とある炎剣使い達は世界最強   作:湯タンポ

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こんちわー湯たんぽです。

今回は別に読まなくても特に本編に関係ない話になっております。

アンケートはまだやります。


第14話 言い争い

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天之河光輝 17歳 男 レベル:72

 

天職:勇者

 

筋力:880

 

体力:880

 

耐性:880

 

敏捷:880

 

魔力:880

 

魔耐:880

 

技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

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坂上龍太郎 17歳 男 レベル:72

 

天職:拳士

 

筋力:820

 

体力:820

 

耐性:680

 

敏捷:550

 

魔力:280

 

魔耐:280

 

技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊]・縮地・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・言語理解

 

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八重樫雫 17歳 女 レベル:72

 

天職:剣士

 

筋力:450

 

体力:560

 

耐性:320

 

敏捷:1110

 

魔力:380

 

魔耐:380

 

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解

 

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白崎香織 17歳 女 レベル:72

 

天職:治癒師

 

筋力:280

 

体力:460

 

耐性:360

 

敏捷:380

 

魔力:1380

 

魔耐:1380

 

技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解

 

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これが、勇者組4人の現在のステータス

 

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博霊霊夢 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:巫女

 

 

 

筋力:150000

 

 

 

体力:200000

 

 

 

耐性:100000

 

 

 

敏捷:80000

 

 

 

霊力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:空を飛ぶ程度の能力·スペルカード·気配感知·魔力感知·先読み·高速霊力回復·言語理解

 

 

 

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霧雨魔理沙 十七歳 女 レベル???

 

 

 

転職:魔法使い

 

 

 

筋力:10000

 

 

 

体力:10000

 

 

 

敏捷:20000

 

 

 

耐性:5000

 

 

 

魔力:60000

 

 

 

魔耐:20000

 

 

 

技能:魔法を使う程度の能力·スペルカード·全属性適正·全属性耐性·高速魔力回復·ほうき·気配感知·魔力感知·言語理解

 

 

 

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魂魄妖夢 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:剣豪

 

 

 

筋力:23000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:17000

 

 

 

敏捷:50000

 

 

 

妖力:35000

 

 

 

魔耐:30000

 

 

 

技能:剣を操る程度の能力·スペルカード·超剣術·先読み·超縮地·超気配感知·魔力感知·高速妖力回復·言語理解

 

 

 

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レミリア·スカーレット 500歳 レベル???

 

転職:吸血姫

 

 

 

筋力:20000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:23000

 

 

 

敏捷:30000

 

 

 

魔力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:運命を操る程度の能力·スペルカード·槍術·全属性適正·全属性耐性·先読み·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

 

 

 

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フランドール·スカーレット 495歳女 レベル???

 

 

 

転職:吸血鬼

 

 

 

筋力:50000

 

 

 

体力:70000

 

 

 

耐性:60000

 

 

 

敏捷:40000

 

 

 

魔力:80000

 

 

 

魔耐:40000

 

 

 

技能:ありとあらゆる物を破壊する程度の能力·スペルカード·剣術·分身·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

 

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アリス·マーガトロイド 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:人形使い

 

 

 

筋力:170000

 

 

 

体力:120000

 

 

 

耐性:30000

 

 

 

敏捷:20000

 

 

 

魔力:40000

 

 

 

魔耐:40000

 

 

 

技能:魔法を扱う人形を操る程度の能力·スペルカード·魔力感知·気配感知·高速魔力回復·全属性耐性·全属性適正·言語理解

 

 

 

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十六夜咲夜 17歳 女 レベル???

 

 

 

天職:時間操術者

 

 

 

筋力:25000

 

 

 

体力:50000

 

 

 

耐性:30000

 

 

 

敏捷:40000

 

 

 

魔力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:時間を操る程度の能力·スペルカード·ナイフ投撃術·先読み·気配感知·魔力感知·高速魔力回復·言語理解

 

 

 

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古明地さとり 17歳 女 レベル???

 

 

 

天職:心解読者

 

 

 

筋力:10000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:25000

 

 

 

敏捷:30000

 

 

 

魔力:70000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:心を読む程度の能力·スペルカード·読心術·全属性適正·全属性耐性·先読み(強)·気配感知(強)·魔力感知·高速魔力感知·言語理解

 

 

 

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これが東方組のステータス。

これを踏まえてご覧下さい。

 

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淡い緑色の光だけが頼りの薄暗い地下迷宮に、激しい剣戟と爆音が響く。

 

 

 

 その激しさは、苛烈と表現すべき程のもので、時折、姿が見えない遠方においても迷宮の壁が振動する程だ。銀色の剣線が、虚空に美しい曲線を無数に描き、炎弾や炎槍、風刃や水のレーザーが弾幕のごとく飛び交う。強靭な肉体どうしがぶつかる生々しい衝撃音や仲間への怒号、気合の声が本来静寂で満たされているはずの空間を戦場へと変えていた。

 

 

 

「万象切り裂く光 吹きすさぶ断絶の風 舞い散る百花の如く渦巻き 光嵐となりて敵を刻め! 〝天翔裂破〟!」

 

