TRPGを始めたせいで懐具合がだいぶやばめです。
幾ら需要と供給のバランスがあるとはいってもあの値段は勘弁してほしいっす。
サプリメントとか買って行ってたら、軽く一万超えてました。さすがクトゥルフ。這い寄る混沌の恐ろしさを味わったぜ。
えー、今回ようやく二つ目のフォーム?を出します。
あと一つ残ってんだよなー壊れ性能のやつが。うん、まぁ、条件付きだし。一応、スペック制限あるから大丈夫だろう。
さてはて、本日はなんとなんとなんと。
『高速機動』の授業だ。
糞くらいに笑えるね。全くお笑いだ。本当にこいつらは授業のカリキュラムを真剣に考えているのだろうか。
ハイスピードバトルレースまで、ひと月とないんだ。そんな中で今日初めてハイスピードマニューパのカリキュラム? 可笑しくうて可笑しくて反吐が出ちまいそうだ。
本当に脳味噌が足りていない人間のすることなんだろうよ。
「ハイそれではみなさーん。今日は高速機動についての授業をしますよー」
ヤマダマヤ教諭の能天気な声が響き渡る。
こいつもこいつで大概だ。
「ハイそれじゃあ、まずは専用機持ちの皆さんに実演してもらいましょう」
本当に能天気だ。
指名されたのは、俺と高機動パッケージを装備したイギリス、そしてスラスタ調整を施した織斑一夏だ。
「フライトコースは後日行われる馬鹿げたレースのもので宜しいのか?」
不機嫌を隠さないまま教諭に尋ねる。
周囲の女どもは、完全に観客気取りだ。
「え、ええ。お願いします。それでは始めますよ……」
「ラージャ。カウント同期、発進スタンバイ」
「3・2・1・スタート!」
その声と同時に織斑一夏とイギリスはスタートする。とはいってもどちらも素人じみているのは確かだが。
俺も少し遅れて機体を飛翔させ、変形させる。俺の機体に特別な調整は必要なく、高機動状態となる事が出来る。だから選ばれたのだが。
あの二人は遅いな。
ファントムXのままで追いつく程度には。
「速い……!」
「速い機体だとは思っていましたが、まさかここまでとは……」
二人の声がオープンチャンネルで聞こえてくる。
まぁ、こいつには少々無理はさせているがな。AB全開で追いかけたからな。
「二機とも口は慎め。テストフライトとはいえ、一応は訓練だぞ」
「あーら、そんなお言葉は私の前に出てから仰って下さいな」
「二度は言わんぞ、イギリス代表候補」
再びABを全開。二機の前に躍り出る。そのままスロットルは前回。
トップのままターン地点まで到着すると、悠々と始発地点まで戻る。
「ISF4帰投」
俺に遅れて後続の二機が来た。少し、大人げなかったか?
「は、はい。お疲れ様でした……」
完全に俺に対して疑問を抱いているな。
一瞥すると、俺はそのまま集団とは外れた所に行った。
今年は異例の一年生参加、らしいが。異例にする必要性を感じない。一年生は一年生だ。ケツに殻がついた雛鳥どころか孵化も敷いていないような卵を飛ばそうなんて考えは、気に食わない。
目的意識が薄すぎるのだ。この学園は。
主題たる目的も理解できていないのではないのか?
これではサンド島の二の舞だ。
「バイザーを初めて使うのは、本当に初めてか?」
そう尋ねてきたのは織斑千冬だ。
「……答える義務を持ちませんね。織斑千冬教諭」
「ああ、別に答える必要性はないな。確信に変わったから」
「随分と長いシンキングタイムだったな」
「確信が得られなかったからな」
「で、ようやく今それが得られたと」
やれやれ、馬鹿を相手にする事ほど疲れる事はない。と言うか、十分にヒントは与えていたのに、確信に変わるまでの間が長すぎる。
「夏の時点で気づくべきだったと思いますがね。生徒会長は何かしら掴んでいた風だったが?」
「あいつの考えなど私は知らん。私は私独自の考えで行動しているからな」
「そうですか。それで? 答え合わせは必要なのですか?」
「それをお前に言った所ではぐらかすのだろう」
「当然ですがね」
「お前は戦闘機乗りだな」
「それは前にも聞きましたが」
「いいや、あの時よりも確信をもっている。お前は戦闘機乗りだ。それもかなりの腕を持っていた」
「引っかかる言い方ですねぇ」
「お前は戦闘機乗りの候補生だった。そして、それがISの登場により出来なくなった。そして何の因果かISを起動してしまい、今に至る」
おいおい、それじゃあ俺が専用機を得られている事に対して何の答えも出ていないじゃないか。
「貴方は思ったよりも賢いようですねぇ」
「皮肉はいい。だがその専用機は一体何だ。そのISはどこからの貸与品で、何故そんな機体が作られたのか、なんて言う疑問が生まれてくる」
「ほうほう、確かに疑問は生まれてきますね」
「過程としては二つだ。研究室に所属しているか、それとも軍の機密部隊に所属しているか」
「イレイズド、か」
「そんなものを知っている以上、お前が一般人であると言う可能性はなくなったと言うわけだ。そしてイレイズド所属でないと言う事も分かった」
前提がおかしい。今ので分かったのは一般人ではないと言う事だけだろう。イレイズド所属でないと言う事は、臨海学校の一件で分かっていた筈だ。
本当に脳味噌まで筋肉でできている様だ。
