とある炎剣使い達は世界最強   作:湯タンポ

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やあ、2ヶ月ぶりだね、湯タンポです☆

今日うちの加賀さんが大破したので思わず叫び散らかしました☆

ではどぅぞ(遅くなってサーセン♡)


第三十一話 決戦

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しっかしどうする?馬鹿正直に突っ込んでも、俺とお前とユエ以外即全滅なんて事も有り得るぞ。」

 

ハジメは目の前でこちらを馬鹿にしたような笑みを浮かべて居る天之河から目を離すこと無く、隣の紫に向かってそう話す。

 

 

「そうですわね……なかなか厳しい戦いになると思いますわ。アレ1人に対して私達全員が常に最適解を打ち続ければ、何とかジリ貧に持っていける……という状況でしょうか。」

 

紫は冷や汗を一筋流しながらそう言った。

 

「そんな事は分かってんだよ……問題は誰がアイツと戦うかって事だろ?本当に輪廻の力を持ってるとしたら、俺らでも15分持てば良い方、他のやつなら5分持てば国民栄誉賞並だ。」

 

「まぁそうなりますわね……」

 

二人は苦笑いを浮かべながら会話を続ける。

すると、紫の隣に居るユエが口を開いた。

 

「私がやる。それが一番いいと思う。」

 

ユエの言葉を聞いて、紫が慌てて言葉を返す。

 

「それはなりません!確かに貴女ならば、あの者とも互角以上に戦えるでしょうが、それは本当に最後の手段です!もし貴女が最初に殺られてしまえば、私達にもう勝ち目はありません!」

 

「ん、大丈夫。全力は出さない。」

 

しかしユエは全く聞く耳を持たない。

そしてそのまま天之河に向けて歩みを進め始める。

 

「おい、ちょっと待てって!」

 

ハジメがそれを止めようとする。

だが……

 

ズダンッ!! という音と共に、ユエの姿が消える。

 

一瞬にして間合いを詰めたのだ。

天之河は目を見開き、急いでその場を離れるべく足に力を入れるが、既に遅かった。

天之河は吹き飛ばされる。

空中で受け身を取り、体勢を立て直す天之河だったが、既に目の前にはユエが迫っていた。

 

「シッ!!」

 

気合の声とともに振り下ろされた神速の剣閃を、辛うじて天之河は受け止めた。

ガキン!という音が響き渡る。

 

いつの間に解放したのか、ユエの手には、魔剣レーヴァーテインが握られていたのだ。

しかし、天之河はまだ押し負けてはいない。

天之河も本気を出してはいなかったのだろう。

ギリギリと鍔迫り合いをしながらユエと睨み合う天之河は余裕の表情だった。

 

「チィっ……貴様……少しくらい手加減してやったんだから感謝しろよ?」

「手加減?弱い犬ほどよく吠える。」

「……殺す。」

 

次の瞬間二人の姿が消えた。

そして凄まじい金属音が響く。

どうやら高速で移動しつつ剣をぶつけ合っているようだ。

恐らく目にも止まらぬ速さなのだろう。

紫はその動きを追う事が出来ずにいた。

そして、更に

二人の動きは速くなっていき、その速度は音速を軽く超えているように見える。

 

「……凄まじい速さと膂力。でもそれだけ。そこに輪廻のような絶技は存在しない。」

 

ユエがそう呟く。

 

「……死ね!」

 

その言葉と同時に、今までより一層激しい音が鳴り響いた。

見ると、ユエは片手で魔剣を振り下ろしており、対する天之河は両手で持った聖剣でそれを防いでいた。

 

 

一見するとユエが押しているように見える。

 

 

だが、それを見たハジメは焦っていた。

 

(ユエが押しているのは良い、だが、天之河が持っているあの剣……何時ぞやの聖剣(笑)じゃねぇ。 ……恐らくマジモンの聖剣……それも神器クラスだ。……だとすると相当不味い……!)