 

 

 聖剣を腕の振りと手首の返しで加速させながら、自分を中心に光の刃を無数に放つ光輝。今まさに襲いかかろうとしていた体長五十センチ程のコウモリ型の魔物は、十匹以上の数を一瞬で細切れにされて、碌な攻撃も出来ずに血肉を撒き散らしながら地に落ちた。

 

 

 

「前衛! カウント、十!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 ギチギチと硬質な顎を動かす蟻型の魔物、空を飛び交うコウモリ型の魔物、そして無数の触手をうねらせるイソギンチャク型の魔物。それらが、直径三十メートル程の円形の部屋で無数に蠢いていた。部屋の周囲には八つの横穴があり、そこから魔物達が溢れ出しているのだ。

 

 

 

 場所は、【オルクス大迷宮】の八十九層。前衛を務める光輝、龍太郎、雫、永山、檜山、近藤に、後衛からタイミングを合わせた魔法による総攻撃の発動カウントが告げられる。何とか後衛に襲いかかろうとする魔物達を、光輝達は鍛え上げた武技をもって打倒し、弾き返していく。

 

 

 

 厄介な飛行型の魔物であるコウモリ型の魔物が、前衛組の隙を突いて後衛に突進するが、頼りになる〝結界師〟が城壁となってそれを阻む。

 

 

 

「刹那の嵐よ 見えざる盾よ 荒れ狂え 吹き抜けろ 渦巻いて 全てを阻め 〝爆嵐壁〟!」

 

 

 

 谷口鈴の攻勢防御魔法が発動する。呪文を詠唱する後衛達の一歩前に出て、突き出した両手の先にそよ風が生じた。見た目の変化はない。コウモリ型の魔物達も鈴の存在など気にせず、警鐘を鳴らす本能のままに大規模な攻撃魔法を仕掛けようとしている後衛組に向かって襲いかかった。

 

 

 

 しかし、その手前で、突如、魔物の突進に合わせて空気の壁とでもいうべきものが大きくたわむ姿が現れる。何十匹というコウモリモドキが次々と衝突していくが、空気の壁はたわむばかりでただの一匹も彼等を通しはしない。

 

 

 

 そして、突進してきたコウモリモドキ達が全て空気の壁に衝突した瞬間、たわみが限界に達したように凄絶な衝撃とともに爆発した。その発生した衝撃は凄まじく、それだけで肉体を粉砕されたものもいれば、一気に迷宮の壁まで吹き飛ばされてグシャ! という生々しい音と共にひしゃげて絶命するものいる程だ。

 

 

 

「ふふん! そう簡単には通さないんだからね!」

 

 

 

 クラスのムードメイカー的存在である鈴の得意気な声が、激しい戦闘音の狭間に響く。と、同時に、前衛組が一斉に大技を繰り出した。敵を倒すことよりも、衝撃を与えて足止めし、自分達が距離を取ることを重視した攻撃だ。

 

 

 

「後退!」

 

 

 

 光輝の号令と共に、前衛組が一気に魔物達から距離を取る。

 

 

 

 次の瞬間、完璧なタイミングで後衛六人の攻撃魔法が発動した。

 

 

 

 巨大な火球が着弾と同時に大爆発を起こし、真空刃を伴った竜巻が周囲の魔物を巻き上げ切り刻みながら戦場を蹂躙する。足元から猛烈な勢いで射出された石の槍が魔物達を下方から串刺しにし、同時に氷柱の豪雨が上方より魔物の肉体に穴を穿っていく。

 

 

 

 自然の猛威がそのまま牙を向いたかのような壮絶な空間では生物が生き残れる道理などありはしない。ほんの数十秒の攻撃。されど、その短い時間で魔物達の九割以上が絶命するか瀕死の重傷を負うことになった。

 

 

 

「よし! いいぞ! 残りを一気に片付ける!」

 

 

 

 光輝の掛け声で、前衛組が再び前に飛び出していき、魔法による総攻撃の衝撃から立ち直りきれていない魔物達を一匹一匹確実に各個撃破していった。全ての魔物が殲滅されるのに五分もかからなかった。

 

 

 

 

 

 戦闘の終了と共に、光輝達は油断なく周囲を索敵しつつ互いの健闘をたたえ合った。

 

 

 

「ふぅ、次で九十層か……この階層の魔物も難なく倒せるようになったし……迷宮での実戦訓練ももう直ぐ終わりだな」

 

「だからって、気を抜いちゃダメよ。この先にどんな魔物やトラップがあるかわかったものじゃないんだから」

 

「雫は心配しすぎってぇもんだろ? 俺等ぁ、今まで誰も到達したことのない階層で余裕持って戦えてんだぜ? 何が来たって蹴散らしてやんよ! それこそ魔人族が来てもな!」

 

 

 

 感慨深そうに呟く光輝に雫が注意をすると、脳筋の龍太郎が豪快に笑いながらそんな事を言う。そして、光輝と拳を付き合わせて不敵な笑みを浮かべ合った。その様子に溜息を吐きながら、雫は眉間の皺を揉みほぐした。これまでも、何かと二人の行き過ぎをフォローして来たので苦労人姿が板に付いてしまっている。まさか、皺が出来たりしてないわよね? と最近鏡を見る機会が微妙に増えてしまった雫。それでも、結局、光輝達に限らず周囲のフォローに動いてしまう辺り、真性のお人好しである。

