話は一切進展してません。
ぶっちゃけ、すっ飛ばしてやろうかとも考えたのですが。
最近、すっ飛ばしにくくなってしまってます。
週が明けたその日も、授業は滞りなく行われた。
本当におかしな話だ。
尤も、俺に対しての周囲の生徒の眼は変わったが。
「あの人、やっぱり傭兵だったみたい」
「しかも、あのマーティネズセキュリティーだって」
「あのPMC? 凄い所ね」
「でも、あそこってまともな所じゃないわよね」
「確かに。やってることはよくわからないし」
「ほら、あの旧世代のF15戦闘機の」
「……確かに。よくわからないね」
などと言う、また奇特なものを見るようなものに変わってしまった。
半分以上は俺の隊にいるあのお馬鹿のせいなので、否定はできないのだが。姦しさは相変わらず、と言った所だ。緊張感のない。
現状、この学園がいつ何時襲撃を受けるかも分からない状態なのだが。
……まぁいい。今更こいつらには関係のない話だ。
もうそろそろうんざりしていた所だ。
織斑一夏は予想通り、各国代表候補が張り付いている。あれなら、一機程度の相手にはやられまい。
尤も、この学園に「俺」がいるという事が分かった時点で、そう易々と手を出してくるとは思えないが。下手をすれば全面戦争だ。
自室に戻り、寝欠伸を立てながら機体の情報を確かめる。
キャットスター、イーグルストラトス、そして最後の一機。
俺の予想が正しければ、こいつは……。
「リボン付きの死神、か」
確かに、可能性としてはあるだろう。既に残った一機のデータはある。しかし、解放はされていないという状態。
一体どういう事なのだろうか、これは。
機体の情報はある。が、それが使用出来ないという事になっている。アンロックは一体何が条件になるのだ?
ファーストシフトは既に終了している。あの時点で、本当の意味での専用機になったのだ。
だったら、残ったこれは一体何になるのだ。
ある種の特化型? それは求められた結果。
求められるから、か。そう言う事なのか。
俺の考えを阻害するかのように、扉が二度ほど叩かれた。
「誰だ?」
ベッドで寝転がっていた織斑一夏はそんな風につぶやいた。
「私よ。みんなの生徒会長、楯無おねーさんよ」
「お帰りください」
扉を開ける事もなく、織斑一夏はそう答えた。賢明な判断だ。
「ちょっ、ちょっと! せめて中に入れるくらいはしてくれてもいいんじゃないの?」
「男漁りか? 更識の家も墜ちたもんだな」
「そんなんじゃないわよ! ちょっと二人にお願いがあって来たの」
……どうする? と言った風に、一夏が視線をこちらに向けてきた。
まぁ、派手な手段でないようだし、少しは話を聞いてやってもいいかもしれん。
「……好きにすればいい」
「暴れないでくれよ?」
「相手に言ってくれ」
そう言うと十二分に警戒しながら織斑一夏は扉をあけた。
そこにいたのは間違いなく制服に身を包んだまま、奇妙な扇子を手に持ったままのその姿は相変わらず違和感しかない。
「こんばんわ。お休みの所、ごめんなさいね」
そんな事をいう楯無。随分と殊勝なことだ。一体何を企んでいる。
「所で一体何の用でしょうか」
「ちょっと個人的なお願いでね」
個人的なお願いと来たか。だったら、今までの事は個人的なお願いではなかったと。
とりあえず、織斑一夏は室内へと案内する。
「その、言いにくいんだけどさ」
ちらちらと俺の方を見て、そんな事を言う。
「……妹か」
「そう。私の妹の事をお願いしたいの」
サラシキカタナ、その妹であるサラシキカンザシ。所属しているのは4組だったか。
日本の代表候補でありながら、専用機を所持していない特殊な事例。
機体の開発元は倉持技研、こいつの持っている未完成品と同じ所。結局は下らない連中の下らない理由で自分の玩具を与えられなかった、と思い込んでいる馬鹿の端くれと言う事か。
馬鹿馬鹿しい。子供の我儘に付き合ってられるか。
「貴様の妹の機体を作り上げろと?」
「正しくはその手伝いをしてほしいの」
「だとさ、織斑一夏」
「どうしてそこで俺に振るんだ」
「更識の妹が、俺達の所属になるというのなら考えてやらん事もないが」
「ケチくさいなー」
「規律は遵守するためにあるのだ」
「どっかの偉人は、ルールはぶっ壊す為にある物だ、って言っていたんだが」
それは緊急事態の時だけだ。
そもそも、そんな事態にならない為にマニュアルが存在するのだ。そんな事になった時点で規則など、必要性がないだろうに。
「更識カンザシ、か。しかし……」
此処でこいつらの喉元に食いついておくのも悪くはないか?
