チキンハートの武偵生活   作:シオシオクレソン

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後ろ向きなことばっかり言ってるけど、根が善良で人を見捨てられない。
チキンだけど、腹をくくったらすごい。
そんな主人公を書いてみたかったんです。


プロローグ
厄介事


「ああもうどうしてこうなるんだぁぁぁ!!」

 

 この日、ある一人の男が自分の運命を呪った。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 モノレールに揺られやってきたのは南北2km、東西500mに及ぶメガフロートである学園島、その一角にある東京武偵高校。その名の通り武偵を育成するための高校である。

 

「うわーやっぱでかいなー」

 

 そうつぶやくのは大きなギターケースを背負った男、姓は妻鳥(めんどり)、名は誠実(まさみつ)。普通に名乗れとツッコまれそうな狙撃科(スナイプ)志望のちょっとかわった趣味を持つごくごく普通の武偵(自己申告)である。

 

「にしても、ちょいと早く来すぎたかなぁ」

 

 試験開始二時間前。武偵志望の受験生もまだまばらである。やたらとからんでくる義理の妹のうっとうしさから逃れたのはいいものの、これではフライングスタート。競技ならペナルティものだ。

 

(試験前に復習…は、やんなくていいか。ここ偏差値低いし)

 

 東京武偵高校の偏差値は45にも満たない。一応偏差値60はある彼ならば楽勝で合格できるレベルだ。

 

(地図もちゃんとあるし、おまもりも全部持った。朝食も食べたから大丈夫!なはず…)

 

 いや、朝食がカ〇リーメイトオンリーというのはちゃんと食べたのうちに入らないと思うのだが。

 

「よし、暇だから整備しよう!」

 

 誠実は時間をつぶすために愛銃たちの手入れを始めた。どう考えても道の端っこでやることではないが、悲しいかな、時間帯のせいもあってこの行為にツッコミを入れるものは誰一人としていなかった。別に絡んだら面倒くさくなるだろうなと思われて放置されているわけではない。ないったらないのだ。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「よしよし、いつにも増して輝いてるぞーセレナー」

 

 一時間弱ほど道の端っこで銃の手入れを続けている誠実だが、だれの目にも止まっていなかった。受験とあってみんなピリピリしているためだろうか。ちなみにセレナとは彼が所有する黒塗りのM110 SASSの名前である。セミオート式の狙撃銃としては精度が高いナイツアーマメント社のSR-25の発展型であるこれは、おそらく狙撃科の試験で一番使用するであろう銃だ。

 

「うーし、こんなもんかな」

 

 あらかたの整備が終わりM110 SASS(セレナ)をギターケースの中にしまう。なぜこんな目立ちそうなことをやっていたのに誰にも注目されなかったのか。きっと影が薄いからではないはず。きっと。Maybe…。

 

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

 

 そんな誠実の目の前で防弾制服を着た男と巫女姿の女子の衝突事故が起こる。これだけならただのせっかちな巫女さんの不注意で終わるのだが、その女子を追いかけてきた奴らによって緊急事態に変わる。

 

「おいおい、なんで逃げるんだよ。俺たちと遊ぼうぜ」

 

(チャラッ!何コイツほんとに武偵?てゆーかもうすぐ試験だってのに女子追っかけてナンパするかフツー?)

 

 やってきたのは不良然とした三人組。どうみてもまじめに武偵をやるようなやつには見えない。ランクもせいぜいDが限界だろう。

 

(そもそもあきらかに格上のやつ追っかけるなよ。逃げてたのもたぶん人馴れしてないからだろうし)

 

 途中からしか見ていなかったが、剣士に必要な歩術を走りながらもやっていたことからなかなかの腕前であることはたやすく想像できる。Bランク以上は堅いだろう。

 などと相手の実力を考察をしている間に先頭にいた不良が殴り飛ばされた。きれいに入ったのかピクリとも動かない。

 

「大丈夫だお嬢さん。そんな悪夢、ここで終わらせてみせるよ」

 

(お前はなにを言っているんだ。悪夢を終わらせるってなにさ、自分で祓えるだろ)

 

 殴り飛ばした張本人である黒髪の男のキザなセリフにツッコミを入れる誠実。確かにコスプレではなく本職の巫女ならば悪夢くらいどうにかなるだろうが、ツッコむべきなのはそこではない。

 

「テメェなにしやがる!」

 

