IS Another ZERO   作:XXI

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さて、今回で戦闘となります。
A10パッケージのスペックは火力一点集中となっております。因みに直撃なんてしたらそらもう大爆発です。
強いわけじゃありません。
はっきり言っておきます。機体は強くありません。
もし強く見えたならそれは目の錯覚です。こんな機体、現実だと使い物になりません。特にISという機体のくくりでは。


灰色の空、亡き国の企業

 

「さっきの装置はなぁ! 《剥離剤》リムーバーっつうんだよ! ISを強制解除出来るっつー秘密兵器だぜ? 生きているうちに見れて良かったなぁ!」

 

織斑一夏を踏みにじりながらそんな事を声高に叫ぶ、女。俺に名刺を渡してきた女だった。

全く、本当にこの学園のセキュリティはどうなっているんだろうか。こんな簡単に賊の侵入を許すなんて。

 

「書面上だけなら見た事があるがね。剥離剤ってーのは」

 

俺がそんな風に声をかけてやると、女は俺の方を睨みつけてきた。実に良い面だ。しかも美形ときやがった。

 

「おぉ? もう一人の獲物がのこのこと現れやがった」

「ハッハァッ! こいつぁ傑作だねぇ。節足生物風情が、肉食哺乳類にそんな事を言うなんてなぁ!」

 

ああ、可笑しくって反吐が出ちまうね。

 

「逃げろ! こいつはISを――」

「おや、お前にSMの趣味があったとはな。いつもいつもあんな事をされていたから、遂にそっちに目覚めたのか」

「そんな趣味はねぇ! いいからとっと逃げろ! 幾らお前でもISを奪い相手には勝てないだろ!」

 

そいつはぁ、お前の機体が素人仕様だからだよ。脳みその足りない人間が作った代物だから、そんな風に出来ているんだ。

 

「てめぇは黙ってろ!」

「グゥッ」

 

おー、おー、ぐうの音が出てるよ。まったく。

 

「おい、交換条件と行こうじゃねぇか……へへへ、お前の機体を大人しく寄越しな。そうすればこいつの命は助けてやるよ」

「そいつは出来ないって言ったらどうする?」

「こいつもお前も、ここで仲良くミンチになるんだな」

「おいおい、お前も彼我の実力を見る事が出来ない雑魚か? 結果は『織斑一夏と亡国企業の鹵獲』だ。さぁ、て。吐いてもらうぜ? てめぇの体にたっぷりと、なぁ?」

 

そう言うと、女は織斑一夏に銃口を向ける。

しかし、俺が銃を呼び出して女に発射する方が幾分か速い。呼び出したのは50口径のアンチマテリアルライフル。この国じゃあ未だに対戦車ライフルなんて古臭い呼び方が流行っているみたいだがな。

 

「んだぁ? てめぇ、んなもん何処に持ってやがった」

「企業秘密だ」

 

発砲して腕を弾き飛ばすと、灰色は俺の方を向いた。

どうやら俺の事を危険視したらしいな。

人質に意味はない以上、手荷物は放ったほうがいい。そのセオリーに従って、目の前の女は織斑を蹴り飛ばした。

吹き飛ばされる織斑一夏。その間に装備を部分展開、そして剣を呼び出す。

正直、機体を使っての近接戦闘は避けたいんだが、そんな事も言っていられない。パッケージを使って飽和したい所だが、ISを所持していない人間が傍にいるとなると、話は別だ。

流石にミンチになる所を間近で見たい訳じゃない。

さてはて、向こうはぶっ放したい放題、こっちは近接格闘戦オンリー、となれば流石に不利だ。ましてやここは閉所。面制圧なんてされたら最後俺は防御する手段がない。

デミット、こんな事ならシールドを追加注文しておくべきだった。一応、奥の手はあるが、実験段階。あんなものが、そう簡単に成功するはずがない。

さてどうしたものか。攻め手に欠ける、か。

 

「おらぁ!」

 

叫びながら、そいつは俺に向かってきた。背部から生えた無駄に多い足が俺に向かってくる。

部屋の広さはISを起動して動き回るには窮屈。こいつも素人か?

