とある炎剣使い達は世界最強   作:湯タンポ

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こんちわ湯たんぽです。

やっぱりほぼ原作通りになっちゃうねぇ。


注意書き。

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


第8話 長老達とハウリアの訓練

ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

 

 

 当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で閃光が飛び頭部を粉砕されるからである。

 

 

 

 乾いた破裂音と共に閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物である輪廻とハジメに対して畏敬の念を向けていた。

 

 

 

 もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るう輪廻やハジメをヒーローだとでも言うように見つめている。

 

 

 

「ふふふ、輪廻さん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

 

 

 子供に純粋な眼差しを向けられて面倒くさそうな輪廻に、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

 

 

 額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

 

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

 

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

 

 

 ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

 

 

「はっはっは、シアは随分と輪廻殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、輪廻殿なら安心か……」

 

 

 

 すぐ傍で娘が未だに銃撃されているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

 

 

「いや、お前等。この状況見て出てくる感想がそれか?」

「巫山戯てるとしか思えねェ」

 

「……ズレてる」

 

 

 

 ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

 

 

 そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。ハジメが〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

 

 

 ハジメが何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

 

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

 

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……輪廻さんとハジメさん……どうするのですか?」

 

「? どうするって何が?」

 

「どういう意図の質問だァ?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるハジメと輪廻に、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

 

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんや輪廻さんと同じ。……敵対できますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

 

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……後帝国兵を笑いながら殺していく輪廻さんも」

 

「だったら……何が疑問なんだ?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とハジメと輪廻を交互に忙しなく見ている。

 

 

 

 しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

 

 

「それがどうかしたのか?」

 

「どうでもいいなァ」

 

「えっ?」

 

 

 疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

 

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

 

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

 

「それは、まぁ、そうなんですが……」

 

「大体、根本が間違っている」

 

「根本?」

 

 

 

 さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

 

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい……覚えてます……」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

 

「な、なるほど……」

 

 

 

 何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。〝未来視〟で帝国と相対するハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが〝自分のせいで〟という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

 

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

 

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 

 

 一行は、階段に差し掛かった。ハジメや輪廻を先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

 

 

 そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

 

 

 登りきった崖の上、そこには……

 

 

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 

 

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

 

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

 

 

 帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

 

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくハジメの存在に気がついた。

 

 

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

 

 

 ハジメは、帝国兵の態度から素通りは無理だろうなと思いながら、一応会話に応じる。

 

 

 

「ああ、人間だ」

 

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

 

 

 勝手に推測し、勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうハジメに命令した。

 

 

 

 当然、ハジメや輪廻が従うはずもない。

 

 

 

「断る」

 

「誰が置いてくか、ボケェ」

 

「……今、何て言った?」

 

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺達のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

 

 

 

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

 

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

 

「後さっさと死ねェ。」

ハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気でハジメを睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、輪廻の後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、輪廻の服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

 

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

 

 

 その言葉にハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかり、ユエが右手を掲げようとした。

 

 

 

 だが、それを制止するハジメ。訝しそうなユエを尻目にハジメが最後の言葉をかける。

 

 

 

「つまり敵ってことでいいよな?」

 

「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

 

 

ドパンッ!!

 

 

 

 想像した通りにハジメと輪廻が怯えないことに苛立ちを表にして怒鳴る小隊長だったが、その言葉が最後まで言い切られることはなかった。なぜなら、一発の破裂音と共に、その頭部が砕け散ったからだ。眉間に大穴を開けながら後頭部から脳髄を飛び散らせ、そのまま後ろに弾かれる様に倒れる。

 

「流石にユエに対するその態度は看破出来ねえなァ。なァハジメェ、こいつら殺していいよなァ!」

 

「言う前に殺してるじゃないですか。」

 

「そりゃァすまねぇなァ、だが俺は自分が好きな奴を侮辱するような奴を生かす趣味はねェんでなァ!」

 

その言葉にユエは顔を紅くする

「……輪廻、カッコイイ…」

 

そこからは虐殺ショーだね。

 

輪廻が笑いながら、アルベルトとシュタインを超高速連射して、残りは1人になった所で1度止めた

 

「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

 