 

 

 

「檜山君、近藤君、これで治ったと思うけど……どう?」

 

 

 

 周囲が先程の戦闘について話し合っている傍らで、香織は己の本分を全うしていた。すなわち、〝治癒師〟として、先程の戦闘で怪我をした人達を治癒しているのである。一応、迷宮での実戦訓練兼攻略に参加している十五名の中には、もう一人〝治癒師〟を天職に持つ女の子がいるので、今は、二人で手分けして治療中だ。

 

 

 

「……ああ、もう何ともない。サンキュ、白崎」

 

「お、おう、平気だぜ。あんがとな」

 

 

 

 香織に治療された檜山が、ボーと間近にいる香織の顔を見ながら上の空な感じで返答する。見蕩れているのが丸分かりだ。近藤の方も、耳を赤くしどもりながら礼を言った。前衛職であることから、度々、香織のヒーリングの世話になっている檜山達だが、未だに、香織と接するときは平常心ではいられないらしい。近藤の態度は、ある意味、思春期の子供といった風情だが……檜山の香織を見る目の奥には暗い澱みが溜まっていた。それは日々、色濃くなっているのだが……気がついている者はそう多くはない。

 

 

 

 二人にお礼を言われた香織は「どういたしまして」と微笑むと、スっと立ち上がり踵を返した。そして、周囲に治療が必要な人がいないことを確認すると、目立たないように溜息を吐き、奥へと続く薄暗い通路を憂いを帯びた瞳で見つめ始めた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 その様子に気がついた雫には、親友の心情が手に取るように分かった。香織の心の内は今、不安でいっぱいなのだ。あと十層で迷宮の最下層(一般的な見解)にたどり着くというのに、未だ、ハジメの痕跡は僅かにも見つかっていない。

 

 

 

 それは希望でもあるが、遥かに強い絶望でもある。自分の目で確認するまでハジメの死を信じないと心に決めても、階層が一つ下がり、何一つ見つからない度に押し寄せてくるネガティブな思考は、そう簡単に割り切れるものではない。まして、ハジメが奈落に落ちた日から既に四ヶ月も経っている。強い決意であっても、暗い思考に侵食され始めるには十分な時間だ。

 

 

 

 自身のアーティファクトである白杖を、まるで縋り付くようにギュッと抱きしめる香織の姿を見て、雫はたまらず声をかけようとした。と、雫が行動をおこす前に、ちみっこいムードメイカーが、不安に揺れる香織の姿など知ったことかい! と言わんばかりに駆け寄ると、ピョンとジャンプし香織の背後からムギュッと抱きついた。

 

 

 

「カッオリ~ン!! そんな野郎共じゃなくて、鈴を癒して~! ぬっとりねっとりと癒して~」

 

「ひゃわ! 鈴ちゃん! どこ触ってるの! っていうか、鈴ちゃんは怪我してないでしょ!」

 

「してるよぉ! 鈴のガラスのハートが傷ついてるよぉ! だから甘やかして! 具体的には、そのカオリンのおっぱおで!」

 

「お、おっぱ……ダメだってば! あっ、こら! やんっ! 雫ちゃん、助けてぇ!」

 

「ハァハァ、ええのんか? ここがええのんか? お嬢ちゃん、中々にびんかッへぶ!?」

 

「……はぁ、いい加減にしなさい、鈴。男子共が立てなくなってるでしょが……たってるせいで……」

 

 

 

 ただのおっさんと化した鈴が、人様にはお見せできない表情でデヘデヘしながら香織の胸をまさぐり、雫から脳天チョップを食らって撃沈した。ついでに、鈴と香織の百合百合しい光景を見て一部男子達も撃チンした。頭にタンコブを作ってピクピクと痙攣している鈴を、何時ものように中村恵里が苦笑いしながら介抱する。

 

 

 

「うぅ~、ありがとう、雫ちゃん。恥ずかしかったよぉ……」

 

「よしよし、もう大丈夫。変態は私が退治したからね?」

 

 

 

 涙目で自分に縋り付く香織を、雫は優しくナデナデした。最近よく見る光景だったりする。雫は、香織の滑らかな髪を優しく撫でながらこっそり顔色を覗った。しかし、香織は、困った表情で、されど何処か楽しげな表情で恵里に介抱される鈴を見つめており、そこには先程の憂いに満ちた表情はなかった。どうやら、一時的にでも気分が紛れたようだ。ある意味、流石クラスのムードメイカー鈴おっさんバージョンと、雫は内心で感心する。

 

 

 

「あと十層よ。……頑張りましょう、香織」

 

 

 

 雫が、香織の肩に置いた手に少々力を込めながら、真っ直ぐな眼差しを香織に向ける。それは、親友が折れないように活を入れる意味合いを含んでいた。香織も、そんな雫の様子に、自分が少し弱気になっていたことを自覚し、両手で頬をパンッと叩くと、強い眼差しで雫を見つめ返した。

