新学年と書いてクラス替えと読む
桜咲く通学路。そこを俺は一人歩いている。途中であった顔見知りは俺に声をかけようとしていたが、俺の表情を見てやめたらしい(後で聞いた)
俺の表情は真剣そのものだろう。当然である。
(狼谷さんと同じクラスになる……!!)
その一念である。狼谷さんと同じクラスになるために加持祈祷は当然としてネット通販の怪しいものにも手を出した(母親は心配し、父親と叔母は『流石は塩見の血』と納得していた)
そう! 全ては狼谷さんと同じクラスになるため!!
成瀬さん情報で狼谷さんは1組という情報を仕入れている(俺の財布から500円玉が一枚消えたが)
あとは俺が1組になれば狼谷さんと同じクラスでふとした瞬間に目があってふふふってなったり、狼谷さんが髪をあげた時にうなじが見えたり、日直が一緒になって放課後二人で教室に残ったりするような楽しい高校生活が待っている……!!
「塩見ぃ! おっす!!」
「犬束か」
そして見事に空気を読まずに俺に話しかけてくる犬束。今日も袖を捲り上げて腕白イメージを崩していない。
「あれ? 和泉と式守は?」
「後から来るだろ」
犬束の言葉に俺は軽く返す。おそらくあのイチャイチャカップルは今日も周囲に桃色オーラを振りまく恋人なし生徒(たまに教師)に静かなダメージを与えているんだろう。
俺と犬束は二人のテロの被害を受ける被害者達に黙祷を捧げる。
「クラス替えどうなるだろうなぁ」
「なぁ、犬束。和泉と同じクラスになりたいけどなりたくない気持ちはお前ならわかってくれると思うんだ」
俺の言葉に犬束は力強く頷いてくる。学年末の頃になるとクラスだけでなく学年全体で『和泉担当は塩見と犬束』という暗黙の了解ができていた。
「俺達にできることはできる限り他の奴らを巻き込んで被害を大きくしてやることだけだよな」
「それな」
犬束の言葉に俺が頷くと、周囲にいた他の生徒からブーイングを食らい、それに俺と犬束は中指をたて返すということが起こったが概ねいつも通りである。
「おぉ、すげぇ人だな」
「少し前に行くか」
そしてクラス替えが張り出されている掲示板の前には凄まじい人だかりができていた。犬束と二人で人混みをかき分けながら前へと進む。
そして俺達は掲示板を確認する。
(OK、成瀬さんの情報通り狼谷さんは1組だ。ならばあとは簡単だ。男子の名前の中に俺の名前を探せばいい。気合いだ……気合いを溜めろ……)
「なにぶつくさ言ってんだ?」
犬束の言葉を無視して俺は気合いを溜め続ける。
(ここだ……!! ここで俺の一年が幸せか決まる……!! 大丈夫だ、母親に心配されながらも加持祈祷はしっかりしたり御百度参りもちゃんとした……!!)
「いざ……!! 勝負……!!」
「お、塩見。俺と同じ4組じゃん。よろしくな」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「グボッファァァ!!!!」
流れるようにネタバレかました犬束に、つい俺は拳を叩き込んでしまう。ガチめの悲鳴をあげながらうずくまる犬束だったが、和泉の不幸に慣れているのですぐに立ち上がって俺の胸ぐらを掴んでくる。
「テメェ!! 何しやがる!!」
「うん? オコですか? オコですか? 残念ながら私の方はファイナルギガンティックエクストリーム激オコプンプンドリームですよ?」
「頭のおかしいこと言ってんじゃねぇぞ!!」
そのまま乱闘を開始した俺達はやってきた応援団(超武闘派)によって即座に鎮圧された。
二人でボコボコにされた体を引きずりながら人の輪から出ていく。
「イッテェ、なんだよ応援団の連中。本当に人間かよ」
「あいつら隣町のヤのつく自由業の方々の事務所に殴り込んで壊滅させたって話だぞ」
「こわ」
犬束と我が校の頭のおかしい強さを誇る応援団の話をする。
「そういや、他に誰がいた」
「あ〜、俺と塩見、和泉、式守、猫崎、八満はいたな」
「いつものメンバーは一緒か」
「そうみたいだな」
そして俺と犬束は真剣な表情になる。
「俺と犬束と和泉が一緒にクラスにされたのには大きな理由があると思う」
「その心は?」
「和泉の不幸担当枠」
「ファキン学校」
そんな話をしながら和泉と同じクラスになれてガッツポーズを決めている式守と嬉しそうな和泉。砂糖を吐くジェスチャーをしている猫崎と八満に合流するのであった。
「彼は4組か」
狼谷さんは掲示板を見ながら呟く。同じクラスになるために加持祈祷や御百度参りをしたが無意味であったらしい。
「や、狼谷」
「成瀬」
そして一人でいる狼谷に平然と声をかけてくる狼谷と友人の成瀬。狼谷にここまで気安く声をかけてくるのは猫崎と成瀬くらいだ。
狼谷が振り向くといつも通りに胡散臭い笑顔を浮かべた成瀬と、高校生離れしたスタイルを持つ女子生徒が一人。
狼谷も割と高校生に見えないとよく言われる(主に成瀬に)が、この女子生徒も雰囲気が高校生離れしている。どちらかと言うと新妻といった雰囲気だ。
「成瀬、彼女は?」
ちょっと困惑しながら狼谷が問いかけると、成瀬は純度100%の胡散臭い笑顔を浮かべる。
「彼女は仲野夢月。今年は同じクラスの子だよ」
「え〜と、よろしくお願いします」
「あ、ああ」
つい返答が詰まってしまう狼谷。仕方ない。人付き合いが苦手な狼谷に初対面からグイグイ行けと言うのは無理がある。
そして成瀬は背伸びをして狼谷の耳元で呟く。
「彼女は塩見君とは従兄同士の間柄だそうだ」
「仲野さんだったね。今年一年よろしく頼むよ」
「え? あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
掌くるっくるな狼谷に困惑する仲野であった。
塩見くん
狼谷さんと同じクラスになるために色々した結果、母親から頭の心配をされた。ちなみに父親と叔母は『それでこそ塩見の人間』と納得だった模様
狼谷さん
塩見くんと同じクラスになるために似たようなことをやっていた
犬束くん
今日も元気に貧乏くじ
和泉くん&式守さん
同じクラスで超絶ハッピー!!
仲野さん
狼谷さんの新しい友人。塩見くんの叔母である周子さんの娘。つまり塩見くんとは従兄妹
新刊が出て狼谷さん成分が十分に補給されたので更新です。
って言うか新刊の狼谷さん!! 可愛すぎる!! 犬束とか猫崎とか八満のキャラも掘り下げられましたけど、作者は狼谷さんを推したい!!
人付き合いが下手な狼谷さんも可愛いよ!!
ちなみに新キャラの仲野さんですが別作品のキャラです。そちらは『だんちがい』という四コママンガのキャラになっております。個人的にそちらの作品もおすすめです。
好きだから出したとも言う。