深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
“ガルーダ1”“ガルーダ2”による往復8,000kmにも及ぶ超長距離攻撃の詳細を詰め、執務室に戻ろうとして扉の前で足を止める。執務室の中に多数の気配を感じたからだ。まぁ、なんとなくだが予想はついている。ため息をついてから扉を開ける。
「お前たち、今は休息時間で自由行動は許可しているとはいえ、俺のいない執務室に押しかけるのは感心せんな。」
武蔵を筆頭とする艦娘たちに声をかける。古株でまとめ役の金剛、赤城、加賀は大淀、吹雪、白雪と共に船団護衛中だ。本日が秘書艦の愛宕は俺の姿を認めて少しホッとした表情を見せた。俺は自席につきながら、
「お前ら、愛宕になんか問い詰めたりしたんじゃねえんだろうな?大淀、どうだった?」
1人だけ皆と少し離れた場所にいた大淀に聞く。
「はい、提督。いいえ、特には。愛宕さんから提督がお帰りになるまで待っていてほしいと言われましたので、雑談をしながら過ごしていました。」
「その愛宕は少し困っていたようだが?」
「はい。愛宕さんから談話室か自室で待ってほしいとお願いされていたのですが、それを断り、現状に至っているせいかと。私も言ったのですが・・・。」
「ああ、そうか。愛宕と大淀には心労をかけたな。で、武蔵。金剛たち以外を引き連れてきた
椅子の背もたれに体重を預けながら武蔵の瞳をジッと見つめる。
「なぜ、私に聞く?」
「逆に聞くが、お前以外に誰がいる?摩耶は愛宕の妹だ。何か気になることがあれば1人で愛宕に聞きに来るだろうさ。大淀は先程の会話でもわかったとおり除外。翔鶴、瑞鶴は自分たちの艦載機の能力を把握している。メイヴに敵わないのは理解しているので2人も除外。夕張は戦闘では度胸はあるが、モノいじり以外では俺に何かを直訴するようなことは今まで無かった。曙、朧、漣、潮は、まぁ、無いだろう?潮が止める。」
「私は、相棒、お前から信頼されていないのか?」
武蔵が俯き気味に言う。
「相棒だからだ。全員を引き連れてこられる行動力はお前と金剛ぐらいだと思っているからな。信用も信頼もしているよ。」
「・・・そうか。」
「で、
武蔵は顔を上げ、
「ガルーダ隊だけではなく、我々も出撃させてほしい。」
とハッキリと言った。まぁ、俺の返答は決まっているんだがね。
「駄目だ。目標までの距離が離れているし、あれが敵の本隊とは限らん。陽動の可能性がある。そうなった場合に狙われるのは輸送船団だ。先日の尖塔でもわかっているとは思うが、通常艦隊のみでは守れん。死者を減らすことしかできんよ。お前もハッキリと言ったのだから俺もハッキリと言おう。最終防衛戦力の艦娘艦隊を今回の超長距離攻撃に参加はさせない。本来の任務である輸送船団の防衛を果たせ。決して、お前たちが力不足だと思っているわけではないことは忘れないでほしい。以上だ。そして、これは、命令だ。了解したか?」
「私も軍人だ。了解した。」
武蔵は敬礼して了承してくれた。摩耶たちも敬礼しているので俺はラフに答礼し、ソファを指差し、
「ま、折角来たんだ。ゆっくりしていけ。ああ、他に用事がある者は退室してもいいぞ。自由時間だからな。」
笑いながら告げると、曙、朧、漣、潮の4人が退室して、武蔵、翔鶴、瑞鶴、摩耶、夕張、大淀の6人が残った。俺は愛宕に6人に茶を用意するように言って、自分は専用の冷蔵庫からドクターペッパーを取り出し、プルタブを開ける。艦娘の7人が“うへぇ”と云う
「さて、お前たちが超長距離攻撃にメイヴを使用するのは妖精さんから聞いたんだな?どこまで、聞いた。」
そう言うと、武蔵では無く瑞鶴が何ともいえない表情になった。
「私の烈風搭乗妖精さんが教えてくれたの。メイヴ達が話したいことがあるって。」
「待て待て。メイヴから妖精さんに
「そうみたいね。ミクさんからは何も聞いていないの?」
「聞いてねぇな。おーい、ミク。いるんだろ?出て来い。」
すると、壁に掛けてあるモニターの上から目をこすりながら出てきた。
「なんですかー?気持ちよく寝ていたんですけどー。」