 

 

 

「うん。ありがとう、雫ちゃん」

 

 

 

 雫の気遣いが、どれだけ自分を支えてくれているか改めて実感し、瞳に込めた力をフッと抜くと目元を和らげて微笑み、感謝の意を伝える香織。雫もまた、目元を和らげると静かに頷いた。……傍から見ると百合の花が咲き誇っているのだが本人たちは気がつかない。光輝達が何だか気まずそうに視線を右往左往させているのも雫と香織は気がつかない。だって、二人の世界だから。

 

 

 

「今なら……守れるかな?」

 

「そうね……きっと守れるわ。あの頃とは違うもの……レベルだって既にメルド団長達を超えているし……でも、ふふ、もしかしたら彼の方が強くなっているかもしれないわね? あの時だって、結局、私達が助けてもらったのだし」

 

「ふふ、もう……雫ちゃんったら……」

 

 ハジメの生存を信じて、今度こそ守れるだろうかと今の自分を見下ろしながら何となく口にした香織に、雫は冗談めかしてそんな事をいう。実は、ずばり的を射ており、後に色んな意味で度肝を抜かれるのだが……そのことを知るのはもう少し先の話だ。

 

 ちなみに、この場にいるのは光輝、龍太郎、雫、香織、鈴、恵里の他、東方組と、永山重吾を含める五人及び檜山達四人の23人であり、メルド団長達は七十層で待機している。実は、七十層からのみ起動できる、三十層と七十層をつなぐ転移魔法陣が発見され、深層への行き来が楽になったのであるが、流石にメルド団長達でも七十層より下の階層は能力的に限界だった。もともと、六十層を越えたあたりで、光輝達に付き合える団員はメルドを含めて僅か数人だった。七十層に到達する頃には、彼等は既に光輝達の足を引っ張るようになっていたのである。

 

東方組〜

れ「………もうそろそろね、」

レ「…えぇ、」

ア「…結構近くね。」

「「「「「「「「魔人族が近くに来てる。」」」」」」」」

とは言え対して気にしてない様子の東方組。

 

ちなみに皆の心の中

(((((((あいつ(輪廻)(輪廻さん)(輪廻君)にどうやって告白しよう(かしら)(かな))))))))

(…皆さん同じこと考えてますね……まあ、そう言う私もそうなんですけどね。魔人族も直ぐに倒せるでしょうし。)

しかし、この時さとり達は知らなかった、魔人族が秘密兵器?を持ってる事を。

 

「そろそろ、出発したいんだけど……いいか?」

 

 

 

 光輝が、未だに見つめ合う香織と雫におずおずと声をかける。以前、香織の部屋で香織と雫が抱き合っている姿を目撃して以来、時々、挙動不審になる光輝の態度に、香織はキョトンとしているが、雫はその内心を正確に読み取っているのでジト目を送る。その目は如実に「いつまで妙な勘違いしてんの、このお馬鹿」と物語っていた。

 

 

 

 雫の視線に気づかないふりをしながら、光輝はメンバーに号令をかける。既に、八十九層のフロアは九割方探索を終えており、後は現在通っているルートが最後の探索場所だった。今までのフロアの広さから考えて、そろそろ階下への階段が見えてくるはずである。

 

 

 

 その予想は当たっており、出発してから十分程で一行は階段を発見した。トラップの有無を確かめながら慎重に薄暗い螺旋階段を降りていく。体感で十メートルほど降りた頃、遂に光輝達は九十層に到着した。

 

 

 

 一応、節目ではあるので何か起こるのではと警戒していた光輝達。しかし、見た目、今まで探索してきた八十層台と何ら変わらない作りのようだった。さっそく、マッピングしながら探索を開始する。迷宮の構造自体は変わらなくても、出現する魔物は強力になっているだろうから油断はしない。

 

 

 

 警戒しながら、変わらない構造の通路や部屋を探索してく光輝達。探索は順調だった。だったのだが、やがて、一人また一人と怪訝そうな表情になっていった。

 

 

 

「……どうなってる?」

 

 

 

 一行がかなり奥まで探索し大きな広間に出た頃、遂に不可解さが頂点に達し、表情を困惑に歪めて光輝が疑問の声を漏らした。他のメンバーも同じように困惑していたので、光輝の疑問に同調しつつ足を止める。

 

 

 

「……何で、これだけ探索しているのに唯の一体も魔物に遭遇しないんだ?」

 

 

 

 既に探索は、細かい分かれ道を除けば半分近く済んでしまっている。今までなら散々強力な魔物に襲われてそう簡単には前に進めなかった。ワンフロアを半分ほど探索するのに平均二日はかかるのが常であったのだ。にもかかわらず、光輝達がこの九十層に降りて探索を開始してから、まだ三時間ほどしか経っていないのに、この進み具合。それは単純な理由だ。未だ一度もこのフロアの魔物と遭遇していないからである。

 

 

 

