深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
作戦指揮室で予定海域へ向かうチヌーク改のジョンソン上級曹長と霞のヘッドカメラの映像を森原中佐と眺める。勿論、指揮のためだ。霞たちのほうは世間話をしながらリラックスした感じだが、森原中佐の艦隊のほうは、緊張している暁型の4人と龍驤に対してジョンソン上級曹長がいろんな話題で話しかけ、その緊張をほぐしてあげているようだ。
「どうかな。中佐。初めての指揮は?」
「はい、閣下。まだ戦闘に入っておりませんので、何とも言えませんが、彼女たちの緊張が此処まで伝わってくるようです。いえ、実際に私も緊張しているだけかもしれません。」
「ふむ、私も気がきくことが言えればよいのだが、生憎と場数はそれなりに踏んでいるが、上級曹長のように人生経験が足りん。だから、提督課程でも嫌というほど聞いただろうが、この言葉を贈ろう。“艦娘を信じろ”とな。」
「お1人、娘ではない方が混じっていますが?」
「そこは気にしないでほしかったな。まあ、そんな返しができるのなら大丈夫だ。ほどよい緊張というモノだよ。」
そこからしばらくはとりとめのない会話をしながらヘッドカメラの映像と、映し出される会敵予想海域の海図を眺めていた。そして、とうとう初陣の時間だ。
『こちらガルム01。霞大佐、降下5分前です。出撃準備を始めますがよろしいですか?』
『こちら霞。作戦に変更なし。予定通りに。』
『了解。』
森原中佐のほうも“ガルム02”と交信をしている。ちなみに、なぜ、ガルム01と俺が交信せずに霞としているかというと編成を見ればわかる通り、霞は通常6人編成の艦隊の7人目となっている。そう、今回の俺の艦隊の指揮は霞が
「森原中佐、ガルム02との通信が終われば電少佐たちに声をかけてあげるといい。」
「あっ、はい。そうですね。了解しました。『電少佐、聞こえる?今から・・・』」
これでヨシと。さて、俺も最高指揮官らしいことをしますか。
「『霞大佐を始めとした淑女諸君聞こえるかな?聞こえて無い者がいたら返事をしろ。・・・よし、いないようだな。ま、冗談はさておき、今回の海戦は基本的に森原中佐の艦隊のみで深海棲艦の殲滅を行う。森原艦隊が窮地に陥らない限り手出しはしないこと。それで、ここからが本題だ。今、確認できているのは1個艦隊のみだが、もしかすると、“尻尾付き”が出てくるかもしれん。あれは、単体で半個艦隊の働きをするからな。もし出てくれば問答無用で叩け。難しい場合はすぐに俺に救援要請を出せ。以上だ。質問は?無い?よろしい。それでは、諸君に
『了解。みんなで生きて帰ってくるわ。』
霞との交信が終わると、チヌーク改の後部ハッチが開いていく映像が流れる。ローターで巻き上げられた海水のせいで視界は
全員が着水すると、ガルム隊は高度を上げ、艦隊上空の哨戒飛行を開始する。普通のヘリボーンならヘリは離脱するんだが、妖精さん印、いや、ミク印の魔改造を施された2機のチヌーク改は搭載されている兵装のガウスキャノンや増槽のおかげもあって、原型機よりも攻撃能力と滞空時間が格段に上がっている。そのため、今回の出撃で試験的に上空哨戒をしてもらうことになった。
さて、海上に展開した艦隊の様子はどうかな。俺の艦隊は問題なく旗艦の金剛を先頭に単縦陣で航行中。その1kmほど後方を霞が追従しながら、細かく指示を出している。森原艦隊はジョンソン上級曹長を先頭にして暁型の4人が龍驤少佐を護衛するように輪形陣を組んでいる。龍驤少佐は攻撃隊の発艦を進めており、あと5分もあれば全機発艦完了とのことだ。
ふむ、軽空母1人による攻撃か。戦艦級を目標にするか巡洋艦級を目標にするかで砲雷撃戦に突入した場合の難易度も変わってくるだろう。さあ、森原中佐はどうする。
「『龍驤少佐。ここは確実性を狙うわ。巡洋艦級を狙いなさい。その後、第二次攻撃が可能ならば戦艦級を狙うように。』」
『了解や。でも、第二次攻撃が不可能だったらどないするん?』
「『そこは申し訳ないけど、上級曹長に2体の戦艦級の相手をお願いすることになるわ。』」
『お任せください。中佐。遠距離狙撃には自信があります。それに、スターク・ジェガンの機動性をもってすれば大丈夫でしょう。お嬢さん方だけには仕事はさせませんよ。』
「『ありがとう。上級曹長。』」
思い切った決断をしたものだ。第一次攻撃隊に巡洋艦級を狙わせるとは。だが、確かにスターク・ジェガンとジョンソン上級曹長の腕前を考えれば、アリなのかもしれない。ビーム・ライフルとビーム・サーベルは戦艦の厚い装甲を紙のように撃ち抜き、切り裂くだろうし、肩部ミサイルポッドの大型ミサイルは相応の破壊力を戦艦にお見舞いするだろう。
さて、森原艦隊の後方に位置する俺の艦隊、霞が指揮を