「そんなくらいでいいでしょう、先生。ほら、貴方の弟が教師を性的な目で見ていますよ」
なんて言うとほらすぐにそっちに目が行く。良くも悪くも、ブラコン? なんだろ。そいつがお前の欠点だよ織斑チフユ。
姉の制裁を受け、不満そうな眼をしながらこちらに向かってくる織斑弟。
「何の用だ」
短く尋ねる。
「いや、お前追加武装なしで出来るだろ? だから少しでも参考になる意見が聞けたらなぁ、と」
「知らん。前提が違う以上、貴様の機体の事など俺に知った事じゃあない」
「前提が違う?」
ああ、口が滑ってしまった。
「そうだ。前提が違う」
「前提って、一体何の事だよ」
「黒兎にでも聞いていろ」
俺はそう突っぱねる。
「機体の前提が違う、か」
デミット、しまった。まさかあいつのほうからこっちに近づいてきやがった。
「つまり、嫁の機体とお前の機体とでは、運用目的が違うのだろう」
「……流石は腐っても軍人か」
こいつ位は知っていてもいいと思っていたが。
「兵器にはそれぞれ役割がある。それは汎用的なものに対しても同じだ。無論、万能的に行動が出来るISにも、運用目的と言うものは存在している」
「ラファールは装備に応じて目的が変わる万能機と言った所か」
「そう言った所だ。と言うか、お前は自分の機体の運用目的を理解していたのか」
「もちろんだ」
フンス、とない胸を張る黒兎。と言うか運用目的を知っていたのならもう少しまともな戦術がとれるだろう。
「まぁ、そう言う事だ。俺の機体とお前の機体のコンセプトが違うのに、何を教えろと言うのか」
「……いや、今回は高速機動について、教えてほしんだ」
「確かに俺は高速戦闘機動についてはなれている。それこそ、お前達程度など赤子もひねるようにな。だが、それをお前に教える気はない」
「なんでだよ」
「教えた所で、お前がそれを実践で活かせるとは思っていないからだ」
今までさんざん人の忠告を無視してきた馬鹿の言う事じゃあないと思わないか?
「なんだよ、少しくらい教えてくれたっていいじゃないか」
「正直に言おう。各種専用機を持っている中で二番目に教えたくないのはお前だ」
「なっ、じゃあどうすりゃ教えてくれるんだよ!」
「人の忠告くらいはまともに聞けるようになってからだ」
体は中途半端、技術は皆無、精神面なんて訳の分からない倫理を弄ぶほどの愚かさだ。特にメンタルが弱ければ弱い程、力を与える事は出来ない。
そんな奴は、最後にどうなるか分からない。
信念がない人間が力を得た結果が、どうなった事か。その力が間違った方向に向かってしまった。
彼は、あの人は後悔していた。
「さっさと消えろ。お前達に教えるものは何もない」
俺がそう言うと、顔をしかめながら一夏たちは離れていった。
そうして授業は終わり、生徒達は散り散りに去っていく。アリーナの空を見上げる。
狭い、空だ。こんな、鳥籠の中で、俺はいつまで飛ばなければならないのだ。
先日、あいつに付き合って行ったコンサート、いやライブで唯一耳に残った歌。
赤い実を探しに、行く。例え、ここがどれだけ甘いぬくもりだったとしても。
こんな所は、俺の居場所じゃあないのだ。
この力を、得て、俺は……。
例え、そうであったとしても。
―――――――――――
大会当日。空は晴天、澄み渡る青の中に雲ひとつなく、空砲の音が煩わしい。
そんな中で青年は一人アリーナの入り口に佇んでいた。
周囲にいるのは本日行われるISを用いたハイスピードバトルレース、キャノンボールファストの観客たちだ。
まるで兵器を見世物のように扱うその姿勢に、彼は一種の嫉妬を覚える。自分が使っているものはまるで時代遅れだ、なんて言わんばかりだからだ。
彼の乗っている機体、F15E……ストライクイーグルは4.5世代機と言う微妙な位置づけである。尤も、それはイーグルが現代においても、使用するに値する機体である事の証明だ、と思っている。
無論の事、彼にも誇りがある。
自分の機体を時代遅れ呼ばわりされた挙句、人殺しの道具なんて罵られては怒りを覚えるのも仕方のない事だろう。
だからこそ、自分の機体を見世物に変えた。これは人殺しの道具となるだけではないと言う事を、知らしめたかったのかもしれない。
まぁ、確かに、彼が彼女の大ファンであると言う事に違いはないのだが。
お陰でメディアへの露出が増えている。
まぁ、大金をはたいて、上司の反対を押し切っただけのかいはあったと言うものだろう。
今日、その愛機はこの近辺の基地に泊まらせている。スクランブルがあったらすぐにでも飛ばせるようにもしてある。大切な友人の頼みだ。無碍にするわけにもいかない。
正直に言うと、早いとこかえって先日のライブで手にいれた物品を堪能したい所だ。
そんな欲求に駆られる中、青年は人でごった返す中へ入って行った。
周囲にちらほらと見える黒服を見て、そう言えば今日はいろんな所のお偉いさんが来ている事を思い出した。
相変わらず危機意識の低い連中だ、と思う。
どうでもいい事だ。
空よりも蒼い服を着た青年は、友人にもらったチケットに書かれた椅子の場所へと向かう途中、一人の少女にぶつかった。
燃えるような赤い髪、一瞬その髪を見て、日本人ではないのかと思った。
