とある炎剣使い達は世界最強   作:湯タンポ

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こんばんわ湯たんぽです。
感想減ってきて悲しすぎるわ、みんな忙しいのかな?
評価は増えて来たけどねぇ。感想がないとその話反応が分からないんだよねぇ。
アンケートは見たい人と更新して欲しい人とラーメン食べたい人が多いです。
と言うかラーメン食べたいは完全にネタ枠何だけど、多いねぇ。

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。




第13話 輪廻 パパになる。

「ハジメ、俺は今日ちょっと用事ある。だからユエ達に言っといてくれ。」

 

明朝輪廻に呼び出されたハジメは、用事があるとの事で輪廻から伝言を伝えるために、輪廻が行った後にユエ達を起こした。

 

「今日は主は用事が有るらしいから、伝えておく。

ユエ、シア、ミレディ、ティオは買い出しに行ってこい。俺は園部に街を案内してやれと、清水は念の為に主に着いて行った。」

「……分かった。」

「了解ですぅ!」

「はいは〜い。分かったよぉ〜。」

「分かったのじゃ。」

「分かったわ。」

 

 

輪廻〜

 

「清水、」

「何ですか我が君?」

「お前には、手を汚す覚悟があるかァ?」

「……やっぱり、これはそういう事ですよね?」

「…アァ。」

そこでは、輪廻と髪が白くなった清水が話し合っていた。

ーーー

 

輪廻は、清水と一緒に地下下水道を歩いていた。

そしてある所で止まった、子供が流されていたのだ。

 

「この子は……」

 

「まぁ、息はあるし……取り敢えずここから離れるぞ。臭いが酷い」

 

 引き上げられたその子供を見て、清水が驚きに目を見開く。輪廻も、その容姿を見て知識だけはあったので、内心では結構驚いていた。しかし、場所が場所だけに、肉体的にも精神的にも衛生上良くないと場所を移動する事にする。

 

 

 

 子供の素性的に唯の事故で流されたとは思えないので、そのまま天井を蹴破るとストリートに出ることが躊躇われた輪廻は、穴を錬成で塞ぎ、代わりに地上の建物の配置を思い出しながら下水通路に錬成で横穴を開けた。そして、能力で毛布を作り出すと小さな子供をくるみ、抱きかかえて移動を開始した。

 

 

 

 とある裏路地の突き当たりに突如紅いスパークが奔り地面にポッカリと穴が空く。そこからピョンと飛び出したのは、毛布に包まれた小さな子供を抱きかかえた輪廻と清水だ。輪廻は、錬成で穴を塞ぐと、改めて自らが抱きかかえる子供に視線を向けた。

 

 

 

 その子供は、見た目三、四歳といったところだ。エメラルドグリーンの長い髪と幼い上に汚れているにも関わずわかるくらい整った可愛らしい顔立ちをしている。女の子だろう。だが何より特徴的なのは、その耳だ。通常の人間の耳の代わりに扇状のヒレが付いているのである。しかも、毛布からちょこんと覗く紅葉のような小さな手には、指の股に折りたたまれるようにして薄い膜がついている。

 

 

 

「この子、海人族の子ですね……どうして、こんな所に……」

 

「まァ、まともな理由じゃないのは確かだろうなァ」

 

 

 

 海人族は、亜人族としてはかなり特殊な地位にある種族だ。西大陸の果、【グリューエン大砂漠】を超えた先の海、その沖合にある【海上の町エリセン】で生活している。彼等は、その種族の特性を生かして大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているのだ。そのため、亜人族でありながらハイリヒ王国から公に保護されている種族なのである。差別しておきながら使えるから保護するという何とも現金な話だ。

 

 

 

 そんな保護されているはずの海人族、それも子供が内陸にある大都市の下水を流れているなどありえない事だ。犯罪臭がぷんぷんしている。

 

 

 

 と、その時、海人族の幼女の鼻がピクピクと動いたかと思うと、パチクリと目を開いた。そして、その大きく真ん丸な瞳でジーと輪廻を見つめ始める。何となく目が合ったまま逸らさずジーと見つめ返した。意味不明な緊迫感が漂う中、清水が何をしているんだと呆れた表情で近づくと、海人族の幼女のお腹がクゥーと可愛らしい音を立てる。再び鼻をピクピクと動かし、輪廻から視線を逸らすと、その目が未だに持っていた清水の露店の包み(来る途中に買った)をロックオンした。

 

 

 

 清水がこれ? と首を傾げながら、串焼きの入った包み右に左にと動かすと、まるで磁石のように幼女の視線も左右に揺れる。どうやら、相当空腹のようだ。清水が、包から串焼きを取り出そうとするのを制止して、輪廻は幼女に話しかけながら錬成を始めた。

 

 

 

「で? お前の名前は?」

 

 

 

 女の子は、清水の持つ串焼きに目を奪われていたところ、突如、地面から紅いスパークが走り始め、四角い箱状のものがせり上がってくる光景に驚いたように身を竦めた。そして、再度、輪廻から名前を聞かれて、視線を彷徨わせた後、ポツリと囁くような声で自身の名前を告げた。