 

そう考えている間にも戦いは進んでいく。

 

今度はユエが連続で斬撃を放ち始めた。

 

まるで嵐のように降り注ぐ攻撃を、天之河はどうにか捌いている。

しかし徐々にダメージは蓄積されていく。

 

ユエの攻撃は一撃で相手を戦闘不能にする威力を持っているが、それで簡単に倒れてくれる様なら、こんなに苦戦はしていない。

 

この膠着状態のままでは、ユエにいずれ体力の限界が訪れる。

 

そう考えたハジメは、天之河に悟られぬよう、紫にハンドサインを送った。

 

内容は『奇襲しろ』というものだ。

 

紫はハジメの考えを読み取ると、作戦内容を後ろに控える清水やシア、妖夢達に通達する。天之河にバレないように、慎重に、且つ迅速に……

 

 

一方、その頃ユエの方も、少しずつ追い詰められ始めていた。

 

「……っ……やっぱり消耗が激しい。」

 

そう、先程から全力に近い攻撃を続けているユエであったが、既にその体は限界を迎えようとしていた。

 

「終わりか?ならばトドメを刺してくれるわ!」

 

そう言った瞬間、ユエに剣閃が走る。

 

ユエはそれを魔剣で受け流そうとするが、流石にそれは無理があった。

遂にユエの体に傷がつく。一瞬で治る様な傷ではあったが、その一瞬は明確な隙を生んだ。

 

そして、ユエの一瞬出来た隙を逃す天之河ではなかった。

ユエに向かって一気に踏み込むと、手に持っていた聖剣を全霊の力で振り下ろす。

 

「死ねい!」

「ッ!」

 

ユエは咄嵯に反応して回避しようとするが、反応が遅れてしまう。

 

そしてその攻撃はユエを捉え、肩口から胸にかけて、大きく切り裂いた。

 

「……うぐッ!?」

 

「雑魚が!!」

 

だが、ユエとてただ斬られた訳ではない。

 

その時、天之河の背後には、六連装パイルバンカーを両手に装備したハジメ、そして、技を放つ直前の清水、シズエ、セリカ、シア、ミレディ、雫、優花、妖夢、咲夜、レミリア、フラン、アリス達が無音で迫って来ていた。

 

「…シッ!!」

 

 

天之河が振り返った時にはもう遅い。

全員が放った必殺の一撃は、容赦なく天之河を襲った。

 

「ガァァア!!!?」

 

全身がボロボロになりながら吹き飛ぶ天之河。

 

 

しかし………

 

「クハッ!雑魚にしてはやるではないか。 ……だが、その程度ではかすり傷にもならんなぁ。」

 

先程の傷はなんだったのか、天之河の身体からは血が流れるどころか、服すら破れていない。

 

「……クソゲーじゃねえか」

 

ハジメが悪態をつく。

 

「さあ、まだまだ楽しませてくれよ?」

 

天之河がニヤリと笑う。

 

 

だが、帰ってきたのは凄まじい誹謗中傷だった。

 

「うるせえ死ね」

「死んじゃえ」

「死んでください」

「死になさい」

「死ねや」

「死んでくださいぃ」

「……死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「Fuck you!」

 

 

……いやどちらかと言うとただ死んで欲しいだけかも。

 

 

…ハジメに続いて、ユエ達も口々に天之河へ罵倒の言葉を浴びせる。

 

「黙れぇ!!雑魚の分際で調子に乗るな!!!このクソカス共が!!」

 

天之河はキレた。

ハジメ達の態度を見て、自分が舐められていると判断したのだ。(まぁ実際舐められているが)

 

因みにこれはハジメ作戦だったりする。「物理的に攻撃するより、口撃した方があいつにとってはダメージでかいんじゃね?」との事。

 

まあ、効果は抜群だ。

 

その証拠に天之河の顔には怒りが滲み出ている。今にも血管がプッチンプリンしそうだ。

 

「お前ら全員を挽肉にしてやる!!!」

 

天之河はハジメ達の方向へ手をかざすと、そこに膨大な魔力が集中し始めた。どうやら魔法で応戦するつもりらしい。

 