「Are you OK ?」
ついつい、英語で尋ねてしまった。
「あ、えっと、あの……」
なれていない所為か、少女は戸惑った。
「ああ、すまないね。大丈夫か?」
「え、あっ、ハイ! 大丈夫です」
そう言うと、彼女はぎこちなく笑った。
「そうか、なら良かったよ」
少女は彼の服装を見て、少し固まっている。
「ん? ああ、彼女の大ファンでね。大好きでしょうがないんだ」
「あ、あはは……」
「ああ、道に迷っていてね、よければこの席の場所を教えてほしいのだけれど」
そう言うと彼は自分の席の場所を彼女に教える。
尋ねていると、近くをグラマラスな美女が通り抜ける。
微かに漂う硝煙の臭いが、青年の鼻腔をくすぐった。
「あ、私の席の隣です……」
少し残念そうにそんな事を言う少女。
青年は内心苦笑しながら、彼女に案内を頼むことにした。
「ここであったのも何かの縁。君の、名前は?」
「あ。わたし、五反田、蘭です」
「俺の名前はチョッパー、チョッパー・ダヴェンポートだ。よろしくな蘭ちゃん」
そう言いながら彼は手をだした。
その手が握り返される事はなかった。
―――――――――――
糞みたいに五月蝿い歓声が聞こえる。うるさい、少しは黙ればいい物を。
俺は薄暗いピットの中から、外の光を眺めていた。
チョッパーからの情報が来た。成程、きな臭いやつがいるって事か。
また、面倒な事になりそうだ。
外を眺めて、来賓席を視界に入れる。相変わらず、高みの見物って奴か、くそったれどもが。ISが自分たちだけのものだと勘違いしているのも変わっていないらしいな。
どうせ、イレイズドでの事も何かの間違いだと思っているんだろう。
いい加減に認めればいい物を。
視界に映る政府の駄犬共。その中には俺たちを塵だとかなんだとか罵った連中も映っている。
事故に見せかけて殺してやろうかとも思う。
「みなさーん、準備はいいですかー? スタートポイントまで移動しますよー」
山田麻耶がそういった。
ISを展開、機体はISF4X。これで、十分だ。
発進地点についた俺は、周囲を囲む機体を眺める。各機体共、今回のレースに際して、特別に調整させられた機体だ。
どれもが、なかなかの性能を有している事だろう。
中身がそれに追い付けば、の話だが。
やがて、カウントが始まる。周囲には大勢の観客、俺はその中で飛ぶ。
これが、世界が望んだ空だと言うのか。こんな物が。
そうしてカウントがゼロに変わった。
「ISF4X、発進する」
先行する一年生の専用機たち。所詮、テストフライト。気負う必要性はない。
上昇、同時に機体を変形させる。
場内に一瞬だけざわめきが起こる。機体の高性能な集音機器が俺の耳に聞いている。
俺の機体の機構、そのものが機密だった。あの事件以降はもう気にしていない。
HUDの端に、糞ったれ共のいる場所をモニタリングする。
前方には連中のケツが映っている。汚ねぇケツだ。イギリスは純粋なハイスピードカスタム。中国の機体は完全なバトルレース仕様。フランスとドイツは増設スラスタで対応している。
紅白の機体は、エネルギーの配分を変える事で、対応している。
下らない。
ちんたらと目の前で戦闘を行っている連中を見て溜息を吐いてしまう。
現在、俺がついている場所は連中よりも後ろ、ようはドンケツを飛んでいると言うわけだ。馬鹿みたいにこの時点で戦闘に参加しようなんて思わない。
これはレースだ。全機撃墜して悠々とゴールするのも悪くない。
が、それでは本末転倒だ。
まぁ、覚悟はして貰おう。
少しからかってやる。
ウェポンを選択、多用途炸裂弾頭ミサイルを連中のど真ん中に発射してやる。発射されたミサイルは、連中は反応して回避を試みる、が。
相変わらず、反応が鈍臭いな。
弾頭は炸裂し、その周囲にいた機体を巻き込み、ダメージを与え、リズムを乱す。後背位に俺の存在を思い出させてやる。
「何をチープなダンスを踊ってやがる。このまま飛ぶようなら、結果は全機航行不能と言う事になるぞ」
息を飲むのが聞こえてきたようだった。
俺が今つかったミサイルは、存在しない兵器の一つを威力調整したものだ。
慌てて連中はその速度を走って行く。
「貴様……その兵器、どこで手に入れた……?」
前を走る兎さんが優雅にも俺に質問をしてきた。
「お前がそれを知ってどうする? ほら、急がないと遅れるぞ?」
そんな風に煽っていると、アラートが響き渡る。
「熱源反応接近! 全機散開!」
警告を飛ばす、が敵機の方が早く行動を開始した。
二条の光線が、黒兎と令嬢を打ち抜いた。どうしてそのパッケージで反応が遅れるんだ。
溜息を吐きたい気分を我慢して、俺は敵機を確認する。
そこにいたのは、UFOを従えたBT型二番機、サイレント・ゼフィルスだった。
―――――――――
突如として現れた不明機による攻撃により、会場内はパニックに陥っていた。
響き渡る悲鳴、誰しもが自分自身の生存を第一にのみ考えて、行動する。誰もが自らを優先し、行動する。
結果として、自分以外の人間が死んだとしても、気にも留めないだろう。
それが間違っているなんて、きっと誰も言わない。
