深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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かなり期間が開いてしまって申し訳ありませんでした。


第58話 空挺

『降下まであと60。』

 

『各員、装備の最終確認。』

 

『ロードマスターより機長及び降下要員へ、カーゴベイ・ハッチを開きます。』

 

『小隊長。各員、最終確認終了です。』

 

『よし、降下準備完了。目標の変更も無し。訓練通りにやるぞ。』

 

『『『了解。』』』

 

『降下まであと10。・・・5、4、3、2、1。降下開始!!』

 

『降下開始だ!!降下、降下。』

 

 1万mを飛行中のC-1のカーゴベイから暗闇の夜空に飛び出す映像が“くらま”のC.I.Cに設置されたモニターに表示されている。俺はそれを見ながら牧原大佐に聞く。

 

「上手くいくだろうか?」

 

「どうでしょう?閣下とジョンソン上級曹長の訓練を1週間とはいえ受けたのですから大丈夫でしょう。」

 

「なら、いいがね・・・。」

 

 腕を組みながらモニターを睨むように見る。ディスプレイには複数の映像が同時に映っており、降下中のRGM-86Vジム・ナイトシーカーの様子がよくわかる。

 

 今回の作戦は陸軍第1空挺団に新設された特務機動装甲小隊のうち小隊長の大尉含め10名が参加した夜戦になっている。海軍のP-3Cが夜間哨戒で発見した日本近海の深海棲艦艦隊に対する夜間迎撃を艦娘艦隊によるヘリボーンではなく、ヘリよりも航続距離のあるC-1輸送機によって輸送されたMS艤装を着込んだ空挺団により高高度降下襲撃を仕掛ける。

その成果如何(せいかいかん)で今後の部隊運用を勘案するというのを統合幕僚監部と陸軍のお偉いさんから聞かされている。

 

 ナイトシーカーの中身は形式番号でもわかる通りジムⅢそれも高性能のヌーベル・ジムⅢとなっている。スターク・ジェガンには性能面で劣るが生産コストを考えるとここが限界だった。なにしろ1機作るごとに大型召喚建造に掛かる最大資源の3~4倍を持っていく。それがお偉いさんたちの頭を悩ませている。ちなみにスターク・ジェガンはスペックダウンをして6倍でジョンソン上級曹長の愛機は8倍だそうだ。

 

『イェーガー1。目標を補足。攻撃を開始する。各員、攻撃自由。制動は高度50で最大出力だ。』

 

『『『了解。』』』

 

 敵艦隊からの対空射撃の中を降下し続ける映像が映し出されているイェーガー1の画面にZやリゼルが使用している長銃身のビームライフルが映り光線が幾条も海面に向かっていく。すぐに爆発が海面上で起こる。巡洋艦級と駆逐級に命中したらしく対空射撃の濃度が薄くなった。優位に進められている戦闘を眺めながら、

 

「“くらま”と金剛少佐達を動かす。敵艦隊群の後方距離6万の位置だ。」と命令を下す。

 

「了解。しかし、近すぎませんか?夜が明けると空襲の恐れがありますが。」

 

「敵の艦載機が発艦できる時間になるまでに決着がついていなければ、控えの我々が手を出すことを許可されているのを忘れたのかい?」

 

「いえ、忘れてはいませんが・・・。」

 

「なあに。保険だよ保険。本艦と金剛少佐達が戦闘に参加することは無いだろうさ。」

 

「はい、閣下。『航海長、北東方面に進出。船務長、敵艦隊群との距離が6万5千になったら艦娘艦隊を降ろす。準備を頼む。』」

 

『『了解。』』

 

 また、意識をディスプレイに映し出される映像達へと向ける。全員無事に着水できたようで、海面を滑るように移動している。今回確認された深海棲艦艦隊は5つ。速力から推測して戦艦中心の打撃艦隊という予想だったが、少し外れたな。2つは機動艦隊だ。夜間の戦闘では足枷にしかならないのに、なぜこのタイミングで岩手近海に現れたのか。まさか、無差別爆撃でもするつもりだったのか?