「いや、さっきの武蔵達との一件で起きろよ。ま、それはいい。メイヴ各機が妖精さん達と意思の疎通ができるのは本当か?」
「んー、そうですよー。メイヴに搭載されているコンピュータは意思疎通できますー。」
「それは、今まで無かったことだよな?」
「はいー。でも、今回の航海で様々な情報を得たことによって電脳知性体と呼べるまでの成長を遂げることができましたー。人間で云うと、高校卒業程度ですかねー。」
いや、充分に育っているんじゃねぇか。
「ということは、俺とも意思疎通ができるのか?」
「勿論ですー。ただ、メイヴへの情報伝達兼給電用ケーブルが繋がれている時だけですけどねー。繋げていないときには、搭乗員席で行う必要がありますよー。」
「・・・メイヴ達、いや、知性を手に入れたんだったな。彼女たちは今回の作戦についてどのように考えている?」
「んー、戦闘機動を行う際は人間は
「まてまてまて。そこまでの思考ができるのか?」
「先程も言った通り、人間の高校生ほどの知性と理性を備えていますよー。」
マジか。人型機械に能力を移植したらアンドロイドじゃないか。
「まさか、原作の“雪風”みたいに勝手に搭乗員を射出したりしないよな?」
「それはないですねー。搭乗員の方々には・・・。まぁ、特別な想いがあるようなので、
「?」
「あ、わからないならいいですよー。」
ちなみに愛宕たちはわかったのかウンウンと頷いている。ふむ、まぁいいか。八島中佐達が愛機に危険にさらされないなら問題なしだ。
「ねぇ、提督さん。出撃する機体には機長しか乗らないんでしょ?後席に私達が乗ったらダメかな?艤装は最低限で。そうね、脚部の推進艤装と近接戦闘パッケージぐらい。それなら、もし、脱出しても生存率が上がると思うの。」
「悪くない提案だ。瑞鶴。八島中佐に確認してみよう。」
すぐに八島中佐の執務室に艦内電話をかける。2コールで出た。
「『明日の出撃準備で忙しいところに申し訳ない。頼みごとが出来たので連絡した。』」
『はい、閣下。どのようなことでしょうか?』
とりあえず、ミクから聞いたメイヴ達が高校生程度の電脳知性体として成長していること、後席に艦娘を乗せての出撃について話しをした。
『瑞鶴少佐が提案された艦娘のどなたかを後席に乗せるのは可能です。飛行服と耐Gスーツの用意も可能でしょうか?』
「『少し待ってくれ。』ミク、明日の出撃までに艦娘2人分の飛行服と耐Gスーツの作製は可能か?」
「大丈夫ですよー。我々、妖精にお任せくださいー。」
そう言って胸を張る。
「『今、ミクに確認した。明日の初回出撃分は間に合うそうだ。』」
『了解。では、搭乗する方が決定しましたら書面にて提出をお願いしてよろしいでしょうか?』
「『ああ、問題ない。ハッ!書面にて提出か。自衛隊時代を思い出すな。』」
『まぁ、今はだいぶ変わりましたからね。』
「『ああ、背広組の発言力が弱くなったからな。っと、こんなことを聞かれると軍国主義者と言われるな。それでは、書類は搭乗予定の者に持って行かせる。』」
『了解。』
「『それではな。』」
受話器をおいて、発案者の瑞鶴を見ながら告げる。
「八島中佐から許可は出たぞ。それで、誰が乗る?挙手してくれ。」
もちろん瑞鶴はすぐに手を挙げる。続くように翔鶴。そして、おずおずと夕張。この3人が手を挙げた。
「よし、今回は瑞鶴と夕張で決定する。翔鶴は現在、船団護衛の任に就いている赤城と加賀の代わりとして出撃してもらうから外した。異論は?無いか?よし、では解散。瑞鶴と夕張はミクに着いて行って飛行服と耐Gスーツを作れ。」
愛宕以外の全員がソファから立ち上がり俺に向かって綺麗な敬礼をする。俺はラフに答礼し、皆が退室するのを見送る。
「さて、愛宕、すまんが瑞鶴と夕張の航空出撃用の書類作成を手伝ってもらうぞ。」
「ウフフ、もちろんよ~。みんなやる気満々ねぇ。」
愛宕、お前も人のこと言えんぞ。顔は笑っているが、目が笑ってねぇ。
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