 最初は、魔物達が光輝達の様子を物陰から観察でもしているのかと疑ったが、彼等の感知系スキルや魔法を用いても一切索敵にかからないのだ。魔物の気配すらないというのは、いくら何でもおかしい。明らかな異常事態である。

 

 

 

「………なんつぅか、不気味だな。最初からいなかったのか?」

 

 

 

 龍太郎と同じように、メンバーが口々に可能性を話し合うが答えが見つかるはずもない。困惑は深まるばかりだ。

 

 

 

「……光輝。一度、戻らない? 何だか嫌な予感がするわ。メルド団長達なら、こういう事態も何か知っているかもしれないし」

 

 

 

 雫が警戒心を強めながら、光輝にそう提案した。光輝も、何となく嫌な予感を感じていたので雫の提案に乗るべきかと考えたが、何らかの障碍があったとしてもいずれにしろ打ち破って進まなければならないし、八十九層でも割りかし余裕のあった自分達なら何が来ても大丈夫ではないかと考えて、答えを逡巡する。

 

 

 

 光輝が迷っていると、不意に、辺りを観察していたメンバーの何人かが何かを見つけたようで声を上げた。

 

 

 

「これ……血……だよな?」

 

「薄暗いし壁の色と同化してるから分かりづらいけど……あちこち付いているよ」

 

「おいおい……これ……結構な量なんじゃ……」

 

 

 

 表情を青ざめさせるメンバーの中から永山が進み出て、血と思しき液体に指を這わせる。そして、指に付着した血をすり合わせたり、臭いを嗅いだりして詳しく確認した。

 

 

 

「天之河……八重樫の提案に従った方がいい……これは魔物の血だ。それも真新しい」

 

「そりゃあ、魔物の血があるってことは、この辺りの魔物は全て殺されたって事だろうし、それだけ強力な魔物がいるって事だろうけど……いずれにしろ倒さなきゃ前に進めないだろ?」

 

 

 

 光輝の反論に、永山は首を振る。永山は、龍太郎と並ぶクラスの二大巨漢ではあるが、龍太郎と違って非常に思慮深い性格をしている。その永山が、臨戦態勢になりながら立ち上がると周囲を最大限に警戒しながら、光輝に自分の考えを告げた。

 

 

 

「天之河……魔物は、何もこの部屋だけに出るわけではないだろう。今まで通って来た通路や部屋にも出現したはずだ。にもかかわらず、俺達が発見した痕跡はこの部屋が初めて。それはつまり……」

 

「……何者かが魔物を襲った痕跡を隠蔽したってことね?」

 

 

 

 あとを継いだ雫の言葉に永山が頷く。光輝もその言葉にハッとした表情になると、永山と同じように険しい表情で警戒レベルを最大に引き上げた。

 

 

 

「それだけ知恵の回る魔物がいるという可能性もあるけど……人であると考えたほうが自然ってことか……そして、この部屋だけ痕跡があったのは、隠蔽が間に合わなかったか、あるいは……」

 

「ここが終着点という事さ」

 

 光輝の言葉を引き継ぎ、突如、聞いたことのない女の声が響き渡った。男口調のハスキーな声音だ。光輝達は、ギョッとなって、咄嗟に戦闘態勢に入りながら声のする方に視線を向けた。

 

 コツコツと足音を響かせながら、広い空間の奥の闇からゆらりと現れたのは燃えるような赤い髪をした妙齢の女。その女の耳は僅かに尖っており、肌は浅黒かった。

 

 光輝達が驚愕したように目を見開く。女のその特徴は、光輝達のよく知るものだったからだ。実際には見たことはないが、イシュタル達から叩き込まれた座学において、何度も出てきた種族の特徴。聖教教会の掲げる神敵にして、人間族の宿敵。そう……

 

「……魔人族」

 

 誰かの発した呟きに、魔人族の女は薄らと冷たい笑みを浮かべた。

 

 

開戦して間も無くピンチになった。

 

 

「だいぶ厳しいみたいだね。どうする? やっぱり、あたしらの側についとく? 今なら未だ考えてもいいけど?」

 

 光輝達の苦戦を、腕を組んで余裕の態度で見物していた魔人族の女が再び勧誘の言葉を光輝達にかけた。もっとも、答えなど分かっているとでも言うように、その表情は冷めたままだったが。そして、その予想は実に正しかった。

 

「ふざけるな! 俺達は脅しには屈しない! 俺達は絶対に負けはしない! それを証明してやる! 行くぞ〝限界突破〟!」

 

 魔人族の女の言葉と態度に憤怒の表情を浮かべた光輝は、再びメイスを振り下ろしてきたブルタールモドキの一撃を聖剣で弾き返すと、一瞬の隙をついて〝限界突破〟を使用した。

 

 神々しい光を纏った光輝は、これで終わらせると気合を入れ直し、魔人族の女に向かって突進した。

 

 

場所は変わって八十九層の最奥付近の部屋。

 

 その正八角形の大きな部屋には四つの入口があるのだが、実は今、そのうちの二つの入口の間にはもう一つ通路があり、奥には隠し部屋が存在している。入口は、上手くカモフラージュされて閉じられており、隠し部屋は十畳ほどの大きさだ。

