猫姫と桃色姫のホヤの物語   作:柳しをん

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はい、またまた始まりました。
いつも読んでくださってる方なら、お分かりでしょう。
いつもの、息抜き企画です。
しかも、生意気なことに、前後編!
正直、息抜きのつもりが、長編になって、やべぇと戦々恐々としています…。

と、私のどうでもよろしい身の上話はこのくらいに…。

今回のお話は、甘いようで甘くないけど、甘いお話です。
タイトルの意味は、そのまんまです。
あ、ホヤは出てこないですよ?
ホヤがなんなのかわかっていれば、この話の展開が予想できると思います。

あと、全国のさやかファンの皆様、申し訳ございません。
キャラ崩壊の対象は、さやかです。
悪さやかです、はい。
さやかファンの皆様は、そっとじしていだいても…。

と、いうわけで…どうぞ!


猫姫と桃色姫のホヤの物語 前編

私には、最近気になる人がいるのです。

「あっ、鹿目さーん!」

猫のしっぽのような三つ編みを揺らし、こちらに駆けてくる愛らしい少女。

「どうしたの、ほむらちゃん?」

「はぁ…はぁ…えっと、今日、一緒にご飯食べませんか?」

「え?う、うん!もちろんだよ!」

予想外のお誘いに、少し驚いてしまいます。

「本当ですか!?えへへ、嬉しい…。」

ほむらちゃんは凄く幸せそうに笑います。

私は、そんなほむらちゃんの笑顔が大好きです。

「それじゃあ、屋上で食べよっか。」

「はい!」

「あ、ごめんね、ほむらちゃん。お弁当持ってくるから、ちょっと待ってて?」

「あ、はい。」

 

教室に戻ると、さやかちゃんと仁美ちゃんがお弁当を机に置いて待っていました。

「お、まどかおそーい!」

「まぁまぁ、さやかさん…。」

「ふ、二人ともごめんね?今日、ほむらちゃんと屋上で食べることになったんだ…。」

「…っ。そうなんだ、楽しんできなよ。」

「では、私達だけでいただきましょうか。」

「まどかー!後で、約束破った罰ゲームだからなー!ふはは、楽しみにしておけー!」

「もう、さやかちゃんはいつもそればっかりなんだからー!」

私はさやかちゃんに悪態をつきつつ、急ぎ足でほむらちゃんの元へと戻ります。

 

「はぁ、はぁ、ごめんね、ほむらちゃ…!」

「か、鹿目さん、大丈夫ですか?まだ時間はあるから、少し休んでから行きましょうか?」

優しさが身にしみる〜…。

「…うん、もう大丈夫!」

「えへ、よかった。それじゃあ、行きましょうか。」

 

「いただきます。」

「いただきまーす!」

「わぁ、ほむらちゃんのお弁当、美味しそうだね!」

「あ、ありがとうごさいます…。鹿目さんのお弁当も凄く美味しそうですね!」

「これ?パパが作ってくれるの。すっごく美味しいんだ!」

「そうなんですか。お料理上手のお父様なんですね。」

「うん!自慢のパパなんだ!」

「…。」

ほむらちゃんは物欲しそうに私のお弁当を見つめ、自分のお弁当に戻り、食べる、ということを繰り返しています。

「あの、ほむらちゃん?」

「あ、はい、なんですか?」

「これ、食べる…?」

「え!?」

ほむらちゃんは凄く驚いた顔をしたあと、顔を赤くして俯いてしまいました。

「…えっと、ありがとう、ございます…。」

ほむらちゃんはおそるおそるといった感じに、私のお弁当に手を伸ばす。

「あ、ちょっと待って!」

ほむらちゃんの箸を私の箸で制止します。

「ど、どうしたんですか?」

「えっとね…はい、あーん!」

ここで少しでも私のことを意識してもらわなきゃ…!

「え…ええ!?」

「ほら、ほむらちゃん、早く!」

「は、はぃ…。あ、あーん…!」

恥じらいながらも食べてくれるほむらちゃん、可愛いなぁ…。

「ん…これ、おいしいです…!」

「よかったー!…って、私が喜ぶのもなんか変だね。えへへ…。」

「…あ、あのっ、鹿目さん!」

「んー?」

「この卵焼き、食べ、ませんか…?」

ほむらちゃんはふるふると震えながら、私に卵焼きを差し出します。

これがまた、小動物みたいで…かわいいんです。

「わぁ、くれるの!?ありがとう、ほむらちゃん!」

「そ、それで…。あ、あーん!」

「ふぇっ!?」

「さ、さっきのお返しです!私ばっかり恥ずかしい思いするのは嫌です…!」

「え、えぇ…!?」

「ちょ、ちょっと待っててね…。」

まさか、こんな反撃受けるなんて…!