専用機の情報は手元にはないが、おおよその見当はつく。
ここまで開発が難航しているとなれば、答えは一つしかないだろう。
「貴様が手助けをすればいいだろう。俺達に、特にこっちの頭と尻に殻がついたままの奴に頼む必要性はない筈だ」
「……そうね。でも、私が手助けをしたって意味がないから」
「劣等感か? それを諭すのも姉の役目だろう。一族の中ですませろ」
「それでも、私は貴方にお願いしたいの」
「生憎だが俺は資本主義の犬なんだ。共産主義の豚の言いなりにはならない」
「私が、ロシア代表なのが、悪いのかしら」
「貴様が同業者ならば多少の考慮はしただろうが、貴様は所詮豚の尻尾だ。そんな程度のために俺が一肌脱ぐのも考えられまい」
それに、相手方は俺の事を拒むだろうしな。自らの力に拘る人間っていうのは、常に周囲に敵を作ってしまう。
……似た者同士か。同族嫌悪かもしれないな。
仕方のないことだ。
偶然か、そうでないかの違いだ。足るを知った人間と、知ってなおあがき続ける人間。
――――そうだな。
「とにかく戻れ、鬱陶しい。そんな程度の話ならそこにいる馬鹿が引きお受けてくれるだろう」
鬱陶しい馬鹿にはご退散願い、俺はもう一度自分の機体の情報を呼び出した。
あるのは全体指揮統率型、近接格闘型、そして高火力支援型、この三機だ。正確には一つはパッケージなので、それとは異なるか。
……ステゴロが使えるように準備をしておこうか。近接格闘のみ、しかも閉所での戦闘がある可能性や、周囲に一般人がいるということを考慮するも大事だろう。
先日までの戦闘を鑑みると、トラブルというものは常に近くにあり、それは場所を選ばないらしいからな。
一般人がいる住宅街での戦闘がこれ以上続くようなら、周囲に被害を及ぼし難い装備で対応するべきだ。
ISF15E2のマニピュレーター、および四肢の装甲強化を視野に入れた改良案を作成し、本社へ転送する。
厄介ごとは常に向こう側からやってくるものだ。
「ヤッホー傭兵君」
「久しぶりですね、黛先輩」
「そうだね、私が機体の整備を担当しなくなったからかな」
「ええ、こいつは重要軍事機密ですので」
「だったらしょうがないけどね。ところでさ、約束の取材の件なんだけど」
「今、その約束ですか」
「あやや、ちょっと間が悪かったかも知れないけどね」
「そうですね本社への取材依頼がなければ行動はしません」
「と、いうと思って一応遠回しに許可はとっておいたんだ」
「抜け目がないですね」
「ふっふっふ、これでも伝手はあるんですよ」
「姉、ですか」
「そうそう、姉さんも君のことに興味津々でさ」
面倒なことになった。
あれこれと嗅ぎまわられるのは此方としては気分の良いものではない。
「ああ、大丈夫大丈夫。さすがにあのマーティネズセキュリティーを敵に回すつもりはないからね」
「……成程、ジャーナリストというのも、中々恐ろしいものだ」
「謳われない戦争、空白の三か月……悪いけど、調べさせてもらったの」
「…………」
「随分と古い記録だったわ。でも、一本ずつ線を辿って行く事ができた」
「簡単なヒントはおいていた」
「少なくとも、貴方に関しては見る目が変わったわ。少なくとも、貴方がISに対して敵意をむき出しにしている理由も」
「それがわかった所でどうしようもない。俺の機体は、ISという発想に対して真っ向から喧嘩を売っている」
「そうね。戦う為だけに作られた機体。だからこそ、理解できない」
「何がだ」
「この世界の境界を取り除くのが、貴方の目的じゃないの?」
「そんなことに興味はない。俺は……」
この世界の境界、それは目に見えない線。そこにあるようで、無いもの。
「これ以上は本格的な取材の下でお話ししましょう。日時と場所を改めて連絡してください」
俺がそういうと、黛薫子はあっけらかんと言ってのける。
「ああ、それとごめん。取材するのは私じゃないから」
耳を疑った。
「どういう事です?」
「取材するのは私のお姉ちゃん。一応雑誌の記者をやっててね」
「貴女の姉、となれば低俗な雑誌記者だと存じておりますが」
「週刊誌じゃなくてファッション誌なんだけどなぁ」
どちらでも俺にとっては同じことだ。
「猶更理解に苦しみますが」
「まーまー、ヴィジュアルだけなら割と気にかけている人が多いからさ。それに男のIS操縦者っていうのも、ポイント高いしね」
一体何を聞くつもりなのだろうか。
