深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第65話 初船団護衛任務・その3

 “おおすみ”の艦体指令室に戻るとすぐに通信端末を起動して、霞を呼び出す。起きているか?

 

『はいはい、何かご用件かしら?』

 

 寝間着姿の霞が画面に映る。

 

「『ああ、そうなんだが、寝ていたか?私室の端末だろう?』」

 

『ええ、そうね。雑誌を読んでいたところよ。で、用件は?この時間にということは急ぎかしら?』

 

「『まぁまぁぐらい程度の急ぎ、かな。』」

 

『なによ、それ。で、詳しく話してみなさいな。』

 

 ということで、霞に先程の海戦のことと人員が足りないことを正直に話した。

 

『ま、そうなると思っていたわ。一応、即応救援艦隊としてガルム1と青葉さん、夕張さん、大淀さん、島風、雪風の5人を準備させているわ。』

 

「『その5人なら大丈夫だろう。いつこちらに?』」

 

『明朝、朝食が終わってからガルム1で空輸するわ。その時には鹿児島でしょ?丁度良くないかしら。』

 

「『そうだな。それでお願いしよう。じゃ、すまなかった。ゆっくりしてくれ。』」

 

『はいはい。あんたも気を付けるのよ。じゃあね。』

 

 そう言って、手をヒラヒラと振って霞は端末の回線を閉じた。俺は長く息を吐きながら椅子の背もたれに体重を預ける。

 

「これで、艦娘12人体制に、か。なんとかなるか。第1特機中隊にガルーダ隊もよくやってくれているしな。とりあえず、休むか。」

 

 着替えてベッドに横になるとすぐに睡魔がやって来て深い眠りに落ちる。

 

 翌朝、季節的に日も上りきらない時間に目を覚まし、いつものルーティンをこなしていく。“おおすみ”は最上甲板が広いので、ランニングの場所にも困らない。ランニングを終えて、一息ついていると、

 

「おはようございます、提督。朝からトレーニングなんて昨日の夜の疲れはありませんの?」

 

 そう言いながら熊野が近づいてくる。ポニーテールが風になびいている。

 

「そこまで疲れてはいないかな。熊野はどうだ?」

 

(わたくし)は大丈夫でしてよ。」

 

「それじゃ、大丈夫じゃない奴がいるんだな?鈴谷か?」

 

「ご明察。やはり、艦隊旗艦は精神的なプレッシャーになっているようですわ。」

 

「なるほどな。んじゃ、まあ、飯の前に顔でも出しとくか。部屋、入るぞ。」

 

「ええ、そうなさって。食堂の席は確保しておきますわ。」

 

 そこで熊野と別れて、艦内の艦娘居住区画に向かう。女性である艦娘に艦内でも安らげるように特別に作った区画だ。“しらね”と“くらま”にも在る。入るには憲兵に許可を貰わないと入れないようになっている。ちなみに、俺の部屋はその区画のすぐ(そば)だ。

 

「おはよう。鈴谷少佐に用事があるのだが、入室許可をお願いしたい。」

 

「おはようございます。閣下。鈴谷少佐に確認をとりますので少々お待ちください。」

 

「ああ、それなら、これに熊野少佐から入室許可のサインをもらって、彼女の身分証を預かっている。」

 

 それを確認すると、

 

「確認いたしました。どうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

 居住区画につながる水密扉が開かれる。さて、鈴谷と熊野の部屋は・・・、ここか。ノックをすると、鈴谷の半分寝ぼけたような声が返ってくる。

 

「はぁい、だれぇ?」

 

「俺だ。」

 

「うぇっ!?提督!?」

 

「おう、入ってもいいか?」

 

「えっ、ちょっ、いいよ?」

 

「なんで疑問形なんだよ。入るぞ。」

 

 笑いながら扉を開け、部屋に入ると鈴谷が寝間着姿のまま顔を真っ赤にしてプルプルしていた。なんか可愛いな。

 

「なに、大したことじゃない。昨日の戦いはよく指揮をとれていたからな、そのことを伝えておこうと思ったんだよ。」

 

「それだけ?」

 

「それと、これな。俺のガンカメラの映像を切り取ってプリントアウトした。」

 

 それには鈴谷が前線で指揮をとりながら、敵を攻撃している姿が写っている。

 

「まぁ、初旗艦の記念にはなるだろうからな。折角だから貰ってくれないか?」

 

「あ、えっと、ありがと。」

 

「どういたしまして。さて、そろそろ朝飯の時間だぞ。その寝間着姿のままじゃいかんだろ。」

 

「あっ!もうそんな時間だったんだ。急いで準備するから一緒に行こうよ。待っといてくれない?」

 

「わかった。」

 

 そう言って、部屋を出て扉の(そば)で待つ。その間に扶桑、天龍、龍田、赤城、加賀に何をしているのか問われることになるのだが、まあ、仕方のないことだ。

 

 食堂では熊野が隅の目立たないところにキチンと3人分の席を確保していた。士官食堂?堅苦しいからあんまり使いたくないんだよな。

 

「ありがとうな。熊野。」

 

「どういたしまして。鈴谷も元気になったようでなによりですわ。」

 

「いや、俺が行かなくても、多分、大丈夫だったんじゃないか。」

 

「それは、違いますわ。姉妹ですからわかりますもの。提督から何かして戴いたのでしょう?」

 

 熊野がそう言うと、鈴谷は少し耳を赤くして俯きながら、

 

「・・・鈴谷が戦っている所の写真を貰ったの。」

 

「あら、それは何よりですわ。ちゃんと提督が貴女のことを見ていたと云うことではありませんか。ねぇ、提督?」

 

 おう、話しを振られた。

 

「ん、まぁ、そういうことになるな。」

 

 そう答えると、鈴谷がバシバシと叩いてきた。痛くはないが、俺、なんか変なこと言ったか?

 

 朝食を終えて、部屋で各々が提出してきた戦闘詳報をまとめていると、出原中佐から錦江湾(鹿児島湾)に入ったと報告が来た。これで、一息つけるかな。午後には、荷降ろしと荷積みをするそうだ。その間に柱島からの増援が到着するな。

 

 最上甲板でガルム1が着艦するのを眺める。後部ランプが開き、青葉、夕張、大淀、島風、雪風が完全装備で降りてきた。

 

「みんな、すまんな。俺の予想が甘かった。」

 

「気にしないでください。司令官。頑張りますよ!!」

 

 みんなを代表して青葉が宣言してくれる。

 

「それは、有り難いが、無理をさせるつもりはない。ま、兎に角、今は装備を格納庫に置いてくるんだ。私物はそれぞれの部屋にキチンと持っていくように。」

 

 全員が改造を受けているから護衛艦隊の戦力を底上げできるだろう。後は、イレギュラーが起こらないことを祈るのみか。




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