「させると思うか?今度は俺が相手だ、この沸点ミジンコ野郎。」

 

ハジメがドンナーで狙い撃つ。

音速の30倍近い速度で撃ち出された銃弾は、天之河の腕に命中し、バシュッという音と共に破裂させた。

 

「ぐっ!また腕がぁ!!」

 

「次は何処を破壊して欲しいんだ?リクエストに応えちゃうぞぉ〜♪」

 

「貴様ァ………!!!許さんぞ!!」

 

「うっせぇバーカ!」

 

再び発砲するハジメ。今度は顔面に向かって。

だが、それを察知した天之河は咄嵯に身をかわす。

 

「くそ、ちょこまかと鬱陶しい。」

 

天之河の動きは速く、ハジメの銃撃は全て回避されてしまう。

 

「チィ……めんどくせえな……八雲!」

 

「分かりましたわ!」

 

八雲紫が扇子を開くと、その扇子の先に大きなスキマが出現した。

その中はグニャグニャと歪んでおり、空間がねじ曲がっているように見える。

 

「これでどうかしら!」

 

そう言って扇子を薙ぎ払うように振ると、そこから天之河目掛けて幾つもの裂け目が飛び出してきた。

それはまるで触手のように、ウネウネと動きながら、天之河へと向かっていく。

 

「そんな攻撃効かんなぁ!!」

 

しかし、天之河は余裕そうな表情で、襲ってくる無数の攻撃をヒョイヒョイと避けていた。

それを見た八雲紫はニヤリと笑った。

 

「あら、そうかしら?」

 

次の瞬間、天之河の身体を凄まじい衝撃が走った。

そしてそのまま壁まで吹き飛ばされてしまう。

 

「ガハッ……!」

 

口から血を吐きながらも、自分の身に何が起きたのか理解できない様子の天之河。

 

だが、そんな事は誰も気に止めるはずが無く、シアや妖夢達による追撃が加えられる。天之河は防御することもままならず、ただ一方的に攻撃を受け続けた。

 

シアのハンマーが天之河の頭を捉えたと思えば、その反対から咲夜と優花の息のあった回し蹴りが鼻骨を潰し、次いでとばかりに投げナイフが披露される。

 

その衝撃で後ろに倒れようものなら、雫に脊髄を切り飛ばされ、前にふらつこうものなら、妖夢とシズエの十文字斬りが待っている。

 

倒れ込むと再生した瞬間に清水によって四肢を切り飛ばされる。更にレミリアとフランのグングニルとレーヴァテインによって串刺しにされ、ユエやミレディ、セリカとアリス達による魔法(魔術)火力が火を噴く。

 

そして、仕上げとばかりにハジメの六連装パイルバンカー(爆装仕様)ⅹ2と、紫の二両編成の電車x3を叩き込んだ。

 

 

「グォア!?あば、ぼべ、ごぇ……!」

 

あまりの威力に、既に天之河の意識は刈り取られていたが、ハジメ達はそれでも容赦無く追撃を加えた。

 

「や、やめ」

 

ゴシャッ! 天之河の懇願も虚しく、最後の一撃として、八雲紫の全力全開の結界により押しつぶされた。

 

それは最早、攻撃ではなく処刑に近い。

圧倒的な暴力の嵐の前に、天之河は為す術もなく崩れ落ちた。

 

これで死な無いのであれば最早為す術はほとんど無い。これを耐えられるとしたら、何処かの変態か輪廻位なものだろう。

 

天之河は、白目を剥いて泡を吹き、完全に事切れているよう……に見えた。

 

 

 

しかし、次の瞬間にはビクンと痙攣すると、まるで時間が巻き戻るかのように傷が修復されていった。

 

天之河はゆらりと立ち上がると、ニィと口元を歪ませた。

 

「クフフ……なかなかやるでは無いか。まさかこの我がここまで追い詰められるとは。流石と言っておこう。だが、もう遊びは終わりだ……」

 

「……くそったれが」

 

天之河の言葉に、ハジメは小さく悪態をついた。

どうやら天之河はまだやる気らしい。ハジメ達の猛攻を受けて尚、その戦意は微塵も衰えていないようだ。

 

