北の海から来る悪魔。漆黒の悪魔は初めにその力を以て、死を降り注ぎやがて死ぬ。
そして僅かな眠りの後に蘇る。
という事で撃墜回です。
ゼノギアス面白いよゼノギアス。マハノンとかからはもっさりしているけど。最初、デウスの倒し方がわかんなくて苦労したなー。あと巨大ウェルスとか。
そこにいたのははだけた浴衣を着て床に倒れ込む、何とも扇情的な格好をしたセシリア・オルコットと何やらニヤけ面をひっさげた三馬鹿だった。
「……いくら女しかいないからってお前達にそんな趣味があったとは思わなかったぞ」
「ごっ、誤解ですわ! 私はただ一夏さんの部屋に……!」
「その部屋、俺もいる事を知っているのか?」
予想通りの反応。やはり、俺がいると言う事を忘れていたな。
「まぁいい。色気づくのも年相応の行為だ。お前のように女尊男卑の思想を持つ人間は歪んだ思想をそう易々と手放すわけがないのだから」
「歪んだって、随分な事をおっしゃいますが、貴方もその自覚がおありですの?」
「無い。この世界の境界を眺め続ければ、歪んでいるのはどちらか、いい加減に理解できる」
「だから貴方はそういった見方をするから……」
「そうだな、歪んだ方から見たら、歪んで見える。そうして世界は歪みの中から解き放たれないままだ」
だからせめて、俺だけは歪まないようにしなくてはならない。
たった一つの境界以外に、捕らわれてしまわないように。この世界の灰色を白と黒に分けるために。
「ともかく。お前は織斑一夏の部屋に行って何を企んでいたのだ? しかも俺が同室であると言う事さえも忘れて」
俺が問いただしてやる。答えは分かっている。
「ああ、先程ランジェリーの話をしていたな。大方、ハニートラップでも仕掛けるつもりだったのだろう。薄汚いな」
「なっ、失礼な!」
「意中の相手だとかを考える前に、少しは自分の立場を考えたらどうだ。イギリス代表候補」
全くこんなまでに無防備なんだ、こいつら。
見ているこっちがハラハラする。自分のいる場所さえもあやふやな人間が、恋だとかをする物じゃない。
……いや、恋をしたから、自分の立場が分からなくなったのか。
危険だな、恋と言うものは。成程、病と名付けるのも頷ける。まさに精神を蝕む病だ。彼女が空から降りたのも、わかる。
「あ、ああああ貴方に言われたくありませんわ!」
「成程。俺は十二分に立場をわきまえていないと言うのか。そうか」
こいつの妄言にもあきれ返ってものが言えない。
「行くならさっさと行け。俺はもう少しここでゆっくりしてやる」
「ものすごく腑に落ちませんが、一応はチャンスを与えてくれていると思って良いのですね?」
「好きなように解釈すればいい。だからさっさとあの部屋に行くと良い」
「……貴方も行きますわよ!」
やはり理解に苦しむ。
「貴方に貸しを作るのだけはごめんですわ!」
「そんな理論じゃないのだがな」
こうなってはてこでも動きそうない。
なんだって言うんだろうか一体。全くどうでもいいことこの上ないのだから。
ま、いいだろう。俺もそろそろ部屋に戻ってゆっくりと寝る事にしよう。
腰を上げる。しかし……あの勝ち気な金髪が今ここで見下ろしている限りでは只の女の子にしか見えない。
恋に恋する、彼女のようだ。
「行くんだろ?」
そう声をかけると彼女は歩き始めた。
その背中は小さい。何処までも華奢で、兵器を、運用しているような体には見えない。殺し合いを出来るような、そんな風貌ではない。
命を、かけているような雰囲気ではない。だから、下らない。
「で、だ。雁首揃えて一体何をしているんだ小娘共」
部屋の前で扉に聞き耳を立てている専用機メンバー。
中でいったい何が起きているのだろうか。口を人差し指を当てて、黙れと暗に言ってくる。
「くあっ! ああっ!」
「大分溜まってたみたいだな」
ああ、成程。何かここに来てから納得させられる事が多くなってきているような気がするが。と言うよりもこの異次元空間に俺が適応してきていると言う事なのだろうか。
だとしたら物凄く恐ろしい事だ。
とはいえ、まずはこの行動の真意を確かめなければな。
こいつら見たく俺は耳年増じゃないんでね。
溜息一つ襖に手を伸ばそうとした次の瞬間だった。
「きゃあ!」