「そうか? なら、他の兎人族がどうなったか教えてもらおうか。結構な数が居たはずなんだがなァ……全部、帝国に移送済みかァ?」

 

 

 

 ハジメが質問したのは、百人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭なかったが。

 

 

 

「……は、話せば殺さないか?」

 

「てめぇ、自分が条件を付けられる立場にあると思ってんのかァ? 別に、どうしても欲しい情報じゃあないんだ。今すぐ逝くかァ?」

 

「ま、待ってくれ! 話す! 話すから! ……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

 

 

 〝人数を絞った〟それは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、悲痛な表情を浮かべる兎人族達。輪廻は、その様子をチラッとだけ見やる。直ぐに視線を兵士に戻すともう用はないと瞳に殺意を宿した。

 

 

 

「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」

 

 

 

 輪廻の殺意に気がついた兵士が再び必死に命乞いする。しかし、その返答は……

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

 一発の銃弾だった。

 

 

 

 息を呑む兎人族達。あまりに容赦のない輪廻の行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずと輪廻に尋ねた。

 

 

 

「あ、あのさっきの人は見逃してあげても良かったのでは……」

 

 

 

 はぁ? という呆れを多分に含んだ視線を向ける輪廻に「うっ」と唸るシア。自分達の同胞を殺し、奴隷にしようとした相手にも慈悲を持つようで、兎人族とはとことん温厚というか平和主義らしい。輪廻が言葉を発しようとしたが、その機先を制するようにユエが反論した。

 

 

 

「……一度、剣を抜いた者が、結果、相手の方が強かったからと言って見逃してもらおうなんて都合が良すぎ」

 

「そ、それは……」

 

「……そもそも、守られているだけのあなた達がそんな目を輪廻 に向けるのはお門違い」

 

「……」

 

 

 

 ユエは静かに怒っているようだ。守られておきながら、輪廻に向ける視線に負の感情を宿すなど許さないと言わんばかりである。当然といえば当然なので、兎人族達もバツが悪そうな表情をしている。

 

「ふむ、輪廻殿、申し訳ない。別に、貴方に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな……少々、驚いただけなのだ」

 

「輪廻さん、すみません」

 

「別にいいぜェ、」

 

それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

 

 

「それでは、輪廻殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お二人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

 

 

 カムが、ハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

 

 

 当初、ハジメは【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていたのだが、よく考えれば、それなら奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人達が住める場所ではなくなってしまう。なので、【オルクス大迷宮】のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測した。そして、カムから聞いた〝大樹〟が怪しいと踏んだのである。

 

 

 

 カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた。

 

 

 

「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

「ああ、承知している。主よ俺もユエも、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

 

 

 ハジメは、そう言うと〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。輪廻は幻想郷にいた頃の方法で気配消した結果

 

 

 

「ッ!? これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

 

「ん? ……こんなもんか?」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

 

「……輪廻は?」

 

「ここだぜェ」

 

と言う事が有りつつも、進んだ先には。

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人がいた。

 

樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 

 

 その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

 

 

「あ、あの私達は……」

 

 

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

 

ドパンッ!!

虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 

 

 

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。もし人間のように耳が横についていれば、確実に弾け飛んでいただろう。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 

 

 

 そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。〝威圧〟という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。

 

 

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

 

「な、なっ……詠唱がっ……」

 

「主の御前だ、失せろ。」

 

そして何やかんや有り

 

 

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

 

 

 現在、輪廻とハジメとユエは、アルフレリックと向かい合って話をしていた。内容は、ハジメがオスカー・オルクスに聞いた〝解放者〟のことや神代魔法のこと、自分が異世界の人間であり七大迷宮を攻略すれば故郷へ帰るための神代魔法が手に入るかもしれないこと等だ。

 

 

 

 アルフレリックは、この世界の神の話を聞いても顔色を変えたりはしなかった。不思議に思ってハジメが尋ねると、「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」という答えが返ってきた。神が狂っていようがいまいが、亜人族の現状は変わらないということらしい。聖教教会の権威もないこの場所では信仰心もないようだ。あるとすれば自然への感謝の念だという。

 

 

 

 ハジメ達の話を聞いたアルフレリックは、フェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟を話した。それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。

 

 

 

 【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 

 

 

 そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

 