「……いい加減しつこいですぅ。これでも喰」

 

「随分と動きが遅いな?」

 

シアがドリュッケンを振り上げたところで、天之河は一瞬で加速した。

そして、シアに掌底を食らわせると、そのまま吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

シアは何とか着地をしたが、かなりのダメージを負ってしまったようで、苦悶の表情を浮かべている。

 

それを見たハジメたちの表情は驚愕で満ちていた。

 

「嘘だろおい………シアの攻撃を避けるどころかそれより先に攻撃しやがった。」

 

「……あの時の比じゃないくらいに速い」

 

その速度は正に神の領域に達していた。

 

先程までの天之河はかなり速い動きではあったが、今のは間違いなくそれ以上の速さだ。

 

「クフフフ、今更後悔しても手遅れだぞ!さぁ、今度はこちらから行くぞぉ!!!」

 

天之河はそう言うと、今度は目にも止まらぬ速度でハジメ達に迫ってきた。

 

 

 

「……クソが!」

 

ハジメは咄嵯にドンナーを抜き発砲するが、やはりと言うべきか天之河はその弾丸を片手で受け止めた。

 

「ふん、そんなもので我を倒すなど片腹痛いわ!」

 

天之河は余裕綽々といった様子でハジメに向かってくる。

 

 

ハジメは舌打ちをしながら迎撃態勢をとった。

 

「フハハハ!!やはり奴の力は凄まじい!力が漲ってくる所の話では無いな!」

 

「チィッ!」

 

ハジメは迫り来る天之河を迎撃しながら思わず悪態をつく。

 

(何とか迎撃は出来ているが……均衡が崩れるのも時間の問題だな…)

 

ハジメは既に三回ほど天之河の攻撃が被弾していた。

 

「先程の威勢はどうした!防戦一方では無いか!」

 

天之河の攻撃を捌きながら、ハジメが打開策を考えようとするが、その隙をついて更に二発の拳が飛んできた。

 

「ごァッ!」

 

その拳はハジメの腹と左肋を抉り、ハジメを後方にふっとばした。

ハジメはそのまま壁まで吹き飛び、ズルリと床に倒れ伏してしまった。

 

(クソッ……肋が折れて内蔵に刺さりやがった……)

 

激痛に耐えながらもハジメは必死に立ち上がろうとする。

しかし、身体に上手く力を入れる事が出来ない。

 

ハジメの口から血が零れた。

 

「ハジメさん!」

「ハジメ!」

 

妖夢やユエ達がそう叫びながらこちらへ駆けつけようとする。

 

だが、それを邪魔するように天之河が立ち塞がった。

 

「クハハハハハハハハッ!!貴様らに残されているのは雑魚らしく無様に死に晒すことだけだぁ!」

 

「良いからさっさと退けェ!」

 

一気に先頭に躍り出たレミリアが激情に任せてそう叫び、天之河へと全速力で駆ける。

 

しかし、天之河はそれを難なく受け流し、逆にカウンターを仕掛ける。

 

「随分と遅いなぁ!!」

「グゥアッ!?」

 

めり込んだ拳は、なんとそのままレミリアの腹を貫通した。

 

「かは………っ!……だが、貴様も…この距離なら…避けられないだろう…神槍『スピア・ザ・グングニル』…!」

 

そう言って、レミリアは天之河にゼロ距離で紅の神槍を放とうとした。

 

しかし、天之河はそれを読んでいたのか、レミリアの腕を掴んで引き寄せると、彼女の首元に手刀を突き立てた。

 

「ガフッ……!」

 

「ゼロ距離になった時点でその程度予測しておるわ!」

 

そう言った瞬間、天之河の手には先程までレミリアが持っていた神槍があった。

 

「これはお前の妹に返しておいてやろう。」

 

天之河はそう言うと、こちらへ向かっていたフランへと槍を投げつけた。

 

その槍は音速を優に超えた速度で飛来し、フランの右胸へと突き刺さった。

 

