今回で一巻の三分の二が終わります。いやー主要な物語って少ないですね。
主人公が関係しなければすぐに終わるようなものばかりですね。
ぶっちゃけオルコッ党の方々には悪いと思ってます。
でも、ぶっちゃけちょろリアさんはこんなものですよね。特に初期だと。
誰も聞いてないかもしれませんが作者の好みはブラックラビッ党です。でも機体的にはシャルロッ党です。最近、セカン党も悪くないと思い始めてきました。
でも殆どぼろ屑になるんですけどね。
地面と平行になったセシリア・オルコットを蹴り落とす。性教育の一環で、女性の腹部を殴ってはいけませんなんて教えられたが、知った事じゃあない。
無様に地に伏せたそいつは、ISを強制解除させられていた。
どうやら少しやりすぎたらしい。ま、自意識過剰な馬鹿にはこのくらいが丁度いい。それに良いストレス発散になった。
一瞥するとさっさとピットへと戻る。
良い授業料だ。全く、入学して早々こんな訳のわからない騒動に巻き込まれるなんてな。
「さて、これ返して帰るかー」
ぼんやりと何の気なしに呟く。そんな俺の襟首をつかむ織斑教諭。
一体何の用なのだろうか。もう終わったんだからさっさと俺を返してほしい。さっさとシャワーを浴びたいのだけれど。
「やりすぎだバカ者」
「あの位問題ないでしょう、ブリュンヒルデ」
「織斑先生と呼べ。お前に聞きたいことがある」
「そりゃ守秘義務になるんで、お断りいたします」
「おまえの国籍はこの日本という事になっているが?」
「書類でいいでしょそんなこと。おれはそんなことに興味はないのですよ」
「例え、お前に興味がなかったとしても、私には大いにある。ISの実力は基本的に稼働時間に比例する。男子であるお前のISの稼働時間は明らかにオルコットを下回っているはずだ」
「つまり、俺があいつに勝てる事が不思議だと?」
「そうだ」
「なら、どうして一夏があそこまであの白人女を追い詰められたのか、不思議じゃないか?」
「……あれはあいつの油断だ」
「それだけで片づけられる以上、甘いのかも知れませんね騎士サン」
「先生と……」
表情が凍る。どうしてそれを、とでも言いたげだ。
彼女のその表情を見て、山田教諭が声をかける。
ふと我に返ると彼女は話を続ける。
「話が逸れかけたが、どうしてお前が初めて扱う機体で……」
「だからそれは書類を確認して頂ければよろしいでしょう。ちなみに言うと、俺は貴女を嫌っているのですよ。俺達から『空』を奪った貴女を」
それだけ言うと俺はさっさとピットを後にした。
我ながら少しばかり感情的になっていたと思う。それでも目の当たりにして、抑える事が出来なかった。
俺が目指していた空を奪って、頂点に立った女。
認めていない。ある人間が言った。「奇跡は演出するもの」と。彼女が起こした奇跡もまた、演出されたものだったのだから。
ふざけるな。ふざけるな。たった一人の為に世界が壊されたのならば、それを取り戻す。砕けた空の欠片、そのすべてを取り戻してやる。
だから、こんな所で俺の全てを奪われる訳にはいかないんだ。
ま、少しやりすぎたのは確かだ。
実力の差を見せつけてやる為に必要な行為であったと言えども、あそこまでやる必要性はなかったのかもしれないが。
少々、もてあそび過ぎたのかもしれない。
訳のわからない感情を溜息とともに吐き出しながら、のんびりと医務室まで歩いて行く。
外の夕焼け空がやたらと紅い気がする。気のせいなのは、わかっている。紅い夕日。それは。
「気分はどうだ、イギリス代表候補生」
扉を開けると、そう言ってやる。
彼女はベットの上で起き上がり、外を眺めていた。
「……最悪ですわ」
「だろうな」
短い会話。その間に、何の感情もなかった。
俺も、別に興味はなかった。こいつに対して憎しみを持っているわけじゃない。
ただ単に、こいつはISという玩具を手に入れて増長していただけだったのだから。それは、捉え方によっては彼女は只の被害者にすぎないという事になる。
そう、麻薬の中毒者。ISという麻薬が、彼女の脳を侵した。ただそれだけに過ぎないのだと。
いかんせんそれは無自覚であるが故に麻薬よりも、性質が悪い。何せ力という麻薬は、自分の無意識に、性格を歪めてしまう。
俺はそれを、嫌という程に見てきたのだから。
憎むな。許せと言っていない。ただ、憎むな。それが、俺を育ててくれた男の言葉だった。
「どうだ。男は、弱いか?」
「……弱くなんて、ありませんでしたわ」
「そうだな。ただ、ISが使えるというだけだ。女が男と違うのは」
「何故、貴方は強いのですか?」
「強くなろうとしたから、だ。お前はどう在りたい? イギリス代表候補生」
「私は……」
「俺達は、空を飛ぶ為だ」
俺はそれだけ言うと、そのまま医務室を後にする。