襖が開かれ、耳を傾けていた五人は前のめりに倒れ込んだ。そして俺は織斑千冬と目線がぴったりと合うはめに。
「全く、盗み聞きがお前の趣味なのか?」
「生憎だが盗聴なんて興味はない。ましてやお前の弟との情事なんてまっぴらご免だ」
「それで、こいつらは一体何をしていたんだ?」
足元でもがく小娘共を眼でさして尋ねてきた。
「さて? 大方、お前達の関係を邪推したんじゃないのか? なぁ織斑一夏」
「へ?」
成程、こいつは天然だな。ここまで馬鹿だと逆にもうすがすがしくなってくる。
織斑千冬は溜息を一つ吐く。「まぁいい。お前たちも中に入れ」なんて事を告げる。
やれやれ、俺は休みたいがために帰ってきたんだが。
「一夏、折角だこいつらにもやってやれ」
「ん? いいぜ?」
やれやれ、そんなこったろうと思っていたよ。
一番に呼ばれたのはイギリス代表候補。何か、こいつが最初に選択される事が多いな。何というか、咬ませ犬にぴったりと言う事なのだろうか?
仰向けになって、彼女は寝転がる。あの表情は明らかに何らかの好意を期待している表情だ。
当然だがそれでは出来る筈もない。
うつぶせにさせて、腰に親指を当てて指圧を始める織斑一夏。
俺は壁に背中を預けて目を閉じた。
茶番劇、まさにそう言うのがふさわしいだろう。
姦しいったらありゃあしない。じゃないか。
ある程度の所で織斑一夏に飲み物をもって来いとの指示を出した。
何を始めるつもりだこの女。
備え付けの冷蔵庫を開けて何かを取り出した。ぷしゅ、と言う音が聞こえた。次いで流れてきたこの香り、ビールか。この不良教師が。
公務中に飲酒とは。
「あいつのどこがいいんだ?」
折角、静かになったって言うのに、爆弾を投下してくれるな。
イギリス、中国、日本のメンツは本心と逆の事を口にし、ブリュンヒルデにそれを本人にまま伝える、なんて言葉を発した。
それに引き替え、フランスとドイツはまともな事を云った。やはり耄碌したかドイツ。
しかし、強い、か。あいつに一番ふさわしくない言葉だな。
「あいつは弱い。弱すぎる。心も体も実力も、何もかも。まるで砂上の城。食い殺されるのが落ちだ」
「そうだな。その通りだ」
これにはブリュンヒルデも同意したか。
全く。襖を開けて布団を引っ張り出して、俺は早々に横になった。
これ以上話を聞いていても面白くも何ともなさそうだったし。明日からはISの稼働だ。実験機である以上、詳細なデータを把握し、機体のスペックアップを図らなければならない重要な期間だ。
体力を温存しておかなければな。
合宿二日目。
早朝から専用機を所持しているメンバーは呼び出されて、一般生徒とは異なる場所でのデータ収集を行うようだ。
この程度の機密保持か。
いや、他にも目的があるのだろう。
そう……例えるならそこにいる妹に。
「よし、それでは……」
「ちょっと待ってください、箒は専用機をもっていないですか」
流石だ中国。そこに気がつくとは。
「ああ、その事だが……」
「ちーちゃああああぁぁっぁぁぁぁぁん!」
織斑教諭が専用機を所持していないあの妹について何かを言おうとしたが、その前に甲高い声と、砂煙をあげながら何らかの物体がこちらにせまってきた。
それに対してブリュンヒルデは的確に対応。成程、ただしいな。
「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん!」
「五月蝿いぞ束」
「相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ!」
そして、それから抜け出した元凶は、自らの妹に接近。
「やぁ」
「……どうも」
「えへへ、ひさしぶりだねぇ。こうして会うのは何年ぶりかな? 大きくなったねー、特に、おっぱいが」
なんだこいつ。視点が何というか中年のおっさんくさい。
当然ではあるが、妹に殴られた。ごん、と。
「……あ、あの。此方の方は?」
「しのののたばね、ISの開発者、天才と呼称される女だ。現在はISのコアの製造を中止し、その姿を消したと聞いていたが。生きていたのか」
俺は奇怪なファッションに身を固めた元凶に向かってそう言った。
「おやおや、君が世界で『二番目』の男のIS操縦者くんかー。よく知ってるねうんうん。私が天才の束さんだよー!」