 

 

 

「……ミュウ」

 

「そうか。俺は輪廻で、そっちは清水だ。それでミュウ。あの串焼きが食べたいなら、まず、体の汚れを落とせェ」

 

 

 

 輪廻は、完成した簡易の浴槽に〝宝物庫〟から綺麗な水を取り出し浴槽に貯め、更にフラム鉱石を利用した温石で水温を調整し即席のお風呂を作った。下水で汚れた体のまま食事をとるのは非常に危険だ。幾分か飲んでしまっているだろうから、解毒作用や殺菌作用のある薬(市販品)も飲ませておく必要がある。

 

 

 

 返事をする間もなく、毛布と下水をたっぷり含んだ汚れた衣服を脱がされ浴槽に落とされたミュウは、「ひぅ!」と怯えたように身を縮めたものの、体を包む暖かさに次第に目を細めだした。輪廻は、薬やタオル、石鹸等を出しミュウの世話をして、清水にミュウの衣服を買いに袋小路を出て行かせた。(容赦なくパシリにされる清水君、しかしそれに気付いてない本人と輪廻。)

 

 

 しばらくして、清水が、ミュウの服を揃えて袋小路に戻ってくると、ミュウは既に湯船から上がっており、新しい毛布にくるまれて輪廻に抱っこされているところだった。抱っこされながら、輪廻が出した串焼きをはぐはぐと小さな口を一生懸命動かして食べている。薄汚れていた髪は、本来のエメラルドグリーンの輝きを取り戻し、光を反射して天使の輪を作っていた。

 

 

 

「帰ってきたかァ清水、こいつは問題ねぇみてぇだァ。」

 

 

 

 清水が帰ってきた事に気がついた輪廻が、清水にそういった。ミュウもそれで清水の存在に気がついたのか、はぐはぐと口を動かしながら、再びジーと清水を見つめ始めた。良い人か悪い人かの判断中なのだろう。

 

 

 

 清水は、輪廻の言葉に頷くと、買ってきた服を取り出した。シアの着ていた服に良く似た乳白色のフェミニンなワンピースだ。それに、グラディエーターサンダルっぽい履物、それと下着だ。子供用とは言え、店で買う時は店員の目が非常に気になった。

 

 

 

 清水は輪廻へこれらを渡した。

輪廻は毛布を剥ぎ取りポスッと上からワンピースを着せた。次いでに下着もさっさと履かせる。そして、ミュウの前に跪いて片方ずつ靴を履かせていった。更に、ドライヤーを作り、湿り気のあるミュウの髪を乾かしていく。ミュウはされるがままで、ジーと輪廻を見ているが、温風の気持ちよさに次第に目を細めていった。

 

 

 

「……何気に、我が君って面倒見いいですよね」

 

「何だァ、藪から棒に……」

 

めんどくさかったので、話題を逸らした

 

「で、今後の事だが……」

 

「この子をどうするかですね……」

 

 

 

 二人が自分の事を話していると分かっているようで、上目遣いで輪廻と清水を交互に見るミュウ。

 

 

 

 輪廻は取り敢えず、ミュウの事情を聞いてみることにした。

 

 

 

 結果、たどたどしいながらも話された内容は、輪廻が予想したものに近かった。すなわち、ある日、海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っているところを人間族の男に捕らえられたらしいということだ。

 

 

 

 そして、幾日もの辛い道程を経てフューレンに連れて来られたミュウは、薄暗い牢屋のような場所に入れられたのだという。そこには、他にも人間族の幼子たちが多くいたのだとか。そこで幾日か過ごす内、一緒にいた子供達は、毎日数人ずつ連れ出され、戻ってくることはなかったという。少し年齢が上の少年が見世物になって客に値段をつけられて売られるのだと言っていたらしい。

 

 

 

 いよいよ、ミュウの番になったところで、その日たまたま下水施設の整備でもしていたのか、地下水路へと続く穴が開いており、懐かしき水音を聞いたミュウは咄嗟にそこへ飛び込んだ。三、四歳の幼女に何か出来るはずがないとタカをくくっていたのか、枷を付けられていなかったのは幸いだった。汚水への不快感を我慢して懸命に泳いだミュウ。幼いとは言え、海人族の子だ。通路をドタドタと走るしかない人間では流れに乗って逃げたミュウに追いつくことは出来なかった。

 

 

 

 だが、慣れない長旅に、誘拐されるという過度のストレス、慣れていない不味い食料しか与えられず、下水に長く浸かるという悪環境に、遂にミュウは肉体的にも精神的にも限界を迎え意識を喪失した。そして、身を包む暖かさに意識を薄ら取り戻し、気がつけば輪廻の腕の中だったというわけだ。

 

 

 

「客が値段をつける……かァ。オークションか。それも人間族の子や海人族の子を出すってんなら裏のオークションなんだろうなァ」

 

「……我が君、どうしますか?私としては、保安局に預けた方がいいと思いますが?」

 

清水がそう提案する。

「アァ、そうだなァ。いいか、ミュウ。これから、お前を守ってくれる人達の所へ連れて行く。時間は掛かるだろうが、いつか西の海にも帰れるだろう」

 