慰めをかけた訳じゃない。ただ、彼女を変えたかった。そう、それだけなのかもしれない。あの人が世界を変えたかっただけのように。
そう。そうだ。いや、もしかしたら。もしかしたら、俺は彼女の意志が見たかったのかもしれない。
何故、俺にこんな感情が生まれたのかは不思議だ。
空は、こんなにも広いのに。
次に、俺が向かった先は借りていたISの返却と感謝の言葉を告げに、上級生のいる整備室だ。
俺の使った機体。ラファールリヴァイヴ。それを俺の使い易いように改造してもらったその礼を言う為だ。
兵装の追加、スラスターの増設、それに関しての安定性。
尤も、一週間の突貫工事だった為、俺の満足のいくスペックにする為には時間が足りなかったが、中々どうして無茶のいく仕上がりにしてくれたのだ。
なかなかに腕が良い人間だ。
「黛先輩」
俺は今回の勝利の立役者に声をかける。
彼女は、唐突な俺の要求に応えてくれた。まさか学生レベルでこれほどの実力を持つ人間がいるとは思わなかった。
まるで軍のようだ。
「あら、貴方。どうだった? 私の整備した機体は」
「上々です。一週間で、よくもこんな機体が」
「貴方の提示したプランが良かったからよ。それにしても驚いたわねぇ。まさかISの模擬戦に使うから、貸出しのラファールを改造してくれ、なんてね」
「手つかずでも良かったですがね。専用機相手に、油断は禁物だ」
「まさかこんなピーキーなスペックを要求してくるなんてねー」
「不要と必要を突き詰めた結果です」
「まるで戦闘機ねー。被弾したが最後撃墜っていう感じ。装甲を排除すると同時に機動力の増強、装備を減らすことによってそれを可能にしているなんて……こんなの出来ないなんて言ったら整備科の名折れね」
中々に鋭い所を突く。
戦闘機のような動き。ロックオンされたが撃墜だ。ISのように生ぬるい戦闘ではないのだ。戦闘機での戦いは。
「有難うございました。これからも少しばかり頼らせて貰う事になります」
「構わないわ。貴方のプランは私の訓練にもなるし」
それだけ言うと、俺は整備室を後にした。
これ以上いると、彼女に妙な事まで追求されてしまいそうだ。
「そうそう、報酬の取材も忘れないでね」
……まぁいいだろう。重要な所ははぐらかすことにしよう。
ま、いいだろ。
そして翌日。
「どうして俺がクラス代表なんだ!」
騒ぎ立てる一夏。
知ったことではない。
決まったものはあきらめろ。お前が馬鹿なのが悪い。
「大体、セシリアに勝っただろ!」
知らん。俺は元々巻き込まれただけだ。なのにどうして俺がそんな面倒くさい立ち回りを受けなければならないんだ。
それに今、俺に専用機がないとなれば、適任者はおのずと決まってくるわけだ。
馬鹿のわがままに付き合えるほど、俺も暇じゃない。
やれやれ、と。
溜息を吐くと、そのままぼんやりと外を眺める。
話題は次のクラス代表戦に移っていた。どうやら専用機はこのクラスと、四組にしかないらしい。
確かにハイスペック機を有しているのが二クラスだけならば、勝利は堅いだろう。
尤も、スペック的に考えて、だが。
「その情報、古いよ!」
クラスの扉を開けて入ってきたのは、胸の薄い背の低い女子生徒。顔立ちはアジア風だ。髪をツインテールにしている。
こいつは……。
「鈴! 鈴じゃないか!」
どうやらあの女は一夏の知り合いらしい。全く、この男はどれだけトラブルを持ち込んでくるんだ。
他のクラスに入り込んで、騒ぎ立てているこの小娘。中国の代表候補生だ。
まさか、こんな所で拝めるとはな。
「鳳鈴音(おおとりすずね)。中国の代表候補生か。以前日本に住んでいたのにな」
「私の名前はファンリンインよ!」
「どこぞのテロリストのような名前だな」
何よこの男、と。ちんちくりんが言う。馬鹿か。
それ以前に鬼がお前の後ろにいるぞ。
警告する前に、頭を殴られる。さすがに彼女には逆らえないか。
涙目になりながら、彼女は引き下がる。
ま、いいだろ。
おかしい。まるで何かに引きつけられるかのように専用機持ちが集まってくる。
なるほど、各国も織斑一夏のデータを取ることが目的だという事なのだろう。
尤もあのちんちくりんの目的はそうではないようだが。間抜けたことだ。
あいつの機体を確認するためにも、問題なく行えるようにしていなければ。
放課後、一夏のクラス代表就任を祝ってのパーティーが開かれていたが、そういった類の集まり事は苦手な俺は参加を見合わせていた。
新聞部である、黛先輩の取材を受けつつ、それから特等席に向かう。
静かな夜だ。相変わらず妙なことは続くだろう。けれど、それでも俺達は空を飛ぶ。
折角手に入れた力。あの人は二度と空を飛ぶ事はなかった。広すぎて、寂しくなる。彼らはそう言っていた。
見せてもらった映像で、一人の男はそう言っていた。彼と戦った人間。