あーんされるなんて聞いてないよ!

そ、それに、よく考えたらこの箸で、ほむらちゃんと間接キスしちゃったんだ…!

うわぁ、私、なんて恥ずかしいことしてるのー!

というか、今からほむらちゃんとあーんしたら、ほむらちゃんの箸にもついちゃうわけで…!

あ、頭が、混乱してきた…!

私があわあわ情けなく鳴いていると…。

「…やっぱり、嫌ですよね…。」

あ…ほむらちゃんネガティブモード。

この状態になると、だんだんと頭が下がっていって、泣いてしまうんです。

そして、中々止まらない。

「わわっ!そ、そんなわけ…」

「今日、実は作るの失敗しちゃって…そんなのたべたくないですよね…。はぁ…。」

「いいんです、分かってます…。見た目も汚いし、全然上手くできないし…。」

ほむらちゃんの手には絆創膏が貼られています。

「ま、待って、ほむらちゃん!」

「私、食べるよ!全然嫌なんかじゃないよ!」

「…えへへ、鹿目さんは優しいですね。いいんです、嫌なら嫌って言ってくれて…。」

「これは…ぐすっ…私が食べますから…ぐすっ…。」

こうなってしまったら、手段はただ一つ。

強行突破しかないのです!

「はむっ!」

私は無理矢理ほむらちゃんの手を取り、箸で掴んでいた卵焼きを食べます。

「か、鹿目さん!?」

ほむらちゃんの作った卵焼きは、甘くて美味しい。

砂糖で味付けをしてあって、量も私好み…。

「ん…これ、すっごく美味しいね!」

「ほ、本当ですか…?」

「私が嘘ついてると思う?」

ほむらちゃんは頭をブンブンと横に振ります。

…かわいい。

「ご、ごめんなさい、疑ったりして…。」

「ううん、いいの。元々私が悪いんだから、気にしないで!」

「…鹿目さんに美味しいって言ってもらえて、凄く、嬉しいです…。」

「えっと、その…ありがとうございます!」

ほむらちゃんは凄く素敵な笑顔を見せてくれました。

それこそ、神からの贈り物なんじゃないかってほどの。

私が抱きつきたくなる衝動を必死に抑え、当たり障りのない返事をします。

「そんなー、大げさだよー!」

「でも、私本当に、すっごく嬉しかったんです。」

「実は…今日、このお弁当、鹿目さんに食べてもらいたくて、作ってきたんです…。」

「多分、私、鹿目さんに美味しいって言ってほしくて作ったんです。きっと、誰に言われるよりも、嬉しいと思うんです…。」

「…えへっ、いきなり変なこと言ってごめんなさい。食べましょうか。」

…この子、私を殺す気…!?

かわいすぎる〜!私のためって!私のためって言ったぁ!

それに、私に言われるのが一番って…!

いくらでも言うよ!ほむらちゃんが喜んでくれるのなら!

「鹿目さん?食べないんですか?」

「え!?あ、うん!食べる、食べるよ!」

 

今日のお昼は幸せだったなぁ…。

また一緒に食べたい!

まどか

 

「さやかさん、どうしたのですか?箸、止まってますわよ?」

「…。」

「さやかさん!」

「わぁっ!ど、どうしたの、仁美?」

「もう…なにぼーっとしてるんですの?早く食べないと、お昼休み、終わっちゃいますわよ?」

「あはは、ごめんごめん。」

「本当に分かってますの?」

「もー!仁美はしつこいなー!大丈夫だってばー!」

「…ならいいのですけど。」

 

「…なんだってまどかはあんな奴の方に行くのよ…!」

「あたしと一緒じゃ満足できないの…!?」

 

今日のお昼は最高につまんなかった。

仁美はうるさいし、まどかは泥棒猫にひょいひょいついてくし。

本当、最悪。

さやか

 

「よっしゃー!今日の授業終わりー!」

「あはは…ていうかさやかちゃん、ずっと寝てただけじゃ…。」

「それは言わない約束!…と、まどか、ちょっと…。」

「え?どうしたの、さやかちゃん?」

私はさやかちゃんに手を引かれるままに、どこかへ連れて行かれてしまいます。

…ホントは、ほむらちゃんと帰りたかったんだけどな。

「…ここならいっか。」

「どうしたの、さやかちゃん?」

「まどか、あたしってまどかの親友だよね?」

「うん、そうだよ?」

「一番、だよね?」

一番、という言葉に私はうんと頷くか、少し躊躇ってしまいます。

…ほむらちゃん。

今は、一番にはなれてないから…。

「…うん、そう…なんじゃないかな。」

「じゃあ、約束。」

「や、約束?」

「そう。絶対に裏切らないっていう、約束。」

「う、うん…。」

 

さやかちゃんがいきなりあんなことを言ってきて、びっくりしちゃった。

…なにか、しちゃったのかな?