 

 その答えはすぐにわかった。

 

『小隊長、敵空母より敵機の発艦を確認!!あの金色を纏った目が青く光っている奴です!!データにはありません。』

 

『新種か!!総員、敵機の撃墜を最優先だ!!データで見た艦載機と形が違う。油断するな!!』

 

 確かに映像でも確認ですることができる。1体だけ特別なヲ級がいる。

 

「すぐにデータを取れ。新種だ。」

 

「厄介ですな。夜間の空襲というのは。」

 

「全くだよ、大佐。少し前の自分を殴ってやりたいね“油断しやがって”とね。」

 

「しかし、つくづく我々の常識外のことをしてきますね。」

 

「ああ、あの“尻尾付き”のレ級もだな。あれは、反則技だよ。」

 

「しかし、やってやれないことも無いのではないでしょうか?」

 

「うん?どういうことだい大佐。」

 

「深海棲艦に出来ることなら時間はかかるでしょうが妖精さん達がどうにかしてくれそうな気がするのです。」

 

「あー、確かに。俺や“くらま”や“しらね”という前例もあるからなぁ。」

 

「そういうことです。しかし、空挺は優秀ですね。もう敵機を撃墜し終わったみたいです。」

 

 牧原大佐の言葉通り、最後の1機が頭部バルカンの連射を浴び爆散した。そこからは、特にイレギュラーも無く掃討戦の様相を(てい)していた。10体のナイトシーカーは2体1組のエレメントを組み、効率よく深海棲艦を沈めていく。あのビームライフルはロング・ビーム・サーベルとしても使えるからか、積極的に接近戦を行なっている。

 

 というか、ナイトシーカーの威圧感すごいな。中身はヌーベル・ジムⅢなのにあの頭部装甲のおかげで凶悪に見える。爆沈した深海棲艦の返り血も浴びているからかもしれないが。ビームが(きら)めくたびに深海棲艦が沈んでいく。逆に深海棲艦の攻撃はナイトシーカーの機動力によってほとんどが回避されている。追加されたブースターは伊達では無いようだ。

 

 小一時間の戦闘により深海棲艦艦隊群は文字通り全滅した。新型ヲ級というイレギュラーもあったがよく戦い抜いたと思う。特務機動装甲小隊はこのまま海上をC-1との会合点まで移動し、持ち前の推力を活かして海面からジャンプしてカーゴベイからC-1へと再搭乗する手筈になっている。推進剤の残量も十分あるようなので“くらま”で回収しなくても大丈夫なようだ。今のところは。

 

「大佐。C-1に全員が再搭乗するまで現海域に(とど)まる。」

 

「了解。・・・失敗しないとは思いますが?」

 

「ああ、訓練では上手くいっていたみたいだが、今回は戦闘があったからな。念のためだ。待機所に行ってくる。」

 

「了解。」

 

 格納庫の真下に設置されている艦娘待機所には金剛をはじめとした天龍、青葉、島風、満潮、曙の6人が(くつろ)いでいた。

 

「いよお、君たちの出番は無さそうだよ。」

 

「Oh、テートク。確かにモニターで見ていましたが、陸軍の皆さん圧倒していましたネー。でも、ヲ級が夜間空襲を仕掛けてくるとは思いませんデシタ。」

 

「ああ、それは俺も驚いた。砲戦を仕掛けてくるヲ級は確認されていたが夜間空襲を仕掛けてくるヤツは今回が初めてだ。まあ、もしかすると他の国では既に交戦済みの可能性もあるがね。」

 

「情報を秘匿しているってことかしら?」満潮が尋ねてくる。

 

「さあ、どうだか。日本も含めて国のお偉いさん方の考えることなんてわからんよ。」

 

「まあ、そうね。変なこと聞いて悪かったわ。」

 

「しかし、オレたちの出番は今回は無しかー。」

 

「いいじゃないですかー。戦闘せずに出撃手当を貰えるんですから。青葉は欲しいカメラ貯金をしていますから!!」

 