何せ彼らは、何の力も持たない一般人なのだから。
そう、所詮は『一般人』なのだ。
普段からその優位を誇示し続けていた女性であっても、普段からその体制に意義を唱えて半ば過激な行動に出る事もあった男性でも、それの前には所詮はただの人間にしか過ぎないのだから。
「あーあ、やっぱり来ちゃったねー」
そんな光景を傍目に、彼はぼんやりと不明機の方を眺める。
正直な所、いい加減襲撃などしては来ないだろうと思っていたのだが、彼の友人が言っていた通りに事は運んでしまった。
本当にフラグと言うものは現実世界でも回収されるものなのだ、と内心苦笑してしまった。本当に、彼のようだ。
あの物語では、最終戦を前にして唐突に、基地に恋人がいる、帰ったらプロポーズ、花束も買ってある、なんて壮絶なフラグを立てていたが。
まさかその直後に撃墜されるとは誰も思わなかっただろう。
しかし、色々と理解に苦しむ。
今日は各国から来るお偉いさん方の為にも警備は厳重にしてあったのではないのだろうか。相手がISである事を考慮して警備体制を構築するべきなのだ。
一体何を警備しているのだろうか、ここのセキュリティは。
ISにステルス性能が付加されていた?
そんなのはいい訳にもならない。
システムがハッキングを受けていた?
それこそ、自分たちの怠慢だ。
本当に、意味が分からない。一体その男よりも勝っているもので、一体何を考えているのだ。
逃げ惑う人々をどこか冷めた目で観察する。お偉方はSP達までもがパニックに陥っている。どうせ責任のなすりつけ合いだろう。死にたいらしい。と言うか現状で一体何を考えているのか、わからない。わかりたくもない。
まぁ、この程度の警備体制では結果としてこうなるのは目に見えて明らかだったのは言うまでもない事だろう。
「な、何をしているんです! は、早く逃げないと!」
隣にいた赤毛の少女がそう話しかけてきた。
この状況下で他人にかまう余裕があるとは、恐れ入る。
「逃げるって、どこへ?」
彼は目の前の光景を眺めながら、そう尋ねた。
「このアリーナから逃げるんです! じゃないと……」
「じゃあないと、どうなるんだ?」
冷やかに尋ねた。
眼前で行われている戦闘、そして逃げ惑う人々。
可能性としては伏兵が潜んでいる可能性がある。ISを所持している可能性もあるが、その絶対数から確率は五分五分と言った所。
それで逃げて、その伏兵を捉え損ねたらどうする?
「死には、しない。何せ、あそこにいるのは俺達の隊長で、エースなんだ。空〈あそこ〉では誰もあいつを落とせない」
そう確信を持って言う。隣にいた赤毛の少女はそんな彼の言葉を聞いて、戦闘空域を眺める。
そんな折、通信が入る。
「あー、みんなの……」
「御託は良い。今何処に居る」
相手はシンプルに回答を要求する。こうでなくてはならない。
「まだ自分の席だ」
「とっと自分の機体を取りに行ってこい」
「ウィルコ。頼んだよ、隊長」
それだけの会話を終えると、青年は立ち上がった。
「さて、それじゃあ行こうか」
そう呟くと、少女の手を取り、その細くも堅牢な両の腕で抱えて走りだす。
とっさの事に、少女は反応できていない。
「い、一体何処に行くって言うんですか!」
「ここよりも安全な所にある、俺の相棒の場所」
「はぁ!?」
「なぁに、取って食おうって訳じゃあないから安心したまえ」
はっはっは、と笑いながら、逃げ惑う人々の間を縫うようにして走り抜けていく。
時には跳躍も組み合わせながら。
アリーナの外に出ると、そのまま近辺に止めていたバイクに乗りこみ、少女に振り落とされないように注意を促して、その場所へと向かう。
沖合にある基地、そこに彼の相棒はいた。
迷うことなく自分の相棒が休憩している場所へと向かい、降りる。
「これって……」
「みた事ある? いやーうれしーねー、本当なら素敵な空の散歩にご招待、って言いたいけど、今回はそう言ってらんないから」
目の前にあった、真っ青な戦闘機。765とプリントされ、垂直尾翼にはアイドルの顔が描かれている。
「貴方は、一体……」
「ああ、俺? さっき言ったでしょ。まぁ、正確には」
ごそごそとバイクの中からスーツを取り出して、彼は言う。
「さそり座の三番機ってのが抜けてたけどね」
―――――――――
予定調和だ。
何もかもがあまりに当然の帰結。
全ては神の掌の上で起きていた事にすぎない。
「灰色、いや、ベルカ事変の亡霊」
返答はライフルのエネルギー弾だった。俺はそれを回避しつつ、ミサイルを発射。
制止したままの目標、これは何かがある。そう判断した次の瞬間だった。
ゼフィルスの前に二基のビットが躍り出て、エネルギーシールドを展開しミサイルを防いだ。
「やはりシールドビットを……」
「ティアーズ、落ち着け。シェン、ティアーズを援護しつつ、牽制せよ」
「私に命令しないでよ! 従うけどさ!」
そう言うと、二機は連携を開始し、ゼフィルスをけん制している。
「無理はするな。戦力を失いたくない」
俺はそう言うと撃墜されたレーゲンとリヴァイブに近寄る。
二機は既に戦闘不能だ。スラスタがどちらも死んでいる。援護射撃が出来る程度か。