 

「それで、俺達は資格を持っているというわけか……」

 

 

 

 アルフレリックの説明により、人間を亜人族の本拠地に招き入れた理由がわかった。しかし、全ての亜人族がそんな事情を知っているわけではないはずなので、今後の話をする必要がある。

 

 

 

 ハジメとアルフレリックが、話を詰めようとしたその時、何やら階下が騒がしくなった。ハジメ達のいる場所は、最上階にあたり、階下にはシア達ハウリア族が待機している。どうやら、彼女達が誰かと争っているようだ。ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。

 

 

 

 階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまり、カムが必死にシアを庇っている。シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。

 

 

 

 ハジメとユエが階段から降りてくると、彼等は一斉に鋭い視線を送った。熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言する。

 

 

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

 

 

 必死に激情を抑えているのだろう。拳を握りわなわなと震えている。やはり、亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵なのだ。しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。

 

 

 

 しかし、アルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。

 

 

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

 

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 

「なら、こんな人間族の小僧達が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

 

 

 あくまで淡々と返すアルフレリック。熊の亜人は信じられないという表情でアルフレリックを、そしてハジメ達を睨む。

 

 

 

フェアベルゲンには、種族的に能力の高い幾つかの各種族を代表する者が長老となり、長老会議という合議制の集会で国の方針などを決めるらしい。裁判的な判断も長老衆が行う。今、この場に集まっている亜人達が、どうやら当代の長老達らしい。だが、口伝に対する認識には差があるようだ。

 

 

 

 アルフレリックは、口伝を含む掟を重要視するタイプのようだが、他の長老達は少し違うのだろう。アルフレリックは森人族であり、亜人族の中でも特に長命種だ。二百年くらいが平均寿命だったとハジメは記憶している。だとすると、眼前の長老達とアルフレリックでは年齢が大分異なり、その分、価値観にも差があるのかもしれない。ちなみに、亜人族の平均寿命は百年くらいだ。

 

 

 

 そんなわけで、アルフレリック以外の長老衆は、この場に人間族や罪人がいることに我慢ならないようだ。

 

 

 

「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 

 

 

 いきり立った熊の亜人が突如、ハジメに向かって突進した。あまりに突然のことで周囲は反応できていない。アルフレリックも、まさかいきなり襲いかかるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いている。

 

 

 

 そして、一瞬で間合いを詰め、身長二メートル半はある脂肪と筋肉の塊の様な男の豪腕が、ハジメに向かって振り下ろされた。

 

 

 

 亜人の中でも、熊人族は特に耐久力と腕力に優れた種族だ。その豪腕は、一撃で野太い樹をへし折る程で、種族代表ともなれば他と一線を画す破壊力を持っている。シア達ハウリア族と傍らのユエ以外の亜人達は、皆一様に、肉塊となったハジメを幻視した。

 

 

 

 しかし、次の瞬間には、有り得ない光景に凍りついた。

 

 

 

ズドンッ!

 

 

 

 衝撃音と共に振り下ろされた拳は、あっさりとハジメの左腕に掴み止められていたからだ。

 

 

 

「……温い拳だな。主よ殺っても良いですか?」

 

「殺れ。」

 

その後

 

ハジメが熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックが何とか執り成し、ハジメ達による蹂躙劇は回避された。熊の亜人は内臓破裂、ほぼ全身の骨が粉砕骨折という危険な状態であったが、何とか一命は取り留めたらしい。高価な回復薬を湯水の如く使ったようだ。もっとも、もう二度と戦士として戦うことはできないようだが……

 

 

 

 現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと向かい合って座っていた。輪廻の傍らにはユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。

 

 

 

 長老衆の表情は、アルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人(名前はジン)が、文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。

 

 

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族・・・としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

 

 

 ハジメの言葉に、身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。

 

 

 

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 

 

 

「は? 何言ってるんだ? 先に殺意を向けてきたのは、あの熊野郎だろ? 俺は返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? 俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

 

 

 おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろうか。その為、頭ではハジメの言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、ハジメはお人好しではない。

 

 

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

 

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

 

 

「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 

 

 そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目でハジメと輪廻を見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。

 

 

 

 その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックが輪廻とハジメに伝える。

 

 

 