 

そこではある言い合いが起きていた。

 

「何故だ!何故君たちは戦闘に参加しなかった!」

れ「何言ってんの?私達は撤退するって言ってたのに聞かなかったのはあなた達でしょ?」

「それでも!仲間が窮地に陥ってるんだ!普通は助けるだろう!」

よ「………貴方の普通と私達の普通は違います。勝手に貴方の普通を押し付けないでください。」

「だけど!」

さ「………そう言う事ですか、貴方は自分が負けた責任を戦闘に参加しなかった私たちに押し付けようとしてるのですか。なんとも滑稽で浅はかな考えですね。」

「ち、ちが!」

咲「違わないわ、さとりの能力は絶対よ。」

レ「…私も咲夜の言う通りだと思うわ。」

「レミリア!君まで!」シュパッ

ゴミがレミリアを呼び捨てにした瞬間ナイフが飛んできた。

咲「…次にお嬢様と妹様を呼び捨てにしたら殺す。」

咲夜はそう言って、ゴミにナイフを向ける。

 

れ「咲夜。その辺にしときなさい、こうなった以上撤退は難しいわ、そこのお荷物全員抱えて撤退は出来ない、だから魔人族を倒すしかないわ。皆もそれで良いわよね?」

 

 

一方、議題に上がらなかった遠藤君はただの一度も戦闘をせず全ての魔物をやり過ごしながらメルド団長達のいる七十層を目指して着実に歩みを進めていた。

 

 

 

 八十層台で、魔物に気づかれれば、一対一ならどうにかなるが複数体ならアウトだ。そのため、できる限り急ぎつつ、それでも細心の注意を払って進んでいた。そのおかげで、今も、魔物が眼前を通り過ぎていくのを見送ることができた。

 

 

 

 魔物が完全に見えなくなったあと、遠藤は張り付いていた天井からスタッと地に降り立った。〝隠形〟を最大限に生かすための全身黒装束姿は、まさに〝暗殺者〟だ。きっと、先程眼前を通り過ぎた魔物も、天井から奇襲をかければ気づかせることなく相当深いダメージを与えられただろう。内心、「……少しくらい気配を感じてくれても……」とか思っていない。全く気づかずに通り過ぎた魔物を見て、目の端に光るものが溢れたりもしていない。断じて。

 

 

 

「急がないと……」

 

 

 

 遠藤は、自分が課せられた役割を理解している。そして、光輝達が、情報の伝達以外にもそのまま生き延びろという意味合いを含めて送り出してくれたことも察していた。永山と野村の「戻ってくるなよ」という思いは言葉に出さずとも伝わっていたのだ。

 

 

 

 だが、それでも、役目を果たしたあと、遠藤は光輝達のもとに戻るつもりだった。なんと言われようと、このまま自分だけ安全圏に逃げて、のうのうとしていることなど出来なかったのだ。

 

 

 

 遠藤は、自分に気がつかない魔物に若干虚しさを覚えながらも、今は、それが最大の武器になっているのだと自分に言い聞かせつつ頭に叩き込んである帰還ルートをたどって、遂に七十層にたどり着いた。

 

 

 

 逸る気持ちを抑えながら、メルド団長達が拠点を構える転移陣のある部屋に向かう。しばらくすると、遠藤の気配感知に六人分の気配が感知された。間違いなくメルド団長達だ。距離的に、〝隠形〟を解いたので向こうも気づいたはずである。

 

 

 

 遠藤は、最後の角を曲がり、メルド団長達のいる転移部屋に出た。しかし、既に完全に姿を見せているのに、メルド団長達は特に気がつく気配がない。遠藤は、死んだ魚みたいな目をしながらメルドに近づき、声をかけた

 

 

 

「団長! 俺です! 気づいてください! 大変なんです!」

 

「うおっ!? 何だ!? 敵襲かっ!?」

 

 

 

 遠藤が声を張り上げた瞬間、メルド団長がそんな事を言いながら剣を抜いて飛び退り、警戒心たっぷりに周囲を見渡した。他の騎士達も、一様にビクッと体を震わせて、戦闘態勢に入っている。

 

 

 

「だから、俺ですって! マジそういうの勘弁して下さい!」

 

「えっ? って、浩介じゃないか。驚かせるなよ。ていうか他の連中はどうした? それに、何かお前ボロボロじゃないか?」

 

「ですから、大変なんです!」

 

 

 

 メルド団長達は相手が遠藤だとわかると、彼の影の薄さは知っていたのでフッと肩の力を抜いた。しかし、戻ってくるには少々予定より早いことと、遠藤が一人であること、そして、その遠藤が、満身創痍といってもいいくらいボロボロであることから、直ぐさま何かがあったと察して険しい表情になった。

 

 

 

 遠藤は、王国最精鋭の騎士達にすら、声をかけないとやっぱり気づかれないという事実に地味に傷つきながら、そんな場合ではないと思い直し、事の次第を早口で語り始めた。

 

 

 