「二機とも低空で牽制中の二機を援護せよ。白式、紅椿、エネルギー残はどうなっている」
「まだ大丈夫だ」
「私も大丈夫だ」
まだやれるか。
「全機に告げる。敵は単独で此方に攻撃を仕掛けてきている。数の上ではこちらが有利だ。いかにBT兵器を自在に使いこなそうとも、おそるるに足らん。被弾とエネルギー残に注意し、敵ISを鹵獲せよ」
「お前はじゃまだ」
俺に幾らかの銃弾が降り注ぐ。俺は回避するとすぐさま戦闘機動に戻る。
「気が早いな。お仲間は何処にいる?」
返答はなし。だったら、鹵獲させて貰う。
セカンドシフト。機体をISF14Iへ。敵機をサイトに入れたまま縦横無尽に空を駆け巡り、敵ISへミサイルをばら撒いた。
しかし敵機もさるもの。俺の攻撃を通常のビットとシールドビットで防ぎきった。
そいつはそこに佇んでいたままだ。
舐めてやがる。糞ったれ。
そいつは反撃に移行する。尤も、そいつは相変わらず、そこにとどまったまま俺に狙いを定めてきた。成程、あくまでも挑発的な態度を崩さないと言うわけか。
だったら教えてやるよ。IS形態に戻り、相手が中心に据えたまま、ミサイルを連続して発射。
相手はそこに固定されたまま防御姿勢を取る。すべての武装は防御に偏ったままだ。
「黒兎!」
無線で呼びかけて攻撃を促す。ダメージを受けていても、行動が早い所は腐っても軍の佐官と言った所か。
肩部から延びるレールガンが、ゼフィルスの背面へと向けられる。
俺の攻撃に対しての防御に専念していたそいつは回避運動を始めた。そう、それしかない。
次の行動は自分の邪魔をした黒兎への攻撃。だが、そんな事をしているだけの集中力があるのか?
意識がそちらへ向かった瞬間に、俺は右腕部にガトリング、そして散弾ミサイルを武装から選択して、発射。
ミサイルは遥か彼方の上空へと向かって飛んで行く。ガトリングで攻撃を開始する。
無論だが、ISの貧弱な装甲では掠りでもしたら致命傷につながりかねないもの。30ミリの弾丸は生半可な威力では無い。
回避運動を取りながら、俺にビットによるビーム攻撃を仕掛けてくる。勿論、偏向射撃なんて訳の分からない攻撃付きだ。
本当に、愉快な大道芸だよ。
「本当にお前達は正直な連中だよ」
誰一人として腹に一物を抱えた人間がいやしない。
向かい来るレーザーはキャットスターの機動力で全弾回避する。上下左右縦横無尽に動き回り、相手の動きを制限するために弾幕を常に張り続ける。
さて、そろそろ……。
俺はミサイルを再度発射。
これで動きは完全に止まった事になる。
そう、目的の場所で。
「日射病に、ご注意を」
自然落下してきた散弾ミサイルはゼフィルスの頭上で起爆。
その凄まじいまでの爆発は、辺りを日光よりも明るく包む。
それが収まると俺のはるか下、地面にそいつはいた。辛うじて耐える事が出来たようだ。
だが、ダメージは甚大。
恐らくはもうシールドビットは使えまい。
相も変わらず、トロクサイ連中だ。
……ん? 熱源反応、二つ。一つはこの近所、もう一つは……。
「お前達、後は任せた」
そう言い置くと戦線を離脱、しっぽを出したか灰色が。
その場所に到着すると、生徒会長が灰色と思わしき何者かと戦闘を行っていた。
金色の機体、そう、金色、ゴルト。因縁だなこの色は。
灰色はふと此方に気がついてナイフを投擲してくる。無駄だ、そんな物で俺は止められない。バレルロールで回避、右腕部ガトリングを向け発射する。
途端にまた金色の何かに阻まれた。なんだって言うんだ一体。
「残念、貴方の攻撃でも私を射止める事は出来ないわ」
「だったら縛り付けるまでだ」
攻撃の手を緩めないまま武装展開を続ける。全武装展開完了。続いて全砲門解放。
ほら、学園最強。逃げなければ巻き添えだ。
「ちょッ!」
焦った声が聞こえる。もう遅い。
全ての砲門からありったけの弾薬が放たれる。あたりは火の海へと変わった。と言っても、灰色の周辺限定だが。
「危ないじゃない! これが織斑君たちだったら死んでたわよ!」
「あんな練度の低い連中はくたばった方が、財政的に助かるはずだ。金がかかるだけで役に立たないものなど排してしまえばいい」
「だからって貴方……!」
「軍人でありながら素人に後れを取り、機体の性能に振り回され、揚句目的を見失い、果ては成長する気力すら感じさせない愚か者どもが、生きていて何か良い事でもあるのか?」
此方に通信がきた。
「デートのお誘いならまた今度、金色の王様が目を覚ました時に……か。巫山戯てやがる」
逃げられたか。索敵にも映らない。ISのステルス機能をフルに使用されたら此方も打つ手はない。
糞ったれ巫山戯やがって糞豚。
「だったら、向こうの方で話を聞かせて貰おうか」
「まさか、放ってこっちまで来ていたの」
当たり前だ。実行している奴よりも、指示をしている人間の方が情報を持っているのは確かだからな。
機体を可変させ、元の場所に戻る。
「気にするな」
「気にするわよ! 貴方がいるからこっちに専念出来ていたのに!」
「そうか。ある程度のダメージは与えておいた。あいつらでも対応は可能だろう。それに……」
「それに?」
「そろそろ青い鳥が到着する時間だ」
――――――――――
くそっくそっくそッ!