まどか

 

私が教室に戻ると、鞄を持って待っている猫がいました。

「あ、鹿目さん!」

見えない尻尾があるような気がします。

「ほむらちゃん、どうしたの?まさか、私のこと待っててくれたの?」

「はい!…えっと、一緒に帰りませんか?」

「うん、もちろん!」

私がそう言うと、ほむらちゃんは笑顔になります。

「…えと、その、できたらで、いいんですけど…。」

ほむらちゃんは顔を赤くして、モジモジしながら、こう言いました。

「ショッピングモールに、寄り道していきませんか…?」

あぁ…なんてかわいい生き物なんだ…!

「…もちろんだよ!ほむらちゃんから誘ってもらえるの、初めてだから嬉しいな!」

「ほ、ほんとですかっ!?えへ、えへへ…。」

「じゃあ、どのお店に行こっか?」

「私は鹿目さんと一緒ならどこでも…きっと、楽しいと思うので…。」

胸がキュンキュンする〜!

どこでそんなセリフ覚えてきたの〜!?

「もー!ほむらちゃん、かわいいー!」

「わわっ!か、鹿目さん!?な、な、なにして…!?」

私が抱きつくと、大抵ほむらちゃんは、こんな感じであたふたします。

それがまた、私の心を煽るんです…!

「か、鹿目さん!ここ、教室ですよ〜!?」

 

最近、鹿目さんが積極的です。

ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいなって…。

でも、美樹さんが、ときどき悲しそうというか、とにかく怖い目でこっちを見てることがあって…。

みんなで仲良くできたらいいな…。

ほむら

 

「それで鹿目さん、どこに連れて行ってくれるんですか?」

「んーとね…最近できた雑貨屋さんがあるの。私もチラッと見ただけなんだけど、かわいいのがディスプレイされててね、気になってるんだけど、どうかな?」

「わぁっ…!そこにしましょう!」

ほむらちゃんは目をキラキラさせて、私に言います。

「えへへ、よかった。ほむらちゃんに合って。」

「でも、その前にハンバーガー屋さんに行こっか?」

「はい!」

 

「えーっと…ここ、来るの初めてなんですけど…。」

「そう言えば、ほむらちゃんとはここ、来たことなかったね。」

「鹿目さん、なにかオススメとかありますか?」

「そうだねぇ…ここは無難にチーズバーガーとか?」

「…じゃあ、それにします。あと、この、せっとってなんですか?」

「これはね、サイドメニューと、シェイクのセットのことだよ。」

「さ、さいどめにゅー?しぇいく?」

ほむらちゃんの頭の上にはクエスチョンマーク。

「えっとね、サイドメニューっていうのは…」

 

私が一通り説明を終えると、ほむらちゃんはふむふむ、と頷いていました。

「最近のお店って、難しいんですね。一人で来なくてよかったぁ…。鹿目さんのおかげですね!」

「え、えへへぇ…。」

「それじゃあ、注文してきますね。」

「あ、待ってよ、ほむらちゃん!」

 