「……お兄ちゃん達は?」

 

 ミュウが、輪廻の言葉に不安そうな声音で二人はどうするのかと尋ねる。

 

 

「悪いが、そこでお別れだ」

 

「やっ!」

 

「いや、やっ! じゃなくてなァ……」

 

「お兄ちゃん達がいいの! 二人といるの!」

 

 

 

 思いのほか強い拒絶が返ってきて輪廻が若干たじろぐ。ミュウは、駄々っ子のように輪廻の膝の上でジタバタと暴れ始めた。今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、輪廻達の人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮している。元々は、結構明るい子なのかもしれない。

 

 

 

 輪廻としても信頼してくれるのは悪い気はしないのだが、どっちにしろ公的機関への通報は必要であるし、途中で【大火山】という大迷宮の攻略にも行かなければならないのでミュウを連れて行くつもりはなかった。なので、「やっーー!!」と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、抱きかかえると強制的に保安署に連れて行くことにした。

 

 

 

 ミュウとしても、窮地を脱して奇跡的に見つけた信頼出来る相手から離れるのはどうしても嫌だったので、保安署への道中、輪廻の髪やら首やら頬やらを盛大に引っかき必死の抵抗を試みる。隣に愛想笑いを浮かべる清水がいなければ、輪廻こそ誘拐犯として通報されていたかもしれない。髪はボサボサ、首に傷、頬に引っかき傷を作って保安署に到着した輪廻は、目を丸くする保安員に事情を説明した。

 

 事情を聞いた保安員は、表情を険しくすると、今後の捜査やミュウの送還手続きに本人が必要との事で、ミュウを手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。輪廻の予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと引き下がろうとした。が……

 

「お兄ちゃん達は、ミュウが嫌いなの?」

 

 幼女にウルウルと潤んだ瞳で、しかも上目遣いでそんな事を言われて平常心を保てるヤツはそうはいない。清水も、「うっ」と唸り声を上げ、旅には連れて行けないこと、眼前の保安員のおっちゃんに任せておけば家に帰れる事を根気よく説明するが、ミュウの悲しそうな表情は一向に晴れなかった。

 

 

 

 見かねた保安員達が、ミュウを宥めつつ少し強引に輪廻達と引き離し、ミュウの悲しげな声に後ろ髪を引かれつつも、ようやく輪廻達は保安署を出たのだった。

 

やがて保安署も見えなくなり、かなり離れた場所に来たころ、清水に声をかけようとした。と、その瞬間、

 

 

 

ドォガァアアアン!!!!

 

 

 

 背後で爆発が起き、黒煙が上がっているのが見えた。その場所は、

 

 

 

「我が君!あそこって……」

 

「チッ、保安署か!」

 

 

 

 そう、黒煙の上がっている場所は、さっきまでハジメ達がいた保安署があった場所だった。二人は、互いに頷くと保安署へと駆け戻る。タイミング的に最悪の事態が脳裏をよぎった。すなわち、ミュウを誘拐していた組織が、情報漏えいを防ぐためにミュウごと保安署を爆破した等だ。

 

 

 

 焦る気持ちを抑えつけて保安署にたどり着くと、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。輪廻達が、中に踏み込むと、対応してくれたおっちゃんの保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。

 

 

 

 両腕が折れて、気を失っているようだ。他の職員も同じような感じだ。幸い、命に関わる怪我をしている者は見た感じではいなさそうである。輪廻が、職員達を見ている間、ほかの場所を調べに行った清水が、焦った表情で戻ってきた。

 

 

 

「我が君!あの子がいません! それにこんなものが!」

 

 

 

 清水が手渡してきたのは、一枚の紙。そこにはこう書かれていた。

 

 

 

〝海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族達を連れて○○に来い〟

 

「我が君、これは……」

 

「どうやら、あっちは相当死にたい様だなァ。……」

 

 輪廻は、メモ用紙をグシャと握り潰すと凶悪な笑みを浮かべた。おそらく、連中は保安署でのミュウと輪廻達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族や美しい女達も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。

 

そして話は冒頭に戻る。

 

「それでェ?手を汚す覚悟はあるかァ?」

「……はい、貴方に使えた時から覚悟は出来ています。」

「そうかァ、なら話は速い、組織潰してアイツをもらうぜぇ。」

 

 

商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。公的機関の目が届かない完全な裏世界。大都市の闇。昼間だというのに何故か薄暗く、道行く人々もどこか陰気な雰囲気を放っている。

 

 

 

 そんな場所の一角にある七階建ての大きな建物、表向きは人材派遣を商いとしているが、裏では人身売買の総元締をしている裏組織〝フリートホーフ〟の本拠地である。いつもは、静かで不気味な雰囲気を放っているフリートホーフの本拠地だが、今は、騒然とした雰囲気で激しく人が出入りしていた。おそらく伝令などに使われている下っ端であろうチンピラ風の男達の表情は、訳のわからない事態に困惑と焦燥、そして恐怖に歪んでいた。

 

 

 