悠々と目の前を飛びまわり続けるサイレントゼフィルスに、織斑一夏は悪態を吐き捨てる。
あれだけのダメージを負って尚、自分達と対等に戦闘を継続させられている、いや、それどころか追い詰められているなんて!
零落白夜を使うわけにもいかない、かといって、味方は次々とダメージが蓄積していっている。
自分は、どうしようもない程に無力だ。
そう実感させられてしまう。それでも、無力でも、一矢報いねばなるまいと、愚直に彼は剣を向ける。
面白可笑しい光景だ。滑稽だと、誰が言わずとも分かる。彼はただ金属の塊を体に纏い、ただ金属で出来た棒を振り回しているだけなのだから。
そうして終いには、この場から離れて行った人間の事を恨む。
でなければ、織斑一夏自身がその責務で潰されそうになるからだ。同じ男性操縦者、にも関わらず実力が天と地ほどの差があるのだから。
尤も、恨むのは去って行った者からすればお門違いなのだろう。
敵に致命的なダメージを与えたのは彼自身なのだから。
「しまッ……!」
戦闘中に別の人間の事を考えるのは、愚かだ。とでも言わんばかりに、ゼフィルスの攻撃が完全に迫る。
最早回避は不可能。直撃あるのみ。
かと思いきや。
その攻撃は一切の別の場所からの攻撃によって防がれた。ミサイルによる防御。
近接で、爆発を受けた織斑一夏はダメージを受けて後退する。
どうやら、今のミサイルはダメージを目的としたものではなかったようだ。
「イヤッハァァァァッ! あァぶない所だったねェ、織斑一夏ぁ!」
オープンチャンネルでそう話しかけて来た。
視界の端に映っていたのは真っ青な戦闘機。F15E……尤も、その垂直尾翼には765プロのアイドル、如月千早がプリントされていた。いや、機体そのものに、如月千早がでかでかと塗装されていたのだ。
「巫山戯た奴だ……!」
なんて、ゼフィルスの声が聞こえてくる。意識は今、向こうの方へ向かっているようだ。
「巫山戯ているのはどっちだろうねぇ、お嬢ちゃん。どうだい? 俺と一曲空のダンスって言うのは!」
「旧時代のガラクタ(骨董品)が良い気になるな!」
言うなり、その手に持つ銃を発射する。
それは一直線に操縦席へと向かう。グニャリと、偏向射撃によってその向きを変えながら。
しかし、だ。
「狙いが正直すぎるぜ、お嬢ちゃん!」
そんな事を言うと、機体をロールさせてその弾丸を回避した。
容易なことでは無い。ISと同等程度の機動能力がなければ成功しない筈だ。ISに対抗できるのはISのみ……その概念を打ち滅ぼすまではいかずとも、亀裂を入れる程度の機動だった。
そのまま反転して、攻撃を打ち込むF15。ミサイルを連続で発射する。
今回はISにも用いられている、小型のミサイルをありったけ積んできた為、残弾に関しては特に心配をする必要性もない。
どちらにしても、致命的なダメージを与えられると言うアドバンテージは大きい。
舌打ちを一つ、ゼフィルスは防御行動を起こし、回避運動に映る。
ミサイルに対して、ビットなどによる偏向射撃でミサイルをある程度打ちおとし、出来なかった分は回避する。
回避しながら迎撃、と言う発想はなかったらしい。
「……なんだよ……何だって言うんだよ……」
目の前で繰り広げられる攻防を目の当たりにして、織斑一夏は愕然とそう呟いた。
たった半年。しかし、半年だ。それだけの間、彼はISに関わってきた。訓練も欠かさずに行ってきた。人並み、とはいかずとも相応の努力をしてきたつもりだった。時には、死にかけた事だってあったんだ。
だが、目の前にあったその光景は、自分自身の行いをまるで意味がなかったと嘲笑われているような。そんな、光景だった。
あれに乗っているのは、きっとあの時に出会ったチョッパーと言う男なのだろう。機体を見ただけで分かる。
あの時、彼はISと言うアドバンテージ、と言った。
それの意味がようやく、分かったのだ。
きっと意味なんてなかったんだ。自分の行ってきた行為なんて。自分が強くなっているなんて、ただの錯覚にしか過ぎなかったんだ。
否が応でもそれを自覚させられた。
「……あの機体、まさか……」
同様にその光景を眺めていたラウラが呟いた。尤も、それに対して追及するだけの気力もなかったが。
他のメンバーもただ愕然として、その光景を眺めているだけだった。
それだけしか出来なかったんだ。助力など出来ない。すれば、きっと邪魔になる。恐らくは誰一人として、あの戦闘機に敵う程の実力を持っていなかったのだ。
