深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第63話 初船団護衛任務・その1

 メイヴ配備の艦載機隊をガルーダ隊、ジム・スナイパーⅡ艤装配備の部隊を第1特機中隊として呼称するようになり、1週間が過ぎた。その間の両隊の訓練量は凄まじく、ガルーダ隊は改装された“おおすみ”への発着艦を問題なく行えるようになり、第1特機中隊は俺とジョンソン上級曹長との演習で勝ち星を上げることができるようになった。

 

 ま、そうなると必然的に新しい任務が割り振られるわけで、俺は一通のメールと睨めっこしていた。

 

「はい、お茶。どうしたのよ。腕を組みながらパソコンの画面をじっと見つめて。」

 

「おお、霞、ありがとう。これ、見てくれよ。」

 

 そう言って、霞を俺の側に招く。

 

「なになに、“明朝、大阪港から出港する鹿児島経由沖縄行きの船団を護衛せよ。他の鎮守府からの増援について緊急時以外は無い。航空支援は状況に応じて要請せよ。護衛艦は柱島泊地所属の艦のみとなる。”あら、長距離船団護衛任務の予行演習みたいね。護衛する民間船は3隻のみだし。」

 

「いけるかねぇ?」

 

「“おおすみ”出すんでしょ?なら、大丈夫じゃないかしら。ガルーダ隊の機動なんて機銃じゃ追えないわよ。それに第1特機中隊の超長距離狙撃もあるわけだから、大丈夫じゃないかしら。艦娘艦隊は以前話していた通りの編成を試してみる?」

 

「扶桑、赤城、加賀、天龍、龍田、鈴谷、熊野に加えて俺の8人で交代しながら6人編成を維持するってやつか。」

 

「ええ。私としては駆逐艦がいない分、夕張さんを加えてもいいとは思うけどね。」

 

「それ、前も言っていたよな。確かに実験艦として様々な兵装を必要以上に搭載できる彼女の実力は高い。が、整備のためにミクと妖精さん達を何名か連れて行くから留守番組の明石の補佐をして欲しいんだよ。」

 

「全く、お優しいことね。」

 

「優良な職場でありたいからな。」

 

「“くらま”と“しらね”はどうするのかしら?」

 

「森原艦隊の警備行動の際の乗艦にするから置いていく。実際の長距離船団護衛任務でも置いていくつもりだからな。他の国の目がある。」

 

「目立っても今更だと思うけど。」

 

「それを言われるとな・・・。ま、とにかく任務だ。扶桑、赤城、加賀、鈴谷、熊野、天龍、龍田を1300に執務室に集合するように伝達を頼む。俺は、ガルーダと第1特機、“おおすみ”に行ってくる。」

 

「了解したわ。」

 

 手早くメールを印刷し、俺は執務室を出てガルーダ隊の搭乗員室に向かう。丁度、2機のメイヴが飛び立っていく。重力なんて知らんとばかりにドンドン上昇し雲の中に消えていった。それを見届け、ガルーダ隊の搭乗員室の扉をノックし中に入る。八島中佐達が起立しようとするので手で制す。

 

「そのままで結構ですよ。上から命令が来ました。これです。どうぞ、中佐。」

 

「ありがとうございます。おかけになってください。おい、誰か閣下にお飲み物を。」

 

「ああ、大丈夫。気にしないでください。この後も2カ所いかないといけないので。」

 

「わかりました。・・・ほう、ついに実戦ですか。」

 

「はい、実戦です。奴らが出てくればですが。」

 

 その言葉にガルーダ隊全員の目つきが変わる。狩人の目だ。

 

「模擬戦ばかりでしたからね。いい腕鳴らしになるでしょう。」

 

「頼もしいですね。ところで空間受動レーダー、“フローズンアイ”の使い勝手はどうです?」

 

「いいですね。RCSの小さいメイヴを捉えることができるので、深海棲艦共の艦載機も楽に見つけられるでしょう。他の索敵機器の能力も高いですから。主翼上ハードポイントに対空ミサイル、主翼下と胴体下部のハードポイントにレーザー機関砲と気化爆弾、クラスター爆弾、対艦ミサイルを積めば偵察艦隊程度なら殲滅できるでしょうな。」

 

「では、その際は大いに期待しましょう。自分は第1特機と“おおすみ”に行きますので、不明な点がありましたら、執務室に霞准将がいるので彼女に言伝(ことづて)してください。」

 

「了解しました。」

 

 敬礼に答礼し、搭乗員室を退室する。第1特機の所に向かう途中でMS艤装を着込んだ第1特機の面々と遭遇した。海上戦闘訓練から戻ったばかりのようで、ブースターの噴出口の周りには海水が蒸発して塩が付着している。彼らが敬礼をしようとするのを手を軽く振って遮る。

