親父さんの店に着いた俺は親父さんに声をかけた。
「おはよう親父、頼んでたやつ出来たか?」
「おうよ!とっくに出来てるぜ!」
「流石だな。やっぱいい職人は仕事が早いね。」
「褒めたって何も出ないぜ!」
そう言うと親父がプロテクターとラフタリアさんの鎧と尚文の…盗賊っぽい鎧(南蛮の鎧と言うらしい)を持ってきた。
「どうしたんだあんちゃん」
「いや、滅茶苦茶悪人っぽい鎧だなと思って」
「今更何を言ってんだ、あんちゃん?」
言いたいことは分かるぞ、尚文。
確かにそれ着ると世紀末のヒャッハーしてそうな奴らみたくみえるかもしれない。
「ナオフミ様ならきっと似合いますよ」
「ラフタリア……お前」
お、ラフタリアさんが初めて俺の前でちゃんと話してる。
「とにかく着てみてくれよ」
「うー……できれば……着たくないがせっかく作った鎧だからしょうがない」
尚文が鎧を着て戻ってきた。
なので俺は言ってやる。
「尚文。似合ってんじゃん!これでお前は盗賊になれるぞ!」
「黙ってろ!」
「ふむ……顔から野蛮さは感じられないが目付きで乱暴者っぽい感じになったな」
「あ? それは俺の目付きが悪いとでも言うつもりか?」
「あんちゃんはやさぐれたっていうのが正しいかも知れねえな」
「確かに…初日からだいぶ変わったな。」
「それはお前もだろ。よく森で2週間もサバイバル出来るな。」
「慣れだよ慣れ。ま、とにかく似合ってるんだから。」
「ナオフミ様、似合っていてカッコイイですよ!」
「そういう事だ。頑張れ。」
「はあ、お前ら…。」
「まあいいじゃねえか。尚文、さっさと時計台行って来ようぜ?あんま長居はオススメしないけどな。」
俺は三勇教に関しての話は尚文には話していない。
確証がないからだ。これに関しては、のちのち調べていくしかない。
「分かったよ。じゃあさっさと終わらせよう。」
「そうだな。じゃあ親父行ってくるよ。装備ありがとな。」
「ああ、またな!」
ーーーーーここが時計台か。思ったよりデカイな。
「ここが目的地みたいだ。」
入場は自由なのか、門が開かれ、中から人が出入りしている。
受付らしきシスター服の女性が俺らを見るなり怪訝な目をした。
「盾の勇者様と、お連れの方でしょうか?」
「俺は銃だ。」
「そうですか。」
「ああ、そろそろ期限だろうと様子を見に来た」
「ではこちらへ」
そう言って案内されたのは教会の真ん中に安置された大きな砂時計だった。
全長だけで7メートルくらいはありそうな巨大な砂時計。
装飾が施されていて、なんとも神々しいような印象を受ける。
なんだ?みてるだけなのになんかすごい嫌な感じがするな。これはどういう事だろうか?
ピーンと音が聞こえたかと思うと、尚文の盾と俺の銃が反応して、光が出てきて砂時計に反応する。
すると視界の端に数字が現れた。
20:48
しばらくすると47になった。
要するにあと20時間弱ということか。
「思ったより早かったな。」
準備は一応整ってるし丁度いいかな。
「ん?なんだ、尚文とハルキじゃねえか。」
聞きたくない声が奥のほうから聞こえて来た。
見るとゾロゾロと女ばかりを連れた槍の勇者、元康が悠々と歩いてくる。
気に入らねえな。なんかウザイ。
「お前らも波に備えて来たのか?」
俺らの事を蔑むような視線で上から下まで一瞥する。
「なんだ、お前ら。まだそんな装備なのか?」
何様だよ。この野郎。
元康のことを見てみると、防具は一目見ただけでも強そうななんかキラキラしてる装備をしていた。槍も…槍?矛だな、いや、矛も槍なのか?
