現れ出でたるは泥人形。そして、それと対峙するのは機械の翼。
今回でようやくオリジナルの機体が登場します。基本スペック的には第二世代最後期と同等程度。
つまり、ラファールリヴァイブカスタム的な機体である、と考えてください。
尤も、最終的なスペックは第三世代型に相当し、スペックの調整次第では第四世代型に匹敵する使用にします。
無限と呼称しても良いほどの拡張領域を持つ。拡張領域はリヴァイブカスタムの数倍。
戦いは数ですよ。
まぁ、連射数とかいろいろ制限ありますけどね。
因みにピーキーすぎる上にコアの性質かなんか知らないけど我儘なのでいう事を聞きませんが。
ガトリングとナイフを呼び出して臨戦態勢を整える。
俺は声に出してそう言うと、飛翔する。
機体の状態は良好。二基のエンジンも問題なく作動しているな。
なるほどこのインチキ機構を見事なまでに再現してくれるとはな。それでいて既存の理論も応用可能とは。
確かに最強の兵器かも知れないな。
ISF4。
その初陣、それが貴様のコピーと言うのも皮肉なものだな、ブリュンヒルデ!
「FOX2!」
手始めにミサイルを上空から放ってやる。
一発だけのミサイル。スタンダードなミサイルだ。
コピーはその手に握る刀でそれを切り裂くと、そのまま此方へと向かって来る。
成程、敵意に対して反応する仕掛けか。都合のいい。これなら自軍がダメージを受ける必要性はないだろう。
向かってきたコピーの刀を回避し、そのまま距離をとる。
この機体そのものが近接戦闘に向いていない。ましてや刀を持ち近接戦闘を主流とする戦術を行う相手に対して、まともに戦えるほどの戦闘力は持ち合わせていない。
少なくとも、今は。
「おそいぞ、デッドコピー」
逃げるついでにミサイルを二つ落としてやる。
そしてイグニッションブースト、範囲から離脱。同時に爆発。
ダメージを受けたこいつは落ちていく。所詮はデッドコピー。反応もすべてが遅い。
怯んだ隙に、俺は機銃を思いっきりぶち込んでやる。地面へと落ち、ダメージを受けてそろそろ動かなくなるだろ、と言うときだった。
いきなり動きが変わりやがった。
機銃をすべて回避しつつ此方へ接近、その刀を振るう。
だが、それも。遅い。
無理だよ。お前は、もう遅いんだ。もう手遅れなんだよ。変われない変われなんだ。
国境なき世界。世界は変われなかった。世界は変わる事は出来なかったと言うのに。
変わろうと言う意思をもって、行動し変化を促そうとした。
けれど、世界は変われなかった。
「もう遅いんだ。ボーデヴィッヒ、俺達はもう変われない」
イグニッションブーストで俺も、急接近。フレアをまき散らしながら、俺はナイフを手に近接格闘戦を挑む。
近接格闘でこいつに勝てると言う確証はない。もし格闘能力だけでも劣化コピーでないとするのなら、恐らく勝率は五分五分。
機体性能の差だけならほぼないはずだ。いくら天才が作った機体と言えども。
刀をナイフで受け流し、どてっぱらに足をぶち込んでやる。
くの字に折れる、まっくろくろすけ。
そしてPICをフルに機能させて、背部にヒールをぶち込んでるやると、地面に叩きつけられる。
……所詮は、劣化コピー、か。
それでもすぐさま立ち上がっていたのは、称賛に値するよ。ドイツ軍人。
部分展開されたIS、そして発動されるワンオフアビリティー。
さぁ、決着をつけろ。織斑一夏。お前自身は誇りに生きるのか、強さを追い求めるのか。
戦況だけは読めそうないがな。
一太刀の白刃の下に、機体の表皮が両断。内部からラウラ・ボーデヴィッヒの剥離を確認。任務、完了。
戦闘データの回収は完了。満足なデータは得られる結果とは言いがたがったが、雑魚の分際にしては随分と楽しませてくれた。
「ISF4より管制室、ブリュンヒルデ。救護班をよこせ。それと此方が採取した機体のデータを転送する。恐らく、奴の美学からこいつにはかかわっていないだろうがね」
近接戦闘で採取したデータを転送する。
過去の自分自身のデータだ。その時よりも、自分自身がどの程度劣化しているのかを知るのもいいだろうな。
「ISF4、先生とよべ。……データは受け取った。お前はどう思う?」
「どう、とは?」
「今回の件だ」
「当然、ドイツ軍……特にベルカの灰色共の仕業だとしか言いようがないがね」
「灰色? 何だそれは」