 そんな普段の数十倍の激しい出入りの中、どさくさに紛れるように頭までスッポリとローブを纏った者が一人、フリートホーフの本拠地に難なく侵入した。バタバタと慌ただしく走り回る人ごみをスイスイと避けながら進み、遂には最上階のとある部屋の前に立つ。その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出していた。それを聞いて、ローブを纏った者が聞き耳を立てる。

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ! アァ!? てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

 

「ひぃ! で、ですから、潰されたアジトは既に百五十軒を超えました。襲ってきてるのは二人組です!」

 

「じゃあ、何か? たった2人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか? あぁ?」

 

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

 

 

 室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ! と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

 

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる! 一人につき、だ! 全ての構成員に伝えろ!」

 

 男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう。だがしかし。

 

「その必要は無い、本人が居るからな!全集中・月の呼吸漆ノ型 厄鏡・月映え!」

ズジャァァァァァ

「さて、粗方片付いたし、ミュウちゃんの事聞かせて貰おうか。 」

ミュウと言われて一瞬、訝しそうな表情を見せたハンセンだが、海人族の子と言われ思い至ったのか少しずつ刺さっていく刀に苦悶の表情を浮かべながら必死に答えた。どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 

 ちなみに、ハンセンは清水とミュウの関係を知らなかったようで、なぜ、海人族の子にこだわるのか疑問に思ったようだ。おそらく、清水達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が咄嗟に思いつきでシア達の誘拐計画を練って実行したのだろう。元々、シアはフリートホーフの誘拐リストの上位に載っていたわけであるから、自分で誘拐して組織内での株を上げようとでもしたに違いない。

 

 

 

 清水は、左の腕輪に手を触れて念話石を起動すると、輪廻に連絡をとった。

 

 

 

〝我が君。聞こえますか?俺です〟

 

〝…………清水。ああ、聞こえる。どうしたァ?今潰してる最中何だがァ〟

 

〝それはすみません、ですがあの子の居場所が分かりました。我が君は今、観光区ですよね? そちらの方が近いので先に向かって下さい〟

 

〝了解だァ〟

 

 

 

 清水は、輪廻に詳しい場所を伝えると念話を切った。既に腹に刀が貫通しているので呼吸もままならないのか、青紫っぽい顔色になっているハンセン。清水は、刀を抜くと、血を払い肩に担いだ。刀からは解放されたものの、既に出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンは、それでも必死に清水に手を伸ばし助けを求めた。

 

「た、助け……医者を……」

 

「子供の人生を食い物にしておいて、それは都合が良すぎる…それにお前のような人間を逃したりしたら、我が君や奥様方に怒られるんだ。というわけで、じゃあな。」

 

「や、やめ!」

ザシュッ

男を刺し着いた血を払い背中に直すと。

直ぐに主の元へ急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輪廻と合流した清水。

 

輪廻達は情報の場所に急行していた。ミュウがオークションに出される以上、命の心配はないだろうが精神的な負担は相当なもののはずだ。奪還は早いに越したことはない。

 

 

 

 目的の場所に到着すると、その入口には二人の黒服に身を包んだ巨漢が待ち構えていた。輪廻は、騒ぎを起こしてまたミュウが移送されては堪らないと思い、裏路地に移動すると錬成を使って地下へと侵入した。

 

 

 

 清水と共に、気配遮断を使いながら素早く移動していく。ダンボールが無いのは非常に残念だ。あれさえあれば、気配遮断のスキルすらいらないというのに……

 

 

 

 やがて、地下深くに無数の牢獄を見つけた。入口に監視が一人おり居眠りをしている。その監視の前を素通りして行くと、中には、人間の子供達が十人ほどいて、冷たい石畳の上で身を寄せ合って蹲っていた。十中八九、今日のオークションで売りに出される子供達だろう。

 

 

 

 基本的に、人間族のほとんどは聖教教会の信者であることから、そのような人間を奴隷や売り物にすることは禁じられている。人間族でもそのような売買の対象となるのは犯罪者だけだ。彼等は、神を裏切った者として、奴隷扱いや売り物とすることが許されるのである。そして、眼前で震えている子供達が、そろってそのような境遇に落とされべき犯罪者とは到底思えない。そもそも、正規の手続きで奴隷にされる人間は表のオークションに出されるのだ。ここにいる時点で、違法に捕らえられ、売り物にされていることは確定だろう。

 

 

 

 輪廻は、突然入ってきた人影に怯える子供達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

 

 

「ここに、海人族の女の子はこなかったかァ?」

 

 

 

 てっきり、自分達の順番だと怯えていた子供達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。牢屋の中にはミュウの姿はなかった。そのため、輪廻は、他にも牢屋があるのか、それとも既に連れ出された後なのか、子供達に尋ねてみたのだ。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……お兄さん達は誰なの?」

 

 やはり、既に連れて行かれたあとかと内心舌打ちした輪廻は、不安そうな少年に向かって簡潔に返した。

 

 

 

「助けに来たんだよ」

 

「えっ!? 助けてくれるの!」

 

 

 