「十五夜輪廻、南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

 

「絶対じゃねぇ…か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

 

「そんで?」

 

 

 

 アルフレリックの話しを聞いても輪廻の顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

 

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろとォ?」

 

「そうだ。お前さんの実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどなァ?そっちの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれやァ」

 

 

 

殺し合いでは何が起こるかわからないのだ。手加減などして、窮鼠猫を噛むように致命傷を喰らわないとは限らない。その為、ハジメがアルフレリックの頼みを聞くことはなかった。

 

 

 

 しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

 

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

 

 

 その言葉に、輪廻とハジメは訝しそうな表情をした。もとより、案内はハウリア族に任せるつもりで、フェアベルゲンの者の手を借りるつもりはなかった。そのことは、彼等も知っているはずである。だが、ゼルの次の言葉で彼の真意が明らかになった。

 

 

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 

 

 ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

 

 

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

 

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。

 

 

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

 

 

 ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。おそらく、忌み子であるということよりも、そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。ハウリア族の家族を想う気持ちが事態の悪化を招いたとも言える。何とも皮肉な話だ。

 

 

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

 

 

 それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。他の長老衆も異論はないようだ。しかし、輪廻は特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せることもなく、何でもない様に軽く返した。

 

 

 

「お前ら、頭大丈夫かァ?」

 

「な、なんだと!」

 

 

 

輪廻の物言いに、目を釣り上げるゼル。シア達も思わずと言った風にハジメを見る。ユエは輪廻の考えがわかっているのかすまし顔だ。

 

 

 

「俺達は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうがァ」

 

 

 

輪廻は長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた。ピクッと体を震わせ、輪廻を見上げるシア。

 

 

 

「俺から、そんなにこいつらを奪いたいならなァ、……戦争でもおっぱじめっかァ?」

 

「輪廻さん……」

 

 

 

 輪廻にとって今の言葉は単純に自分の邪魔をすることは許さないという意味で、それ以上ではないだろう。しかし、それでも、ハウリア族を死なせないために亜人族の本拠地フェアベルゲンとの戦争も辞さないという言葉は、その意志は、絶望に沈むシアの心を真っ直ぐに貫いた。

 

 

 

「本気かね?」

 

 

 

 アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光で輪廻を射貫く。

 

 

 

「あたりめぇだろうが、今更嘘なんて着かねぇ」

 

 

 

 しかし、全く揺るがない輪廻。そこに不退転の決意が見て取れる。この世界に対して自重しない、邪魔するものには妥協も容赦もしない。

 

 

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

 

 

 ハウリア族の処刑は、長老会議で決定したことだ。それを、言ってみれば脅しに屈して覆すことは国の威信に関わる。今後、輪廻達を襲うかもしれない者達の助命を引き出すための交渉材料である案内人というカードを切ってでも、長老会議の決定を覆すわけにはいかない。故に、アルフレリックは提案した。しかし、輪廻は交渉の余地などないと言わんばかりにはっきりと告げる。

 

 

 

「何回も言わせんじゃねぇ。俺達の案内人はハウリアだァ」

 

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

 

 

 アルフレリックの言葉に輪廻は面倒そうな表情を浮かべつつ、シアをチラリと見た。先程から、ずっと輪廻を見ていたシアはその視線に気がつき、一瞬目が合う。すると僅かに心臓が跳ねたのを感じた。視線は直ぐに逸れたが、シアの鼓動だけは高まり続ける。

 

 

 

「案内と引き換えに助けてやるって、言ったからなァ。」

 

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

 

「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。俺は1回言ったことは絶対に曲げねぇんだよォ。それに、途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ……」

 

 

 

 輪廻は一度、言葉を切って今度はユエを見た。ユエも輪廻を見ており目が合うと僅かに微笑む。それに苦笑いしながら肩を竦めた輪廻はアルフレリックに向き合い告げた。

 

 

 

「カッコ悪りぃだろォ?」

 

 

 

 闇討ち、不意打ち、騙し討ち、卑怯、卑劣に嘘、ハッタリ。殺し合いにおいて、輪廻はこれらを悪いとは思わない。生き残るために必要なら何の躊躇いもなく実行して見せるだろう。

 

 

 