「……っ…………え……?」

 

フランは突然の出来事に一瞬呆然とする。

そして、自分に槍が刺さったことに気が付くと、まるで糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

 

同時に、天之河がレミリアの腹から手を引き抜くと、そのまま倒れ伏した。

 

 

「お嬢様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!妹様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!……貴様ァァァァアアア!!!!!!!」

 

その瞬間、咲夜が絶叫し、天之河へと最高速力で駆け出した。

 

「何度言えば分かる!遅いんだよ!」

 

天之河はそう叫ぶと、超高速で突っ込んできた咲夜の顔面にカウンターで拳を叩きつけた。

 

「ガッ……!?」

「お前らは何もできない無能なんだよ!」

 

天之河は更に追撃を加えるべく、仰け反っている状態の咲夜に蹴りを放つ。

 

しかし、それは突如現れた何者かによって止められてしまう。

 

「……させない……!」

 

追いついたユエだった。

 

「チッ!小賢しい真似を!」

 

「うるさい…!さっさとくたばれ……!……その力を私に貸して【神剣グラム】!」

 

ユエがそう言い放つと、彼女の背中から不死鳥の如き炎の翼が生え、身の丈ほどある両手剣が出現した。

 

「ユエ!」

「ユエさん!」

 

同時に、セリカやシズエ達がユエに追い付き、清水と香織がハジメの元へ駆け付けた。

 

「ハジメ、大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない…………とかネタに走りたいところだが……結構痛ぇ。」

 

「ネタに走ってる場合じゃないよハジメくん!!早く回復するから傷を見せて!」

 

ハジメが冗談を言うと、香織が慌てた様子でそう言ってきた。

 

「いや、良い……それより、あいつらを援護しろ……バフがあるのと無いのとじゃ……全然違う」

 

ハジメはそう言って、痛む体で立ち上がる。

 

「ハジメ、無理すんな。動いて良い状態じゃねぇのは自分が一番わかってるだろ?大人しく回復してろ。」

 

清水がそう言ってハジメの肩を抑えた。

 

「……ッ……分かった、だが治ったら俺も直ぐに参戦する。」

「おう!任せとけ!」

 

 

そうしている間にも天之河との戦闘は続いている。

 

「死ね【デッドリーレイド・カストタロフィ】」

「輪廻さんを殺した貴方を私は許さない……爆炎ノ太刀、一式!」

「力のままにぶん殴るですぅ!」

「貴方の尻拭いもこれで最後よ!八重樫流改、三式 出雲!」

「お主を見ると虫唾が走るんじゃ……滅びよ!ブレスバースト!」

「アンタの事割と嫌いだったのよね……吹き飛びなさい!」

「貴方を殺してもう一度輪廻さんとお話するんです! 剣技『桜花閃々』!」

 

上からユエ、シズエ、シア、雫、ティオ、優花、妖夢。……動ける前衛達が天之河を囲んで攻撃を仕掛けた。

 

 

「……クソカス共が!死ぬのは貴様らの方だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そんな彼女たちに対して、天之河は激昂し、彼女達の攻撃を掻い潜りながら反撃した。

 

何度か攻撃を受けつつも、天之河は彼女達を数十秒で戦闘不能状態に陥らせた。

 

ユエは脳を揺らされて脳震盪を起こし、シズエは横隔膜を突き刺されて呼吸困難に、シアは肺を二つとも突き刺された上に後頭部を殴られて意識を失い、雫は手足の健を斬られた上に心臓を一突きにされ、ティオは全身複雑骨折して気絶させられ、優香は左腕を切り飛ばされた上に両膝が壊れ、妖夢は背骨を半分に斬られ、彼女が持っていた刀が突き刺されており、うつ伏せで倒れている。

 

まだ死んではいないが全員瀕死の重症だ。

 

そして、天之河は当然の如く無傷である。

 

 

「ッ!クソが!死ねや天之河ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

それを見た清水が天之河に突っ込み、後衛たちも火力技をぶっぱなして応戦する。

 

 

 

 

同時刻、八雲紫は賢者とすら称えられるその頭脳を全力で動かしていた。

 

 

(どうする!?このままじゃ勝てる見込みは無い!かと言って撤退すれば奴は更に力をつけて、本当に手がつけられなくなる……!!今の奴の力は全力の輪廻さんの約二割弱、封印の剣のストックは一本だけで、外してしまえば新しく作るのには材料が足りない!……一か八かの賭けに出る……?……いや、余りにもリスクが高すぎる!)