「ふん、知らないな。知らないならそれまでだ。いた事がある癖に覚えていないのか、ブリュンヒルデ。ま、あいつらは溶け込むのだけはうまいからな」
「……灰色? 灰色……まさか亡国機業(ファントムタスク)か」
「……今はそう名乗っているのか。連中は、変わっていないらしいな、あの時から」
「あの時? いつの話だ」
「謳われない戦争、空白の三か月、砕けた空の欠片。ヒントは随分前からあったはずだぞ」
そう、ヒントならいくらでも出していたはずだ。気づかれない程度には。
気づく人間と気づかない人間。
お前はあの事を知っていたのにどうして灰色を知らない。エース達の事を知っていたくせにあの三か月を知らないんだ。
「……私とて、そこまで多くの事を知っているわけじゃない。知っているのはかつて世界を変えようとしたエース達がいたと言うだけだ」
おかしい。それだけでも十二分な情報は得られるはずだ。
情報を得るだけの力を有していないのか、それとも意図的に情報を引き出そうとしているのか。
……まぁ、何にせよ。
自力で気づく分には情報漏洩にならないと、上からも言われている。
ただ、あまり思わしげな態度を取るな、とも言われているが。
もともと、友好関係を築き上げたいのだから。
俺の個人的な恨みとは関係なく。
「ともかく敵機の無力化に成功した。黒兎の回収は任せる」
「待て、一度ピットに帰って来て説明をして貰おう」
「断る。これは俺の為だけの専用機だ。貴様らに触れさせる訳に行くか」
「この学園内においてお前の道理は通用しない。その機体データを提供してもらおう」
「機密事項に至る。情報の漏洩は出来ない。ただ、機体名だけなら言っておこう」
「ほう? 機体名と言うのはそれだけで特徴を表す事が多いが?」
「ISF4、ファントムXだ」
俺はそれだけ言うとピットへと降り、機体を解除。そのまま自室へと戻る。
機体の情報を漏えいするわけにはいかない。これは織斑一夏と同じく俺専用に設計、調整された機体だ。そもそも、まだ「ファーストシフト」すらさせていないのに。
今日の戦闘でバーニアとアクチュエイター、それに反応回路に結構な負担をかけている。メンテと、必要なら部品の交換もしなくては。
それと稼働時の戦闘データ、兵装の反応、相性をレポートしなくては。
ああ、忙しい。下手をすればドイツくんだりまで出張扱いになりかねん。
今のこの機体を使っての戦闘機動は避けたいのだけれど。
しかしわがままな奴だ。テストフライトの時はそこそこに無茶な軌道に耐えたと言うのに。
まったくたまにはかまってくれとせがんでいるのか?
それとも、他の機体に浮気していたのが問題だったのか? まぁ、何にせよだ。
これが、俺達の初陣だと言う事に変わりはあるまい。大なり小なり、任務の大きさに違いはあるがな。
ま、歴代のエースも似たようなものだ。
時間をかけようじゃないか。この空の果てを目指して。
俺が機体のチェックを自室で終えて、少佐の容態を確認しに向かった。
と、俺が部屋に入る前、人の気配がした。どうやら、ブリュンヒルデらしいな。
「やぁ、ブリュンヒルデ。随分と短い説教だったが?」
室内から出てきたそいつに俺は皮肉交じりに聞いた。
「構わん。どうせ、今更だ」
そう言うと、そそくさとその場から立ち去っていく。
全く、俺のものまねをしやがって。俺はその背中を一瞥すると、扉を開いて中に入る。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。体調はいかがかな?」
あくまでも軍を関係させる言葉を吐きながら近寄る。
「貴様か……」
先程までの覇気がないな。いや、とげとげしさがないと言った方が正しいか。
「先程、ブリュンヒルデから説明があったと思うが、お前の機体には国際条約で禁止されているヴァルキリートレースシステムが搭載されていた。これについての心当たりは?」
「ない。そもそもそんなシステムを開発したと言う話そのものが、初耳だ」
「だろうな。次いで質問だ。それを研究開発しているグループについての情報の開示を」
「断る。機密事項だ」
「断られては困る。此方は随分と前から追いかけている連中の情報がようやく手に入るかもしれないんだ」
「なんだと……」
「お前は軍の関係者だろう。灰色について何か知らないのか?」