 輪廻の言葉に、驚愕と喜色を浮かべて、つい大声を出してしまう少年。その声は薄暗い地下牢によく響き渡った。慌てて口を両手で抑える少年だったが、監視にはばっちり聞こえていたようで「何騒いでんだ!」と目を覚ましてドタドタと地下牢に入ってきた。

 

 

 

 そして、輪廻達を見つけて、一瞬硬直するものの「てめぇら何者だ!」と叫びながら短剣を抜いて襲いかかる。それを見て、子供達は、刺されて倒れる輪廻達の姿を幻視し悲鳴を上げた。

 

 

 

 だが、そんな事はありえない。輪廻は、突き出された刃物を左手で無造作に掴み取ると、そのまま力を込めて短剣の刃を粉々に砕いてしまった。輪廻が、手を広げるとバラバラとこぼれ落ちる刃の欠片。監視の男は、それが何なのか一瞬理解出来なかったようでキョトンとした表情をすると、手元の短剣に目を落とした。そして、柄だけになっている姿を見て、ようやく何が起こったのか理解し、「なっ、なっ」と言葉を詰まらせながら顔を青ざめさせて一歩後退った。

 

 

 

 輪廻は、問答無用で一歩詰めると男の頭を鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつけた。

 

 

 

グシャ!

 

 そんな生々しい音共に、一瞬で男は絶命する。

 

「監視なら仕事しろ仕事ォ。」

 

 呆れた表情でそんな事を言いながら、文字通り監視を瞬殺した輪廻に、子供達は目を丸くして驚いている。そんな視線にもお構いなしに輪廻は、錬成で鉄格子を分解してしまう。子供達の目には、一瞬で鉄格子を消し去ってしまったように見えたため更に驚いてポカンと口を開いたまま硬直してしまった。

 

 

 

「清水、悪いが、こいつ等を頼めるか? 俺は、どうやらもうひと暴れしなきゃならないみたいだからなァ」

 

「分かりました。」

 

「おそらく、もうすぐ保安署の連中も駆けつけるだろうしな。そいつらに預ければいいだろう。イルワ支部長が色々手を回してくれるだろうし……こまけぇことは、あいつに丸投げしよう」

 

 

 

 清水が若干、同情するような眼差しで遠くを見た。それはギルド支部がある方角だった。実は、ここに来る前に、適当に捕まえた冒険者にイルワ宛の念話石を届けてもらい、事の次第をイルワに説明しておいたのだ。ステータスプレートの〝金〟はこういうとき非常に役に立つ。輪廻の色を見た瞬間の平冒険者のしゃちほこばった態度といったら……まるで日本人がハリウッドスターに街中で声を掛けられたようだった。敬礼までして快く頼みを聞いてくれたのだ。

 

 

 

 ちなみに、イルワの方から念話石を起動することは出来ないので、彼は一方的に輪廻から、巨大裏組織と喧嘩しているという報告と事後処理もろもろ宜しくという話を聞かされ、執務室で真っ白になっていたりする。

 

 

 

 輪廻は、再び、地下牢から錬成で上階への通路を作ると子供達を清水に任せてオークション会場へ急ごうとした。と、その時、先ほどの少年が輪廻を呼び止める。

 

 

 

「兄ちゃん! 助けてくれてありがとう! あの子も絶対助けてやってくれよ! すっげー怯えてたんだ。俺、なんも出来なくて……」

 

 

 

 どうやら、この少年、亜人族とか関係なく、ミュウを励まそうとしていたらしい。自分も捕まっていたというのに中々根性のある少年だ。自分の無力に悔しそうに俯く少年の頭を、輪廻はわしゃわしゃと撫で回した。

 

 

 

「わっ、な、なに?」

 

「悔しいなら強くなればいい。それしかねぇ。今回は俺がやっとくさァ。何、次があればお前がやればいいだろォ?」

 

そう言うとさっさと言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オークション会場は、一種異様な雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 会場の客はおよそ百人ほど。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずに、ただ目当ての商品が出てくるたびに番号札を静かに上げるのだ。素性をバラしたくないがために、声を出すことも躊躇われるのだろう。

 

 

 

 そんな細心の注意を払っているはずの彼等ですら、その商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。

 

 

 

 出てきたのは二メートル四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウだ。衣服は剥ぎ取られ裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。海人族は水中でも呼吸出来るので、本物の海人族であると証明するために入れられているのだろう。一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。小さな手足には酷く痛々しい光景だ。

 

 

 

 多くの視線に晒され怯えるミュウを尻目に競りは進んでいく。ものすごい勢いで値段が上がっていくようだ。一度は人目に付いたというのに、彼等は海人族を買って隠し通せると思っているのだろうか。もしかすると、昼間の騒ぎをまだ知らないのかもしれない。

 

 

 

 ざわつく会場に、ますます縮こまるミュウは、その手に持っていた黒い輪っかをギュッと握り締めた。それは、輪廻のチョーカー型バッテリーだ、(演算補佐を行う為のAIのバッテリー。)。ミュウと別れる際、ミュウを宥めることに忙しくてすっかりその存在を忘れていた輪廻は、後になって思い出し、現在は予備のバッテリーを着けている。

 

 

 