まあいい。話すのも面倒なので無視して出ていこうとする。
しゃべるのもわずらわしい。
「何よ、モトヤス様が話しかけているのよ! 聞きなさいよ。」
と、俺の面倒事の元凶が元康の後ろから顔を覗かせる。
これでもかと睨みつけるがソイツは相変わらず、俺らを挑発するように舌を出して馬鹿にする。
こいつ、今すぐ頭ぶち抜いてやろうかな。
いや、今はやめておこう。
「ナオフミ様? こちらの方は……?」
ラフタリアさんが首を傾げつつ、元康たちを指差す。
「……。」
尚文は答えるよりもここを去る選択を決め歩きだそうとした。
入り口から樹と錬がやってくるのを見つけるまでは。
「チッ。」
「あ、元康さんと……尚文さん、あとハルキさんも。」
樹は舌打ちをした俺達二人を見るなり不快な者を見る目をし、やがて平静を装って声を掛ける。
「……。」
錬はクール気取りで無言でこちらに歩いてくる。やはり装備している物が旅立った日より遥かに強そうな物で占められている。
それぞれ、ゾロゾロと仲間を連れて。
時計台の中はそれだけで人口比率があっという間に増えた。
18人
5人は俺達、召喚された勇者で12は国が選んだ冒険者、そして1はラフタリアさんだ。
18人も居たらマジで暑ぐるしい。
「あの……」
「誰だその子。すっごく可愛いな」
元康がラフタリアさんを指差して言う。
こいつ、女なら何でも良いのか?
…はあ。こいつのパーティー酷いことになってそうだな。
女の醜い争いとかで。
しかも鼻にかかった態度でラフタリアさんに近づき、キザったらしく自己紹介する。
「始めましてお嬢さん。俺は異世界から召喚されし五人の勇者の一人、北村元康と言います。以後お見知りおきを。」
「は、はぁ……あなたも勇者様だったのですか。」
おずおずとラフタリアは目が踊りながら頷く。
「あなたの名前はなんでしょう?」
「えっと……」
困ったようにラフタリアは尚文に視線を向け、そして元康の方に視線を戻す。
「ら、ラフタリアです。よろしくお願いします。」
尚文がイライラしてるのが目に見えて分かる。ラフタリアさんも冷や汗を掻いているようだ。
はあ、用も済んだし、さっさと帰りたいんだが。
「アナタは本日、どのようなご用件でここに?アナタのような人が物騒な鎧と剣を持っているなんてどうしたというのです?」
「それは私がナオフミ様と一緒に戦うからです。」
「え?尚文の?」
元康が怪訝な目で尚文を睨みつける。
「…なんだよ。」
「お前、こんな可愛い子を何処で勧誘したんだよ。」
元康が上から目線で尚文に話しかけてきた。
「貴様に話す必要は無い。」
尚文もすげなくかえす。
「てっきり一人で参戦すると思っていたのに…ラフタリアお嬢さんの優しさに甘えているんだな。」
お前は脳内花畑か。どうせまた、自分の都合がいいように、あの時と同じように解釈しているんだろう。
「勝手に妄想してろ。」
尚文も意心地悪いだろうが、俺もかなり悪い。
だって周り敵だらけだし。
俺らは錬と樹の方にある出入り口の方へ歩き出す。
二人とその仲間は道を開ける。
「波で会いましょう。」
「足手まといになるなよ。」
事務的でありきたりな返答をする樹と、お前はえばれるほど強いのかという勇者様態度の錬にイライラしつつ、背を向ける。
ふと振り返るとラフタリアさんがオロオロとしながら周りをキョロキョロとしつつ尚文の元へ駆け寄る。
「行くぞ!」
「あ、はい! ナオフミ様!」
尚文が声を掛けた所、やっと我に返ったのか元気に返す。
ほんと、アイツらとはもう関わりたくない。
「尚文。俺もそろそろ行くよ。また後でな。」
「ああ、また波で。」
「ラフタリアさんも頑張りな。」
「ありがとうございます。銃の勇者様も頑張ってください。」
そうして俺はあと半日、森で道具の準備に勤しんだ。
一応ある程度終わってるけど念には念をいれて、ってやつだ。
そうして波までの時間を潰した。