 しかし、だからこそ、殺し合い以外では守るべき仁義くらいは守りたい。それすら出来なければ本当に唯の外道である。輪廻も男だ。あの世界ではそれになりかけた。今度はなりたくない。

 

 

 

 輪廻に引く気がないと悟ったのか、アルフレリックが深々と溜息を吐く。他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく、静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した。

 

 

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック! それでは!」

 

 

 

 完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。

 

 

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが……」

 

「さっきから、少年少年てうるせえなァ、てめぇらは俺より歳下だろうがァ?」

 

「は?」

 

「あのなァ、俺はこれでも五百年生きてんだぞォ?」

 

「「「「え?」」」」

 

その場が凍り付いた

 

少年説明後。めんどいし長いから少し飛ばすわ。(後この後少しの間輪廻君が、出てこないかも。)

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

 

 

 フェアベルゲンを追い出されたハジメ達が、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、ハジメの第一声がこれだった。拠点といっても、ハジメがさり気なく盗ん……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。その中で切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた。

 

 

 

「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

 

 

 困惑する一族を代表してシアが尋ねる。

 

 

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

「な、なぜ、そのようなことを……」

 

 

 

 ハジメの据わった目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突なハジメの宣言に当然の如く疑問を投げかける。

 

 

 

「なぜ? なぜと聞いたか? 残念ウサギ」

 

「あぅ、まだ名前で呼んでもらえない……」

 

 

 

 落ち込むシアを尻目にハジメが語る。

 

 

 

「いいか、俺がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前等は考えているのか?」

 

 

 

 ハウリア族達が互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振る。カムも難しい表情だ。漠然と不安は感じていたが、激動に次ぐ激動で頭の隅に追いやられていたようだ。あるいは、考えないようにしていたのか。

 

 

 

「まぁ、考えていないだろうな。考えたところで答えなどないしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

 

 全くその通りなので、ハウリア族達は皆一様に暗い表情で俯く。そんな、彼等にハジメの言葉が響く。

 

 

 

「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ……それでいいのか? 弱さを理由に淘汰されることを許容するか? 幸運にも拾った命を無駄に散らすか? どうなんだ?」

 

 

 

 誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

 

 

「そんなものいいわけがない」

 

 

 

 その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

 

 

「そうだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」

 

「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

 

 

 兎人族は弱いという常識がハジメの言葉に否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いてもハジメの言う様に強くなど成れるものか、と。

 

 

 

 ハジメはそんなハウリア族を鼻で笑う。

 

 

 

「俺はかつての仲間から〝無能〟と呼ばれていたぞ?」

 

「え?」

 

「〝無能〟だ〝無能〟。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達は俺を〝無能〟と呼んでいたんだよ。実際、その通りだった」

 

 

 

 ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を表にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、戦闘能力に優れた熊人族の長老も、苦もなく一蹴したハジメが〝無能〟で〝最弱〟など誰が信じられるというのか。

 

 

 

「だが、奈落の底に落ちて俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないかなんて頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った。……気がつけばこの有様さ」

 

 

 

 淡々と語られる内容に、しかし、あまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったということだ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。自分達なら絶望に押しつぶされ、諦観と共に死を受け入れるだろう。長老会議の決定を受け入れたように。

 

 

 

「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭ないからな。残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合ってすごせばいいさ」

 

 

 

 それでどうする? と目で問うハジメ。ハウリア族達は直ぐには答えない。いや、答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。ハジメは、正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に、約束が果たされれば容赦なく見捨てられるだろう。だが、そうは分かっていても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、ハジメの提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。ハジメの様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難なのだ。

 

 

 

 黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

 

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

 

 

 樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

 

 

 

 不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐハジメを見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

 

 

「ハジメ殿……宜しく頼みます」

 

 

 

 言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

 

 

「わかった。覚悟しろよ? あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしないからな。おまけに期間は僅か十日だ……死に物狂いになれ。待っているのは生か死の二択なんだから」

 

 

 

 ハジメの言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 ハジメは、ハウリア族を訓練するにあたって、まず、〝宝物庫〟から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼等に渡した。先に渡していたナイフの他に反りの入った片刃の小剣、日本で言うところの小太刀だ。これらの刃物は、ハジメが精密錬成を鍛えるために、その刃を極薄にする練習の過程で作り出されたもので切れ味は抜群だ。タウル鉱石製なので衝撃にも強い。その細身に反してかなりの強度を誇っている。