俺はその攻撃を剣でさばいておく。思っていた以上の攻撃はない。反撃を組み合わせた防御主軸の戦闘を行っておく。

この蜘蛛女が……。

舌打ちを一つすると、俺は剣を関節部に剣をつきたてて、そのまま切り裂いた。

金属的な音をたて、一つの腕が床に落ちた。

……あぁ、うん。まさかとは思っていたがね。どうしてこいつらはアホなんだ。

当たり前だが関節部と言うのは非常に弱く出来ている。その数が多く、大きさが小さい程に耐久力は低くなっていく。

この蜘蛛女の機体は結構な関節部に覆われている。そして俺の剣は特別製だ。

それで、答えが出た。

 

「……で? 俺をミンチにするんじゃあなかったのか? 女郎蜘蛛」

 

俺はそう言ってやる。と同時に機体の照合が終了した。

機体名はアラクネ。アメリカの第二世代、か。なるほど趣味の悪い。

 

「あら、もう始めちゃったのね」

 

そんなことを言って、そいつは現れた。

 

「安心しろ、今夜は蜘蛛鍋だ。でかい蜘蛛ってぇのは、蟹の味がするらしいからな。一度食ってみたかったんだ」

「……そうね。じっくりとお鍋で煮詰めて、味わってみたいものね」

「よし、お前ら全員生きたまま腹を捌いてやる」

 

額に青筋を立てて、そいつは俺達に向かってくる。

八本の腕……いや、一本斬り飛ばしたから残り七本か。雑魚が、俺の前に立ちはだかるな。

一本、また一本と腕を斬り飛ばしてやる。次第にそいつの表情が険しいものに変わってくる。

トリモチのような何かを飛ばして動きを制限しようとしてくるが、俺はそれを剣で防いだ。剣にはべっとりとそのトリモチがくっついている。

 

「ははは! それじゃあ、もう斬れないだろ!」

「ああ、お前はいつから俺だけを相手にしていたつもりだ?」

「んだぁ? ジセノクとやらは、読ませてやらねぇぞ」

「この部屋、随分と不快指数が高くないか?」

 

苦笑しながら俺はそう問い尋ねてやる。

 

「んだぁ? それがどうかしたのか?」

「そこにいる女が、いつからISを展開していないと思わされていた?」

「なっ……!」

「獲物を前に舌舐めずりってのは、ド三流のする事だ。覚えておけ、革命家気取り(テロリスト)」

 

俺は跳躍してそいつの周囲から離脱。ついでに織斑一夏も回収しておく。

あの爆風に、生身の人間が耐えられるわけがないからな。

全く、閉鎖空間でしかも生身の人間がいるのに、あんなものをぶっぱなすなんて本当にこの馬鹿は。

 

「あんなものをぶっ放すなんて本当に気でも狂っているのか」

「あら、貴方は気づいていたじゃない」

 

IS、ミステリアスレディを展開した更識楯無は不敵な笑みを浮かべてそんなことを言った。

 

「気づいていなかったらどうなっていたと思っている」

「貴方のせいで大怪我を負うところだったわね」

 

良い性格してやがる。こんな時にまで俺に責任を押し付けてくるなんてな。

しかも子供の理屈だ。

 

「巫山戯やがって!」

 

そんな子供の理屈に反応して激昂する馬鹿がここに居やがった。

 

「織斑一夏。お前は何を望む?」

「え……?」

「お前はなぜ、力を求めた。そして、その為には一体何が、必要なんだ」

「俺は、俺に必要なもの」

「願え、お前が必要だと思うなら。恵まれたお前なら、答えてくれるんじゃあないか?」

 

俺はそう言うと、剣を構えなおす。

……しかし、このF14Iではこういった閉所での近接格闘は、向かない。もっと大きく、滑らかな軌道を描きながら敵機を集団で包囲する戦術を得意とする機体だ。

馬鹿を回収してきたお陰で銃は使える。まぁ、結果はもう出ているようなものだがな。

 

「来い白式!」

 

織斑一夏はそう叫びIS白式を展開、同時に零落白夜を使用して亡国企業に斬りかかる。

 

「なッ……てめぇ、一体どうやって!」

「知るかッ!」

 