 その輪廻のチョーカーが、ミュウの小さな拠り所だった。母親と引き離され、辛く長い旅を強いられ、暗く澱んだ牢屋に入れられて、汚水に身を浸し、必死に逃げて、もうダメだと思ったその時、温かいものに包まれた。何だかいい匂いがすると目を覚ますと、目の前には首に黒い輪っかを付けた白髪の少年がいる。驚いてジッと見つめていると、何故か逸らしてなるものかとでも言うように、相手も見つめ返してきた。ミュウも、何だか意地になって同じように見つめ返していると、鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いに気が逸れる。

 

 

 

 その後は聞かれるままに名前を答え、次に綺麗な紅い光が迸ったかと思うと、温かいお湯に入れられ、少年に体を丸洗いされた、温かなお風呂も優しく洗ってくれる感触もとても気持ちよくて気がつけば輪廻と名乗るお兄さんを〝お兄ちゃん〟と呼び完全に気を許していた。

 

 

 

 膝の上に抱っこされ、食べさせてもらった串焼きの美味しさを、ミュウは、きっと一生忘れないだろう。夢中になってあ~んされるままに食べていると、いつの間にかいなくなっていた清水と名乗る少年が帰ってきた。少し警戒心が湧き上がったが、可愛らしい服を取り出すとお兄ちゃんと一緒に丁寧に着せてくれて、温かい風を吹かせながら何度も髪を梳かれているうちに気持ちよくなってすっかり警戒心も消えてしまった。

 

 

 

 だから、保安署というところに預けられてお別れしなければならないと聞かされた時には、とてもとても悲しかった。母親と引き離され、ずっと孤独と恐怖に耐えてきたミュウにとって、遠く離れた場所で出会った優しいお兄ちゃん二人と離れ、再び一人になること耐え難かったのだ。

 

 

 

 故に、ミュウは全力で抗議した。輪廻の髪を引っ張ってやったし、頬を何度も叩いたし、首に付けた黒い輪っかだって取ってやったのだ。返して欲しくばミュウと一緒にいるがいい! と。しかし、ミュウが一緒にいたかったお兄ちゃん達は、結局、ミュウを置いて行ってしまった。

 

 

 

 ミュウは、身を縮こまらせながら考えた。やっぱり、痛いことしたから置いていかれたのだろうか? 黒い輪っかを取ったから怒らせてしまったのだろうか? 自分は、お兄ちゃん達に嫌われてしまったのだろうか? そう思うと、悲しくて悲しくて、ホロリと涙が出てくる。もう一度会えたら、痛くしたことをゴメンなさいするから、黒いやつも返すから、そうしたら今度こそ……どうか一緒にいて欲しい。

 

 

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」

 

 

 

 ミュウがそう呟いたとき、不意に大きな音と共に水槽に衝撃が走った。「ひぅ!」と怯えたように眉を八の字にして周囲を見渡すミュウ。すると、すぐ近くにタキシードを着て仮面をつけた男が、しきりに何か怒鳴りつけながら水槽を蹴っているようだと気が付く。どうやら更に値段を釣り上げるために泳ぐ姿でも客に見せたかったらしく、一向に動かないミュウに痺れを切らして水槽を蹴り飛ばしているらしい。

 

 

 

 しかし、ますます怯えるミュウは、むしろ更に縮こまり動かなくなる。輪廻のチョーカーを握り締めたままギュウと体を縮めて、襲い来る衝撃音と水槽の揺れにひたすら耐える。

 

 

 

 フリートホーフの構成員の一人で裏オークションの司会をしているこの男は、余りに動かないミュウに、もしや病気なのではと疑われて値段を下げられるのを恐れて、係りの人間に棒を持ってこさせた。それで直接突いて動かそうというのだろう。ざわつく客に焦りを浮かべて思わず悪態をつく。

 

 

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しのごときが!」

 

 

 

 そう言って、司会の男が脚立に登り上から棒をミュウ目掛けて突き降ろそうとした。その光景にミュウはギュウと目を瞑り、衝撃に備える。

 

 

 

が、やってくるはずの衝撃の代わりに届いたのは……聞きたかった人の声だった。

 

 

 

「やっぱりこういう仕事をしてる方が慣れてていいぜェ、だけどこういう仕事は俺の様な悪党がやるに限るなァ。」

 

 

 

 次の瞬間、天井より舞い降りた人影が、司会の男の頭を踏みつけると、そのまま脚立ごと猛烈な勢いで床に押しつぶした。ビシャアア! と司会の男から破裂したように血が飛び散る。まさに圧殺という有様だった。

 

 

 

 衝撃的な登場をした人影、輪廻は、潰れて一瞬で絶命した男の事など目もくれず刀で水槽を斬りつけた。バシャン!という破砕音と共に水槽が壊され中の水が流れ出す。

 

 

 

「ひゃう!」

 

 

 

 流れの勢いで、ミュウも外へと放り出された。思わず悲鳴を上げるミュウだったが、直後ふわりと温かいものに受け止められて、瞑っていた目を恐る恐る開ける。そこには、会いたいと思っていた人が、声が聞こえた瞬間どうしようもなく期待し思い浮かべた人が……確かにいた。自分を抱きとめてくれていた。ミュウは目をパチクリとし、初めて会った時のようにジッーと輪廻を見つめる。