「五月蝿いな。貴様の目的は何だ? 場合によっては貴様の拘束も辞さないが」
「おー怖い怖い。でもー、そんなこと君に出来るのかなー? 只の『子供』でー『学生』の君にさー?」
成程、手のひらは見えている、と言う事か。
「そんな事を言う為に来たのか? まさか、妹の顔が見たくなったから来ただとか、そんな理由ではあるまい?」
「五月蝿いなー。君っていったい何さま?」
「死神様だよ」
「あははっ! 面白いねー君」
「誕生日プレゼントでも届けに来たならさっさと渡して帰れ。今は貴様の面など拝んでいたくないのでな」
少しトーンが変わった。なるほど、感情までも子供っぽいのか。
これではあの世界では耐えられるはずもない。
頬を膨らませながら、機体を呼び出した。
真紅の機体。名称を紅椿と言うらしい。第四世代型の機体らしいが……。現行のすべてのISのスペックを上回っている、との事だが……俺の機体には当てはまらないだろうな。
早々にフォーマットとフィッティングを終わらせると、機体を起動させた。
テスト運用か。刀を振るとビームが飛び出した。なんだろうかその無駄機能は。エネルギーの無駄にしか見えないが。ビームの利点は実体弾でないと言う事、すなわちエネルギーさえあればその他の補給は必要なくなる所にある。
だが、あの兵装にそんな意味はあるのだろうか? だとしたら剣でさえもエネルギーで作った方がはるかに効率がいいと思わないのだろうか。
結果としてシールドエネルギーを消耗するなら同じ話じゃないか。
「最高の出来だな」
一人ぼやく。全く笑わせてくれる。第四世代と言っても結局はコンプレックスを抱えたままじゃないか。この出来そこないは。
どれほどまでに有史以来世界が平等であった事がないと言えど、これではあまりに出来損ないではないか。
お前自身がその歪みに惑わされていたのではないのだろうか。
そう言えば、先程白式もいじくっていたな。フラグメントマップがどうのこうの言っていたが。そんなもん見て何か分かれば、こっちも苦労はしない。
起動回数が少ない所為か、十分な稼働データを得られていないが、俺との織斑一夏のフラグメントマップも全くもって異なっている。
何が原因なのかを追究したい所だが。
そして俺のフラグメントマップには不可解な点がいくつかある。それは枝分かれが並行して行われていると言う事だ。いや、並行して行われているのは当たり前だ。
しかし、俺のはその数が多すぎる上に、それぞれが独立していると言うのが問題だ。
そのどれにでもなれるんだ。多岐にわたる可能性を秘めた機体。確かに俺の望んだ機体は、汎用性をもったものだ。
だがしかし、これは万能機と言うよりもむしろ……。
いや、今は変な詮索はするまい。それにこれは未だにファーストシフトすら行っていない機体なのだから。
下らないその光景を眺めながら俺の機体のフラグメントマップに従い、機体の最適化を行っていると、あわてた風にかけてくる山田麻耶教諭。
それと同時に俺にも緊急の暗号通信が入ってきた。
初めての事だ。
とりあえず、今は山田麻耶教諭の方を注視してみよう。
小型の端末を受け取ったのはブリュンヒルデだ。何やら険しい顔でつぶやいている。
「特命任務レベルA、現時点より対策を始められたし……」
「それがハワイ沖で……!」
「機密を口にするな。専用機所持者達は……」
「一名を除いては……」
その後は流石に生徒の視線に気づき、何と手話での会話を始めやがった。しかも俺の知らない類の手話だ。
成程な、ハワイ沖での試験稼働中の機体が暴走、この近辺の海上を航行中か。
先程送られてきた暗号通信に目を落としてみると、どうやら内容は同じらしい。
成程、な。その暴走した機体をこちらでどうにかしろ、と。無茶を言う。
ブリュンヒルデはテスト稼働が中止になると言う事を伝えると、一般の生徒には自室内で待機を命じ、俺達専用機所持者には集合するように指示した。
……丁度いい。俺にも、任務が入ってきた所だ。
大広間の一室に集められた俺達は、現状を説明される。
やはり先程送られてきたデータのままだった。
「教員は訓練機を使用して、周辺海域の封鎖をおこなう。よって本作戦の要は専用機所持者によって行ってもらう」
ん……? 専用機所持者……? 俺以外のこいつらに、あれを落とさせると言うのか?