少なくとも俺はここにいるような花畑脳とは異なる思考の持ち主なのだが。
取材の依頼は本国を通じて正式にくるらしい。
思っていたよりも、まともな行動だ。直接俺に話を持ち掛けてくるのではなく、会社に話を通そうとしている時点で、なんというかこう、感動を覚える。
ここの連中には本当に常識というものが欠如しているからな。
さて、しばらくはやることがない。
……どうせなら、顔くらいは拝んでやるか。
姉に追いつけず、機体はゴミみたいな人間の為に後回しにされた、哀れな負け犬の面を。
一年四組の教室前までやってくる。扉を開くと、全員が一斉にこちらを見て、押し黙る。
キーボードを叩く音以外の音は俺の耳に入ってこなくなった。
流石にあの姉の妹、といった所か。
傍らにはあの弟もいる。
「流石に、楯無の女は肝が据わっているな」
「……私に何か用?」
「ご挨拶だな。負け犬の面を拝みに来るのに、理由がいるとでも?」
そういうと、髪飾りは俺に視線を向けてきた。
「……嫌味を言う為だけに、こんな所に?」
やはり甘ちゃんだな。ディスプレイに目をやる。火器管制システムの構築、相性のシミュレート。機体名は打鉄弐式。ほう、成程。
「随分なコンセプトだな。釣り合わないのも当たり前だ」
「……っ!」
慌ててディスプレイを落とす髪飾り。もう遅い。
「お前も所詮凡庸なこの学園の生徒だと言う事だ。今一つ危機管理に対しての認識が甘いんだ」
努力をしているようだが、所詮脳内は凡庸なお花畑の蛇共と全く同じだ。
「……言いたい事はそれだけ?」
「存在しない幻想といつまで戦っている心算だ」
「貴方に何がわかるの」
「理解などするつもりもない。そんなに姉が嫌いか」
「貴方には関係の無い事……」
「貴様が開発中のそのシステム、一体何年前のシステムだ」
「な、このシステムはまだ誰も開発出来ていな――」
手元にパーソナルデータを呼び出して表示する。
「更識カンザシ、少し引きこもってないで外部の知識を得ることを覚えたらどうだ? 同一ジャンルをしかも何度も見ているようでは、引きこもっているのと同じだ」
「な、なにを……」
「そのシステムが実装されていないのは、単純にISに限定されていただけに過ぎない」
「それがどうかしたの」
「マルチロックオンシステムなんてものは何年も前から存在している。しかもそれはすでに完成され、ISにさえも実装されている」
「うそだ」
「事実だ」
「う、そだ」
「覆しようのない事実だ。貴様は今まで一体何を見ていたんだ」
「嘘だっ!」
唐突に感情的になり、立ち上がる更識の妹。
当たり前だ。誰だってこうなる。自分がやって来た事が無意味だと知らされた時点で。
俺も、そうだった。
「証明して見せよう。貴様のそのシステムが、如何に遅れているものか、と言う事を」
場所をアリーナへと移す。
俺はF4を展開して、更識の妹の前に立っている。隣にはなぜか織斑一夏がいる。
「お前は呼んでない」
「いやだって、更識さんが心配で……」
随分な物言いだ。訳も分かっていない素人の分際で。
「巻き込まれない程度にしておけ」
一言いい置くと、パッケージを呼び出す。A―10HFパッケージだ。
砲撃支援特化型のこのパッケージの兵装の一つ、ウイングスラスターに装備された、ミサイルの砲門を開く。
空中に投擲された十数個のターゲット、そのすべてをロックする。同時に、ミサイルを発射。
不規則な軌道を描くターゲットを全て、破壊する。
「嘘だ……」
「どうだ。見ただろう、これが事実だ。お前の開発していたシステムというのは、もうすでに二番煎じ以下の代物なんだよ」
うなだれる楯無の妹。それを見下す俺。
正しいだとか、間違いだとかではない。自らの力で組み立てようとしていた機体は、すでに時代遅れの代物だったのだから。
「どうして、お前はISなんてものに拘っている」
「私は……」
「いや、そうだな。人間とは諦めが悪い生き物だったな。姉の後を追い、隣に並ぶ為にそれに拘ったのだろう。しかし、結果は見ての通りだ」
これが現実だ。既に完成されたシステム。既製品でさえも組み上げられない自分自身への嫌悪。
絶望、悲観、どこかでそれを認めていた自分。
結果だけが残った。方法と過程、今まで自分自身が積み上げてきたものが、音を立てて崩れ去る瞬間。
それは、何物にも代えがたい、敗北という二文字を脳裏に焼き付ける。
「どうして、私は……」
うなだれ、放心したままの彼女を放って俺はその場を後にする。
