綺麗な君に恋をした   作:(TADA)

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可愛いだけじゃない式守さん熱が冷めるどころか燃え上がったので連続投稿です


体育館にて

 「ふ、二人とも大丈夫?」

和泉の心配そうな声に俺と犬束が息がたえたえで答えることができない。

今は体育の時間。当然のように発動される和泉の不幸にいつの間にかできていた『塩見と犬束は和泉を不幸から守らなければならない』と言う謎ルールを遵守した俺と犬束が傷だらけになって倒れ込んでいる。(ちなみに和泉本人も傷だらけ

 「和泉さん、体育一緒だったんですね」

 「式守さん!!」

 「おい犬束見たか? 俺達を心配そうにしていた和泉が速攻で笑顔になったぞ?」

 「男の友情なんてそんなもんなんだろうな」

 「そ、そんなことないよ!!」

慌てた様子で否定してくる和泉。そのまま犬束の手当てに入る。そしてそれに嫉妬した式守が俺に和泉から見えない位置で蹴りを入れてくるまでがワンセットである。

 「女子もバスケだったんだね」

 「はい、隣のクラスと試合をやってます」

和泉と式守の会話に気づくことがある。隣のクラスと言うと3組だ。彼女もいるはず。

そう思って体育館(無駄に広くてムカつく)を見渡す。

いた。

彼女はたくさんの友人に囲まれながら談笑している。ただぼんやりと彼女を眺めていると、彼女がこちらを向く。

視線の先には和泉。

その事実に胸がチクリと痛む。

わかっている。納得もしている。だって和泉はすごいいい奴だ。それは友人をやってる俺が一番理解している。

だから彼女が和泉に惹かれるのは理解できる。

俺は必死に自分に言い聞かせている事実に自嘲する。

どんなにもがいても彼女が自分に振り向くことはない。だって彼女の視界には和泉しかいない。

俺は彼女から視線を外して床に寝そべる。体育館の高い天井を見上げながらボンヤリと考える。

別に彼女と付き合いたいわけじゃない。いや、できれば付き合いたいし周囲からキレられるくらいイチャイチャしたいと思っているがそれは叶わない夢だ。

俺はごろりと首を曲げて和泉を見る。

犬束の手当てをしながら式守と楽しそうに会話をしている。見ているこっちが砂糖を吐きそうになるが、間に挟まれて糖分過多で死にかけている犬束よりかはマシである。

 (タスケテ)

 (断る)

俺と犬束の心温まるアイコンタクトである。

犬束が死んだら『イチャイチャ糖分過多で人は死に至る』と言う論文を書こうと思っていると二人の女子生徒。

 「お〜い、みっちょん」

 「そろそろ出番だぞ」

 「あ、二人とも」

やってきたのは式守の友人である猫崎と八満。

 「おいおい、八満出るのかよ。大丈夫? 救急車呼んでおくか?」

 「安心しろよ、乗るのはそこで死にかけてる犬だから」

 「づ、束をつけろ……」

俺の軽い煽りに平然と乗っかる表情筋が死んでる運動音痴の八満。そして死にかけながらも突っ込む犬束。

 「あ、式守さん出番なんだ」

 「はい」

そんな会話をする和泉と式守。

 「僕、式守さんのかっこいいところを見たいな」

何気なく告げた和泉の言葉に俺達(俺、犬束、猫崎、八満)は戦慄する。和泉大好きな式守に和泉がそんなことを言う? そうするとどうなるか。

 「あ、じゃ、じゃあ行ってきますね!!」

照れている式守は和泉に顔を見られないようにコートに行こうとする。だが途中で立ち止まって上のジャージを脱いで和泉に投げ渡す。

 「持ってて。和泉さんの分も頑張るね」

 (い、イケメン)

俺達の心が一つになった瞬間である。なにせ言われた和泉も顔が真っ赤である。

コートの中心に行った式守を見送ると対戦相手も視界内に入る。

彼女がいた。

彼女はいつもの優しそうな微笑を保ちながら立っている。

そしてこちらに視線がチラリと向けられる。そして一度目を瞑って開いた時には真剣な表情を浮かべていた。そして式守と睨み合う。

それを見て再び俺の心がチクリと痛む。

 (そんなに和泉のことが好きなのかぁ……)

 「……ヘコむなぁ」

 「? 塩見くん、何か言った?」

和泉の言葉に軽く首を振ってから上体を起こして女子の試合を見ることにした。

 

 

 

 

彼女だけには負けたくない。

狼谷は相手のパスをカットするとすぐにドリブルをして相手の陣地に切り込む。

彼の心を独り占めする彼女だけには負けたくない。

狼谷の前に立つのは式守。その表情は真剣さに満ちている。狼谷はチラリと彼を見る。

彼は式守を見ていた。

その事実に狼谷は本当に小さく舌打ちをした。

式守には和泉と言う素敵な恋人がいる。それでも彼の心も奪っていくのか。

 「っ!?」

一瞬の隙だった。その隙に狼谷の持っていたボールを式守に奪われていた。

一気にボールをゴールの下まで持っていかれる。そしてそのままゴールを決められた。

その事に狼谷の頭に血が昇る。味方のパスを受けて狼谷は一気にドリブルで持っていく。そして狼谷はスリーポイントのラインからシュートを放つ。

狼谷の放ったシュートは綺麗にゴールに決まった。

狼谷がつい彼の方を見ると笑顔で拍手をしていた。

その事実に狼谷の心が少しだけ暖かくなるのであった。

 

 

試合後、狼谷はクラスメイト達と会話しながらも彼を盗み見る。

試合結果は狼谷達の負けだ。式守だけじゃなく、猫崎もいたのが敗因の原因だろう。式守と和泉は笑顔で会話をしていて、それを見た彼らは砂糖を吐くジェスチャーをしている。

そして和泉と猫崎が会話を始めると式守は未だに倒れ込んでいる彼の側でしゃがみ込む。

彼と式守はお互いに中指を立てあっているが、それはお互いにある信頼の裏返しであろう。その証拠に二人は笑顔だ。

 「……ちょっと顔を洗ってくるよ」

狼谷は友人達にそう言って一人で体育館から出て水道に向かう。水道を捻ると冷たい水が出てくる。狼谷は手に水を貯めて顔を洗う。

その時に思い浮かぶのは式守と楽しそうに会話をする彼の姿。それを思うと狼谷の心が痛む。

狼谷は振り払うように水道の下に頭を突っ込んで水をかぶる。それは自分の悩みも洗い流して欲しいと思っての行動であった。

 「……私じゃダメなのか」

狼谷の呟きを聞いた人はいない。

 




塩見くんと狼谷さん
今日もお互いにすれ違う

式守さんと和泉くん
ラブラブカップル

犬束くん
今日一番の被害者



熱は熱いうちに打て。そんなわけで『短編一本書いたら熱冷めるかなぁ』と思ったら逆に燃え上がったので連続投稿です。
今回も元気にすれ違う塩見くんと狼谷さん。作者はラブコメが好きなはずなのになんでこんなシリアス風味になってるの?
と言うか塩見くんと狼谷さんはどっちでもいいから告れ。それで解決するから
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