……馬鹿の発想だが、まぁそれでいい。本来空戦なんて知識の塊みたいなものだが。

こいつの発想はただの突撃兵のそれそのものにすぎない。

距離をとった亡国企業に対して、織斑一夏は不用意に追撃をすることはなかった。少しは学習したらしい。

 

「さて、灰色。貴様は能力の違う専用機三機を、たった一人で相手する事が出来るか?」

 

亡国企業は舌打ちを一つすると、愉快な口上を垂れ流し始めやがった。

 

「てめぇら、次に会う時は一人残らずぶっ殺してやるからな!」

 

そう言って、その女は煙幕を使い撤収する。……だからどうしてそんな単純な煙幕で撤退出来ると思っているのだろうか。

溜息を吐くと、熱源反応を追い、アラクネを追う。

スラスターを吹かすして煙幕を払ってやる。

 

「逃がすかよッ……!」

 

血気盛んに織斑は飛び出そうとする。が、それを制止する更識楯無。

 

「待ちなさい、一夏君。何も闇雲に追う必要性はないわ」

「だけど……!」

 

彼女の言葉を受けて、動きを止める織斑一夏。これが俺だったらどうなっていた事か。

どうせ、聞く耳持たずに突っ込んでいっただろうな。単独で潜り込んでいたとしても、そいつは知らないまま、別動隊が潜んでいたりもするものだ。

国家規模で活動する連中だ。その程度の事はするだろう。むしろ、単独で潜入しておく方がおかしい。

失敗した際には、そいつを回収して撤退がセオリーだ。特にISなんて特殊な兵器の搭乗者? いや、使用者か? まぁ、どちらにせよ、替えが少ないものだ。

易々と使い捨てをするはずがない……それが例え、どれ程までに無能であったとしても、だ。

 

「そんな事よりも、だ」

 

俺は近寄って一夏の頭上にあった王冠を手に取った。

 

「こいつは貰って置くぞ」

 

そう言うと「あー!」と更識楯無が叫ぶ。

 

「それ私が取ろうと思っていたのにー!」

「お前が先にとらないのが悪い。それに、お前みたいな馬鹿よりも、俺が傍にいた方がこいつの精神衛生上、宜しいだろう?」

「ぐぬぬ……」

「どうせ貴様の事だ。あの手この手でハニートラップでも仕掛けるつもりだったろう」

 

溜息を一つ吐く。

さて、それじゃあ、追撃行こうか。

たった今、連絡がきた。

バーニアを吹かして、呆然としている織斑、地団太を踏む更識を放って、俺は黒兎達が敵機を目撃た場所まで向かう。

先程までのダメージか、ISをわざと収納して水飲み場にいるなんて……。

何でそんな事をしているのか、まったくもって理解が出来ない。

それ以前に学園から離れたとは言っても、どうして水飲み場でリラックスして水を飲んでいるんだ。

本当に頭が痛くなる。

溜息を吐いていると、視界の先にAICを展開し、灰色を拘束している黒兎が目に入った。

レーダーを確認すると、少し離れた位置に白人女が待機しているのが分かる。

接触までのカウントダウンが始まるかと言う時に、アラートがなる。

 

《warning unknown craft on radar!》

 

亜音速で一機の未確認ISが此方に向かって来ている事を、伝えられる。

予想通りに伏兵か。長距離からの射撃によって、アラクネを装備していた女を解放させた。

中々いい腕をしている。

黒兎は眼帯を取り外し、臨戦態勢を整えるが、回避で手一杯。白人女はビットを展開し、自身も狙撃で対応しようとするが、悉く敵機に撃墜させられる。

急ぎ敵機の照会と、パッケージを展開する。黒兎達が敵機と距離が離れている、今が好機だ。

パッケージA-10を呼び出す。多大な追加武装、そしてそれを補うために、新たに設けられた装甲とエンジン。

早速、右腕のガトリングをAICから逃れられ、ISを緊急展開したアラクネに向けて放つ。

耳をつんざくような発砲音とも、何とも言えない音が響き渡りわたり30ミリの弾丸が雨霰と言わんばかりに放たれる。

 

「がぁぁぁぁ……」

 

悲鳴が響き渡りISの装甲がゴリゴリと削れていく。

無論の事、未確認機は俺に目標を移してきた。ビットと狙撃銃。イギリスのブルーティアーズの二番機か?