国家代表候補生が聞いて呆れる。
六人のうちの誰かが、自嘲気味に笑った。
「てーか、早く戻ってきてよー! リーダー!」
泣き言をほざきながら、青い鳥は縦横無尽に飛びまわる。
幸せを在りかを示すように嘲笑いながら。
―――――――――――――
失態だった。まさか相手方が攻め手に集中してこないとは思いもしなかった。
流石に、逃げに集中されては、こちらとしては打つ手はない。
隠密性などにおいては事ISを除いて右に出る物はないと思っている。
だったら、頭の悪い方を鹵獲し情報を吐き出させるしかないだろう。
「よう、俺が来るまでに終わらせても良かったんだが?」
救援に来ている青い鳥をからかう。
「テメッ、ようやく来やがったな! このあんぽんたん! お前がもちょっと頑張ってくれたら俺がこんな事しなくて済んだのによ!」
「悪かったよ。上に特別手当の申請はしておく」
「そんな事言って支払われた事なんてなかったじゃないのもー!」
「今回の燃料と弾薬の金くらいは出るだろう」
「そんなことより、もっとこー、ぱーっと、きらびやかなねーちゃん達がいる所でくんずほぐれつしたいなぁって」
「てめーがそれにかけてる金を無くしたら行けるだろうが」
「ばっかやろーてめー、他人の金で行くのが良いんだろうが」
こいつの脳みそは本当に出来上がっているな。
「お前の次の命令はFOX4だな」
「いや! 何故そうなる!」
「だったら下がってろ。後は引き継ぐ」
「おーそうかい。なら頼んだよ。リーダー。アンタレス3は周辺警戒に移行する」
そう言うと、チョッパーは戦闘空域から離脱していこうとする。
それを阻もうと、サイレント・ゼフィルスは攻撃をアンタレス3〈俺の部下〉に向けようとしたが……。
誰が、そんな事をさせると言ったか?
兵装の欄に、アンロックされたもうひとつの機体。それを呼び出した。
瞬間、俺の機体は急速に加速し、ゼフィルスのビットをすべて破壊した。
「よう、これからはサシで勝負と行こうか。糞ったれた灰色の牝豚が」
翼の端だけ青く染まった主翼。垂直尾翼も青く塗装され、そこには鎖を引きちぎる番犬の姿。二つの強靭なエンジン。片羽でさえも飛行する事が可能な機体。
そして、すべての始まりの終わりで、戦った伝説の機体。
円卓の鬼神、その魂を受け継ぐものとして。
ISF15E、イーグルストラトス。それが、この機体の名称だ。
両手に呼び出した剣を逆手に構える。この機体は、異常なまでに高い格闘性能が売りだ。
一対一での戦闘に向いている。爆発的な加速力、少々の被弾では怯まない程度に強化された、四肢の装甲。
まさに、決闘用の機体。
バーニアを吹かして急接近。予想していた通り、イグニッションブースト程度の速度は出るようだ。俺が接近して来た事に反応して、そいつは銃剣を構える。
俺の剣の方がより速く、そいつの銃を切り刻む。
驚愕の声を上げる間もなく、銃を手放し俺に格闘戦術を挑んでくる。尤も、俺はそれより先に、剣を量子格納して腕を掴み、ひねりあげる。
「華奢な腕だ。小娘、こんな玩具程度で何をしようと言うのだ」
「……ッ! 舐めるなッ!」
再びライフルを呼び出して、偏向射撃を行い、俺を引き離す。
よもや予備があったなんてな少々、予想していなかったぞ。
距離を取ると、再びこちらに攻撃を行ってくる。狙いのわかりきっている偏向射撃など、意味がないと言う事が分からないのか。
「きゃぁぁぁ!」
俺が回避した先には、イギリス女が。糞ッ、こいつが目的だったか。
兵装を双銃に変更。距離をとったまま、拳銃による威嚇射撃を連続して行い続ける。
「アンタレス3、目標を逃がすな。糞ったれ共を援護しながらでは、取り逃がす」
「ウィルコ、と言いたいが……こちらも襲撃を受けている! 所属不明の無人機だ!」
「急速離脱。此方も敵性ISの鹵獲では無く、撃墜を主題として行動を行う」
この状況でさえも連中の掌の上だと言うのか? 信じたくないものだ。こんな脳味噌のそこまで腐りきったような連中にそんな事を考えられるなんて。
見せてやろうか。本当の偏向射撃を。僅かな間だけの、本当の力を。
PICのシステムを書き換え、逆転させる。その間に銃弾をありったけ自分の周囲にばらまいておく。銃弾は運動エネルギーを保持されたまま、動きを止める。
物理法則も減ったくれもないこの機能だ。ありったけの銃弾をお前にくれてやるよ。
フレキシブル、フルファイア。