「…もぐ…ん…これ、美味しい…!」

「よかったぁ…私が勧めたのに美味しくないって言われたらどうしよう、って思ってたんだ。」

「鹿目さんが勧めてくれたんですから、ハズレはないと思いますよ?」

「そ、そう?でも、これって沢山食べすぎると、太っちゃいそうで…怖いんだよね〜。」

「…んぐっ、大丈夫ですよ、鹿目さんは太ってなんかないですから。健康的って感じで。」

「…な、なんか照れちゃうね。」

「あれっ、まどかにほむらじゃーん!」

「さ、さやかちゃん!?」

「あ、美樹さん!奇遇ですね。美樹さんもここで?」

「うん、ちょっとね。一緒に食べてもいいかな?」

「はい、もちろん!」

あぁ…ほむらちゃんとの二人っきりがぁ…。

少しは察してよ、さやかちゃん…ほむらちゃんも…。

「んじゃ、横失礼っと。」

「美樹さんはよくここに来るんですか?」

「うん、よくまどかとね。あ、そう言えばまどか、前ここに来たときさ、まどかのママの話したじゃん?」

「え?う、うん。」

「やっぱ、まどかのママって、キャリアウーマンって感じでかっこいいよねぇ。まどかとは大違い!」

「もーう!前もそんなこと言ってたじゃない!酷いよ!」

「あ、そう言えば、罰ゲームしてなかったなぁ!」

さやかちゃんは私の脇をくすぐります。

「わひゃあ!ちょ、さやかちゃ、ここでやらないでよー!あは、あはははぁ!」

「ほれほれ、ここがいいんじゃろ?」

私がチラッとほむらちゃんを見ると、殆ど食べ終わっていました。

下を向いて、俯いていました。

…その眼は、とても寂しそう。

「や、やめてよ、さやかちゃん!」

「えー?つれないなぁ…。あ、そうだ!この前さ、買ったあのストラップ、どうしたの?」

「あれ?えっと、スマホに付けてるよ、ほら。」

「まどかも?あたしもスマホにつけたんだー。おそろいだねー。」

さやかちゃんの話のペースが早くて、ほむらちゃんに話題を振れない…。

そんな時でした。

「…鹿目さんと美樹さんはすごく仲がいいですよね。お似合いですし…。」

「え?あ、ありがと…?」

「…私、帰ります。」

「これ以上、私が居ても、邪魔ですよね…。」

「ま、待って!雑貨屋さんは?」

「また今度、一人で行ってみます。鹿目さん、誘ってくれてありがとうございました。凄く嬉しかったです。」

寂しそうに笑うほむらちゃん。

「また誘ってくれたら…嬉しいです。それじゃあ、さようなら…。」

ほむらちゃんは、足早に帰っていってしまいました。

「あ、ほむらちゃ…。」

「もーう!離れてよ、さやかちゃん!」

「よいではないか、よいではないかー!」

「本当にいい加減にしてよ!」

「…むぅ…。」

「さやかちゃんがほむらちゃんを仲間外れにするから、ほむらちゃんが帰っちゃったじゃない…。」

「…まどかは、あたしよりもほむらと一緒にいたいの?」

「え?えっと、今日はほむらちゃんと約束してたし…。」

「でも、あたしも約束したよね?あたしを裏切らないって。」

「でもっ、それとこれとは、話が別…。」

「あっそ…あたしとの約束はどうでもいいってことね。はいはい、帰ればいいんでしょ?帰りますよーっと。」

「あっ、さやかちゃん、待ってよ…」

「一人で帰れるから。」

「あ、うん…。」

「…なんだったんだろ。」

 

さやかちゃんのせいで、折角のお出かけがめちゃくちゃになっちゃった。

ほむらちゃん、寂しそうだったな…。

また、遊べるといいな…。

まどか

 

「んー…今日は暇だな…。」

今日は休日。

特にすることもなく、魔女もいない。

誰かからの連絡もないし…。

…仮にも休日の女子中学生のスマホが鳴らないって、なんか…。

べ、別にそういう事じゃない…そういう事じゃ。

ただ、皆予定が合わないだけだと思う。

「ほむらちゃん、どうしてるかなぁ…。」

私はベットに寝転がりながら、スマホをいじる。

そこには、ほむらちゃんとのメールのやり取りの画面。

To ほむらちゃん

【昨日はごめんね。きっと、寂しかったんだよね。また、一緒に雑貨屋さん行こうね。】

From ほむらちゃん

【気にしないでください。元々、私よりも美樹さんといるほうが、鹿目さんも楽しいと思いますし、そっちのほうが、似合ってます。また、連れて行ってもらえたら嬉しいです。】

…文面もネガティブ。

やっちゃったなぁ…。

「…メール、してみようかな…。」

でも、勉強してるかもしれないし、ご飯食べてるかもしれないし、どうしても手が離せない状況だったりしたり…。

…それに、拒否されるかもしれない…。

「はぁ…臆病になっちゃったな、私…。」

わかってます。

さっき並べた言い訳は全部、怖いからでっち上げたんです。

「…ほむらちゃん…。」

「はぁ…。」

溜息が部屋に響きました。

 

「パパー、飲み物ー!」

「はいはい…たまには自分で入れたらどうだい?」

「うっ…。パパが入れてくれたジュースは美味しいなぁ!」

「…そういうところばっかり、詢子さんに似てるんだから…。」

「あーっ!今のママに言っちゃうぞー!」

「おぉ、怖い怖い…。」

私がジュースを飲みながら、テレビを見ていると…。

「…まどか、なにか悩みでもあるのかい?」

「え!?」

「目の下に隈ができてるよ。夜通し悩んでいたんじゃないのかな?」

「ど、どうして分かったの…?」

「さっき言ったろう?そういうところばっかり、詢子さんに似てるって。」

パパは微笑んで、私の隣に腰掛けます。

「どうしたんだい?パパに相談しなさい。」

「…うん、実はね…。」

 

私が事情を説明すると、パパは私の頭の上に手を置いて、こう言いました。

「ははっ、青春だね。」

「あっ!バカにしてるでしょー!」

「そんなことないさ。僕もそんな時代があったなって…。とまぁ、僕のむかし話はいいんだ。」

「そうか…友達を仲間外れにしてしまって、誘いたいけど、勇気がでない…。」

「…こういう時は、素直になってみるんだ。まどか自身が何をしたいのか。」

「友達がどうしたいかを考えないで、自分のことを。そうすれば、気持ちが伝わるはずさ。」

「自分自身が、したいこと、かぁ…。」

「思春期だからね、悩むことも大切なんだ。親の僕としては、どんどん悩んでいってほしい。」

 

今日はまどかが相談をしてきた。

悩みも中学生らしくて、いつの間にか育ってしまったみたいで、寂しいかな。

…しかし、まどかのあの感じ…恋してるのかな?

