深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第64話 初船団護衛任務・その2

 早朝、大阪港で護衛対象の3隻の民間船と合流する。陣形は天龍が先頭に立ちそれに続くように“おおすみ”と民間船。両翼を鈴谷、赤城ペアと熊野、加賀ペアが固め、最後尾に扶桑が続く。龍田は“おおすみ”内で待機中だ。上空にはすでにガルーダ3、ガルーダ4が発艦して哨戒飛行を開始している。

 

「“瀬戸内海を使うな”と当日に追加命令が来るとはなぁ・・・。」

 

 “おおすみ”のCICで出原中佐を相手に愚痴る。

 

「まあ、仕方がありません。新たに3隻も追加されてしまったわけですから。瀬戸内海は狭すぎます。」

 

「自分も元艦乗りだからそれはわかるが、だからといって・・・。いや、愚痴は此処までだ。任務に集中しよう。」

 

「そうですな。本船団の現在位置は此処です。徳島県蒲生田岬の南西49.2km地点です。同県室戸岬沖で変針し、鹿児島県佐多岬沖を経由し錦江湾(鹿児島湾)へと入ります。距離にして575km越えです。本船団は約11ノットで航行中ですので約29時間後には鹿児島の桜島にお迎えされることでしょうな。」

 

「・・・長い29時間になりそうだな。」

 

「ええ、ですから、閣下もその装備を外しておかれてはいかがですか?」

 

 そう、俺はミョルニルアーマーを着込んでCICの中に立っている。はっきりと言って異様な光景だろう。しかし、常人を超えた能力を持つこの体にはほとんど負担にならない。しかし、他のCICの隊員達には圧迫感があるだろう。俺は小声で、

 

「大丈夫です。自分がいると皆が必要以上に緊張するでしょうから散歩でもしてきます。何かあったら呼び出してください。周波数は大丈夫ですね?」

 

「はい、閣下。」

 

 出原中佐も小声で返してくれる。さてとサッサとCICから退散しましょうかね。

 

「あとは任せた、艦長。」

 

「了解。」

 

 そう言って軽く敬礼を互いにして俺は退室する。そのまま、格納庫兼艦娘等発艦口へと降りる。ガルーダ隊と第1特機中隊に声をかけながらメイヴとジム・スナイパーⅡの様子を見る。どちらも整備員がしっかりと整備しているようで表面が鏡のように反射してミョルニルアーマー姿の俺を映す。

 

 今度はリニアカタパルトと着艦装置が設置された最上甲板に向かう。季節的には秋から冬に入りかけている時期だからか空が澄んでいるように思う。風が強い甲板上で“レインボーギャング”こと甲板作業員達がシミュレートを行なっている。アメリカ海軍での役割分担をそのままパクってきた、というか第7艦隊から直伝してもらっているのでかなりできはいい。

 

 その様子を横目で見ながら、艦の先端に向かう。10km先で天龍が対潜運動の“之字運動”をしながら航行しているのが見える。ミク達妖精さんが艦娘の機関をかなりいじくっているからかなりの高速で海面上で之字運動を行なっている。幸い、まだ1隻も敵潜とは遭遇していない。まぁ、日本近海の海中には通常潜水艦隊が広く展開して潜水艦狩りを行なっているからなぁ。数で押されたら不利だけど。

 

 そんな感じで天龍を眺めていたら、通信が入る。

 

『どうした、提督。艦内が息苦しくなったか?』

 

「『こちとら陸上勤務前は艦乗りだぞ、そんなわけあるか。上手くいっているかの確認だよ。そっちこそ調子はどうだ?龍田と変わらなくても大丈夫そうか?』」

 

『オレは大丈夫だ。敵さんも出てこないしな。龍田にはゆっくりしておいてくれと伝えてくれよ。』

 

「『了解。』だとよ、龍田。」

 

 俺が天龍を眺めはじめた頃ぐらいから後ろにいた龍田に向かってそう言う。龍田は着けていたヘッドセットを外して、笑いながら、

 

「天龍ちゃんらしいわ~。でも、無理をさせたくないわね。」

 

「わかっているさ。予定通りにガルーダ3、4が帰艦するのと同じころに交代だ。」

 

「了解しました~。」

 

 そう言って龍田は艦内に戻っていく。さてさて、敵は仕掛けてくるかね?

 

 そう思っていると出てくるモノで、赤城たちの航空攻撃が不可能になる日没直前を狙うように南西から深海棲艦共が現れた。戦艦級と重巡級を中心とした直接打撃艦隊群だ。先行して潜水艦との接触もあったが龍田が難なく沈めてくれた。

 

 “おおすみ”が増速して艦首を深海棲艦側に向ける。俺はリニアカタパルトに取り付けられたオプション、ミョルニルアーマー及びMS艤装射出用脚部ロックシステムに固定され、若干、前かがみになりブースターの出力を徐々に上げながら射出に備える。カタパルトオフィサーが発艦合図を出すとともにブースターの出力を最大にする同時にカタパルトが作動し、一気に350km/h近くまで加速し、発艦する。

 

『目標を捉えました。これより援護射撃を開始します。』

 