 

 

 

 そして、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。もちろん、ハジメに武術の心得などない。あってもそれは漫画やゲームなどのにわか知識に過ぎず他者に教えられるようなものではない。教えられるのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた〝合理的な動き〟だけだ。それを叩き込みながら、適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。ハウリア族の強みは、その索敵能力と隠密能力だ。いずれは、奇襲と連携に特化した集団戦法を身につければいいと思っていた。

 

 

 

 ちなみに、シアに関してはユエが専属で魔法の訓練をしている。亜人でありながら魔力があり、その直接操作も可能なシアは、知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔法が使えるはずだからだ。時折、霧の向こうからシアの悲鳴が聞こえるので特訓は順調のようだ。

 

 

 

 だが、訓練開始から二日目。ハジメは額に青筋を浮かべながらイライラした様にハウリア族の訓練風景を見ていた。確かに、ハウリア族達は、自分達の性質に逆らいながら、言われた通り真面目に訓練に励んでいる。魔物だって、幾つもの傷を負いながらも何とか倒している。

 

 

 

 しかし……

 

 

 

グサッ!

 

 

 

 魔物の一体に、ハジメ特製の小太刀が突き刺さり絶命させる。

 

 

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

 

 

 それをなしたハウリア族の男が魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようだ。

 

 

 

ブシュ!

 

 

 

 また一体魔物が切り裂かれて倒れ伏す。

 

 

 

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」

 

 

 

 首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えるハウリア族の女。まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のようだ。

 

 

 

バキッ!

 

 

 

 瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く。

 

 

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

 

 

 その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫ぶ。

 

 

 

「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです! いつか裁かれるとき来るとしても、それは今じゃない! 立って下さい! 族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

 

 

 いい雰囲気のカム達。そして我慢できずに突っ込むハジメ。

 

 

 

「だぁーーー! やかましいわ、ボケッ! 魔物一体殺すたびに、いちいち大げさなんだよ! なんなの? ホント何なんですか? その三文芝居! 何でドラマチックな感じになってんの? 黙って殺れよ! 即殺しろよ! 魔物に向かって〝彼〟とか言うな! キモイわ!」

 

 

 

 そう、ハウリア族達が頑張っているのは分かるのだが、その性質故か、魔物を殺すたびに訳のわからないドラマが生まれるのだ。この二日、何度も見られた光景であり、ハジメもまた何度も指摘しているのだが一向に直らない事から、いい加減、堪忍袋の緒が切れそうなのである。

 

 

 

 ハジメの怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても……」とか「だっていくら魔物でも可哀想で……」とかブツブツと呟くハウリア族達。

 

 

 

 更にハジメの額に青筋が量産される。

 

 

 

 見かねたハウリア族の少年が、ハジメを宥めようと近づく。この少年、ライセン大峡谷でハイベリアに喰われそうになっていたところを間一髪ハジメに助けられ、特に懐いている子だ。

 

 

 

 しかし、進み出た少年はハジメに何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた。

 

 

 

 訝しそうなハジメが少年に尋ねる。

 

 

 

「? どうした?」

 

 

 

 少年は、そっと足元のそれに手を這わせながらハジメに答えた。

 

 

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

 

 

 

 ハジメの頬が引き攣る。

 

 

 

「お、お花さん?」

 

「うん! ハジメ兄ちゃん! 僕、お花さんが大好きなんだ! この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」

 

 

 

 ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。

 

 

 

 ハジメは、ゆっくり顔を俯かせた。白髪が垂れ下がりハジメの表情を隠す。そして、ポツリと囁くような声で質問をする。

 

 

 

「……時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは……その〝お花さん〟とやらが原因か?」

 

 

 

 ハジメの言う通り、訓練中、ハウリア族は妙なタイミングで歩幅を変えたり、移動したりするのだ。気にはなっていたのだが、次の動作に繋がっていたので、それが殺りやすい位置取りなのかと様子を見ていたのだが。

 

 

 

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

 

「はは、そうだよな?」

 

 

 

