深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第51話 高速戦闘艦隊

 どうしてこうなった。俺は頭痛のする頭に手を当て、“しらね”と並走している扶桑たちを見る。そう、扶桑が、初の純国産超弩級戦艦が43ノットでついてきている。

 

 またミクと工廠妖精さんたちがやってくれた。艦娘艦隊と“しらね”と“くらま”の連携訓練を始めるためのブリーフィング時に扶桑がこぼした、

 

「缶とタービンを入れ替えても30ノットがやっとの鈍足の私が、艦隊の足手まといになってしまいます。」

 

 という言葉に対して、

 

「そんなことはないぞ。自信を持つんだ扶桑。お前は鈍足なんかじゃない。な、ミク。」

 

 と返答をしたことによって、ミクと工廠妖精さんたちの何かに火がついたらしく、“しらね”と“くらま”の両艦に乗艦中の艦娘達の艤装をいじり、全員が45ノット出せるようにした。

 

 それが、今、目の前に広がる光景の理由だ。妖精さんの感性がわからん。他の鎮守府や提督の艦娘に同じようにしないのかと問うたら、首を横に振られた。解せぬ。

 

「艦娘達があんだけ出せるようになったなら、“しらね”と“くらま”も、もう少し出せないものかな。」

 

“しらね”艦橋の司令官席でそう呟くと、

 

「できますよー。」

 

 とミクが返答してきた。え、どこにいたのさ。気づかなかったぞ。ていうか、今、まだ速度が出せると言ったよな。

 

「ちなみに何ノットだ。」

 

「50ノットですねー。」

 

 思わず、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。危ない、危ない。というか50ノットってヤバ過ぎだろう。

 

「50ノット!?艦体に負荷は?」

 

「艦体にも機関にも負荷はかかりませんよー。ちょちょいといじるだけですからー。」

 

「え、今からするのか?」

 

「はいー。お任せ下さいー。」

 

 そう言って、止める間も無く艦橋から出て行った。俺は、ミクを止めるために伸ばした手を所在なさげに宙に浮かせていた。そして、艦橋の航海長をはじめとする航海科要員の視線が痛い。妖精さんが見えない人間たちからしたら、俺が独り言を言って勝手に慌てているように見えたことだろう。

 

 しかし、ここにいる者たちは全員、俺が妖精さんと会話することができることを知っている。だからこそなのだろう。航海長が近寄って来て聞いてくる。

 

「閣下。その、申し訳ありません。妖精さんとの、おそらくミクさんとの会話を聞いてしまいました。本艦と“くらま”の船速を50ノットまで上げるとは本当のことでしょうか?」

 

「ああ、本当だ。しかも、今からするそうだ。」

 

「今からですか!?」

 

「今からだ。牧原大佐にも説明せんとな。CICに行ってくる。」

 

 そう言って艦橋を出てCICに入る。大型の情報画面には、2個艦娘艦隊がそれぞれの乗艦である“しらね”と“くらま”を中心に、2つの輪形陣を作っているのが光点でわかる。表示されている情報には速力も出ているが、見間違うことなく“43ノット”と出ている。

 

 また頭痛を感じながら、牧原大佐の肩に手を置く。

 

「どうされました、閣下?」

 

 そう聞いてくる彼に、艦橋でのやり取りを伝える。そうすると、最初は戸惑っていたが内容を理解すると、彼の顔は喜色満面になった。

 

「高速戦闘ができますな。用兵・戦術・戦法が変わります。幕僚監部に報告すれば戦略も変わるでしょう。よいですね。戦闘艦らしくなってきました。小官は歓迎しますよ。」

 

 わーお、戦闘狂?まあ、自分の指揮する艦が強化されるわけだから嬉しいのは当然か。その時、鳳翔から通信が入った。

 

『方位150方面へ進出していた偵察機が南下している敵艦隊を発見しました。距離は約200kmで、編成は戦艦3重巡1駆逐2です。航空攻撃の許可をお願いします。』

 

「閣下。どうされますか?」

 

 牧原大佐が聞いてくる。()れる獲物を()らない理由は無い。

 

「マイクをくれ艦長。本艦内への放送と全艦娘、“くらま”にも繋いでくれ。・・・。ありがとう。『全艦、全艦娘に告げる。鳳翔少佐の偵察機が深海棲艦打撃艦隊を発見した。敵は南方に逃走中だ。艦隊進路150。速力43ノット。空母は直掩機以外を全て攻撃に向かわせろ。スカーフェイス隊も発艦準備。艦隊より前進し警戒にあたれ。敵に遭遇した場合は武器の使用を許可する。以上だ。』ああ、くそ、戦争だ。」

 

 本当に最悪だ。深海棲艦どもを海の藻屑にできると考えるだけで嗤いが込み上げてくる。俺のその狂気を目にしたのは牧原大佐だけだ。彼は目深に帽子を被りなおし、指示を出す。必要な命令は出した。残念なのは、俺の手で屠れないということだろうか。今すぐにでもミョルニルアーマーを着込み、前線へ行きたいが今の俺は艦隊司令だ。肩書を此処まで忌々しいと強く思うのは、初めてかもしれないな。

 

 ま、何にせよ俺の仕事は此処から艦隊全体に的確な指示を出すことだ。

 

『こちら鳳翔、攻撃隊全機発艦終了。』

 

『こちら赤城、攻撃隊発艦終了まで約5分。』

 

『こちら加賀、同じく攻撃隊発艦終了まで約5分。』

 

『こちらスカーフェイス01。離艦準備にかかる終了まで10分。』

 

『こちらスカーフェイス02。同じく離艦まで10分。』

 

「『よろしい。赤城と加賀の航空隊が発艦し終えたら、すぐに攻撃に向かえ。スカーフェイス隊は初の交戦になる可能性が高い。ガウスキャノンの能力を過信しすぎるな。攻撃隊で叩ききれなかったら、艦隊戦だ。総員、気を引き締めろ。さあ、狩りの時間だ。』」




見てくださりありがとうございました。

次回は近いうちに投稿します。
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