 残された不良の一人がホルスターからワルサーP38を抜き放ち、黒髪の男に向ける。誠実はこの場合巫女をかばっている方を助けるべきなのだろう。だが頭の中で『ここは傍観者に徹しようぜ!』と言うマッコウクジラ並の悪魔と『ここはやっぱり助けなきゃ!』と言うミジンコにも劣る影響力しかないの天使がせめぎあっているため、何のアクションも起こさない。

 

「死ねぇ!」

 

 

 

 バァン。一発の銃声が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ、やっちまったぜ)

 

 火を噴いたのは誠実の持つスタームルガー社開発のシングルアクション式リボルバー、スーパーブラックホーク。持ち主たる誠実につけられた名前はアーシャ。.44マグナム弾を使用する強力なハンドガンだ。

 そんなもので自動拳銃を撃ったらどうなるか。答えは簡単。ぶっ壊れます。

 

「ぐぅぅ、テメェ…!」

 

 横からマグナム弾を当てられた衝撃と壊れた拳銃の破片が当たった影響から右手を負傷。おそらく数日は使えないだろう。

 

「ぐぁ!?」

 

 撃鉄を起こしそのまま無防備な胴体に一発。防弾制服とはいえ衝撃を打ち消すものではないため、その体を数ミリほど浮かし、不良は地面に倒れた。ミジンコ以下の天使にそそのかされた男に片手間で倒されるというよくわからない屈辱を味わう羽目になったかわいそうな不良なのであった。まる。

 もう一人の不良は黒髪の男にククリナイフで襲いかかっていったが、逆に背負い投げでコンクリートの地面に叩きつけられ、返り討ちにされていた。

 

「ありがとう助かった、さすがに二人を相手にするのは面倒だからな」

 

「いやいやうそつけ、お前さん絶対余裕で倒せるだろ。俺の援護にもならないアレなんて必要なかったろ。というわけでこれにて御免!サラダバー!(超早口)」

 

 これ以上厄介ごとに巻き込まれたくないので即退散。三十六計逃げるに如かず。巫女さんが何か言っていた気もするが全速力で逃走した。無駄に韋駄天の如き健脚を駆使した瞬間である。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「ああ、やっちゃったよまじでやっちゃったよどうしようやばいやばいやばい」

 

 彼はその後の狙撃科(スナイプ)の試験でSランクに格付けされた。ここまではよかった。Sランクという武偵の目指す頂点ともいえる位置にまで来れた。だがしかし、そのあと遭遇した少女と会話したのがまずかった。水色ショートカットの少女と。

 

(やばいよあれ無表情だったけど目がやばかったよウサギを見つけた猛禽類みたいな目ぇしてたよ次あったら確実に撃ち殺されるぜまじやばい)

 

 とりあえず今後は厄除けのおまもりを大量に持ち歩くことに決めた誠実なのであった。

 

「あーもうこれ以上ネガティヴになっても仕方ないな!気を取り直して新たな寮生活へ!」

 

 いままでまとっていたネガティヴオーラを払拭し、意気揚々と寮の扉を開ける。何事もない武偵生活を目指して。

 

「「あ」」

 

「あの時のキザ男!」

「あの時のガンマン!」

 

 さらば平穏。さらば安泰。

 

「ああもうどうしてこうなるんだぁぁぁ!!」

 

 この日、ある一人の男が自分の運命を呪った。

 




妻鳥誠実
チキンだけど狙撃科Sランク。
ご先祖は三人ほど。個人的には一人を除いて教科書に載らないレベルの知名度だと思ってます。

ご先祖その一
名字と狙撃能力の由来。ウィキでも略歴が四行で終わってた。サーヴァントなら知名度足りなくて他のと一緒になりそう。
クラスはアーチャーかガンナーだと思う。

ご先祖その二
回りくどいけど名前の由来。誠って入ってるけど別に誠の羽織の人ではない。時代は同じぐらいだと思うし幕府関連なのは同じだけども。
サーヴァントならセイバーかアサシン。代によってはクスリ作ってたからキャスターもあるかも…?

ご先祖その三
レキに苦手意識があるのとおまもりとかいっぱい持ってる由来。
サーヴァントならセイバーかキャスター、某僧正さんと同一視するならアサシンやライダーもある。(このあとアサシンで実装)

誠実くんが使う拳銃は何がいいですか?

  • マテバ2006M
  • コルト・パイソン
  • トーラス・レイジングブル
  • RSH-12
  • ドッペルグロック

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