優先する男。実は養子である。

狼谷さん
狼谷さんのハイパーラッキーデイ。塩見くんとデートできたうえに秘密も知れた

塩見くんぱっぱ
居酒屋店主。息子に対しても平然と外道行為をするキチガイ

飲兵衛お姉さま集団
デートでお店にやってきた塩見くんを捕まえて狼谷さんとの関係を聞きだした。そしてとりあえずスピリタスを飲ませた




式守さん新刊!! か~ら~の!! 新刊で狼谷さん成分供給!! こいつは書くしかないぜ!!
って感じで塩見くんと狼谷さんのデート回。イチャイチャを書きたかったんですけど、イチャイチャにできなかったです。無念

そしてさらっと明かされる塩見家の秘密。実は周くんは養子だったのです!! ちょいちょい周くんが「母親に似て美形」と言っているのは実母の塩見周子のほうだったのです。
まぁ、養母も三船美優さんって美人だから間違ってはいないのですが。

この秘密を狼谷さんにぶちまけたいからデートをさせたとも言います
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