黒兎はまだいいだろう。だが、他の連中は軍に所属しているわけでもないのだが。特に織斑一夏と、元凶の妹は。
「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
そう言ったのは、イギリス代表候補生だ。
尤も、こちらにはすでにそれがそろってある。シルバリオ・ゴスペル。銀の福音。射撃、及び機動に特化した機体。カタログスペックは甲龍をすべての面において上回っている。
格闘スペックに関しての明確な記述は存在しない。が、そこまでは高くないだろう。恐らくは接近してのゼロ距離格闘戦ならば、勝ち目はあるだろう。それに力を入れていたのは射撃兵装。完成されていないこの機体なら近接兵装を装備している可能性はないと言っても過言ではないだろう。
「偵察は出来ないのですか?」
黒兎が尋ねたが、それに対して無理だ、と答えた。超音速航行している機体にアプローチをかける事は不可能に近い。出来たとして一度きりが限界だろう……が、作戦の内容にもよる。
「一度きりのチャンス、と言う事は一撃必殺の能力を所持した機体で臨むのがいいですね……」
わかりきった事を山田麻耶教諭が言う。と言うか一撃で落とせた方がいいに決まっている。奇襲が効く相手ならな。
そして会議の結果、織斑一夏が攻撃役、そしてそれを運ぶのは誰かと言う話に変わった時。またも耳障りな声が響いてきた。
束だ。
こいつは何を血迷ったか、紅椿を運び役にすると言って来たのだ。
ブルティアーズの高機動パッケージが量子化されていない事を盾に、それを押し切られる。
尤も、俺はそれに反抗するが。
「織斑千冬教諭。増援は?」
「恐らくは無理だろう。間に合わないだろうな」
「エンゲージまで、でしょうか? だったら確実に間に合うでしょうね。そもそも、何故敵機撃墜を主とした目的としているのでしょうか。機密を、わざわざ学生などに露呈させるので? 先ずは自分のISF4、紅椿、白式による敵機の撃破、鹵獲を主な目的とし、その間にブルーティアーズのパッケージをインストール。撃破困難となった時点で、足止めに作戦を変更。消耗戦を仕掛けます。その間にブルーティアーズを先行させた他の専用機たちを援護に向かわせる。これによってあわよくば、撃破鹵獲。悪くても増援が来るまでの足止めを長時間行えると思うのですが」
「だめだ。それはお前達の負担が大きいだろう」
「そもそも子供にこんな作戦を押し付ける時点で負担が大きすぎると思うのですが」
「それでも、駄目だ」
「では作戦を失敗した後の事をお考えで? そこにいる天才も、成功すると言う事だけしか頭にないようですが」
「失敗を考えてどうする」
言葉を失った。
こいつらは馬鹿だ。何も分かっていない素人だ。こんな連中の作戦に従っていたら俺の命がいくつあっても足りはしないだろう。
愕然としてしまったよ。ISを運用するにあたって、ここまで脳が腐ってしまったのか。
「いいでしょう。ただし俺も同行させてもらいます。自分の機体も、通常の状態で超音速航行が可能ですので」
「好きにしろ」
「ええ、好きにさせて貰いますよ。ブリュンヒルデ。確信して言います。貴女の作戦のままでは、確実に失敗します」
間違いなく、俺が後始末をする羽目になるだろうな。もしかしたら落ちると言う可能性も含めておかなければなるまい。
ああ、何という事だろうか。
糞ったれた指揮官に殺されると言うのは、いつでもやるせない気分になる。
「作戦開始は30分後。ただちに準備にかかれ」
言われなくてもそうさせて貰う。俺の機体は特別製なんでな。
アメリカ・イスラエル共同開発か。全くろくでもない者を作ってくれたな。
どうせ灰色が一枚かんでいるのだろう。
それに加えてあの元凶も。
「セシリア・オルコット」
海を眺めるその場所に行く前にこの中で一番早くなるであろう機体を持つ女に声をかけた。
「何でしょうか」
「この作戦はどう考えても失敗する。ただ敵機をロストするだけならば、こちらのダメージは小さい。だが……」
「なんですの?」
「可能性として、撃墜される事が多いにありうる。最悪でも回収できるように高機動パッケージをインストールしておいてくれ」