知久

 

「出てくれますように…!」

私はスマホを握り、祈ります。

そして、画面に出た、ほむらちゃんのアカウントをタップ。

「…あっ、ほむらちゃん?」

数回のコールの後にほむらちゃんのはい、という声が聞こえます。

『どうしたんですか、鹿目さん?』

「えっとね、今日これから遊ばない?昨日、行けなかった雑貨屋さんにも行きたいんだけど…。」

『…本当に、いいんですか?』

「え?」

『昨日、思ったんです。私と話してるよりも、美樹さんと話してるときのほうが凄く楽しそうで…。』

『私、美樹さんみたいに面白いこと言えないし、できないから…。鹿目さんみたいに、気の利いた事とかもできないし…。』

『…えへ、本当に嫌になっちゃいますね、私…。なんにもできない、愚図で間抜けなんです、私…。』

『だから、いいんです。気を使ってくれて、ありがとう。嬉しかったです。』

「ま、待って、ほむらちゃん!私そんなつもりじゃないの!」

「本当に、ほむらちゃんとがいいのっ!二人で出掛けたいの!」

『鹿目…さん。…それじゃあ、何時に集合しますか?』

「…!えっとね、十一時に、いつもの公園でどうかな?」

『十一時…はい、大丈夫です。』

『…あと、ありがとう、鹿目さん。私と二人で出掛けたいって言ってもらえて、すごく嬉しかったです。』

『やっぱり、私は鹿目さんが一番好き、です。えへ、照れちゃいますね…。』

〜!?

ほ、ほ、ほむらちゃん!?

『それじゃあ、また十一時に!』

ほむらちゃんの思わせぶりなセリフに電話が切れたあともしばらく、スマホを耳にあてたままになってしまったのでした…。

 

「ほむらちゃ〜ん!」

「あ、鹿目さん!」

今は大体十一時。本当はもっと早く来て、「ううん、今来たところだよ」っていう予定でした。

…準備に時間がかかりすぎて、儚く崩れ去ったけど。

「ごめんね、待った?」

「ううん、今来たところだから、気にしないでください。」

「そっ、そっか!」

まさかのほむらちゃんから…!?

「それじゃあ、行きましょうか?」

「うん!」

 

「でねー、そのときさやかちゃんがね、こう言ったの。

まどかは幼児体型だって!酷いよねー、私結構そのこと気にしてるのにー!」

「…あれ?ほむらちゃん?」

「鹿目さん!」

「ひゃい!」

「今は、私と二人きりなんですから…他の人の話ばっかりは…嫌、です…。」

「もっと、私の話をしてください…。」

驚きました。まさか、ほむらちゃんがこんなに感情を顕にするなんて…。

昔はそんなこと、殆どなかったのに…。

成長した、ってことなんでしょうか。

「…ごめんね、ほむらちゃん。」

「あ、そのっ、私のほうこそ、我儘言って…ごめんなさい…。」

「ううん、いいんだ。私も、もっとほむらちゃんの話、したいな。」

「えへへ、嬉しいです。私、鹿目さんと話してるときが一番楽しくて…。なんていうか、心がポカポカするんです。」

「そ、そっか…。えへへ…。」

「鹿目さん?」

「あ、え?な、なんでもないよ、うん!」

しまった…つい、ニヤニヤしてしまったぁ…!

ほむらちゃんが愛おしい…。

「今日、鹿目さんから電話が掛かってきたとき、すごくびっくりしたんです。」

「私も、鹿目さんに電話しようと思ってて…。これって、運命っていうものなんですかね?えへへ。」

あ、もうダメだ。

抱きつきたい。ほむらちゃんに、むしゃぶりつきたい。

あの柔い華奢な身体を…いつもフローラルな香りのするあの髪を…!