放射線状に広がっていた銃弾が一斉に動き出す。そのままなら銃弾の大半は周囲の建物を破壊するだけで終わるだろう。尤も、この銃弾はそんな事はさせないが。
銃弾の動きがねじ曲がり、ゼフィルスへと向かう。
驚愕の表情が目に見えるようだぞ、糞ったれ。
着弾と同時に、煙幕。ECMも付随してやがる。俺の機体の唯一の弱点とも言って良い。
デジタルに対しての攻略法を根本に詰め込んだこの機体は、アナログにはひどく弱い。
いや、弱いと形容するのは間違っている。デジタルに対して優位に立つばかり、同じアナログに対しての優位性を考慮しなかっただけの話。
敵機は撤退した。これ以上深追いしても無意味だろう。
「敵機の撤退を確認、アンタレス3、そちらの情報を」
「こいつら数が多い! 済まない、手伝ってくれ!」
「了解。その辺に散らばっている屑どもは、ティアーズを回収。医療班へと引き渡せ。周辺警戒を怠るな」
そう言うと、俺はアンタレス3の援護に向かう。一個中隊の相手を相手にしていたようだが、半数まで数を減らしていた。どうも時間稼ぎをメインに考えていたらしい。どう考えても、このくらいの相手に苦戦するとは思えない。
「何をもたついていた」
「こいつらあり得ないあり得ない機動をしてくんだよ。割と本気で空中でダンスしてやがるの!」
空飛ぶイカが空中でダンスする訳ないだろうに。
そんな会話をしながら敵機を全滅させる。訳もない。これだけのスペック差と実力の差があるのだ。
出来ない方が可笑しい。
「敵機を取り逃がすなんて、お前にしては珍しいな」
「捕縛しようと欲を張ったのが、拙かったらしい」
「おいおい、ISはパイロットを護る便利機能が付いてんだろう?」
「何ヵ月昏睡状態にさせて置くつもりだ」
「ミンチにでもするのかよ、お前は」
「絶対防御があるんだ。大丈夫だろう」
やれやれ、と吐かれた。
「IS学園の滑走路を使え。とりあえず、お前の事を全員に紹介しなければなるまい」
「ああ、その前に忘れもんしてきたから取りに帰ってもいいか?」
「女か?」
「まーな。この機体と俺の事を見られた以上、機密保持はしっかりと」
「俺の唇で、か」
「当たり」
けらけら笑いながらそいつは俺に言う。よくもまぁ、こんな巫山戯た台詞を吐けるもんだ。
近くの飛行場まで到着する。こいつがまた女をつれこんできたんだ。そんな物好きの面を見ておくのも悪くはないだろう。
と、これは意外だったな。
「女を連れ込んだと聞いていたが、まさかお前だったとはな」
「…………」
「そんな見てわかるような表情をするな。お前がまさかあの男と接点があったとは思えなかったんだからな」
驚愕と嫌悪が入り混じった表情。俺が言った途端に、忌々しそうに顔をそむけた。どうせ、自分の恋路を邪魔する程度の相手にしか感じていないのだろう。
「よーう、どうだい。俺のちーちゃんスペシャル号は。ちょっとは見直したかい……っと、どうしたいリーダー。知り合いか?」
「まぁ、ちょっとした知り合いだ。俺の『同級生』の『友人』の『妹』だ」
「まじかよ……まさかリーダーに先を越される日が来るなんて」
「冗談はよせ、アンタレス3。この夢見がちな乙女に、現実を教えるのが俺の仕事だ。脳味噌まで蕩け切った牝豚風情に欲情する程、俺は色狂いでは無い」
「へーへー相変わらずお堅いねぇ、アンタレスリーダーは」
やれやれと、大げさにそいつは首を振った。溜息を吐きたいの此方だ。こんな連中と寝食を共にしなくてはならない苦痛をお前も味わうと良い。
「アンタレス、リーダー? 貴方、一体……」
そう言えば、自己紹介をしたことがなかったな。
「そう言えば、お前達には未だ本当の自己紹介をしたことがなかったな。俺は――――」
はい、という訳でサシならめっぽう強い機体にしてみました。
ラストの決闘をイメージしての設定です。
もちろん例によって全機体中、装甲は紙です。そりゃもう、ダイガードも真っ青です。
因みにISFシリーズの機体を数字で表すなら、打鉄をALL5とした際に、STR8、DEX8、ARM1、みたいな感じになります。
さて、ではわたくし事ですがメタリックガーディアンRPGのルールが難しいっす。
D6だけでいいのはいいんだけど、数用意しなきゃならんし。
そしてやめてくれ。エルジアという単語にマクロス系の機体は……。これはもう俺にACEのシナリオを作ってくれと言っているようなもんだろ……。
……インベルとヴェルトールってどのクラスになるんだろうなぁ。
ヴェルトールは多分アインヘリアルだろうけどさ……。