深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第48話 昇進・その2

 背後から何か強烈な圧力を感じる。振り返ると、金剛が笑顔で立っていた。ただし、いつものような天真爛漫な笑顔ではなく、頬をピクつかせ、こめかみには青筋が浮かんでいる。背後には険しい表情の仁王(におう)が見えるようだ。ふむ、怒っているな。なんでだ?

 

「・・・ヘーイ、テートクゥ、今の話しは本当デスカー?」

 

「霞たちとの話しの事かい?本当だよ。」

 

「霞中佐ならまだしも、鈴谷や熊野と一緒に出掛けるなんて・・・!!」

 

 ああ!!新参者である、鈴谷や熊野を先に外出に誘ったから怒っているのか。・・・な?まあ、物は試しだ。言ってみるか。

 

「金剛も時間がある時に一緒に外出するか?まあ、行き先は岩国市街地までだが。」

 

 すると、先ほどの笑顔とは違い、花が咲くような明るい笑顔となり、

 

「本当デスカー!!約束デスヨー。」

 

 と言って、抱き着いてきた。おう、座っている状態だから、顔に柔らかい二つのモノの感触がじかに伝わる。喪男の俺には威力があるぞ。金剛。ていうか、やっぱいい匂いがするな。

 

「金剛、金剛。嬉しいのはわかるが、ここは食堂だ。時と場所をわきまえるべきだな。」

 

「ワカリマシター。それじゃ、お誘いを待っているからネー。」

 

 金剛はそう言って離れて自分の食事の置いてある席に戻った。ふう、危なかった。あれ以上、密着されると色々とね。そんで、今は、鈴熊コンビと霞からジト目で見られている。不可抗力だろうに、今のは。その視線に気づかない振りをして

 

「さ、飯の続きだ。」

 

 と言って、食事をすすめる。3人ともため息をついてから食事を再開した。まったく、深海棲艦相手に戦っているときの方が、まだ(らく)だな。

 

 昼食後はまた書類仕事だ。Wordで書類を作成してはプリントアウトし、使送便用の封筒に入れる。ミクが中心となって行った“しらね”と“くらま”2隻とチヌークの改造箇所をまとめるのには時間がかかった。しかも、今度はSH-60Kまで改造しようというのだから、また、それをまとめるのかと思うと気分が憂鬱(ゆううつ)になる。

 

 1500になると、休憩をとる。今日は、緑茶と友人が送ってくれた小城羊羹だ。羊羹の表面が糖化して何とも言えない食感になっている。それを食しながら霞と共にゆったりとした10分間を過ごす。

 

 休憩時間が終わり、仕事に戻ろうとすると、電話が鳴った。赤電話ではない通常の電話だ。相手は、幕僚長からか。すぐに、電話を取る。

 

「『こちら柱島泊地司令長官湊大将であります。』」

 

『ああ、海斗君、口調はいつも通りでいいよ。人払いしてあるからね。』

 

「『それでは、こちらも人払いをします。少々お待ちください。』霞、申し訳ないが、15分ほど席を外してくれないか。」

 

「わかったわ。工廠に行って艤装の点検と酒保の様子を確認しておくわ。終わったら内線をお願い。」

 

「了解した。」

 

 霞が部屋を出るのを確認し、扉に鍵をかける。

 

「『お待たせ。叔父さん。そんで、なんのようかな?』」

 

『ああ、この前、海斗君が言っていた霞中佐の昇進の件だけど、とりあえず、今の時点から大佐に昇進ね。階級章は追って使送便で送るから。それと、来月には准将に昇進させることが決まったよ。』

 

「『へえ、大佐になるのは、簡単に納得できるけど、准将か。艦娘初だね。何か(たくら)みごとでもあるんじゃないの?』」

 

『まあ、(あた)らずと(いえど)も遠からずって所かな。この前の四国沖夜戦で活躍したのが、新聞にも取り上げられていたのは知っているだろう?』

 

「『ああ、俺のカメラ映像から切り取ってデカデカとした写真に“鬼神の相棒、此処に有り!!”とかなんとか書いてあったよね。』」

 

『ま、それで、人権団体が騒ぎ出してね。“艦娘に将官がいないのは差別だ。”的なことを言ってね。それで、政府と協議した結果、直近で戦功を挙げている霞大佐がターゲットになったわけ。』

 

「『それじゃあ、今後は艦娘の将官が増えるということ?』」

 

『さて、どうかな。なかなか、たった一人で深海棲艦艦隊群の足止めと撃破に貢献した艦娘って少ないからねえ。そうポンポンとは出てこないと思うよ。』

 

「『フーン。統括官あたりが反対すると思ったけど。』」

 

『いや、彼が生の編集していない戦闘映像を見たいと言ったから見せたら、一気に変わってね。“湊大将には本当に失礼なことをした。”とかなり反省していたよ。』

 

「『えっ、俺の戦闘映像を見せたんだ。吐かなかった?』」

 

『いやあ、何回もトイレと往復していたよ。』

 

『だろうね。ま、霞の昇進はありがたいよ。ホントに。』

 

「『そう言って、もらえると嬉しいね。だから80スープラの件は・・・』」

 

「『それと、これとは話しが別だよ。じゃあね、叔父さん。』」

 

『ちょ・・・、まっ・・・。』

 

 切ってやった。そして、そのまま工廠に内線をかける。3コールで霞が出た。

 

『こちら、工廠。霞よ。』

 

「『おっ、霞か。丁度よかった。幕僚長との話しは終わったよ。霞に関することだった。電話ではなんだから、執務室で話そう。戻ってこられるかい?』」

 

『ええ、大丈夫よ。それじゃあ、切るわね。』

 

「『ああ。』」

 

 数分後、霞がノックとともに入室してくる。

 

「悪かったね。席を外させて。」

 

「いいわよ。あれぐらい。で、用件は?」

 

「ああ、君の昇進が決まった。今日付で大佐に昇進だ。そして、来月には准将となり、艦娘初の将官となる。おめでとう。」

 

「あ、ありがとう。なんか実感がわかないわね。」

 

「そんなもんだろうさ。階級章が届いたら渡すから、それまでは、中佐の階級章で我慢してくれ。」

 

些末(さまつ)なものよ。気にしないわ。」

 

「ならば、よかった。今夜は、予定は空いているか?昇進祝いだ。夕食後に秘蔵のワインを出そう。」

 

「満潮姉さんを呼んでもいい?」

 

「ああ、いいぞ。ただし、満潮までだ。他の子までまわす量が無いからな。」

 

「了ー解。楽しみにしとくわ。」

 

 そういって、霞はフフフと笑顔になるのだった。




見てくださりありがとうございました。

次回は近いうちに投稿します。
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