チキンハートの武偵生活   作:シオシオクレソン

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とりあえず主人公の強いところを見せなきゃと


四重奏

 カルテット。一年生は全員参加の実戦テスト。遠山キンジ、武藤剛気、不知火亮、妻鳥誠実のチームは毒の一撃(プワゾン)に向けて作戦会議をしていた。

 

「すいません、なんで俺が目なんですかねぇ」

 

 攻撃用フラッグに接触されないように立ち回る必要がある大役を、なぜか誠実が押し付けられた。

 

「いやだってお前逃げ足速いじゃん」

 

「逃げ足早いから攻撃されないと思ったら大間違いだぞ剛気ィ!車両に乗ったら事故事件が起きる呪いにでもかかってしまえー!」

 

「おいばかやめろ」

 

 確かに彼はSランク武偵の名に恥じないレベルの実力を持っているし逃げ足も速い。だがそれはあくまで狙撃科(スナイプ)としての実力だ。殺傷可能範囲(キリングレンジ)こそ対物ライフルなどを使えば3000m超と東京武偵高校最長だが、跳弾などの精度は同じく狙撃科(スナイプ)Sランクのレキには一歩劣る。それに逃げ足に関してもヒットアンドアウェイには必要な技能、遠距離から攻撃して即退散と言うものであるため相手が最初から近距離にいる場合はあまり役に立たない。

 

「そもそもキンジは強襲科(アサルト)のSランクじゃないか!俺より適任だと思うんですけど!?」

 

「…よし、これで行こう。解散!」

 

「待ってそこ重要だよ!?ちょっま、おい待て逃げるな卑怯者!亮以外の二人とも覚えてろよ!ドアブリーチング弾でお前らのベッドボロボロにしてやる!」

 

 ちなみに対戦チームのメンバーはレキ、中空知美咲、平賀文、峰理子。かなりやばい女子の集まりである。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 ついにやってきたカルテット当日。

 

「お前チキンだけどキレるとやばいんだな」

 

「まったくもってその通りなのだよ剛気くん。理解してくれたついでに俺のフラッグもって逃げていただけるとうれしいかな」

 

「そいつは無理な相談だ」

 

「デスヨネー」

 

 このチームは比較的明るく過ごしていた。

 

「それにしても誠実、お前はレキに目をつけられてるらしいが大丈夫なのか?」

 

「言わないでちょうだい!大丈夫じゃないから空元気出してんじゃないか!今からでも変わってほしいですよぉ!あ、そうだ(唐突)SVDのことをおさらいしよう。英語でDragunov sniper rifle、ロシア語でСнайперская винтовка Драгуноваというこの銃はエフゲニー・F・ドラグノフ氏が設計、イズマッシュ社が製造しているセミオートマチックラ―――(以下ドラグノフ狙撃銃についての発言が続く)」

 

「だめだこりゃ…あ、レキがこっち見た」

 

「ガス・シリンダーがぬわあああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 いつものネガティヴモードに突入した誠実。それを見たキンジは啓示により、レキの名を利用することをひらめく。誰が見ても効果は覿面、作戦成功であった。

 

「おま、そらないだろ!やめてよねそういうの!レキの眼光ものすごいんだからねあれ!わかる!?顔無表情なのに目だけ『許さん、お前だけは…』みたいな感じで親の仇見るような目なんだよ!?あれ絶対目で人殺せるよ!ブラフマーストラ出ますよあれはァ!」

 

 訂正、ネガティヴオーラは消えたが今度はチキンハートがやってきたため戦略的敗北。やかましさはさっきの三割増しだ。これはこれで厄介である。

 

「まあ落ち着けって。今必要なのはレキがどこから狙ってくるかだろ」

 

「そうなんだけどさ!話逸らしてんじゃないよ!」

 

 レキは基本的に動かない。同じ箇所から何度も狙撃する。そのため狙撃するのに絶好の位置を探す。

 

(たぶんあっちも察してるんだろうな…)

 

 仮にも狙撃科(スナイプ)Sランクの誠実がいるため、どこを狙うか推測しているのはわかっているだろう。そうなってくるといかに相手の裏を掻くかが重要になる。スナイパー同士の戦闘は相手より有利な位置を取った時点でほぼ勝敗が決まるのだ。

 

「狙撃ポイントの候補はいくつかあるよ。でもレキは二重跳弾狙撃(エル・エル)とかできるから参考にしかならないぜ」

 

 射線がまっすぐではないというだけで狙撃地点の推測は数段難易度が上がる。しかもそれをするのが狙撃科(スナイプ)のSランクなのだから場所の特定など至難の業だ。

 

