深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
第2次首都圏防衛海戦と名付けられた海戦は、日本国防軍の圧倒的勝利に終わった。というか俺が終わらせてしまった。山下中佐と霞少佐と別れて追撃に移ったあの後、俺は妖精さんに貰ったこの装備の限界を知りたくて、撤退中の深海棲艦を文字通り、殲滅してしまった。
そのせいで俺は今、防衛省の統合幕僚監部に呼び出されている。俺は直立姿勢で、事務官が読み上げる、当日の俺の行動について認否をしている。目の前に座る統合幕僚長に統合幕僚副長、その他、お偉方の面々が、信じられんという表情と
「以上です。」と事務官の言葉と共に、誰ともなくため息が漏れる。
「戦艦27、正規空母21、軽空母33、重巡洋艦43、軽巡洋艦42、駆逐艦51、輸送艦・補給艦102。これを1人で成し遂げた。圧倒的戦果だな。どうかね新しい階級章は?」
「はい、幕僚長閣下。佐官となり給与が上がったのは素直に嬉しいですが、同時に指揮する部下も増えるとなると、その責任に押しつぶされそうです。」
「はは、よく言う。副長はどうかな?」
「幕僚長、私は例の案、賛成です。どのみち避けては通れない道なのですから。」
「ふむ、他のみんなはどうかな?」
「賛成です。」「私も。」「賛成です。早く着手すべきかと。」・・・・。
「みんなの考えはわかった。あとは、湊少佐の意志次第だな。」
「あの、一体何のことでしょうか。」
「横須賀、舞鶴、呉、佐世保の各鎮守府に続き、新しく泊地を柱島に造る。そして、貴官をそこの責任者、まぁ、世間の言う“提督”として任命したいと我々は思っているのだよ。」
「急な話しですね。ですが、ご命令ならお受けいたします。」
「命令というよりも、“妖精さん”たちが君にさせるようにと言うのだよ。柱島に泊地を造るのも“妖精さん”からの要請だ。・・・親父ギャグではないからな。」
「はい、幕僚長閣下。柱島泊地に提督して着任する件につきましては喜んで拝命いたします。」
幕僚長はそれまでの硬い表情から笑みを作り、
「貴官ならそう言ってくれると思っていたよ。早速だが江田島の“赤レンガ”で提督課程を受けてもらう。通常なら6か月間だが、柱島泊地の完成する9月には課程を終えてもらう。つまり、3か月のみだ。補講などで穴埋めはする。また、泊地司令長官ということもあり、貴官には将官になってもらう。今、この部屋を出た瞬間に中佐だ。課程修了時に大佐、泊地司令長官着任と同時に准将になってもらう。以上だ。質問は?」
「はい、幕僚長閣下。通常の鎮守府では、鎮守府司令長官の隷下に提督資格を持つ者が複数人着任しますが、柱島泊地ではどのような扱いになるのでしょうか?」
「貴官の懸念も最もだが、柱島泊地にはしばらくは貴官のみとなる。他にも“妖精さん”が基地や泊地を造るよう示している場所があるのでな。熟練の指揮官はそこに配属したい。それに、各鎮守府でも提督資格者の数が足りん。去年、2013年に艦娘と深海棲艦が現れてから約1年。この1年間で第1次首都圏防衛海戦。憲法改正。自衛隊から国防軍への変更。“艦娘法”の制定。色々とあったが、今回の海戦では新たな貴官という英雄が生まれた。これは、日本国としての希望だ。まだ、質問はあるかな?無い?よろしい。喫茶スペースで貴官の初期艦娘が待っている。彼女と合流し、江田島に向かいたまえ。退室を許可する。貴官の活躍を祈っているよ。」
俺は敬礼をして、統合幕僚監部の会議室を出て、防衛省庁舎の喫茶スペースへと向かう。「さて、どんな
右肩に乗っているセーラー服を着て髪をおさげにしている彼女に声を掛ける。
「さぁ?私もそこまで万能ではないですからねー。」
「半身が吹き飛んだ人間を復活させといてなんて言う。」
うりうりと左手の人差し指で頬を
喫茶スペースに着く間に、すれ違った職員たちの反応は様々だった。まぁ、メディアとかでも結構取り上げられたからね。技術研究本部にも1日中、テストを受けさせられたしなぁ。そんなことを考えながら、喫茶スペースに着いた。さて、どこにいるのかなっと。あ、あの後姿は、
「霞少佐。」
銀色がかった長髪を右にサイドテールで纏めている少女に声を掛ける。
「久しぶり、というほどではないわね。まぁ、元気そうでよかったわ。それと、はい、これ。昇進おめでとう。湊中佐。改めて朝潮型駆逐艦10番艦の“霞”少佐よ。これからよろしく。」
新しい中佐の階級章を渡され、それを付けると、右手を出されたので、
「こちらこそ、まだ、提督の卵だけどよろしくお願いします。」
と言って、握り返した。一緒に戦った仲だ。これからの新しい生活に期待と不安が混ざるが、霞少佐がいる分、気楽だろう。
次は木曜日か金曜日になると思います。