チキンハートの武偵生活   作:シオシオクレソン

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腹を下しました。トイレから出られません…。


護符

「なにやってんだアリア」

 

「見ての通りこの部屋を要塞化してるのよ。魔剣(デュランダル)、絶対捕まえてやるわ!」

 

 天井にナニカを設置するアリアを見て質問したキンジ。問いの答えは魔剣(デュランダル)確保のため、と言うものだった。

 

「でも魔剣(デュランダル)は都市伝説って言われてんだろ?誰も見たことないんだし、いないんじゃないか?」

 

「んなわけねぇやろキンジこの野郎!この前の武偵殺しだって、今の今まで正体不明だったじゃないか!」

 

「うぐっ…」

 

 絶妙に痛いとこを突いてくる誠実に、キンジはとっさの反論することができない。

 

「そもそも相手がめちゃくちゃ強い怨霊の類いで、誘拐に関してもマジもんの神隠しだったらだったらどうすんだよ!

 ああいうやつは銃も剣も効きゃしないし物理的な対処なんてできないぞありゃあ!ああやべえ塩盛って結界張んなきゃ。破魔札、破魔札はドコダァ!」

 

 頭が回るのかと思いきや、実際は心霊現象が怖かっただけのようだ。

 

「そもそも超偵専門の誘拐犯とか絶対やばいじゃん!人間だったとしても魔剣(デュランダル)本人も超能力者とかいうオチじゃないこれ!?

 ああもうやだなんでそんなヤバイのに目ぇつけられちゃうのさ白雪ィ!たしかにおたくそういうタイプなのは知ってるけどさ!なんなの!?もーやだ絶対俺役立たないよ!こんなことになるならさっさとアドシアードにエントリーしてりゃよかったかなぁ!?いやあああああああああ!俺なんてどうせ出来損ないだよコンチクショウ!」

 

 実は答えにもうたどり着いているのだが、それを本人が知る由はないが。

 

「だ、大丈夫だよ誠実君。ちゃんと結界張ってれば怪しい人は入ってこれないから」

 

「そうだよね、大丈夫だよね?デュランダルって言ってるくらいなんだからフランス人なんだよね?陰陽術で構成された結界の突破方法とかわかんないよね!?そうだ落ち着け誠実。相手は素人、お前はプロだ。行ける行ける、絶対大丈夫。OK?OK!よしやるぞー!」

 

 はじかれたように、突如再起動した瞳孔開きっぱなしな誠実は、大幣や案といった神社で使っているような道具を自室から持ち出してきた。

 

「なんでアイツ、あんなもの持ってるの?」

 

「ああ、それは誠実君の実家が陰陽師の家系だからだよ」

 

「「…え!?」」

 

 唐突なカミングアウト。

 

「そうだったのか!?」

 

「うん、平安時代から陰陽師をやっている由緒ある家系なんだって。今は誠実君のお父さんが頭目をやってて、いっぱいお弟子さんがいるそうだよ」

 

「へー…」

 

 誠実の出自に驚きを隠せない二人だが、ここで一つの疑問が浮かぶ。

 

「じゃあなんで陰陽師なのに幽霊を怖がってるんだ?陰陽師って怨霊を祓うのが仕事なんだろ?」

 

「陰陽師だからだよ!」

 

「ひゃあっ!?アンタいきなり出てこないでよ!」

 

「え、なにこの扱い…」

 

 キンジの問いに答えに来た誠実。いきなりの出現に驚くアリア。ぞんざいに扱われて軽くネガティヴになりかけているので、できることならやめていただきたいものだ。

 

「で、陰陽師だからってどういうことだ?」

 

「いやね、なまじ本物が()えちゃうわけだから怖いのよ。アレ普通に攻撃しても全然効かないから。それに心霊番組に時々まじってるガチの奴って、普通の人にも見える=めっちゃ強い奴なのよ。近寄ったら軽く呪われちゃうぐらいの奴だから。陰陽師ってそんなの祓うんだぞ?めちゃくちゃ怖いんだよ!」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「ふーん…アリアが授業中、キンジが休憩時間、放課後に二人とも、と…。俺にお仕事はないんですか!?」

 

 本来ならば誠実が引き受けるはずだったこの仕事、すっかりキンジとアリアのコンビに役割を取られてしまった。

 

「ならレキと一緒に見張ってればいいわ。一応狙撃科のSランクなんでしょ?」

 

 つい最近まで記憶の端にもなかったくせにー!と毒づきそうになった誠実であったが、ここでアリアに癇癪を起されても困るため、なんとか押し黙る。

 

「でもなー…レキと一緒に?えー…」

 

「なに?アンタレキ嫌いなの?」

 

「嫌いではないんだけどさ、苦手なんだよ。あの宝石みたいな目で見られるのがちょっとね…」

 

「ふーん」

 

「いやふーんじゃないんだけど!?これ俺にとっちゃ死活問題なんですけど!?」

 

「知らないわよそんなの。それよりちゃんと仕事しなさい!」

 

「…へーい」

 

 何度も言うが、これはもともと誠実が引き受けるはずだった仕事である。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「はいキンちゃん、あーん!」

 

「い、いや自分で食べられる…」

 

「くぅぅぅぅ!」

 

(うわあ…修羅場だ、修羅場ってるよ…)

 

 満面の笑みで自分が作った料理を食べさせようと、箸を出す白雪。

 恥ずかしいのか、顔を赤くして躊躇うキンジ。

 怒っているのか、はたまた焼きもちを焼いているのか、こちらも顔を赤くしているアリア。

 そして不幸にも、三角関係による修羅場に巻き込まれてしまったが、最後の悪あがきのように気配を遮断してご飯を食べる誠実。何度目かのカオスがここに爆誕した。

 

(別に対岸から修羅場見るのはいいんよ、別にいいんよ。でもこんな至近距離でとか堪忍してはしいわー。完全に巻き込まれてますわー。アリア止めるのとかやりたくないですねほんとに)

 

 心の波を出来るだけ消すために思考を明後日の方角に向ける。明らかに現実逃避だが、比較的有効な手段であると言えなくもない。

 

「というかこれ明らかに作りすぎじゃないか…?」

 

 満漢全席もかくやというレベルでテーブルに乗せられた大量の料理に目を向ける。料理作りに少しながら参加した誠実も、割と強めに止めたのだがこの通り。はりきった白雪を止めきれず、このありさまである。

 

「そうよね!あたしもそう思ったの!」

 

 そんな誠実の言葉に便乗してきたアリア。やはり白雪は好きではないようだ。

 

「なによアリア!そんなこというならご飯抜きだよ!」

 

「なによ白雪!誠実も何とか言いなさいよ!」

 

「巻き込まないで…俺を巻き込まないで…俺は小石…河川敷の小石だから…」

 

 アリアと白雪の喧嘩がヒートアップする中、誠実は流れ弾を恐れて縮こまっていた。ちなみにキンジは黙ってご飯を食べていた。

 

 




誠実
陰陽師の家系と言う衝撃の事実。おまもりやお札を大量に持っていたのもこのため。

キンジ
白雪と同棲中。部屋は人間も幽霊も寄せ付けない鉄壁の要塞と化した。

白雪
Sランク4人に護衛される。アリアへの態度は多少軟化している。

アリア
魔剣絶対捕まえるウーマン。相変わらず白雪は気に入らない。

ご先祖その三
京都の陰陽師でレキのご先祖ともかかわりがある。

誠実くんが使うライフルは何がいいですか?

  • SDMー R
  • SVー98
  • ウィンチェスターM1895
  • IMI ガリル
  • ブッシュマスターACR

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