「もう、ほむらちゃんはどうしてそんなにかわいいのー!?」

「わあっ!?か、鹿目さーん!?いきなり抱きつかないでくださーい!?」

 

「んー!アイス美味しいー!」

「ホントですね…!んっ、頭、キーンって…!んんっ!?」

「鹿目さぁん…頭、痛いですぅ…。」

「あはは…ちょっと季節が悪かったかな…?」

今は十月。秋の風が吹き始める頃です。

「ん〜っ…。はぁ…直りました…。」

「ごめんね、こんな季節に食べさせちゃって…。」

「あ、いいんです!私も食べたかったので!だから、鹿目さんは何も悪くないです!」

「えへ、ありがとう!ほむらちゃんに慰められたら、辛いのもどっか行っちゃったよ!」

「…よかった。」

ほむらちゃんは笑いました。

 

「わあっ…!」

私達は例の雑貨屋さんに来ていました。

かなり女の子向けなものが多くて、男子は一人もいませんでした(当たり前かな?)。

中はピンクとか、黄色とか…とにかく派手。

「すっごくかわいい…!」

そして、私の隣のほむらちゃんはぴょんぴょん跳ねそうなテンションです。

「あっ、このリボンかわいい…。いくらだろ…。」

値札とにらめっこをして、リボンを棚に戻しました。

…なるほど、足りなかったのかな。

「他にはなにがあるのかな…。」

ほむらちゃんは私を置いて、どんどんと奥に進んでいきます。

「ま、待ってよ、ほむらちゃ〜ん!」

 

「鹿目さん、これかわいくないですか!?」

「鹿目さん、鹿目さん!これなんてどうですか!?」

「鹿目さーん!こんなの見つけました!」

「鹿目さん!こういうのって、かわいくないですか!?」

etc…。

こんなにはしゃいでるほむらちゃんは初めてです。

なんというか、キャイキャイしてるバリバリのJKみたいな。

…でも、一回一回見せられると、なんだか照れちゃうな。

「鹿目さん!これ見てください!」

「ほ、ほむらちゃん、ちょっとはしゃぎすぎじゃないかな?あんまりはしゃぐと危ないよ?」

「あ、ご、ごめんなさい!私、勝手にはしゃいじゃって…迷惑、でしたよね…。」

「…お揃いのかわいいアクセサリーがあったんですけど、一緒につけるのは迷惑、ですよね…。ごめんなさい、今戻してきます…。」

「あ、待って…。」

お揃いの、アクセサリー…?

…。

…。

なにやってるの、私…。

ほむらちゃんは、私に喜んでほしくてやってくれたのに…。

私、最低だな…。

ほむらちゃんは、今まで病院暮らしだったから、こういうものが憧れで楽しいって分かってたのに…。

自分が恥ずかしいってだけで否定しちゃった…。

「お待たせしました、鹿目さん。行きましょうか。」

「え?何も買わなくていいの?」

「…はい。なんか、あんなに騒いでたのが馬鹿らしくなっちゃって…。かわいいアクセサリーとかも、もうどうでも良くなっちゃって…。ごめんなさい、折角連れ来てもらったのに…。」

「…もう、夕方ですね。」

「うん…。」

「それじゃあ、鹿目さん。私、これから夕飯の買い物をしなきゃいけないんです。だから、ここでさよならですね。」

「え、あ、うん…。もう、行っちゃうんだ…。」

「ごめんなさい、もっと一緒にいたかったんですけど…。」

「…ねぇ、私もお買い物ついていっちゃ駄目かな?」

「え、えっと…?」

「いや、そういう意味じゃなくて!その、あの、そう!荷物、一人で運ぶのは重いかなー、って思ったの、そう!」

「…優しいんですね、鹿目さん。だから、私、鹿目さんのこと…。」

「…ううん、なんでもないです。じゃあ、お手伝いお願いします。」

あぁ…だから、の続きが聞きたいよぉ…。

なんて言おうとしたの?ねぇ…?

「…うん、行こっか。」

 

今日は幸せで辛い一日だったな。

ほむらちゃんに楽しんでもらえたら、幸せだけだったのにな。

私、本当にダメな子。

まどか

 

「はぁー、沢山買ったねー。」

「いつもよりも安かったので…。」

今は、レジでの精算を済ませ、帰るところ。

「じゃあ、お家まで送ってくね。」

「ありがとうございます。でも、もう真っ暗ですねー…。あ、親御さんには…?」

「あ、うん。もう電話してあるよ、心配しないで。」

「…じゃあ、鹿目さんに見てほしい場所があるんです。一緒に行きませんか…?」

ほむらちゃんが私に見せたいもの?

なんだろう…?