 最初は、訝しげな表情をしていたメルド達だったが、遠藤の話が進むにつれて表情が険しさを増していく。そして、たった一人逃がされたことに、話しながら次第に心を締め付けられたのか、涙をこぼす遠藤の頭をグシャグシャと撫で回した。

 

 

 

「泣くな、浩介。お前は、お前にしか出来ないことをやり遂げんたんだ。他の誰が、そんな短時間で一度も戦わずに二十層も走破できる? お前はよくやった。よく伝えてくれた」

 

「団長……俺、俺はこのまま戻ります。あいつらは自力で戻るっていってたけど……今度は負けないっていってたけど……天之河が〝限界突破〟を使っても倒しきれなかったんだ。逃げるので精一杯だったんだ。みんな、かなり消耗してるし、傷が治っても……今度、襲われたら……あのクソったれな魔物だってあれで全部かはわからないし……だから、先に地上に戻って、このことを伝えて下さい」

 

 

 

 泣いたことを恥じるように、袖で目元をぐしぐしとこすると、遠藤は決然とした表情でメルドに告げた。

 

 

 

 メルド団長は、悔しそうに唇を噛むと、自分のもつ最高級の回復薬全てを、それの入った道具袋ごと遠藤に手渡した。他の団員達もメルドと同じく、悔しそうに表情を歪めて自らの道具袋を遠藤に託した。

 

 

 

「すまないな、浩介。一緒に、助けに行きたいのは山々だが……、私達は今すぐには動けない……」

 

「あ、いや、気にしないで下さいよ。大分、薬系も少なくなってるだろうし、これだけでも助かります」

 

 

 

 そう言って、回復薬の類が入った道具袋を振りながら苦笑いする遠藤だったが、メルド団長の表情は、むしろ険しさを増した。それは、助けに行けない悔しさだけでなく、苦渋の滲む表情だった。

 

突如

「浩介ッ!?」

 

「えっ!?」

 

 

 

 メルド団長が、突然、浩介を弾き飛ばすとギャリィイイ!! という金属同士が擦れ合うような音を響かせて、円を描くようにその手に持つ刀をを振るった。そして、そのままくるりと一回転すると遠心力をたっぷりのせた見事な回し蹴りを揺らめく空間に・・・・・・・放った。

 

 

 

ドガッ!

 

 

 

 そんな音を響かせて、揺らめく空間は後方へと吹き飛ばされる。そして、五メートルほど先で地面に無数の爪痕が刻み込まれた。爪を立てて減速したのだろう。

 

 

 

 それを見て、地面に尻餅を付いていた遠藤は、顔を青ざめさせて呟く。

 

 

 

「そ、そんな。もう追いついて……」

 

 

 

 その言葉がまるで合図となったかのように、ぞろぞろと遠藤達を追い詰めた魔物達が現れた。遠藤は、予想外に早く追いつかれたことに動揺して尻餅を付いたままだ。ここに来るまでの間、〝暗殺者〟の技能を使って気配や臭い、魔力残滓などの痕跡を消しながら移動してきた。魔人族の女が光輝達を探しながら移動する以上、一直線に駆け抜けた遠藤にこんなに早く追いつくはずがなかったのだ。

 

 

 

 そんな遠藤の疑問は、続いて現れた悪夢のような女によって解消されることになった。

 

 

 

「チッ。一人だけか……逃げるなら転移陣のあるこの部屋まで来るかと思ったんだけど……様子から見て、どこかに隠れたようだね」

 

 

 

 髪を苛立たしげにかきあげながら、四つ目狼の背に乗って現れた魔人族の女に、メルド団長達が臨戦態勢になる。彼女の言葉からすると、どうやら、光輝達が一目散に転移陣へと逃げ込むと考えて、捜索せずに一直線にやって来たらしい。予想が外れて、光輝達を探さねばならないことに苛立っているようだ。

 

 

 

 それは同時に、光輝達がまだ無事であるということでもある。遠藤もメルド団長達も僅かではあるがホッとしたように頬を緩めた。それに目ざとく気がついた魔人族の女が、遠藤達をハンッと鼻で笑う。

 

 

 

「まぁ、任務もあるし……さっさとあんたら殺して探し出すかね」

 

 

 

 直後、一斉に魔物が襲いかかった。キメラが空間を揺らめかせながら突進し、黒猫が疾風となって距離を詰める。ブルタールモドキが、メイスを振りかぶりながら迫り、四つ目狼が後方より隙を覗う。

 

 

 

「円陣を組め! 転移陣を死守する! 浩介ッ !いつまで無様を晒している気だ! さっさと立ち上がって……逃げろ! 地上へ!」

 

「えっ!?」

 

 

 

 流石、王国の最精鋭と思わず称賛したくなるほど迅速な陣組みと連携で襲い来る魔物の攻撃を凌ぐメルド団長達。事前に遠藤から魔物の話を聞いていた事から、自分達では攻撃力不足だと割り切り、徹底的に防御と受け流しを行っている。

 

 

 

 遠藤は、メルド団長の「地上へ逃げろ」という言葉に思わず疑問の声を上げた。逃げるなら一緒に逃げればいいし、どうせこの場を離脱するなら地上ではなく光輝達のもとへ戻って団長の言葉を伝える役目があると思ったからだ。