 

そこまで考えた瞬間、紫の足元に何が転がってきた。

 

「……え…?」

 

それは天之河と剣を交えている筈の清水の腕だった。

 

思わず清水達が居る方向へ目をやると……そこには信じられない光景が広がっていた。

 

ハジメと紫以外の全員が血溜まりの中で倒れていたのだ。

 

そんな中、天之河はこう言った。

 

 

「雑魚共が粋がりやがって……」

 

 

天之河のその言葉を聞いた瞬間、ハジメはまだ怪我が完治していないにも関わらず、ゆっくりと立ち上がった。

 

「………おい……テメェ、自分が何したか分かってんのか……?」

 

ハジメの声は低く、まるで地の底から響いて来るような声だった。

 

目の周りの血管や神経が浮いており、凄まじい怒りを滲ませているのが伺える。

 

「ああ?虫けらをはたいただけであろう?なんの問題がある?」

 

ハジメの怒りなど意に介さず、寧ろハジメを見下すように嘲笑う天之河。

 

「……八雲」

 

ハジメの呟きに、八雲紫はハッとなって顔を上げた。

 

「な、なんですの!?」

 

焦った表情で問い返す紫に、ハジメは冷徹な声で答えた。

 

「……"アレ"を使う、お前の能力で俺の身体能力を上げれるだけ上げろ、命が危ないとかは考慮しなくていい」

 

「なっ!?それだけはダメですわ!!アレは輪廻さんが使うから制御出来るのであって、貴方が使えば……!!」

 

紫は慌てて止めようとするが、ハジメはそれを遮るように言う。

 

「んな事分かってる。だがそんな事を話し合ってる時間すらねぇよ」

「でも……!!」

「良いから早くしろ!!」

 

ハジメの強い口調の言葉に、紫は沈痛な面持ちで了承の意を示した。

 

「……分かり、ました………ごめんなさい……貴方にこんな事を背負わせて……っ……」

 

涙を流す紫にハジメは、ただ一言。

 

「……別にお前の為じゃない、輪廻や優花……俺の大事な物の為だ」

 

そう言ったハジメは、宝物庫から一本の刀を取り出した。

 

それはかつて、このトータスの世界に来た時に渡された刀である。

 

その銘は……

 

 

 

 

「滅ぼせ『"夜叉之叢雲"』」

 

ハジメは静かにその名を呼びながら、叢雲を鞘から抜き放った。

 

その瞬間、ハジメの気配が凄まじく禍々しい物に変わった。

 

その気配は最早人間の物では無く、悪魔や魔王と言った方が近いだろう。

 

そして、それは見た目にも現れる。

 

髪色は深紅に変色し、瞳は赤黒く染まり、額から血の紋様が浮かび上がる。

 

その姿はまるで、鬼神や羅刹といった類のものだ。

 

だが、その姿を見ても天之河は余裕な態度を崩さない。

 

「ふん、それがどうしたというのだ?

たかが化け物に成り下がった程度で神である我と対等になったつもりか?」

 

そう言って、再び聖剣を構え直そうとする天之河だったが……その腕が途中で止まる。

 

否、止められたのだ。

 

「……は?」

 

天之河は自分の手を見る。

その腕は肘辺りまで斬られていた。

 

「敵の前でベラベラ喋ってんじゃねえよ、隙だらけだ」

 

いつの間にか天之河の背後に居たハジメが、無感情な声音で言い放つ。

 

「チッ!」

 

舌打ちをしながら背後を振り向く天之河。

しかし、その瞬間には天之河の体は切り裂かれて居た。

 