些細な、そして最も強烈な復讐。
「第一に機体と兵装の相性が悪いなんてありえない話だ」
「でも、俺の白式は射撃武器を嫌がってたぞ」
「貴様の機体は例外だ。第一にワンオフアビリティをファーストシフトで使用する機体などありえない上、パススロットがなくなってしまっているとは理解に苦しむ」
だから、貴様の機体は欠陥兵器の中の、欠陥機なんだよ。兵器としての体を一切なしていないではないか。
「ああ、そういえば貴様の機体は倉持技研とかいう、出来損ないのゴミ虫共が、白式とかいう産業廃棄物を作る為に、放り捨てたものだったな」
返答はない。ただうなだれるだけ。
「それを覆したいか?」
そう問いかけると顔をこちらに向ける。
「打鉄弐式。先程のデータを見る限りでは高軌道型中距離戦機のらしいな」
「……それも、もう意味がないわ」
「ミサイルをお前はどう飛ばしたいんだ」
「え?」
「ミサイルをどう飛ばしたいんだと聞いている」
「え、えっと……こう、多数の目標を同時に補足して……」
「XMAAを使用しなければならないが、貴様はいったい何を使用している?」
「これ……」
データを確認する。驚いたなこいつは。
「STDMでマルチロックを再現しようとは驚きだ」
ふざけてやがる。マルチロックを機体のOSだけで管理しようだなんて。
レーダー系統も十二分に能力を発揮できる仕様じゃない。一体これで、我儘放題の機体をどうやって制御するつもりだったんだ。
「笑えて来る。どうだ、お前、俺たちの仲間にならないか」
「え?」
「俺たちの仲間にならないかと聞いているんだ」
「……どういう事」
敵意むき出し。当然か。
「こいつらは兵器として狂った出来栄えのものだ。世界最強なんて謳っておきながら、その総数は四百にも満たない。おまけに各機体に対して「個性」なんて言う世にも奇妙なものが存在している。これでは、欠陥兵器という呼称こそが相応しい。そうは思わないか?」
「……貴方はいったい何が言いたいの」
「機体に愛着を持つのは結構だ。しかしそれ以上の価値を求めてはならない。当然の事だ。そして、お前はそうである可能性が高い」
「この子たちを否定する気?」
「否定はしないさ。限定的であれば非常に優秀な兵器であることに変わりはない。尤も、お前はその限定的な空間にすらなじませられていないらしいがな」
「……ッ、でも!」
「当たり前だ。使う人間が旧世代の兵器と同様のものを使用しているのだから」
「え……?」
「いかに周辺機器が進化しようと、人間がその進化から取り残されていては、とてもではないが機体はそれを拒否するだろう。当然のことだ。その上、こいつらは自分で使う道具を選り好みするときた。そんなもの、拒否されて当たり前だ」
「私が、ISを理解していない?」
「いいや、正確にはISという兵器を、既存の機体を勘違いしている、といった所だ。お前は所詮、ISを起動できるだけの存在に過ぎない、と言う事だ」
愉快極まりない。こいつは、よりによってこいつは、この機体を普通の戦闘機と勘違いしてる。
普通の戦闘機と同様の兵装を用いて機体をくみ上げている。
専用機が聞いて呆れる。こんなものは寄せ集めのジャンク品だ。
「とてもではないが、お前が日本代表候補の一人であると言う事が信じられない」
十分なバックアップも受けていないのだろう。そうでなくては、話が成り立たない。
こんな程度の武装を、機体と同調させることが出来ないとは……正直に言ってあきれる。四週も必要ないだろう。
「お前のその発想そのものは俺達側の発想だ。既存の武装をどのようにして兵装に転用するか。どの程度可能であるのか運用の方法、既存兵器との代替。それらを目的として行動すれば、おのずと結果は見えてくる。違うか?」
返答は帰ってこない。
「鉄くず一つと安っぽいプライド一つの為に、その稀有な才能を無駄にするか」
まぁ、俺には関係の無い話だ。この小娘がどのような選択をしようとも。
これ以上、俺が何かを言う必要性もないだろう。
それだけで十分なのだ。この程度の人材ならば、うちにははいて捨てるほどいる。
IS操縦者とは、やはり低俗で愚かな存在だったと言う事か。
もう少しダイジェスト形式でお送りできたらいいと思うのです。
最新刊、どうなってるんだろうなぁ。相変わらず、ぐっだぐだのすっかすか何だろうかなぁ。
あ、インベルさんスパロボ参戦おめでとう。君のおかげでアイマスをずっとロボットものだと勘違いしていたよ。