深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
「へ?ではないよ。湊大将。彼女、森原少佐が君の隷下の提督となる。ついては、彼女は今日から中佐に昇進となる。森原少佐、こちらへ。」
「はい。」
そう返事をして、彼女が幕僚長閣下の前まで行く。他のお偉方は全員が起立している。俺もそれに倣(なら)い立ったままだ。
「長い間、本庁勤めをさせて申し訳なかった。君の初期艦娘の電少佐も横須賀鎮守府で鍛えられただろう。だが、2人を引き離してしまい、意思疎通の時間をおもうように設けてあげられなかったのが残念だ。同期達よりは遅いが、今、ここで中佐の階級章を渡そう。湊大将の補佐を頼む。森原中佐。」
「了解です。閣下。身命を賭して、提督として恥じない戦果を挙げてみせます。」
そう彼女が言うと、全員が拍手した。俺の時には無かったじゃねえか。と思いつつも拍手をする。すると、彼女がこちらに歩いて来て敬礼をする。
「よろしくお願いします。湊大将。」
答礼をするときになって、ようやくヘルメットを被りっぱなしだと気付いた。ヘルメットを取り左手に抱え、答礼をして、
「ああ、よろしく。」
と言いながら右手を差し出す。グローブ越しなのは許してほしい。彼女は俺の右手を両手で包み、目を輝かせて、
「よろしくお願いいたします。湊大将の、鬼神の下(もと)で戦えるのを光栄に思います。深海棲艦に命を奪われた人たちの無念を晴らしましょう!!」
おっと、目が合ったが、この目はヤバい目じゃないか。真護叔父さんをチラッと見ると、咳払いをして、
「森原中佐。横須賀鎮守府への車の手配をした方が良いのではないかな?」
「あっ、はい、閣下。申し訳ありません、湊大将。車の手配を忘れておりました。すぐに準備をしてまいります。」
「ああ、頼む。」
「失礼します。」と言って、森原中佐が敬礼をして退室していく。すると、誰からともなく、ため息をついた。そこに真護叔父さんが、
「あー、諸君、今日は此処までだ。それぞれの職務に戻ってくれ。」
と言ったことで、皆、部屋を出て行く。残ったのは俺と真護叔父さんのみ。
「あー、叔父さん。森原中佐は何かあったのかな?」
「ああ、彼女の弟がDD-124“みねゆき”の乗員だった。これだけ言えばわかるだろう?」
「あー、はい。“みねゆき”も第1次首都圏防衛海戦で沈みましたね。ということは、彼女は復讐心で自衛官に?」
「君は、女性の年齢をもう少しよく考えて発言するべきだ。彼女は、防大出の25歳だよ。まあ、復讐心は本当だが。提督課程での成績も優秀だったが、彼女の狂気を前線に出してもいいものか悩んでいてね。そこへ、君がスパルタンとなって甦り、泊地司令長官となったわけだ。しかも、戦績をあげて今は大将だ。」
「なるほど、よい生贄というわけですね。俺は。」
「まあ、そう拗(す)ねないでくれ。“しらね”と“くらま”にはシーホークを1機ずつ付けるから。」
「ほう、いいですね。わかりました。彼女の面倒を見ますよ。初期艦娘も一緒の狂気を持っているわけじゃないですよね?」
「ああ、大丈夫だ。どちらかと言えば、ストッパー役として配置した。」
「なら、大丈夫ですね。・・・っと、彼女が戻って来ます。」
「・・・スパルタンの聴力は凄いね。」
「まあね。」
そこで、扉がノックされた。真護叔父さんが「どうぞ。」と言うと、「失礼します。」と言って、森原中佐が入ってきた。敬礼しながら報告をする。
「湊大将。お車の用意ができました。」
「ああ、ありがとう。それでは、幕僚長閣下、森原中佐をお預かりします。」
「うむ、よく鍛えてくれ。」
「はい、間違いなく。」
鍛えるの中には色んな意味が入っているんだろうなあ。複雑な思いで敬礼をし、答礼を確認してから退室して、ヘルメットを被る。エレベーターで下りる時に森原中佐が申し訳なさそうに言ってきた。
「あの、閣下。お車なんですが、クラウンが閣下の体格に合わないので、ハイエースにしました。」
「ああ、別に構わんよ。」
そう言って、用意されたハイエースに乗り込む。ううむ、ミョルニルアーマーのままだと、ずっと身を屈めていないといけないなあ。でも、脱ぐの面倒だからいいか。しかし、シートベルトができないから高速を使えない。下道での2時間近くの移動になるなあ。
横須賀鎮守府への道中は、車内では森原中佐と談笑をして過ごした。第1次・第2次首都圏防衛海戦の話しは避けて、会話を進めた。最初期の提督課程を受けているからか、彼女は艦娘という存在に最大の敬意を持っているようだ。
横須賀鎮守府に到着すると、すぐに司令長官の長野大将の執務室へと案内された。案内してくれた憲兵が扉をノックし、
「湊大将と森原中佐がお越しになられました。」
そう言うと、「どうぞ。」と言う返答が聞こえたので、案内してくれた憲兵に礼を言って、執務室の扉を開け、中に入る。ヘルメットを左手に抱えた状態で敬礼をし、答礼を受けて手を下ろす。
「よく来てくれた。さ、“電”君の提督となる森原中佐だ。そして、その上官となる湊大将だ。」
「初めまして湊大将閣下。暁型駆逐艦4番艦の“電”なのです。」
敬礼と共に自己紹介をしてくれる。俺も答礼と共に自己紹介をする。
「柱島泊地司令長官の湊 海斗海軍大将だ。よろしく。」
今度は、森原中佐に向き直り、
「電は、この鎮守府で鍛えてもらいました。司令官のご期待に沿えるよう頑張ります。」
「うん、電、これからよろしく。」
ふむ、初期艦娘との仲は良好か、良かった。
「湊くん。ヘリポートで君の所に配属になるチヌークが2機待機している。受領して、帰還してくれるかな。」
「了解しました。長野さん。森原中佐、電少佐、ヘリポートへ行こうか。」
「「了解 (なのです。)」」
ヘリポートでは既にチヌークがエンジンを始動していた。コールサインは“ガルム01”と“ガルム02”らしい。真護叔父さんがなんかやったな。これは。そして、機上の人となった俺たちは一路、柱島泊地を目指すのだった。
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次回は近いうちに投稿します。