「とどのつまりめちゃくちゃ速く不規則に動いて弾丸を躱すしかないんだよね。できるかこんなもん!なんのために狙撃科(スナイプ)入ったと思ってんだ!」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「あーあ始まっちゃったよどうしよう」

 

 相変わらずネガティヴオーラをまとっている誠実は、孤独に試験場を歩いていた。なぜひとりなのかというと、二人一組でもレキの狙撃には無力だから、そもそも誠実の動きが変則的かつ速すぎて誰もついてこられないからである。そもそも人ごみに紛れたとはいえ、ヒステリアモードのキンジを撒くほどの技能を持つ相手と並走しろと言う方が無理な話である。

 

(気配を消しているとはいえ銃声すら聞こえないのは明らかに不自然だな。そういえば一人耳がいいやつがいたなぁ…エコーロケーション?)

 

 歩きながらも相手チームの作戦についての推測を続ける。臆病ということは危機察知能力に長けているということでもある。

 

(どれ、ちょっとやってみるか)

 

 体を倒し地面に耳を付ける。

 

(うーん、重機みたいなのが動いてるな。あんまり速くはなさそうだな、キャタピラか?)

 

 地面から重機の種類を割り出すという離れ業。これでチキンハートとネガティヴオーラがなければ…。

 

(…あれ?急に速くなったぞ。こっちに来てるしこれはヤバイ!)

 

 謎の重機の接近を確認した誠実はとりあえず狭い路地に逃げ込んで様子をうかがうことにした。レキの跳弾に注意しつつ。

 

「あははははは!いっけータ〇コマ!」

 

「とつげきなのだー!」

 

 道路を我が物顔で突き進んでいく重機関銃搭載のブルドーザー。それに搭乗している理子と文の高笑いがビルの谷間に響いている。

 

「…なんやあれぇ」

 

 思わず方言がちょっと出る。『そんなのどこにあったの!』とか『タ〇コマって多脚戦車じゃないか!』と言いたいのを我慢しブルドーザーの背後を見送る。それがいけなかった。

 

(!マズルフラッシュ!?)

 

 とっさに近くのマンホールの蓋を盾にし、身を守る。が、レキに捕捉され、さらに魔改造ブルドーザーにも見つかってしまった。

 

「あ、マーくん発見!バックだよあやや!」

 

「あいあいさーなのだー!」

 

 理子の号令により後退するブルドーザー。この魔改造されまくった重機に適用されるかあやしいが、ブルドーザーは効率的に動くために後ろ向きの方が速いのである。つまりどういうことなのかと言うと

 

「いぃぃやぁぁぁひかれるぅぅぅ!」

 

 こういうことだ。

 

「くふふ、マーくんおっそーい!」

 

「速く走らないとひいちゃうのだ!」

 

「そこのおバカが撃ってこなかったらもっと速く走れるんですけどねェ!」

 

 もっともおバカが撃たなくてもスナイパーの狙撃は止まらないが。

 

「ちきしょうめぇ!今日は厄日だ!」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 命からがら逃げ切った誠実は息を切らしながら通信をかけた。

 

「はぁ…はぁ…もしもし、聞こえてる?」

 

『ああ、聞こえてるぞ。もっとももう俺たちふたりだけだがな」

 

「えぇ?もしかして、魔改造ブルドーザーに轢かれちゃった?」

 

『いや、狙撃科(スナイプ)のお姫様に撃たれたよ』

 

「あ、うん、そですか(キンジキャラ変わってるぅぅぅ!?なにごと!?まさかドーザーとレキのストレスで新たな人格が誕生したとでもいうのか!?)』

 

 違います。ヒスってるんです。

 

「それはそうと、そっち誰か倒した?」

 

『ああ、人見知りなお嬢さんを捕まえたよ』

 

「…中空知美咲さんね、わかった」

 

 一瞬誰のことかわからなかったが、あのメンツで人見知りなのは一人しかいないため特定できた。

 

「なあキンジィ」

 

『どうした』

 

「俺がブルドーザーどうにかするからレキを何とかできる?」

 

『できるぞ』

 

「俺が狙撃できる位置に行くまで気を引いてくれればいいからさ」

 

『わかった』

 

 レキの気を引き続ける。かなりの難易度だがヒステリアモードのキンジならしばらく持つだろう。

 

「さて、でかい口叩いたんだからやるっきゃないか」

 

 そう言いつつ、水道と石鹸に手を付けた。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「うーん、マーくんどこいったんだろー」

 

「にげあしはやすぎるのだ…」

 

 魔改造ブルドーザーはそのままなめらかなアスファルトの坂を上っていく。

 