 天龍が頭の後ろで手を組みながら愚痴る。青葉が妖精さん製コンデジ以外にカメラを求めているのは知ってはいたけど貯金をしていたのは知らなかったなあ。

 

「まあ、敵の新種も確認できたし結果的には良かったのかもね。提督はどう思っているのよ。」曙が伸びをしながら聞いてくる。

 

「まあ、俺も結果的には良かったとは思っているさ。ただ、ここにきての新種だからなあ・・・。また、大規模攻勢に出るんじゃないかと心配ではあるな。ただ、索敵網の限界があるから難しい所だよなあ。」

 

「ふーん、そこまで考えているのね。油断しているよりかははるかにマシね。」

 

「油断できるもんかね。こちとら1回死んでいるんだから。」

 

「そういえばそうだったわね。提督も一応、艦娘(こちら)(がわ)に近い存在だったわね。」

 

「ねえ、ねえ、提督ー。帰還するだけなら少し海上を走りたいんですけど。」

 

 島風がゆるーく伸びた状態で聞いてくる。

 

「んー、そうだな。いいぞ。ちょっと待て。・・・『牧原大佐。夜間航行訓練を希望する艦娘を降ろす。』」

 

『了解。両舷微速。格納庫及び後部甲板は艦娘の発艦準備。』

 

「何人降りる?」

 

 全員が手を挙げた。

 

「『牧原大佐。希望者は全員だ。通常通りの発艦手順でお願いする。』」

 

『了解。』

 

「そんじゃまあ行ってこい。あまり“くらま”から離れすぎるなよ。」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 元気なことだ。俺はそのまま待機所を出て後部上甲板に出る。遠くの海上では時折、光が尾を引いて昇っていくのが見える。方角的に空挺がC-1に回収されているところなのだろう。

 

 格納庫のシャッターが開く音と共に金剛たちが出てきた。

 

「金剛少佐、敵艦隊は確認されていないがくれぐれも気を付けてくれ。」

 

「了解デース。それでは行ってきますネー。」

 

 手を振りながらスロープで海面に降りていく。俺は敬礼でそれを見送りC.I.Cに戻る。

 

「C-1から通信がありました。“全隊員の収容を完了。帰投する。”とのことですよ。」

 

「ありがとう、大佐。」

 

「金剛少佐たちは前と比べますとだいぶ柔らかくなってきていますね。」

 

「ああ、だがそれも同じ柱島泊地の仲間だからだろう。よその鎮守府に行けばどうなるだろうな。」

 

 そう言いながら金剛たちのヘッドカメラの映像をモニターで眺める。島風は強化された俊足を()かして“くらま”の前に出て、踊るような機動をしながら索敵・警戒に就いている。青葉と満潮、天龍と曙がそれぞれ“くらま”右舷側と左舷側の索敵・警戒に、金剛が後方の索敵・警戒に就いている。

 

「そういえば、金剛少佐達を見て思い出したのですが“近接戦闘パッケージ”でしたか、あれは量産なさるのですか?」

 

「あれはコストが馬鹿にならないからウチだけの試験運用で終わるだろうな。ミク達妖精さんには悪いが。」

 

「まあ、確かに柱島泊地の艦娘さん達とよその艦娘さんでは、能力に大分差があるみたいですからね。島風少佐のように素早く敵の懐に飛び込み喉を()き切るという芸当はなかなか難しいでしょう。」

 

「全く、喜んでいいのかどうなのかだな。だが、ミク達には感謝しているよ。」

 

「それは小官も同じ思いです。“くらま”を改造していただけなければ、深海棲艦と互角以上に戦うことなどできなかったでしょうから。」

 

 そんで後日、幕僚監部に呼び出され特務機動装甲小隊に関する意見を求められたけれど、C-1の航続距離とナイトシーカーの推進剤の関係でどうしても作戦行動半径が狭いために主戦場が陸から近い所になってしまうのが難点ということのみを伝えた。練度やナイトシーカーの性能は問題なかったからな。はあ、これで仕事が1つ片付いたー。




見てくださりありがとうございました。
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