それだけ言い残すと、俺は外に出る。機体の状態は良好だ。
ぼんやりと空を眺める。憎らしい程に、空が青い。
時刻は十一時と三十分だ。
俺に遅れて二人が来た。
先にISを起動させて、ミッションの内容を再確認しておく。
「敵機の撃墜、及び機体の鹵獲。搭乗者の安否は問わない、か。敵機はアメリカ・イスラエル共同開発の機体、シルバリオ・ゴスペル。特徴は射撃特化型、織斑一夏の白式による一撃離脱を試みる」
正直に言って、滅茶苦茶だ。
こんな作戦が成功するわけがない。成功するとするのならそれは、偶然にすぎない。幾らかの楽天的な物の見方が当たっただけにすぎない。
それで成功したと勘違いするのはくそったれだ。それでいいのなら、俺は何も言わないが。
そのまま、食われ、飲み込まれるのを待つだけだ。籠の外を知らない鳥は。
俺に遅れて上昇してきた二機。
プライドがどうのこうの、などと女の方が言っているがそんな事を言っている暇があるのか。
しかし、こいつえらく上機嫌だな。普段ならばそんなことを言うとは思えないのだが。
織斑一夏もそれには気が付いているようだ。先程から忠告を繰り返しているが、浮足立っている馬鹿の声には届いていないらしい。
「……玩具を貰って喜ぶのは結構だが、墜ちるのなら俺の見えない所で頼むぞ」
俺がそういうと、少し不機嫌な表情をした馬鹿。何かを言い返す前に、ブリュンヒルデから通信が入る。
「聞こえるか?」
「通信状態は良好。どうぞ」
「……随分と態度が違うな。まぁいい、今回の作戦は白式によるワンアプローチワンダウンだ。短時間での決着を心掛けろ」
「了解」
「了解」
「ウィルコ」
当たり前だ。
「織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすればいいですか?」
「そうだな。だが無理はするな。お前はその機体での実戦経験は皆無だ。何らかの問題が発生するとも限らない。それに戦闘力の点では頼りになる味方もいる事だしな」
間違いではない。
何やら織斑一夏に独立回線をつないで何かを頼んでいるみたいだが。大方お守りでも頼んだのだろう。
オープンチャンネルで高らかに宣言する。
「では、作戦開始!」
「ラージャ、ISF4ファントムX、launch」
それと同時に俺は機体を上昇、加速。機体を変形させ、戦闘機とほぼ同一の形状へと変化させる。
これがこいつにだけ与えられた特殊機能。変形することによって超音速を維持したまま長距離航行が行えるようになる。単機による奇襲などを目的とした機体だ。
その辺の雑魚とは違う。
しかし、この紅椿。なんだこいつは。エネルギーを一体何処から取り出しているのだ。
まぁいい。
「敵機視認。接触まで十秒」
銀の福音、その機体を目視で確認した。全身を覆うかの様な銀のアーマー、そして頭部に装備された一対の翼。
「9...8...7...6...5...4...3...2...1...engage!」
交戦開始を告げ、白式がその刀身を零落白夜へと変化させる。高速で接近するも、予想通り敵機に気づかれ、応戦を開始させられる。
福音の両翼が展開し、そこにエネルギーが収束、解放。エネルギービームを撃ってくるのかと思いきや、エネルギー弾をばらまいてきやがった。
しかもその一つ一つが弱いが誘導性を持っている。
成程、これが例の資料にあった武装か。確かにこれなら全方位の敵機に対して対応が可能だな。イギリスのBTとは全く違った趣向をお持ちのようだ。さすがはアメリカ。
回避行動を行いながら、敵機を観察する。馬鹿二機は、防御で対応していた、どうやら威力はそこまで高くないらしい。
機動性は高い。気づかれてから中々一夏のレンジに入る事が出来ないでいる。
……やれやれ。溜息一つ俺は機銃で敵機の動きをけん制する。
俺が落としても構わないが、奴の作戦の推移を見守るのも悪くない。どうせ失敗してるし。
機銃での牽制を続けながら、軌道を続ける。
「私が動きを止める!」
わお。素晴らしいな。
機体のスペックをフル活用して強引に推し進める。機体の性能がなかったら落ちているぞ。
強引に福音を抑え込むと、一夏に攻撃を促す。
しかし、一夏が向かった先は全く違う場所だった。
……いやおい待て!