「灰色? なんだ、それは。私の隊が黒色だからと言って、そのような部隊は存在しない」
「おいおい、佐官でもこれか……まぁ、知らないなら良い」
まったく、軍の関係者と言っても名ばかりの連中が多すぎて困る。
こんな程度の情報じゃ、内部情報までたどり着くなんて事は出来ないな。
「やはり、連中は亡国機業と名を改めたのだろうか?」
「亡国機業、だと? 国際テロ組織の事を追っているのか貴様は」
「……答えようによってはそうだな。少佐」
「貴様の階級は」
「無いよそんなもんは」
「渡り鳥か……」
「かも知れんな」
正しくは、違うがな。
「まぁ、いいさ。名ばかりの隊長さん。少佐なんていう階級には。やっぱり不釣り合いだよ」
本当はお前達のような存在はいてはいけなかったのだから。
俺達の望む世界には。
「恋に仕事に、頑張る事だ。少女ラウラ」
色恋沙汰は、やはりこの年代の少女には似合うものだ。
さて、それじゃあ次の種明かしをしに行こうかね。
「シャルル・デュノア」
「ひゃぁ!」
更衣室の扉を開き、目の前で着替えていたデュノアは女のような声をあげて前を隠した。
「……やはりな。シャルル・デュノア、いや、シャルロット。公式にあの糞野郎にシャルロットなどと言う息子がいたと言う記述はない。案の定追加されたのはつい最近だ。なるほど、納得したよ。貴様、愛人の子だな。差し詰め、何かの取引材料として、俺と織斑一夏に近づいてきたな。愚直な発想だ。そんな程度の工作、すぐに露見するに決まっているのに」
「……君は一体何者? 君は初めから僕の事を遠ざけていた。その目的も最初から?」
「この時期に男子の転校生。不自然さは隠しきれない。それも一般的に露見していない。叩けば埃が出るのは当然だ」
「参ったな……。これじゃあ、本当に僕の行き場がなくなるよ」
変わらないな。自社の利益を確保するためにならば、あるもの全てを利用する。
と言うか、それ以前にIS事業から手を引けばいいだけの話なのだがね。そう思うのは俺だけなのだろうか。
「お前に面白い事を教えてやる。俺の機体は本来、ISと言う枠組みからの脱却を図る為に作られた機体だ。コアの技術が露見した瞬間に、スピンオフとオミットによって量産を可能にした機体の稼働データを収集すること」
「君の、目的は……もしかして……」
「さてね。お前は俺の考えが分かるのか?」
「この世界の転覆なんて、出来るの?」
「する気もなければ興味もない。それで、貴様はどうするつもりだ? 小賢しい小娘よ」
「……僕は、僕だ。もう、あんな人たちの言いなりには、ならない」
「なら、どうする? ここから出た後は」
言葉を失うシャルロット。
やはりな。その程度の覚悟は。
「世界はそんなに優しくない。そんなに世界は美しくない。お前はどうしてくれるんだ? たった一時の感傷ですべてを失うつもりか?」
「でも、そうするしか!」
「今はそれでいいだろうな。かつての彼らが言ったように。いや、間違いではないのだろう。かつて同じ事があった」
結局世界は変わらないんだ。世界は醜いままだ。
「考えろ。きっとお前に味方は出来ない。織斑一夏でも、だ」
結局空は一人でしかとべないんだ。広すぎるんだよ。この空はな。
自分たちの能力を過大評価してしまう程度には、な。
それだけを言い残して俺はその部屋を後にした。これで、おしまいのはずだ。これ以上、厄介な人間がこの学園に紛れ込んでくるのはやめてほしいのだがね。
一人、愚痴りながらのんびりと廊下を歩いて自室へと帰った。
そしてその翌日、今までいた奴がまたも転校してきたり、銀髪眼帯が嫁だなんだ訳のわからない事をほざきながら織斑一夏にキスをしたせいで、収集がつかないほどに教室が大荒れに荒れてしまうのだが。
この騒動で山田真耶教諭の心労がたまって、倒れてしまわないかが心配だったよ。
尤も、仲裁に入るつもりはさらさらなかったが。
これにてメインヒロインがそろい踏みです。
次回からは新ヒロイン登場までの長い長い中休みとなります。
既刊分はシナリオ通りいきますが、オリジナルの展開を望めばある地点からならオリジナルの展開に進めることも可能です。
三巻の内容も特に変更なしです。
ただ、シナリオに沿うだけの内容はつまらないでしょうけれど。
「あなたはここから境界を見たことがありますか?」