 

 

 

「よぉ、ミュウ。おめぇは、会うたびにびしょ濡れだなァ?」

 

 

 

 冗談めかしてそんな事を言う輪廻に、ミュウは、やはりジーと見つめたまま、ポツリと囁くように尋ねる。

 

 

 

「……お兄ちゃん?」

 

「お兄ちゃんかどうかは別として、お前に髪を引っ張られ、頬を引っ掻かれた挙句、チョーカーを取られて、ついでに首に傷もつけられた輪廻さんなら、確かに俺だ」

 

 

 

 輪廻が笑いながらそう返すと、ミュウはまん丸の瞳をジワッと潤ませる。そして……

 

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

輪廻の首元にギュッウ~と抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。輪廻は困った表情でミュウの背中をポンポンと叩く。そして、手早く毛布でくるんでやった。

 

 と、再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達が輪廻とミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。

 

 

 

「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

 

゛清水、そっちはどうだ?終わったかァ?“

゛はい、退避完了しました。゛

“OKだ、今から花火を打ち上げるからなァ、離れてろよォ。”

゛………我が君、それ絶対危ない方の花火ですよね?゛

゛八ハハッ、どうだかなァ!”

「クソ餓鬼はてめぇの方だ、ドチビィ!スペルカード発動!地獄『煉獄の焔』!」

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「ミュウ、覚えとけ、これが花火だァ!」

輪廻は重力魔法で空を飛びながら、ミュウに絶対に違う常識を教えこんでいる。

「これが花火!なの!」

ちょうどその時、ある2人組がいた。

 

「ねぇ南雲、」

「何だ園部、そんなに改まって?」

「私ねあんたに伝えたいことがあるの」

「何だ?」

「私、あんたの事が好きなの!」

「は?」

「だから、私と付き合って下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

「ユエさんミレディさん、あの二人いい感じじゃないですか?」

「……ん、いい傾向。」

「だねだね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、なら俺で良ければいいぜ。」

「! 本当に?!」

「ああ、よろしく頼むぜ。」

SO・NO・TO・KI☆

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「「…………………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「…………これって絶対輪廻さんですよね?」

「……………ん、こんなことできるのは輪廻だけ。」

「……うんうん。こんな事ができるのは輪廻君ぐらいだよねぇ〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

待合室にて。

 

「…………リンネ?この子はドウシタノ?攫ってきたの?ソレトモ、ワタシタチイガイノコ?」

「輪廻君?この子はどこの子かなぁ?私達にはこんな子と面識はないんだけどなぁ、」

「輪廻さん、さすがにこれは私達もそっちだったらキレますよ?」

「待て待て誤解だァ、こいつは今さっき潰してきた組織が攫ってたやつだァ、それを助けてきただけだァ。」

「……………………………………………………………………ん、そういう事なら許す。」

 

「…なんだその無駄に長い間は」

「…秘密。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室にて。

 

「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物百八十五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員二百九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、行方不明者三百十九名……で? 何か言い訳はあるかい?」

 

「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔もねぇ」

 

「はぁ~~~~~~~~~」

 

 

 冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にジト目で輪廻を睨むイルワだったが、出された茶菓子を膝に載せた海人族の幼女と分け合いながらモリモリ食べている姿と反省の欠片もない言葉に激しく脱力する。

 

「まさかと思うけど……メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話…君達は関係ないよね?」

 

「……ミュウ、これも美味いぞ? 食ってみろ」

 

「あ~ん」

 

輪廻は平然とミュウにお菓子を食べさせているが、隣に座るハジメと優花の目が一瞬泳いだのをイルワは見逃さなかった。再び、深い、それはもうとても深い溜息を吐く。片手が自然と胃の辺りを撫でさすり、傍らの秘書長ドットが、さり気なく胃薬を渡した。

 

 

 

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

 

「まぁ、元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」

 

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい? ホント、洒落にならないね」

 

 

 

 苦笑いするイルワは、何だか十年くらい一気に年をとったようだ。流石に、ちょっと可哀想なので、輪廻に変わってハジメはイルワに提案してみる。

 

 

 

「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったんだ。支部長も、俺らの名前使ってくれていいんだぞ? 何なら、支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか?」

 

「おや、いいのかい? それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」

 

 

 

 ハジメの言葉に、意外そうな表情を見せるイルワ。だが、その瞳は「えっ? マジで? 是非!」と雄弁に物語っている。ハジメは苦笑いしながら、肩を竦めた。

 

 

 

「まぁ、持ちつ持たれつってな。世話になるんだし、それくらいは構わねぇよ。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。俺らのせいで、フューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いしな」

 

「……ふむ。ハジメ君、少し変わったかい? 初めて会ったときの君は、仲間の事以外どうでもいいと考えているように見えたのだけど……ウルでいい事でもあったのかな?」

 

「……まぁ、俺的には悪いことばかりじゃなかったよ」

 

 

 

