深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第55話 スクランブル

結局、ジョンソン上級曹長とは3回模擬戦を行った。3回とも俺の勝ちだったが、海上戦闘での経験の差だろう。これはすぐに解消されると思う。スターク・ジェガンの大推力を()かした高速機動や高高度飛翔による攻撃は中々に厄介だった。HALOでは、狙撃系の武装をよく使用していたからか、射撃の精度は驚嘆に(あたい)するものだった。スターク・ジェガンのビーム・ライフルが短銃身タイプで良かった。Zやリゼルのような長銃身なら危なかったかもしれない。

 

 接近戦もビーム・サーベルと海兵隊式格闘術を織り交ぜながら仕掛けてくるものだから、防戦一方だった。格闘徽章やレンジャー徽章を持っていればまた違ったんだろうけどな。こちとら数か月前まで船乗りだったんだから仕方ないな。しかし、これで森原中佐の艦隊も上手く編成ができるんではなかろうか。遠距離からは龍驤、戦艦の砲戦距離からはジョンソン上級曹長、近接戦闘にはジョンソン上級曹長プラス暁型の4人。日本近海ならこれでいけるはずだ。模擬戦の意見交換の際にでも助言しておこう。工廠に戻りながらそう考える

 

「閣下。」

 

「どうした上級曹長。」

 

「はい、今、森原中佐と少し通信でやり取りをしたんですが、艦娘のお嬢さん方は空挺のようなことをなさるとか?」

 

「ああ、そうだ。回転翼機に搭載されるからヘリボーン艦隊とも言われるな。」

 

「それのスクランブルをこちらの艦隊に回しては貰えないでしょうか。聞いてみれば暁少佐たちは模擬戦闘のみ、龍驤少佐は自分と同じタイミングでこの世に顕現(けんげん)したというではないですか。早々に小規模の実戦に投入し、経験を得たほうが良いかと小官は愚考します。」

 

「ふむ、ならば条件がある。難しいことではない。私の配下の艦娘も別枠のヘリボーン艦隊として随伴することが条件だ。不測の事態に備える。」

 

「小官はそれで構いません。中佐ともお話しをしてみます。」

 

「ああ、それがいいだろう。他には?」

 

「極めて個人的な要望ではありますが葉巻はありますか?最初に装備されている分では5本しかなくて。」

 

「ああ、貴官といえば葉巻だな。ふむ、どうにかしてみよう。それと、上級曹長。」

 

「なんです?」

 

「暁少佐たちは大戦を経験した軍艦の生まれ変わりではあるが、今の身体になってからの戦闘は初めてだ。さっきの模擬戦のような狂気をあまり出すなよ?」

 

「閣下も甘いのか厳しいのか。了解しました。しばらく基本的には艦のように砲撃戦のみに集中しましょう。」

 

「ああ、頼む。ただし、当たり前だが緊急時は除く。その時は徹底的に敵を叩け。」

 

「了解です。お嬢さん方の命は(まも)りきりますよ。」

 

 その会話から2日間は特に何も起こらなかった。いや、イベントはあったが。模擬戦の翌日に“しらね”と“くらま”の改装が終わったとミクに聞いて、注水前のドライドックに見に行ったら喫水線下が様変わりしていた。というのも推進器であるスクリュープロペラが無くなっており、2本の筒状のモノがそこにはあった。

 

 ミクに聞いてみると、水上・水中速力の増加のために噴射式の推進器に変えたそうだ。後進はどうするんだと聞くと、前部側面にも同じ物をつけたそうだ。そして、艦底部魚雷発射管。短魚雷に潜水艦搭載の長魚雷も撃てるらしい。ヤベーなこれは。艦体側面の小さな扉は横移動するための噴射装置との事。横移動って・・・。艦体、折れないか?・・・折れないのか、ならいいのか?兎に角、両艦長にはしっかりとマニュアルを渡しておくことを伝えた。

 

 そして、公試をした両艦長の評価はかなり高いものだった。60ノットを超える船速、前方、後方、側方への(すみ)やかな機動。水中速力30ノット近くを保持する潜航機能。VLSと魚雷発射管の増設による単艦による打撃能力の向上などなど。

 

 最大船速を出した時は艦首が少し浮き、増設された手すりに掴まっていないと後方に吹き飛ばされそうだったとも報告された。それと、きしみ音が無くなったともあった。艦体補強までしていたのか。でも、性能を考えると当たり前だよなあ。

 

 ま、実戦でどうなるか話しは別だがな。実戦で思い出した。森原中佐の艦隊は霞と鳳翔、ジョンソン上級曹長が良い感じに(しご)いてそれなりの練度になってきているらしい。2日間でそこまでするとはね。見学を一回したが、あれをするくらいなら実戦をしたほうがまだましだ。正規空母4人、戦艦2人VS駆逐艦4人、軽空母1人の模擬戦なんて被弾しない方が奇跡だと思ったね。

 

 そんなこんなで森原中佐の艦隊は一応、実戦に投入できる段階まではいった。ただし、一戦のみの制限付き。スクランブル配置だからそれでいいだろう。定期哨戒はP-3Cや空軍、呉鎮守府の艦隊がしてくれているからね。こちらも、もう少し艦娘の人数を増やして、今の変則的な哨戒行動から定期的な哨戒行動がとれるようにしないといけない。

 

 そんなことを思っていたからか、赤電話が鳴る。すぐに取る。

 

「『はい、柱島泊地、湊大将。』」

 

『こちら鹿屋航空基地。哨戒飛行中のP-3Cが接敵。足摺岬、南東136km地点。北東方向へ進行中。』

 

「霞、海図だ。『了解、すぐにヘリボーン艦隊を向かわせる。接敵中か?』」

 

『一定距離を保ちつつ接敵中です。』

 

「『他の艦隊は?』」

 

『見当たらないそうです。追加の報告があがってきました。編成はおそらく戦艦2、軽巡以上が1、駆逐3との報告です。』

 

「ちときついがいけるな。森原中佐を呼ぶんだ。スクランブルだ。『了解。何か変化があれば連絡をくれ。以上だ。』」

 

『了解しました。』

 

 さて、森原艦隊の初陣といこうか。森原中佐がジョンソン上級曹長と共に執務室にやって来たので、出撃の命令を出す。

 

「電少佐たちを出撃ですか・・・。」

 

「中佐、失礼ですが嬢ちゃんたちも自分も既に覚悟はできています。ご命令を。」

 

「上級曹長・・・。わかったわ。閣下。スクランブルのご命令、確かに受領しました。」

 

「よし、ならば、中佐はガルム01に搭乗するよう電少佐たちに命令を出しなさい。君の部下だ。君の責任を持って命令を出しなさい。霞大佐は、金剛、飛龍、蒼龍、天龍、満潮、雪風と共に出撃準備。ガルム02に搭乗。以上。」

 

「「「了解。」」」

 

 3人が部屋を出るとガルム隊にチヌーク改の離陸準備をさせる。一応、増槽(ぞうそう)を装備するように指示を出す。さて、森原中佐の艦隊は上手く敵を殺せるかな。




見てくださりありがとうございました。

次回は近いうちに更新します。
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