 俺の発艦が終わり、ジェット・ブラスト・ディフレクターが甲板に収納されると“おおすみ”の最上甲板に膝立ちで並んでいるジム・スナイパーⅡ10体が現れる。それらのロング・レンジ・ビーム・ライフルからビームが次々と放たれる。まもなく鈴谷達との交戦距離ということで砲撃態勢に入っていた戦艦ル級を数条のビームが貫く。弾薬にでも命中したのか轟音を立て爆沈する。他にも駆逐級が3体ほどビームに貫かれて沈んでいく。ビームが伸びていった遠くの方でも爆発したような光と音が確認できる。

 

『こちら第1特機中隊。これよりロング・レンジ・ビーム・ライフルの冷却とチャージを開始します。』

 

『こちらガルーダ2。戦果確認中。戦艦級3、巡洋艦級10、駆逐級20の撃沈を確認。』

 

 援護射撃が止み通信が入る。着水した俺と鈴谷たちは深海棲艦と交戦しながらそれを聞く。

 

「初陣にしては上々だと思うがどうだろうか?扶桑はどう思う?」

 

「ええ、今後も期待してよいかと思います。提督。射撃精度も素晴らしいものでした。」

 

 隣で主砲を斉射しながら扶桑が応える。戦線を維持しているのは扶桑、鈴谷、熊野、俺の4人で龍田は天龍との交代で対空・対潜兵装満載の状態なので、対潜警戒をしながらの後方からの援護射撃に徹している。赤城と加賀は航空戦力が使用できないので高射砲の水平射撃で援護をしてくれている。

 

「クソっ、やはり駆逐艦が欲しいな。」

 

 扶桑に愚痴る。

 

「召喚建造をしてこなかったツケですよ、提督。」

 

「仕方ないだろう。他のモノに優先して資材をまわしていたからな。ま、自業自得というところか。」

 

「それ、自分で言う?」鈴谷が呆れた顔で言う。

 

 反論しようと口を開きかけたところで、ガーディアンシールドに衝撃が走る。かなりの衝撃だ。攻撃してきたのは例の尻尾付き“航空高速戦艦レ級”だ。ご自慢の尻尾で一撃をくらわしてきたようだ。

 

「鈴谷、俺がコイツの相手をする。他は任せた。」

 

「了解、鈴谷達に任せてよ。扶桑さん、行くよ。赤城さんは援護射撃を継続してね。龍田さんは潜水艦に注意を払って、潜水艦を発見したらそっちを優先して。」

 

「『ガルーダ隊は敵の増援を発見した場合は、攻撃をして足止めしておいてくれ。』『第1特機中隊、これより混戦になる。狙いは慎重にな。』」

 

『ガルーダ1、了解。』『ガルーダ2、了解。』

 

『第1特機、了解しました。』

 

 さあ、レ級との殴り合いだ。といっても、ビーム・サーベルを展開したら距離をとられてしまった。俺の情報が共有されているのか?いや、交戦した深海棲艦は全て沈めているから知りようがないはずだ。ふむ、直感的な警戒心か?

 

 とりあえず、ビーム・サーベルを収め、アサルトライフルを構えて連射する。命中弾がレ級のコート?に弾かれる。取り敢えず、装填している弾倉分を全弾撃ち込む。弾かれてもダメージが入った箇所はあるようで血を流している。俺とレ級の戦っている背後では第1特機中隊からの援護射撃が再開されたようでビームの明かりが周囲を照らし、盛大な爆音が響き渡る。

 

 俺は空になったアサルトライフルの弾倉をすぐに交換し、射撃しながら距離を詰める。移動速度はこっちのほうが速い。すぐに近接戦闘の範囲に捉える。アサルトライフルを腰に懸架し、ビーム・サーベルを展開する。今度は退く間は与えない。

 

 出力を上げ刀身を伸ばしたビーム・サーベルで艤装付きの尻尾を切り裂く。尻尾が叫び声をあげているが無視して返す刀で尻尾を切り落とす。今度はレ級本体が叫んだ。だがそれもすぐに止む。横薙ぎしたビーム・サーベルが首を刎ね飛ばしたからだ。力を失ったレ級だったものはゆっくりと沈んでいく。それと同時に通信が入る。

 

『こちらガルーダ1。敵艦隊の殲滅を確認。近海にも反応なし。』『ガルーダ2も敵の反応を確認できない。』

 

「『わかった。ガルーダ1、2は哨戒任務に戻れ。』『艦娘は全員“おおすみ”に帰艦。補給と整備、休養だ。』『第1特機中隊は各機、艦娘が防衛していた位置で護衛を開始。装備は各自の判断に任せる。』『“おおすみ”はソナーの感度を上げておけ。天龍と龍田の代わりに対潜警戒だ。』『以上、総員かかれ。』」

 

『『『『了解。』』』』

 

 ふう、第1目的地の鹿児島に着く前にこれかよ。沖縄に着くまでにはどのくらい戦うんだろうな。つーか、あれだな。1艦隊編成分の艦娘だけでは足りん。霞に増援を送ってもらい鹿児島で合流するように段取りをつけるか。




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