 流石は大都市のギルド支部長、相手のことをよく見ている。ハジメの微妙な変化も気がついたようだ。その変化はイルワからしても好ましいものだったので、ハジメからの提案を有り難く受け取る。

 

 

 

 ちなみに、その後、フリートホーフの崩壊に乗じて勢力を伸ばそうと画策した他二つの組織だったが、イルワの「なまはげが来るぞ~」と言わんばかりの効果的な輪廻達の名の使い方のおかげで大きな混乱が起こることはなかった。この件で、輪廻は〝フューレン支部長の懐刀〟とか〝白髪の爆炎使い〟とか〝幼女キラー〟とか色々二つ名が付くことになったが……輪廻の知ったことではない。ないったらないのだ。

 

 

 

 

大暴れした輪廻達(主に輪廻と清水)の処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたおかげと、意外にも治安を守るはずの保安局が、正当防衛的な理由で不問としてくれたので特に問題はなかった。どうやら、保安局としても、一度預かった子供を、保安署を爆破されて奪われたというのが相当頭に来ていたようだ。

 

 

 

 また、日頃自分達を馬鹿にするように違法行為を続ける裏組織は腹に据えかねていたようで、挨拶に来た還暦を超えているであろう局長は実に男臭い笑みを浮かべて輪廻達にサムズアップして帰っていった。心なし、足取りが「ランラン、ルンルン」といった感じに軽かったのがその心情を表している。

 

 

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

 

 

 イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスのように食べているミュウに視線を向ける。ミュウは、その視線にビクッとなると、また輪廻達と引き離されるのではないかと不安そうに輪廻やハジメやユエ、ミレディ、シアやティオに優花を見上げた。

 

 

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

 

 

 誘拐された海人族の子を、公的機関に預けなくていいのかと首を傾げるハジメに、イルワが説明するところによると、輪廻の〝金〟と今回の暴れっぷりの原因がミュウの保護だったという点から、任せてもいいということになったらしい。

 

「なら、こっちで預からせて貰うぜェ。まぁ、最初からそうするつもりで助けたからなァ……ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にしねェ」

 

「お兄ちゃん!」

 

満面の笑みで喜びを表にするミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、輪廻は「まぁ、何とかするさ」と内心覚悟を決めてミュウの同行を許す。

 

「ただな、ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないかァ? 普通に輪廻でいい。何というかむず痒いんだよォ、その呼び方」

 

輪廻の要求に、ミュウはしばらく首をかしげると、やがて何かに納得したように頷き……ハジメどころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。

 

 

 

「……パパ」

 

「………………なんつった? 悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」

 

「パパ」

 

「……そりゃあれか? 海人族の言葉で〝お兄ちゃん〟とか〝輪廻〟という意味か?」

 

「ううん。パパはパパなの」

 

「アァ、ちょっと待てやァ」

 

 

 

 輪廻が、目元を手で押さえ揉みほぐしている内に、シアがおずおずとミュウに何故〝パパ〟なのか聞いてみる。すると……

 

 

 

「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」

 

「何となくわかったが、何が〝だから〟何だとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁してくれやァ。」

 

「やっ、パパなの!」

 

「わかった。もうお兄ちゃんでいい! 贅沢はいわないからパパは止めろォ!」

 

「やっーー!! パパはミュウのパパなのー!」

 

 

 

 その後、あの手この手でミュウの〝パパ〟を撤回させようと試みるが、ミュウ的にお兄ちゃんよりしっくり来たようで意外なほどの強情さを見せて、結局、撤回には至らなかった。

 

 イルワとの話し合いを終え宿に戻ってからは、誰がミュウに〝ママ〟と呼ばせるかで紛争が勃発したが、 結局〝ママ〟は本物のママしかダメらしく、ユエもミレディもシアもティオも一応優花も〝お姉ちゃん〟で落ち着いた。

 

そして夜、ミュウたっての希望で全員(輪廻ファミリー)で川の字になって眠る事になり、ミュウが輪廻と誰の間で寝るかで再び揉めて、精神的に疲れきったが強引輪廻が大の字になり、にミュウを間にしてユエとミレディを抱きしめ、そのことでシアとティオが不満をたらたらと流すという出来事があったが、なんとか眠りに付き激動の一日を終えることが出来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

オマケ

 

「………輪廻。」

「……なんだァ?ユエ。」

「…子供欲しい。」

「…………」

「輪廻君〜ミレディたんも欲しいよ〜」

「あ、あの〜出来れば私も…」

「わ、妾もして欲しいのじゃが。」

「……………疲れたし、ミュウも居るから今日は無理だァ。」

「…!ミレディ、言質は撮った、疲れて無くてミュウが居ない日ならOK。」

「そうだねぇ!言質は取ったからねぇ?ちゃんと相手してよぉ?」

「…………別にお前ら全員相手してやっても良いがなァ、その代わり直ぐに終わるなよォ?」

「「「「……」」」」

「…自分で言い出したのに恥ずかしくなったんならさっさと寝ろォ。」

 




とうとうハジメにも春が!

感想と高評価お願いします。

次回は未定です。どれにしようか迷ってます。アンケートは明日の朝かお昼位まで。

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