 

 

 

「ボサっとするな! 魔人族のことを地上に伝えろ!」

 

「で、でも、団長達は……」

 

「我らは……ここを死地とする! 浩介! 向こう側で転移陣を壊せ! なるべく時間は稼いでやる!」

 

「そ、そんな……」

 

 

 

 メルド団長の考えは明確だ。地上へ逃げるにしても、誰かが僅かでも時間を稼がねば直ぐに魔物達も転移してしまうだろう。そうなれば、追っ手を撒く方法がなくなってしまい、追いつかれて殺される可能性が高い。

 

 

 

 なので、一人を逃がして、残り全員で時間稼ぎをするのがベストなのだ。時間を稼げれば、対となる三十層の転移陣を一部破壊することで、完全に追っ手を撒ける。転移陣は、直接地面に掘り込んであるタイプなので、〝錬成〟で簡単に修復できる。逃げ切って、地上の駐屯部隊に事の顛末を伝えた後、再び、光輝達が使えるように修復すればいい。

 

 

 

 そして、その逃げる一人に選ばれたのが遠藤なのだ。遠藤は、先程、光輝以外の自分達を切り捨てるような発言をしたメルド団長が、今度は、自分達を犠牲にして遠藤一人を逃がそうとしていることに戸惑い、それ故に行動を起こせずにいた。

 

「行けぇぇぇ浩介ぇ!」

 

遠藤は、グッと唇を噛むと全力で踵を返し転移陣へと向かった。ここで、メルド団長の思いと覚悟に応えられなければ男ではないと思ったからだ。

 

 

 

「させないよ!」

 

 

 

 魔人族の女が、黒猫を差し向けつつ自らも魔法を放った。黒猫が、背中の触手を弾丸のように豪速で射出し、更に石の槍が殺意の風に乗って空を疾駆する。

 

 

 

 遠藤は、何とか触手をショートソードで切り払い、身を捻りながら躱すが、続く石の槍までは躱しきれそうになかった。あらかじめ触手の位置を計算したように絶妙なタイミングと方向から連続して飛来したからだ。遠藤は、歯を食いしばって衝撃に備えた。例え、攻撃を食らっても、走り続けてそのまま転移陣に飛び込んでやるという気概をもって。

 

 

 

 だが、予想した衝撃はやって来なかった。騎士団員の一人が円陣から飛び出し、その身を盾にして遠藤を庇ったからだ。

 

 

 

「ア、アランさん!」

 

「ぐふっ……いいから気にせず行け!」

 

 

 

 腹部に石の槍を突き刺したまま、剣を振るって襲い来る魔物の攻撃を逸していくアランと呼ばれた騎士は、ニッと実に男臭い笑みを浮かべて遠藤にそう言った。遠藤は、噛み切るほど唇を強く噛み締めて、転移陣へと駆ける。

 

 

 

「チッ! 雑魚のくせに粘る! お前達、あの少年を集中して狙え!」

 

 

 

 魔人族の女が、少し焦ったように改めてそう命じるが……既に遅かった。

 

 

 

「ハッ、私達の勝ちだ! ハイリヒ王国の騎士を舐めるな!」

 

 

 

 メルド団長が不敵な笑みを浮かべながら、そう叫ぶと同時に遠藤が転移陣を起動し終え、その姿を消した。魔人族の女は、メルド団長の言葉を無視して魔物を突っ込ませる。魔物は直接魔力を操れるので、面倒な起動詠唱をすることもなく転移陣を起動出来、それ故、今なら、まだ間に合うと考えたからだ。

 

 

 

 しかし、

 

「舐めるなと言っている!」

 

メルド団長達が光輝達にはない巧みな技と連携、そして経験からくる動きで魔物達を妨害する。多勢に無勢でありながら、その防御能力と粘り強さは賞賛に値するものだった。

 

 

 

 もっとも、メルド団長達がいくら死力を尽くしたところで相対する魔物の数と強さは異常。腹を石の槍で貫かれていたアランが、遂に力尽きて、魔物の攻撃に踏ん張りきれずバランスを崩し膝を突いた。その綻びから、キメラの一体が防衛線を突破し転移陣に到達する。

 

 

 

 キメラが消えるのと、魔法陣が輝きを失うのは同時だった。

 

 

 

「くっ、一体、送られてしまったか……浩介……死ぬなよ」

 

 

 

 メルド団長の呟きは魔物の咆哮にかき消された。遠藤を逃したことの腹いせに魔人族の女がメルド団長達に魔物達を一斉に差し向けたからだ。

 

 

 

「フッ、ここを死地と定めたのなら最後まで暴れるだけだ。お前達、ハイリヒ王国騎士団の意地を見せてやれ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

 

 

 メルド団長の号令に、部下の騎士達が威勢のいい雄叫びを以て応える。その雄叫びに込められた気迫は、一瞬とはいえ、周囲の魔物達を怯ませる程のものだった。

 

 

 

 ……その十分後

 

 

 

 転移陣のある七十層の部屋に再び静寂が戻った。

 





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