 

「中条大尉、任務です。訓練じゃない、実戦です。ま、そのままの状態だと窮屈でしょうから、艤装を外しておいてください。艤装のメンテもあるでしょうからまた後で寄ります。」

 

「了解しました。閣下。」

 

 そのまま、岸壁沿いに歩き“おおすみ”の元にたどり着く。“くらま”は森原艦隊と共に四国沖の哨戒任務に出ており“しらね”と“おおすみ”が係留されている。“おおすみ”の下にたどり着き見上げる艦体は延長され200mを超えて、全通甲板はさらに前方と後方に十数m延び、舷側エレベーターが増設されている。そのまま艦内に入り、艦長室に向かう。ノックをして名前を告げると、出原中佐が扉を開き中に招いてくれた。コーヒーの準備を頼もうとしたのを断り、用件を伝える。

 

「ふむ、純戦闘艦ではない本艦にガルーダ隊、第1特機中隊、それに閣下が直率する艦娘艦隊が1個艦隊分と予備人員ですか。深海棲艦共にやられるヴィジョンが浮かびませんな。ああ、ですが民間船は流れ弾に留意しなければなりませんな。そうなれば機関を入れ替えて速力が上昇し、波動防壁を使用できる本艦が盾になりましょう。」

 

「大丈夫ですか?各部隊の離艦や着艦作業があるでしょうに。」

 

「まあ、何とかなるものですよ。お任せください。」

 

「それならば、そのお言葉を信じます。今回の作戦の成否がこの艦にかかっています。よろしくお願いします。」

 

「了解しました。」

 

 答礼をしながら艦長室を出て“おおすみ”を下船する。そのまま第1特機中隊の所に向かう。MS艤装の格納庫に入ると、妖精さんと夕張が陸軍の整備員と一緒にジム・スナイパーⅡのメンテナンスをしていた。俺に気付いた夕張が声をかけてくる。

 

「あ、提督。中条大尉は事務室にいますよ。」

 

「ありがとう、夕張。どうかね、整備の方は?」

 

「一応、今は手が空いていたんで手伝っていますけど、私と妖精さんがいなくても陸の整備士さんだけで十分にできると思います。まぁ、こればっかりは実戦を経験しないとわからないですけど。」

 

「いや、それで十分だ。ああ、これをあげよう。食堂の甘味券だ。明石と使うといい。」

 

「ありがとうございます。提督。」

 

 にっこりと笑う夕張の頭を撫でるとそのまま事務室に向かう。

 

「中条大尉、湊です。入ります。」

 

「どうぞ、閣下。」

 

 すぐに第1特機中隊の隊員が扉を開けてくれたので礼を言い、大尉に今回の任務を伝える。

 

「ようやく我々も役目を果たせるのですね。」

 

「あまり気負わないように。MS艤装があるとはいえ、被弾すれば損壊する場合もあるのですから。」

 

「はい、本中隊の全員が無事に帰還できるように指揮を執ります。」

 

「よろしい。訓練後の忙しい時間に申し訳ありませんでした。それでは失礼します。ああ、大尉はもう少し話しがあるので着いて来てください。」

 

「了解。」

 

 MS艤装格納庫に行き作業を眺めながら話しをする。人目も少ないのでいつもの口調に戻る。

 

「大尉、率直に聞かせてください。貴官らは人型の敵を殺せますか?」

 

「それが命令であれば。はっきりと言わせていただければ我々陸軍は対艦誘導弾を配備していた部隊や高射特科隊、攻撃ヘリコプター隊以外は深海棲艦と直接の交戦はありません。それこそ、先日の習志野の空挺の行った攻撃が初めての直接交戦になりますね。そう言えば、交戦後に小隊から中隊へと名称変更を行わせたというのは本当でしょうか?」

 

「ああ、あれですか。本当ですよ。2機の“ナイトシーカー”を追加配備し中隊にしました。MS艤装は原作通りに3機1個小隊と扱うようにも決めました。あの時は手探りでしたからね。」

 

「なるほど。そんな裏話があったのですね。ありがとうございます。」

 

「いえいえ。それで、人型の敵を殺す覚悟のほどは?」

 

「できています。それが女性の形をしていたとしても。」

 

「実に素晴らしい。指揮官の覚悟無くして部下はついてきませんからね。明日からの数日間は頼りにさせてもらいますよ。」

 

「はい、閣下。」

 

「それでは。」

 

 そう言って第1特機中隊の隊舎を後にして執務室へと戻る。

 

 今日の昼食は執務室で済ませた。

 

 1300には扶桑、赤城、加賀、鈴谷、熊野、天龍、龍田の7人が執務室に集まった。任務について説明をすると、扶桑は不安顔になり赤城と加賀は平常のまま、鈴谷と熊野は少し緊張した感じで天龍はやる気に燃え、龍田は笑みを浮かべている。