そんな推測を立てていると、ビットが周囲に展開してきた。残念だったな。

相性が悪い。

数機のビットに対して、必要以上のミサイルを飛ばす。

焦り、ビットでの迎撃を試みるも、破壊される。ビームを曲げてくるみたいたが、角度はせいぜい四十五度程度だろう。そんな程度で曲げたうちには入らないんだが。

曲げる事に意味なんてないって言って、何人が理解できるだろうか。ショーテルでも使っていろ雑魚。

両腕部のガトリングを使って未確認機へ攻撃をする。敵機は飛行しながら回避する。反撃のチャンスは許さない。

背部にマウントされているミサイルポットからミサイルを射出。

回避運動をしながらシールドビットで迎撃を試みているが、あんな迎撃運動で回避できるわけがない。

 

「目標を捕捉、全砲門解放、収束砲エネルギー充填率八十、九十……完了」

 

ちょろちょろと動き回る蠅にはスプレーを撒き散らすのが、一番有効な手段だからな。

 

「全弾、発射」

 

解放した全砲門からすべての弾丸が、降り注ぐ。

全てのシールドビットを打ち砕き敵新型機へ襲いかかる。

この攻撃全てを回避する事が出来ない事を悟ると、チャフをまき散らしながらのろのろと飛行するアラクネを回収し、撤退する。

……というか、チャフを準備していたのか。

俺への対策もきちんと準備していたのか。既存のISへの対策だけでなく、旧世代と称される兵器への対策をしている……か。

デジタルはアナログに比べて効率はいい。が、反面脆い一面を持つ。ソフトは所詮ソフトだからだ。

まぁ、そんなことは放っておいて。

ふむ、思っていたよりも随分とやれる人間らしいな。

本国から徹底抗戦の指示は来ていない。まだ、泳がせていろ、と言う事か。それに、藪をつついて何を出すか、わかったものじゃあない。

 

「……撤退したか」

「何をのんびりしていますの! 今すぐに追撃を!」

 

青色がそう飛び出そうとする。

そうしたいがね。

 

「ビットが残っていないお前が、二機に勝てるのか? それに今からすべての装甲をパージして追いかけても、相手の救援とはち合わせる可能性が高い。そんなリスクを負う訳には行かない」

 

俺のパッケージのデータは露見した。しばらくは対策にいそしんでもらわなければならないしな。

 

「ですが……!」

「あきらめろ。そいつの言う通りだ」

 

軍人が、俺の言葉に賛同した。初めてか? こいつの軍人らしい所を見るのは。

情報が、端末に送られてきた。

相変わらず現場にいない所為かタイムラグが酷いな。

 

「なるほど、第三世代型のBT持ちか。イギリスの二番機。こうもあっさりと奪取されるとは。女王の栄光も地に落ちたかな?」

「黙りなさい! クイーンを侮辱する事は、この私が許しませんわ!」

「お前のその存在そのものが彼女の面汚しだよ」

 

彼女の意思を理解できていないお前にとっては。

後の処理は、生徒会長である更識楯無に任せて俺は自室へと戻る。

ああ、そうだったな。俺の自室はすでにあいつと同室になってしまっているのだったな。

……全く先が思いやられる。お花畑前回のあいつの脳みそ相手に俺は付き合い続けなければならないのだからな。

溜息を吐きながら俺は空を眺めるのであった。

空は灰色の胎動を、隠しきれないほどに、濁っていた。

 




という事でごりごり削ることで有名な30ミリガトリングを両腕に装備した状態で飛行するA10を出せました。
威力の比較としては、12.7の対物ライフルが二キロ先の人間真っ二つ何で、どれほどかは想像してみてください。
想像してしまった貴方は0もしくは1D3のSANチェックです。

次回はキャノンボールファスト。
さっさと機体出していかないと、潰される……。
最新刊はもう何が何だかわけわからなかったし。とりあえず黒と白で喪をイメージしたのは素晴らしいと思いました。
めでたいことを表す赤と白の反対ね。
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