「何やってやがるこのクズ野郎!」
「何をやっている一夏!」
「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに!」
モニタにその船影を映し出す。成程確かに密漁船だ。
しかし、そんな事をしている間に福音はその拘束を逃れ、紅椿を弾き飛ばし、弾幕をばらまいた。
それを護る為に剣を振るう白式、それによってエネルギー残量は激減、零落白夜は使用不可能となってしまった。
あーあ。だからあれほど言ったのに。
「何をやっている犯罪者などをかばって!」
論点はそこじゃない!
「箒――そんな、そんなさみしい事言うな。言うなよ……強い力を手にしたから、弱い奴の事が見えなくなるなんて。どうしたんだよ。らしくない、全然らしくないぜ、箒」
箒に始まり箒に終わる。戦闘中に何という馬鹿な会話をぶちぬけているんだこの雑魚どもは……!
いらいらしながら銃撃戦を行っていると、福音の放った弾丸がエネルギーの無くなった紅椿へ襲いかかる。
それに気づいた白式はそれをかばって敵弾の直撃を受ける。その後も連続的に。
ち、やってくれる。俺との戦闘で頭が一杯かと思いきや狙いはあいつらだったとは。流石に俺も気づかなかった。
やはり落ちたか。
「俺だ。予想通り墜ちた、回収に向かってきてくれ」
イギリス代表候補に通信を送る。これで素早く回収が行えるだろう。
さて、撤収準備を……っと。何やってやがるあいつ!
「一夏……」
目の前で落ちて行ったあいつの事が信じられないかの様に、そいつはそこに棒立ちしていた。
戦闘空域でそんな事をしていては格好の的ではないか!
案の定全方位からの射撃が、しのののに襲いかかる。目の前で落ちるのは酷く気分が悪い。
しかしあれでは回避のしようがない。
舌打ち一つミサイルをありったけぶっ放す。ちょっとした機密の最新型の小型ミサイルだ。
それで片側の弾幕を張り、もう片側の弾丸は俺が直接たたき落とした。
それでも不可能なまでの弾幕は俺の機体に直撃した。
初めての被弾。
それは俺の、死を暗示するものだった。
機体の耐久力は、そこまで高くない。それどころか、シールドエネルギーでさえも必要最小限の代物だ。
襲い来る激痛の中、俺はその意識を、体を、羽を、海の底へと、落としていった。
目の前で、その翼をはばたかせて飛び去っていく、天使を憎々しく思いながら。
戦闘機にとって撃墜とは死であるという事です。
ベイルアウト出来たとしても、必ず生還できるというわけではありません。
生きて、帰れたとするのなら、それは奇跡だと思っていてください。
あ、映画ウルトラマンの声優がシタン先生だと知って大歓喜しました。面白かったですよね、ネクサス。青い果実も、英雄も大好きです。
最近、CHACOさんの絵のためだけに買いなおそうか考えてます。
白騎士の機体が、白いイドにしかみえなくなってきますよ。あとサイレント・ゼフィルス。あれって、どう見てもESディナなんですけど。秩序さんでるのかなー。と期待しつつ待ってます。
まぁ、新刊なんて期待してませんけど。