「ぐあっ!?」

 

天之河は一瞬にして体中に傷を負い、その苦痛により顔を歪める。

だが、天之河はすぐに反撃に移った。

 

「『天翔閃』!!」

 

その言葉と共に、天之河の持つ剣から光の奔流が放たれた。

 

が、ハジメは避ける素振りさえ見せない、それどころかその魔法ごと天之河を再び切り裂いた。

 

「ガアァ!?」

 

(馬鹿な!!有り得ない!神たる我の加護を受けた一撃なのだぞ!?それを事もなげに……)

 

天之河は驚愕の表情を浮かべるが、次の瞬間には胸元を切り刻まれていた。

 

「グッ!!」

 

天之河はバックステップで距離を取り、体勢を立て直しを図ったが……

 

「わざわざ距離を取ってくれてありがとよ」

 

ハジメはそう言うと同時に、天之河の目の前まで既に踏み込んでいた。

 

「なっ!?」

 

 

「さあ死んでくれ!テメェには地獄がお似合いだ! 【斬無一閃】!」

 

ハジメは、そのまま天之河の魂に目掛けて叢雲を一文字に振るった。

 

「がぁぁぁあああぁぁぁあぁ!!!!!!!!!!!」

 

 

斬り飛ばされた天之河の絶叫が響き渡る。

 

 

「い、嫌だ!我が!全知全能たる我がァァァァアアア!!!こんな所で死にたく無い!死にたく無いィィィィ!」

 

 

 

 

そして、そんな叫び声だけを残し、天之河は光となって消え去った。

 

 

 

 

「……これで……終わりか……」

 

 

そう呟いたハジメは、思わず倒れそうな体を抑え、ユエ達の方へ声を掛けた。

 

「お前ら………大丈夫か……」

 

「全然大丈夫じゃない……まだ脳が揺れてる……」

 

ユエはフラつきながらも立ち上がろうとするが、すぐにバランスを崩して転けそうになる。

 

そんなユエを抱きとめながら、宝物庫から神水を取り出し、重傷者達にぶっかけた。すると、見る間に傷口が塞がり、顔色も良くなっていく。

 

 

だが……………

 

 

「ハジメっ!痛いよ、左腕が痛い!な、なんで?傷は塞がってるのに……!」

 

 

優花がそう叫びながら、痛みを堪えるように左腕を押さえている。

 

……『幻肢痛』だ。

 

神水はあらゆる傷を治せるが、部位の欠損だけはどうにも出来ないのだ。

 

「……っ、八雲!何とかしろ!」

 

残った右腕でハジメに抱きつき、痛い痛いとうわ言のように呟く優花に、ハジメは紫に向かってそう叫んだ。

 

「無茶言わないで頂戴……私の能力は万能ではあっても全能では無いの。……それに、その子の幻肢痛は恐らくただの幻肢痛じゃ無いわ」

 

「くそっ!」

 

ハジメは悪態を吐きながら、神水を更に取り出し、今度は自分の口に流し込んだ。

 

そして、そのまま優花の唇に自身の口を押し付け、無理矢理飲ませた。

 

「んぐぅ!?」

 

突然の事に目を白黒させつつも、優花は喉を鳴らして神水を飲み干した。

 

すると一時的に幻肢痛が止み、優花は倦怠感からか眠ってしまった。

 

「……それで?ただの幻肢痛じゃないってのはどういう事だよ?」

 

ハジメは紫に尋ねる。

 

「……恐らくは『夜叉之叢雲』の反動だと思いますわ」

 

 

 

「……は?」

 

俺が代償を払うんじゃなかったのかよ!とハジメは紫にそうまくし立てあげる。

 

 

 

…………妖刀『"夜叉之叢雲"』

 

 

輪廻の所有していた武器の中で最も強く、最も代償が大きい刀。

 

神すら簡単に屠る力の代償、それは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『夜叉之叢雲』の代償は……ランダムです。」

 

 

 







さあ、この作品で残してきた謎を全て回収し切れるのか?



……次回、最終話です。
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