この暗い空の上で、彼らは戦ったんだ。番犬や、死神、そして悪魔という英雄たちまで。
数多の命を吸い込み、それでもなおその魅力を失わずただ透き通る空。
今は、満足したかのように静かだ。けど、だけれども、この空を覆う灰色は未だに胎動している。
きっと、また怨念が現れるだろう。
怨念の姿。あの時に消えたと思っていた筈だった。しかし、まだいるらしいな。
悪魔に、地獄へ連れて行かれたはずなのにも関わらず。
灰色の空を切り裂き、二度と英雄を必要としない空に戻ったはずなのに。
この空が、また灰色に染まる。
「あ、まだここにいたか」
おいおい、どうして俺がここにいると分かった織斑一夏。
普通、この時間帯にここにいるのは、俺くらいなものだぞ。
「黛先輩に聞いたんだよ」
「そうか。それで? 一体何の用だ?」
「お前、どうして顔出さなかったんだよ」
「気色悪いな。お前」
「黛先輩と言いどうして俺をそっちにしたがるんだよ!」
なるほど、あの人らしい。
こちらとしても迷惑な話だ。今度きちんと話を通しておく事にしよう。出なくてはいらない被害を被ることになる。
「で? わざわざここまで来て俺を連れ出しに来たっていうのか。ご苦労なことだな」
「寂しい事言うなよ。この学校にいるたった二人の男子じゃないか」
「だとしても俺は興味がないな。俺はISという兵器を使う為にここに来ただけだ」
そう、それだけの為に俺はここに来たんだ。
「そっか。強いもんな、お前」
「ああ。少なくともお前たち素人よりはな」
「どうしてだ?」
「何がだ?」
「強い理由だよ。だって男はISが……」
「関係ないな。使えるのは一部の女だけだ。使えてもあのザマだ。お前も似たようなものだろう?」
男のプライドだとかなんだとか言っていた男だ。
勿論の事、男は女を守るもんだ、とか男は女よりも強いもんだ、なんていう下らない前時代的発想の持ち主なのだろう。
生憎だが、俺はそんなことは思っていない。空に上がればすべてが平等。すべてに死が降り注ぐ。
「似てる?」
「いい加減お前は鈍いな。唐変朴みたいなものか?」
女心にも鈍そうだし。あの金髪がお前を見る時に若干熱っぽい目で見ていたからな。
俺の言葉もキいたらしい。
人間、些細なことで変わるものだ。
あの女の事だから、プライドが許さないとでも思っていたが。馬鹿馬鹿しい。
ま、俺には関係のない話か。
「お前はどうして剣道をしているんだ?」
「俺が剣道をしている理由? それは……」
「それと似たようなものだ。俺が強くあろうとする理由だ」
事実、似たようなものだから、な。
強くありたい。ただ、強くある為に。
「話はそれだけか?」
「え、あ、おい!」
俺はそのまま立ち上がってその場から離れる。星空をフライトしたいが、目立ちたくはない。
俺達の夜間飛行はまだ続く。
一番きれいな朝やけを目指して飛び続けるだけ。英雄も悪魔も、何も必要としない、この大空を目指して。
「待て」
今日はよく声をかけられる日、だな。
「何か御用ですか、織斑千冬教諭」
俺に声をかけてきたのは、織斑千冬だった。ブリュンヒルデと呼称された人間が話かけてきた。
よくよくこの姉弟に好かれたらしいな。
「話は終わっていないと言ったはずだが?」
「なんの話ですか?」
「惚けるな」
「……断るブリュンヒルデ。俺はお前に語る舌を持ち合わせない」
「そうか、貴様の動きの基本は、戦闘機のそれに酷似しているのだが?」
鋭いな。
俺の要求したスペックはそれに近付けている。だからこそ、機動力と加速力、トップスピードに特化させて装甲を薄くしたのだ。
「流石とだけ、言っておこうブリュンヒルデ。それで? 俺の事が何か分かったのか?」
「お前は戦闘機乗りだな?」
「……答えはノーだ」
「その理由を当ててやろうか?」
「下らないな。ただ語るに落ちるを待つだけでは」
「そうか? 私は楽しいがな。戦闘機乗りを目指して、いつまでもその夢にしがみついている可愛らしい少年を見るのはな」
「……言ってろ、ブリュンヒルデ。俺は、お前を完膚なきまでに叩き潰す。白銀の騎士風情に、悪魔は敗北しない」
そう言い捨てると、俺はすぐに足を自室へと向ける。
夜の海風は体にこたえるからな。
明日はISの実習もある事だしな。
クラス代表戦も近い。あの馬鹿を少し鍛えなおす手伝いをしてやろうじゃないか。
どうせ、あのくじ運の良さだ。専用機を相手にする事になるだろう。間違いなく。確実に、だ。
生憎だがそれに付き合ってやる必要性があるだろうな。
出来るだけ、俺もあいつらのデータが欲しいしな。
さて、次回はゴーレム戦です。
え? 主人公と鈴が戦う展開は、って?
ないよ? だって基本的に流れはISのままですから。大方ワンサマがとどめをやります。
撃墜王にはならないようにしますので。