「うん…。」

 

「ほ、ほむらちゃーん、まだ目閉じてなきゃいけないの?」

「はい。すみません、遠くからでも見えちゃうので…。」

私は途中、目を閉じるようにほむらちゃんに言われました。なんでも、サプライズってことらしいです。

そして、今、私、絶賛ドキドキタイムです。

なぜなら、ほむらちゃんと手を繋いでいるからです。

すべすべ、もちもち、真っ白、ちっちゃい…。

最高の感触〜…。

「着きました、鹿目さん。窮屈な思いをさせて、ごめんなさい。それじゃあ、目を開けてみてください。」

私は、離れていくほむらちゃんの手の感覚を名残惜しみつつ、目を開けます。

そこに広がっていたのは、一面の花畑。

真っ白いお花と、空に浮かぶまん丸の月。

それは海のようでもあり、一種の神秘を醸し出しています。

「わぁっ…!すごい、すごいよ!」

「よかった、鹿目さんに喜んで貰えて。」

ほむらちゃんは微笑みます。

私の胸に、何かが溢れてくるような感覚。

そして、手を繋いでいたときとはまた違う類のドキドキ。

「…ほっ、ほむらちゃんは、どうしてこの景色を…?」

「なんで、でしょうか…。ただ、鹿目さんに喜んでほしかったんだと思います。あとは…。」

「あとは…?」

「私の大好きなこの景色を、鹿目さんにも好きになってほしかったから、ってことだと思います…。」

「そ、そっか!」

「あと、この場所って、意外と皆知らないんです。だから、人が全然いないんですけど、それがまた良くて。」

「だから…この場所のことは、私と鹿目さん、二人だけの秘密…ですよ?」

二人だけの、秘密。

その言葉が頭の中を巡り巡ります。

それって…そういう意味なの!?

えー!?え、え、えぇ…!?

今日のほむらちゃん、積極的すぎるよ…。

「…今、私、すっごく幸せなんです。」

「こうやって、誰かと並び合って、二人だけの秘密を作って…。」

「入院してた頃は、全然考えられなかったんです。でも、鹿目さんがいたから、こうやって幸せなんです。」

「だから、改めて。ありがとうございます、鹿目さん。」

ほむらちゃんは、泣いていました。

それはきっと、悲しみの涙じゃなくて。

「ほむらちゃん、私からも。ありがとう。」

「え…?」

「私、ほむらちゃんが転校してきたときから、毎日がすっごく楽しいの。もちろん、今までも楽しかったけど。」

「最初は不安だったんだ。魔法少女のこととか、転校生と仲良くなれるかなって。でもね、そんな不安は全部どっかに飛んでったんだ。」

「魔法少女になったのも、ほむらちゃんを助けるためなんだ、って思うようになってから、不思議と怖くないんだ。むしろ、達成感があるんだ。」

「今日も一日、この街とほむらちゃんを守れたんだ、って。」

「…えへっ、なんか、変な話になっちゃったね。ごめ…」

私がほむらちゃんの方を向くと、号泣していました。

「わわっ!?どうしたの、ほむらちゃん!?」

「鹿目さぁん…!わたひ、幸せものです…!」

「こんなに…こんなに、鹿目ひゃんに大切にしてもらえてぇ…ぐすっ…うわぁぁぁん…!」

「ぐすっ、ずっと、ずっと一人ぼっちで、わたひ…!」

「こんなふうに、大切にされたこと、家族以外にいなくてぇ…!だから、だから…!」

「…ほむらちゃん…。」

「鹿目さぁん…鹿目さぁん…!」

「うん…私はここにいるよ?大丈夫、一人にしないから…。」

私はほむらちゃんを抱きしめます。

そこに、邪な感情はありませんでした。いや、あってはならないのです。

ほむらちゃんの、為にも。

私の覚悟はより一層、強くなったのです。

魔法少女としての、覚悟が。

「もう、絶対に一人ぼっちにはしないから…!」

 

今日は、沢山のことがありました。

鹿目さんに喜んで貰えて、本当に良かった。

これからも、仲良くできるかな?

一人ぼっちにならなくて、いいのかな…?

ほむら

 

この時の私達は、幸せでした。

幸せな時間なんて、一瞬。

そう、一瞬なのです。

不幸はいつだってそこにいる。

幸せがあるから、不幸せがある。

そのことを、思い知らされるのです…。

 

私は、美樹さんに呼び出されていました。

【ほむらへ

これから話したいことがある 屋上に来て

P.S

一人で来て さやか】

なので、鹿目さんのお誘いを断って、屋上に向かっています。

 

「あの、美樹さん…お話って、なんでしょうか…?」

「…ほむらさ、最近、まどかと仲いいよね。」

「え?…は、はい…。」

「正直、見ててイライラするの。よそ者のあんたが、親友のまどかと仲良くしてるのが。」

「え…?」

「だからさ、もうまどかと関わるのやめてくれない?」

衝撃的なものでした。

なんで、なんで…?

なんで、仲良くしてるだけで…!?