 

「全員が練度の上昇で改造を受け終わっている。自信を持て。今回はいつも通りに深海棲艦を沈めるだけではなく、民間船の護衛がある。難易度は高いがこれから増えてくる任務のうちの一つだ。腹を括ってくれ。」

 

 そう言うと、赤城が挙手をする。

 

「提督、質問があります。」

 

「おう、疑問点はなんでも聞いてくれ。答えられる範囲だがな。」

 

「ありがとうございます。では、今回の旗艦はどなたが務めるのでしょうか?」

 

「鈴谷だ。次席艦は熊野。理由も言った方がいいな。まず、今回の作戦、数日以上は確実にかかる。初の泊地に帰港せずに行うものとなる。それをふまえて、全員の役目を考えた。扶桑を旗艦にするのを最初に考えたが、最大直接火力に装甲防御を持っているので主に昼戦に投入したい。であるからその次に火力、防御も高く、夜戦も得意な重巡の鈴谷と熊野の2人を選んだ。空母の赤城と加賀の2人を旗艦にしなかったのもそうだ。それで、軽巡の天龍と龍田だが、2人には対空砲と爆雷を目一杯積んでもらい、艦載機・潜水艦キラーとして縦横無尽に駆け回ってもらうために艦隊指揮は荷が重いと思って外した。決して指揮能力が無いと言っているわけではないから誤解しないように。俺が駆逐艦の霞を旗艦にしたのは何回も見ているだろう?艦種で区別はしない。ただ、今回は役割で区別した。それだけだ。これでよかったかな赤城?」

 

「はい、詳しく説明してくださりありがとうございます。」

 

 赤城が綺麗なお辞儀をしながら礼を言う。そしてすぐに手が挙がる、天龍だ。

 

「提督、オレからもいいか?装備面でのことなんだが近接戦闘パッケージは全員装備か?」

 

「ああ、そのつもりだ。何か問題があったか?」

 

「いや、確認だ。提督は格闘戦が起きると思っているのか?船団護衛で。」

 

「さあな。だが、有った方が何かと役に立つだろう。特に今回は天龍と龍田には駆逐艦並みの働きを期待している。船団の真正面を警戒していたら敵と遭遇しましたって場面もあるだろう?」

 

「ま、あるだろうな。」

 

「その場合、天龍、お前は退くか?」

 

「・・・あー、退かないかもな。援護を要請して敵を釘付けにするかな。」

 

「そんで、お前なら乱戦に持ち込んで、ご自慢の太刀で敵を切り裂くわけだ。敵は誤射を恐れて発砲できない。さらに接近して、近接戦闘パッケージのM6Hハンドガンとナイフ、閃光手榴弾で敵をさらに混乱させる。違うか?」

 

「全くもってその通りになりそうだぜ。なあ、龍田。」

 

「ホントね~。流石は提督だわ~。ちなみに私にも同じようなことを期待しているのかしら~。」

 

「いや、龍田は龍田なりの戦い方があるだろう?大破しなければいつも通りでいいさ。」

 

「了解しました~。」

 

「さて、他に質問は?ないなら鈴谷と熊野以外は解散。宿泊用の荷造りでもしておくんだ。」

 

「「「「「了解。」」」」」

 

 敬礼に答礼。扶桑、赤城、加賀、天龍、龍田が退室し、鈴谷と熊野が残る。

 

「霞、茶と菓子を頼む。鈴谷、熊野、ソファにかけてくれ。任務の中身をつめるぞ。」

 

「了解。玉露でいいかしら?」

 

「おう、頼んだ。」

 

 霞が給湯室に向かう。鈴谷と熊野の2人がソファに座ると鈴谷が口を開く。

 

「無理無理無理、旗艦なんて無理。」

 

「無理じゃない。命令だ。旗艦をするんだ鈴谷。」

 

「鈴谷のことが嫌いなの提督!?」

 

「んなわけあるか。好き嫌いで旗艦を決めたりしねぇよ。理由はさっき言った通りだ。大丈夫。俺もいる。熊野もいる。1人で気負うな。悩んだらすぐに相談しても構わない。」

 

「そうですわ。(わたくし)がおりましてよ。」

 

「う~、提督~、熊野~。・・・わかった。やるよやればいいんでしょ。」

 

「おう、そのいきだ。任務達成のあかつきには何か言うことを聞いてやろう。」

 

「・・・ホント?」

 

「ああ、可能な範囲で頼むぞ。大金が欲しいとか権力が欲しいとかは無理だからな。」

 

「わかっているってば。それじゃ、頑張りましょうかねー。」

 

 「おー」と鈴谷が両手を挙げていると霞が戻ってきた。さて、本題の任務の中身についてつめていきますかね。




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