 苦笑いしながらそう言うカムに少し頬が緩むハジメ。しかし……

 

 

 

「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」

 

 

 

 カムのその言葉にハジメの表情が抜け落ちる。幽鬼のようにゆら~りゆら~りと揺れ始めるハジメに、何か悪いことを言ったかとハウリア族達がオロオロと顔を見合わせた。ハジメは、そのままゆっくり少年のもとに歩み寄ると、一転してにっこりと笑顔を見せる。少年もにっこりと微笑む。

 

 

 

 そしてハジメは……笑顔のまま眼前の花を踏み潰した。ご丁寧に、踏んだ後、グリグリと踏みにじる。

 

 

 

 呆然とした表情で手元を見る少年。ようやくハジメの足が退けられた後には、無残にも原型すら留めていない〝お花さん〟の残骸が横たわっていた。

 

 

 

「お、お花さぁーん!」

 

 

 

 少年の悲痛な声が樹海に木霊する。「一体何を!」と驚愕の表情でハジメを見やるハウリア族達に、ハジメは額に青筋を浮かべたままにっこりと微笑みを向ける。

 

 

 

「ああ、よくわかった。よ~くわかりましたともさ。俺が甘かった。俺の責任だ。お前等という種族を見誤った俺の落ち度だ。ハハ、まさか生死がかかった瀬戸際で〝お花さん〟だの〝虫達〟だのに気を遣うとは……てめぇらは戦闘技術とか実戦経験とかそれ以前の問題だ。もっと早くに気がつくべきだったよ。自分の未熟に腹が立つ……フフフ」

 

「ハ、ハジメ殿?」

 

 

 

 不気味に笑い始めたハジメに、ドン引きしながら恐る恐る話かけるカム。その返答は……

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

 ドンナーによる銃撃だった。カムが仰け反るように後ろに吹き飛び、少し宙を舞った後ドサッと地面に落ちる。次いで、カムの額を撃ち抜いた非致死性のゴム弾がポテッと地面に落ちた。

 

 

 

 辺りをヒューと風が吹き、静寂が支配する。ハジメは、気絶したのか白目を向いて倒れるカムに近寄り、今度はその腹を目掛けてゴム弾を撃ち込んだ。

 

 

 

「はうぅ!」

 

 

 

 悲鳴を上げ咳き込みながら目を覚ましたカムは、涙目でハジメを見る。ウサミミ生やしたおっさんが女座りで涙目という何ともシュールな光景をよそに、ハジメは宣言した。

 

 

 

「貴様らは薄汚い〝ピッー〟共だ。この先、〝ピッー〟されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員〝ピッー〟してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この〝ピッー〟共が!」

 

 

 

 ハジメのあまりに汚い暴言に硬直するハウリア族。そんな彼等にハジメは容赦なく発砲した。

 

 

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

 

 

 わっーと蜘蛛の子を散らすように樹海へと散っていくハウリア族。足元で震える少年がハジメに必死で縋り付く。

 

 

 

「ハジメ兄ちゃん! 一体どうしたの!? 何でこんなことするの!?」

 

 

 

 ハジメはギラリッと眼を光らせて少年を睨むと、周囲を見渡し、あちこちに咲いている花を確認する。そして無言で再度発砲した。

 

 

 

 次々と散っていく花々。少年が悲鳴を上げる。

 

 

 

「何だよぉ~、何すんだよぉ~、止めろよぉハジメ兄ちゃん!」

 

「黙れ、クソガキ。いいか? お前が無駄口を叩く度に周囲の花を散らしていく。花に気を遣っても、花を愛でても散らしてく。何もしなくても散らしていく。嫌なら、一体でも多くの魔物を殺してこい!」

 

 

 

 そう言いつつ、再び花を撃ち抜いてくハジメ。少年はうわ~んと泣きながら樹海へと消えていった。

 

 

 

 それ以降、樹海の中に〝ピッー〟を入れないといけない用語とハウリア達の悲鳴と怒号が飛び交い続けた。

 

 

 

 種族の性質的にどうしても戦闘が苦手な兎人族達を変えるために取った訓練方法。戦闘技術よりも、その精神性を変えるために行われたこの方法を、地球ではハー○マン式と言うとか言わないとか……

 

 

 





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