「あれ?水が流れてきたのだ」

 

「じゃあこの先にいるのかな…ってうわわわわ!?」

 

 いままで安定して坂を上っていたブルドーザーが、水が流れてきた途端、キャタピラが空回り坂を滑り降りはじめた。

 

「速く止めないと…ギャンッ!?」

 

「ど、どうしあぴゃっ!」

 

 ブルドーザーの制御を取り戻すべく動いていたふたりだったが、どこからか飛来したゴム弾が直撃し、昏倒した。

 

「…いやー、こんなうまくいくとは思わなかったぜ」

 

 建物の陰から顔を出した誠実はそううそぶく。石鹸を溶かした水を流したのも、ゴム弾を撃ったのも彼である。

 

(目のフラッグはどっちも持ってないな、どうしよう。蜂のフラッグ持ってるのキンジだけだし、亮もやられちゃってるし)

 

 一瞬でレキが保有しているという事実に行きついてしまった。今動ける蜂のフラッグ持ちはキンジだけ。そのキンジもレキに狙撃されているため近寄れない。

 

(ヤベーイ!キンジを接近させるには俺が引き付けなければならない!でも俺が囮とかないわー、まじないわー。いややらんきゃならんのはわかってるんだよでもひけちゃうよね、うん。…でもほかに方法がない!ちくしょう、今日は厄日だ!)

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「いやだなもー!もしもしキンジ聞こえてる!?」

 

『聞こえてるぞ!どうした!?』

 

 通信機から時々ベレッタ92Fの銃声が聞こえることから銃弾撃ち(ビリヤード)をしているのだろう。

 

「レキが目を持ってる!俺が狙撃して引き付けるからその隙に接近して!OK!?」

 

『わかった!』

 

「ああ、もう!どうとでもなりやがれー!」

 

 半ばやけくそになりながらM110を構える。レキを狙える絶好の位置だがこちらの方が低いので不利だ。

 

「あ、やべばれた」

 

 引き金を引く直前、スコープ越しにレキと目があった気がした。実際あっていた。ドラグノフのスコープを破壊したが、レキの視力は6.0。スコープがなかろうが誠実が今いる地点まで狙撃できる。

 

「ほらキンジ急げ!俺がレキに倒されないうちに!」

 

 レキの撃ってくるゴム弾を正確に撃ち落していく誠実。レキのドラグノフの弾倉に入るのは10発。対して誠実のM110の弾倉には20発入る。

 

「まあ下がるよねそりゃあ」

 

 残弾数で劣るレキはいったん下がり射線から逃れる。なにもない屋上では跳弾狙撃(エル・スナイプ)もできない。

 

(深追いはだめだな、撃たれて終わる。この場合キンジが出てくるタイミングに合わせて撃つしかないか。やだなーめっちゃリスキー)

 

 心の中でうだうだ言っているが突破策がそれしかない時点で選択肢なんてあってないようなものだ。仕方がないので通信機を介してキンジにモールス信号で5秒きっかりに同時に攻撃することを伝えた。

 

(3、2、1、今!)

 

 誠実はキンジより少し早く飛び出す。これは万が一キンジが狙われていたときのためである。レキのいる屋上の高度に跳躍で到達した誠実のM110のスコープがレキを捉える。ちょうどドラグノフの銃口がキンジに向いていた。

 

「当たれ!」

 

 さまざまな祈りを込めた一撃。

 弾丸はドラグノフが火を噴くよりも速く到達。銃身を跳ね上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…疲れた」  

 

 役目を終えた男が一人、地面に仰向けになっていた。

 

『終わったぞ、俺たちの勝利だ』

 

「そうかい」

 

 彼は思った。うどんたべたい、と。




誠実
一人で魔改造ブルドーザー止めた人。やればできる子なんです。

キンジ
中空知のでかいアレでヒスったベッドこわされた人。レキを相手に最後まで生き残るやべーやつ。

剛気
ベッドこわされた人その2。レキにやられた。


名前しか出てこなかった人。レキにやられた。

レキ
狙撃技術がやばい人。二人瞬殺。

理子
探偵科のバカ(偽)なやつ。ゴムとはいえNATO弾には耐えられなかった…。


平賀源内の子孫な人。ブルドーザーは試験場で見つけた。

美咲
通信機器で滑舌よくなる人。エコーロケーションでキンジの位置を割り出したがヒスられて捕まった。

誠実くんが使う拳銃は何がいいですか?

  • マテバ2006M
  • コルト・パイソン
  • トーラス・レイジングブル
  • RSH-12
  • ドッペルグロック
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