作戦指揮室の中で時間だけが過ぎていく。そこへ、
『こちら龍驤。やったで!!敵の重巡リ級を撃沈や!!それと、敵艦隊の編成がわかったで。残りは戦艦ル級2体、駆逐ロ級3体や。ただ、攻撃隊の損耗が酷くて第二次攻撃は不可能や。それと、敵艦隊がこちらに気付いたようで進路を変えて進行中や。ごめんなぁ、司令官。』
「『いいのよ。龍驤少佐。気にしないで。ジョンソン上級曹長、やれるわね。』」
『もちろんです。中佐。』
「『それでは、上級曹長が2体のル級を相手にしている間に電少佐達は3体のロ級に接近し砲雷撃戦でこれを撃滅すること。龍驤少佐は戦闘海域から離れた場所で上空警戒。』」
『『『『『『了解。』』』』』』
森原中佐と電少佐達の通信が終わると、ジョンソン上級曹長のヘッドカメラの映像が目まぐるしく変わり始めた。高速でジグザグ機動をしながら敵艦隊に接近するつもりのようだ。左手に持ったビーム・ライフルからは閃光がいくつも放たれる。
『艤装の装甲は貫通するが、致命傷まではいかんな。次は胴体と頭部を狙う。ハイパー・バズーカを持ってくるべきだったかもしれん。』
そんなジョンソン上級曹長の呟きが聞こえた瞬間、敵艦隊より閃光が走った。発砲炎だ。
『敵艦の発砲炎を確認したのです。ジョンソン上級曹長、回避を。』
『電少佐、了解です。こちらでも確認できましたセンサーに
ジョンソン上級曹長の言葉と共に“ヴォォォォォォッ!!”と断続的に頭部のバルカン・ポッド・システムの発射音が聞こえてくる。高度な火器管制システムにより敵弾は空中で迎撃されていく。
「凄い・・・。」
森原中佐がカメラの映像を見て呟く。確かに1週間もしないでこの練度は凄まじい。スターク・ジェガンのアーマーにもまだ十分慣れていないだろうに。そんなことを考えていると、さらに動きがあった。ジグザグ機動をやめ直線機動に移った。
『懐に入り、ビーム・サーベルで仕留めます。電少佐達はロ級をお願いします。』
『了解なのです。無理をしないでほしいのです。』
『無理をしなければUNSCの海兵隊員は務まりません。それに、相手は“プラズマ”ではなく“実弾”です。いけます。』
電少佐のヘッドカメラでは、左手に持ったビーム・ライフルを撃ちながら、右手にビーム・サーベルを持ち、タ級2体に急接近するさまが映し出されている。タ級はビーム・ライフルに貫かれながらも何とか反撃をしているが、全て
ジョンソン上級曹長ことスターク・ジェガンは、タ級まで約30mの距離に近づいた瞬間、ジャンプした。位置的に太陽を背にしているのだろう。事実、タ級2体の弾幕が薄くなった。そして次の瞬間には、ブースターを吹かして急降下してきたスターク・ジェガンに、先頭のタ級が頭部から一気に唐竹割りを喰らって爆沈した。スターク・ジェガンはすぐに距離を取り無傷だ。
『敵の動きが止まった。今なのです。みんな一斉砲撃開始。魚雷は無しなのです。』
電少佐達も砲撃戦を開始した。4人分の砲撃をくらってロ級2体が炎を上げ沈んでいく。残り1体のロ級はスターク・ジェガンに対応するか電少佐達に対応するか迷っているようだった。しかし、その迷いが命取りになるのが戦場だ。すぐに測距を完了させた電少佐達の砲撃がロ級に途切れることなく降り注ぎ、水柱が上がる。水柱が収まった時にはロ級の姿は海面には無かった。
最後のロ級撃沈の少し前に残り1体のタ級とスターク・ジェガンとの勝負はついた。スターク・ジェガンは蹴りを喰らわせ、タ級が態勢を崩した瞬間を狙い、心臓部付近にビーム・サーベルで刺突した。タ級は目を見開き、口から血を吐き出して、ゆっくりと倒れて沈んでいった。
「なかなか良い初陣だったな、森原中佐。」
「はい、閣下。しかし、霞大佐の艦隊が後詰で控えていてくれたからこそ出来た戦法です。」
「謙遜するな。その状況をしっかりと活かしたのだから、君たちの手柄だよ、中佐。電少佐達が戻ってきたら褒めてあげるといい。ああ、ジョンソン上級曹長にはこれを渡したまえ。これのほうが彼は喜ぶだろう。」
「これは?・・・葉巻ですか?」
「そうだ、彼の好みに合うとよいのだが。私は
「お気遣いいただきありがとうございます。」
「気にしないでいい。さて、『ガルム隊、霞大佐、作戦終了だ。帰還するように。』」
『ガルム隊、了解。』
『こちら霞。なんだか不完全燃焼だけど了解したわ。』
「『日本近海が平穏なことはよいことさ。』」
『そうね。帰ったら甘い物が食べたいわ。通信終わり。』
ガルム隊がそれぞれ艦娘とジョンソン上級曹長をピックアップしていくのを、森原中佐と共に眺める。全員の搭乗が完了しガルム隊が『RTB』の通信をよこしてくる。森原艦隊の初陣が上手くいって良かった。
見てくださりありがとうございました。
次回は近いうちに投稿したいと思います。