「い、嫌ですっ!」

「いつもウジウジしてるくせに、こういうときだけ強気になるの?面白いね!」

明らかにからかってる口調に、私は言い返してしまいます。

「な、なんで、美樹さんが私の交友関係に口出しするんですか!?」

「だから言ってるじゃん。あんたが、気に入らないんだって。」

「…っ!」

「いつもウジウジしてて、馬鹿で、運動音痴で、なんにもできないあんたを見てると反吐がでるの。」

「しかも、あたしの親友のまどかを奪ってさ!」

「こんなことされて、嫌いにならないほうがおかしいと思わない!?」

「そ、それは…。」

「…でも、分かってるよ。こんなことであんたが引き下がらないってこと。」

「もしかしてなんだけど…ほむらって、まどかのことさ、恋愛対象として好き、とかじゃないよね?」

胸が、ドクンと大きく鳴る。

「…そ、そんなわけっ…!」

「じゃあ、想像してみてよ。まどかが、あんたに迫って、キスしてるところ。」

想像したくないのに、してしまいます。

「顔真っ赤じゃん、大丈夫?」

口では心配している風を装っていますが、顔は意地悪い笑みで歪んでいます。

「あ!もしかして!」

「恥ずかしさで、真っ赤になっちゃったの?」

「なっ…!?」

「そっか、そっか…ほむらはレズなんだ…ふーん…。」

「そんなわけないじゃないですか…!」

「…実はさ、あたし、まどかとキスしたことあるんだ。」

え…?

嫌な汗が溢れ出します。

「柔らかかったなぁ、まどかは!」

「ねぇ、羨ましい?羨ましい?」

「…羨ましいわけ、ないじゃないですか…!」

私は唇を噛み、手をぎゅっと握ります。

「そうだよね、レズじゃないなら、羨ましいわけないよね!あの、柔らかいまどかの頬なんて!」

「あーあ、今から言ってこようかな〜。今度は唇にしてって!ファーストキス、もらっちゃおうかな〜?」

「きっと、恥ずかしがりながらしてくれるんだろうなぁ!」

唇からは血が滲み、握った手からも、少し、血が出ていました。

もう、我慢の限界でした。

「やめてください!!」

「お?どうしたの、ほむら?」

「あ…。」

「もしかして…嫉妬しちゃった?」

「やっぱり、レズだったんだ〜。へぇ〜。」

「ま、まって…!」

「みんな、どう思うだろうなぁ…。まどかがレズの奴と仲良くしてるって知ったら…?」

「まどか、なんて思うかなぁ…?ずっと仲良くしてた転校生は、レズだって知ったら!」

「ドン引きされるだろうなぁ…ねぇ、ほむら?」

「や、やめてください…!鹿目さんはなにも悪くない!」

「そうだよね、まどかはなんにも悪くないよね?でも、ほむらのせいで、全部台無しになるんじゃないかなぁ?」

「お、お願いします!言わないでください…!なんでも…なんでもしますから…!」

「そっか、そっか…。なんでも、ねぇ…。」

「じゃあさ、さっき言ったお願い、叶えてくれるよね?まどかに関わらないって!」

「…!…それ、は…。」

「いいよ、別に守らなくても。その代わり…皆に言っちゃうよ?」

「…分かり、ました…。もう、関わり、ません。鹿目さんには…。」

「そうそう、それでいいの。最初っからそうすればよかったのに。」

「それじゃあ、あたしはまどかたちとご飯食べに行くから。じゃあね〜。」

美樹さんは、手を振って、こっちに笑いかけました。

…まるで、悪魔の笑み。

「…また、こうなるんだ。どうせ、私は一人なんだ…。」

「どこに行っても、一人なんだ…。」

「…もう、いいんだ。慣れてるから…。」

私は自分にそう言い聞かせ、立ち上がります。

「…。」

私は外を見つめ、あることを考えます。

 

ここから、飛び降りれば楽になれるんじゃないか?

辛い思いなんてせずに、皆が幸せなんじゃ?

だったら、私は…。

 

一歩、二歩と、屋上の端に向かいます。

そして、フェンスに手をかけます。

「もう…辛いのは…嫌…。」

「さようなら…鹿目さん…。いままで…ありがとう…。」

「楽しかったです…。」

 

 

後編に続く…。

 

 

 

 




いかかでしたでしょうか。
幸せな時間はそう長くは続くものではない。
そのまんまでしたよね…。
書いてる途中、やめよっかな…やめよっかな…って何回も思うほど、ほむほむの不幸せは嫌です。
でも!
魔法少女を絶望で終わらせたりはしないから!(多分
皆を救って見せるから!(多分

はい。
では、後編をお楽しみに〜。


頑張ってメインの小説進めないと…。
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