深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第33話 帰還

「どうなるかと、思ったが無事に合流できてよかった。」

 

 高知沖で扶桑たちに追いつき、ともに柱島泊地へ向かう。ちなみに扶桑たちにも素顔を見せたら、鈴谷達と同様の反応をした。ま、嫌われないよりはマシだな。太陽は既に、水平線からその姿を現し、俺たちを照らしている。朝飯食いそびれたなあと思っていると、扶桑が、

 

「すみません。鈍足な私のせいで遅くなってしまって。」

 

「そんなことは、気にするな。本当なら迎えのヘリが来るのが普通だが、泊地として稼働して日が浅いのでね。まだ、専属の輸送隊がいないんだ。」

 

「それでも、私の速力が遅いのには変わりはありません。艦隊運営にも支障が出る場合は解体も・・・。」

 

「解体はしない。誰であろうとだ。それが俺の方針だ。速力が遅いのなら、戦艦としてのその火力を当てにさせてもらう。だから、2度と解体などと言うな。」

 

 扶桑の(そば)まで行き、ヘルメット越しだが、しっかりと目を見て言う。

 

「わかりました。提督。」

 

 そして、小さな声で「ありがとうございます。」と言ってくれた。いやあ、いきなり、指揮下の艦娘が解体を希望するなんてビックリだよ。しかし、先の大戦を経験しているからこそ、味方の足を引っ張らないようにしたいという思いがあるんだろうなあ。特に扶桑型の最期は酷いものだったというしな。そこが引っかかっているんだろう。

 

 んー、なんか雰囲気が重くなったなあ。何か、なかったかな・・・。あ、妖精さんにあげるための金平糖があった。金平糖を取り出し、みんなに配る。甘いモノを口にしたことで、みんなの顔が(ほころ)ぶ。うんうん、リラックスしてくれたようだ。

 

「司令、ありがとうございます。美味しいです!!」

 

「おお、そうか。だがな、雪風。泊地に着けば、もっと美味しいモノがあるぞ。なにせ、厨房には間宮と伊良湖の2人と鳳翔がいるからな。期待していいぞ。」

 

「本当ですか!!間宮さん達の料理や甘味、楽しみです!!」

 

 雪風が目を輝かせながら言ってくる。俺は雪風の頭を()でながら、

 

「ああ、だから泊地までもう一踏ん張りだ。気を抜かないようにな。近海の深海棲艦の潜水艦は、海軍の潜水艦が狩っているから数は少ないが、絶対にいないと言いきれないからな。」

 

「はい、了解です!!でしたら、雪風は、艦隊の前方に出て対潜・対空警戒にあたりたいと思います。」

 

「よし、頼んだ。あまり、(こん)を詰めないようにな。」

 

 雪風は敬礼をして、増速をし、艦隊の前方に陣取る。島風も、

 

「それじゃあ、島風は後方を警戒しますねー。行くよー、連装砲ちゃん。」

 

 そう言って、艦隊の後衛に着いてくれた。中衛は霞がいるから大丈夫だろう。

 

 豊後水道を抜け、瀬戸内海に入る頃には日が随分高い位置にきていた。ふむ、昼飯には間に合うな。そのことを伝えると、心持ち、みんなの船速が上がったような気がする。いや、煙突から出る煙の量が増えたな。扶桑も機関を一杯にしているが、さらに回しているようだ。楽しみなのはわかるけど、無理はしないでほしいものだ。

 

 泊地には、密かに通信を入れ、間宮とやり取りをし、今回のドロップ艦のみんなの昼食にデザートを1品、追加してもらうようお願いしている。ちなみに普段の昼食にもデザートを付けるようにしているから、デザートが2つになるわけだな。ここは、俺のポケットマネーから補填するつもりだ。

 

 柱島が見えてくると、みんなから歓声があがった。船乗りにとって帰る港があるということはいいことだからな。

 

 1143に泊地に着き、工廠内に入ると、大淀と明石が迎えてくれた。明石はみんなをそれぞれの艦種の艤装置き場に誘導していく。俺はミクと工廠妖精さんの手を借りながらミョルニルアーマーを外していく。

 

 また、大淀から午前中に起きたことの報告を受ける。どうやら、夜間に俺と霞の2人だけで緊急出撃していったのを、みんな大小はあれど怒っているらしい。それと、幕僚監部からの連絡があったようだ。うーむ、幕僚監部のほうは嫌な予感がする。厄介事が増えそうな予感だ。

 

 艦娘のみんなは、怒りながらも、日課のトレーニングなどはしっかりとこなしてくれているらしい。ボイコットなんてされずによかった。さて、どう言い訳をしようかと思っていると、工廠の扉が開かれ、

 

「バアアアァァァァニング・ラアアアァァァブ!!」

 

 と、金剛が突っ込んできた。それを優しく受け止める。金剛は顔を上げ、俺を見上げながら、

 

「テートク、私たちは怒ってイマース。なんで、私たちを連れて行ってくれなかったんデスカー!!」

 

「いや、君たちは、まだ練度も低いし、高速の輸送手段が無かったからな。」

 

「なら、なんで霞を連れて行ったんデスカ!?」

 

「たまたまだよ。たまたま。その時間に霞が起きていたからだよ。」

 

「ムー。」

 

「ほれ、金剛、食堂に行くぞ。昼食の時間だ。扶桑たちにも飯を食わせてやらんと。」

 

「わかりました。でも、後で、ちゃんと聞かせてヨネー。」

 

「飯食いながらでもいいか?」

 

「行儀は悪いケド、OKよ。」

 

 ふう、落ち着いて飯は食えそうにないなあ。まあ、みんな、無事に柱島泊地にたどり着けたんでいいだろう。




見てくださりありがとうございました。

次回は近いうちに投稿します。
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