チキンハートの武偵生活   作:シオシオクレソン

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白刃

 アリア襲来の翌日。思考が明後日の方向にすっ飛んでいた誠実は、屋上で理子に絡まれていた。

 

「ねえねえマーくん」

 

「なんだね理子。お昼ご飯ならさっき俺の弁当半分持ってったろ」

 

「おいしかったよ、さすがマーくん!…じゃなくて、アリアんのことどう思ってる?」

 

「アリア?なんで?」

 

 いつも脈絡がない理子だが、今回はいくらなんでも突拍子がなさすぎる。誠実は訝しんだ。

 

「いやー突然来たって聞いたからさ、メイワクしてるんじゃないかなーって」

 

「まあ迷惑してるわな、だってアリアったら魚の小骨取れねーんだもん。なんで俺が取らにゃならんのだ。確かにいやがらせっぽく出したけどさー。あ、別に食い物粗末にしてるわけやないよ」

 

「…いやがらせに魚ってちっちゃくない?」

 

「露骨だと絶対M1911かバリツ来るもん。避けたら避けたでまた怒り出すんだよああいう手合いは」

 

 なんだかんだ相手の性格について理解している誠実。観察眼はスナイパーの絶対条件とは本人の談。

 

「ふーん…アリアんのことしっかり見てるじゃん。もしかしてあんなとこも見ちゃった?」

 

「ああ見たぞ」

 

「…ふぇ!?」

 

 理子の冗談に真顔で答える。こんな返答をされるとは思っていなかったのか、理子は顔を赤くして慌てる。

 

「…ほ、ほんとに!?」

 

「ああ、本当だとも。あの慎ましやかで滑らかなbodyは素晴らしいね!」

 

「ななななな!?」

 

 心底楽しそうな顔で語る誠実と、真っ赤な顔をしてうろたえる理子。

 

「ま、マーくんがこんなえっちい子に…!」

 

「まあガバメントの話なんだけどね!ははははは!」

 

「…え?」

 

 わざと誤解をまねくような話し方をしていたのは理子をからかうため。こやつめ愉悦部か。(確信)

 

「…う」

 

「う?」

 

「うわぁぁぁん、マーくんのばかぁぁぁ!」

 

 誠実に散々もてあそばれた理子は泣き叫びながらも脱兎のごとく屋上から逃げ出した。

 

「…いや、まじ泣きすることないじゃん」

 

 残された彼はそうつぶやくのだった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「おら、キビキビ歩け!」

 

「俺は囚人か犯罪者なんですか?」

 

「ある意味そうや」

 

「ある意味ってどの意味なんですか!?」

 

 呼び出しという禁じ手を使われ、強襲科に強制連行されていく途中の誠実。蘭豹先生にはほとほと参る。

 

「今日はそこの火野と戦えや。おーい火野ォ!ちょっとこっちこいや!」

 

(下級生って言っても強襲科だしなぁ…。どうしよう、まずいぞ)

 

 一年とはいえあの蘭豹がじきじきに指名するような相手だ。油断すれば世紀末のヒャッハーのようにボコボコにされるだろう。

 

「火野ライカです。今回はよろしくおねがいします」

 

「妻鳥誠実です、よろしく…」

 

「使うのは刃物だけだぞー」

 

「それ俺圧倒的に不利じゃないですかねぇ!?」

 

「不利だからできねぇとか抜かしてんじゃねぇぞゴラァ!」

 

「そこまで言ってませんから!だからM500下ろしましょ、ね!?そんなもん当たったら吹っ飛んじゃいますから!」

 

 狙撃科所属の誠実にとってはかなり不利な条件だが、ぶちぎれた蘭豹を止める方が火急を要する事態だ。

 

「はあ、まあさっさとやれ」

 

「…わかりました」

 

「…はぁ」

 

 なんとか酒を飲ませて、なんとか酒を飲ませて(二回目)荒御霊を鎮めた二人は、それぞれ腰を落とし日本刀とタクティカルナイフを構える。

 

「フッ!」

 

 先に動いたのはライカ。ナイフを肩目掛けて振り下ろす。

 対する誠実は柄で手首を押さえてナイフを止めた。

 

「せいッ!」

 

 そのまま弾き返し、一度左手を峰に当て心臓あたりに片手で平突きを放つ。

 

「ぐぁっ!」

 

 ライカはとっさにナイフで往なそうとするが、躱し切れない。切っ先が左肩に直撃し、苦悶の声を上げる。

 一方の誠実は追撃せず後退する。

 

「このォ!」

 

 反撃に出るためライカは飛び上がり、ナイフを大きく振りかぶる。

 つられて誠実も目で追い、刀を車に構える。

 

(かかった!)

 

 ライカは内心でほくそ笑む。誠実の一歩手前に着地した瞬間、体制を低くして視界から外れた。

 

「やぁ!」

 

 体も腕もつき出し、全身の力を籠め、今出せる最速の一撃を放つ。

 隙だらけの誠実には防げない、そんな確信がライカにはあった。だがそれはもろくも崩れ去った。

 

「…?」

 

 一瞬、ほんの一瞬誠実がにやりと笑った。

 ライカはこれに刹那ながらも目を取られてしまった。これが致命的な隙だった。

 

「なっ…!」

 

 右腕に不意に衝撃が伝った。誠実によってナイフを蹴り上げられたのである。

 そしてそのまま滑らかに円を描くように、首筋に刃を突きつけた。

 

(あ、あぶねぇぇぇ!これ負けたらなんてどやされるかわかったもんじゃないからね!こりゃ助かったわー!)

 

 なお誠実の心の中はこんな感じな模様。いろいろと台無しである。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 モスカーウモスカーウユーメミルアンディサン

 

「メール?誰からだ?」

 

From:母

 

「…めちゃくちゃ嫌な予感がする」

 

Sub:アメリカなう

 

夫婦でアメリカに旅行中だったんだが変な奴が変なとこで変なことしてたから懲らしめてきた。

(めちゃくちゃいい笑顔の母と、ひきつった笑みの父。後ろには白衣のおっさんが数人転がっている)

 

P.S.

東京ば〇奈だからな?東京のバナナじゃないからな?

 

「どんだけ好きなんや東京ば〇奈!じゃなくて何やらかしとるんやこの人はァ!」

 

 

 




誠実
勝ったけどやっぱりこういう類は苦手。意外とSっ気あり。

理子
からかってるせいで反撃された。

コルト・ガバメント(M1911)
慎ましやか(比較:デザートイーグル)で滑らか(グリップ・セーフティー)

ライカ
出したかった、悔いはない。誠実の戦い方に違和感をおぼえる。

蘭豹
強襲科の教師。誠実曰く、母親に似ている。

誠実の母
めっちゃフリーダム。そして肉食系。でも東京ば〇奈大好き。

誠実の父
胃薬がおともだち。奥さんフリーダムだし猫みたいにこども拾ってくるので胃潰瘍。だれかたすけて。

誠実くんが使う拳銃は何がいいですか?

  • マテバ2006M
  • コルト・パイソン
  • トーラス・レイジングブル
  • RSH-12
  • ドッペルグロック

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