深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第66話 初船団護衛任務・その4

 現在、鹿児島を出発し、最終目的地の沖縄の那覇港へと南下中だ。航路は東シナ海を通るようにしている。船団の前方を天龍や龍田に代わり、対潜警戒をしながら島風が航行している。両翼は前日と変わらず、最後尾も変わらずだ。青葉、天龍、龍田、夕張、大淀、雪風は艦内待機としている。第1特機中隊も艦内待機。空ではガルーダ5、6が哨戒飛行を行なっている。

 

 C.I.Cの中でレーダーの輝点を眺めていると、通信が入る。

 

『ガルーダ5より、“おおすみ”。フローズンアイにて未確認機を発見。通常レーダーでも確認。機数は1。IFF(敵味方識別装置)応答なし。南西方向より船団に向かっている。』

 

「『ガルーダ5、目視で確認せよ。』『赤城、加賀は艦載機の発艦用意。』」

 

『ガルーダ5、了解。接近する。』『了解です。』『了解しました。』

 

 C.I.Cに設置されたディスプレイの1つがガルーダ5のガンカメラ映像を映し出す。高度2万mからの急降下だ。すぐに最高速度のマッハ3.3に到達する。そして、目標を捉える。

 

『見えた。深海棲艦の艦載機のようだ。』

 

「『ガルーダ5、攻撃許可。』『赤城、加賀は偵察機の発艦始め。偵察範囲は南西方向だ。』」

 

『ガルーダ5、了解。』

 

 “ヴォオオオ”とメイヴの20mmガトリング砲の音が響くと同時に、深海棲艦艦載機と交差し、遅れての爆発音。

 

『敵機、撃墜を確認。哨戒飛行へ戻る。』

 

 そして、メイヴは大空へと舞い戻っていく。

 

「赤城少佐と加賀少佐が偵察機を発艦完了。」

 

 オペレーターの声と共に、レーダー上に映る輝点が増える。赤城と加賀の放った偵察機だ。

 

「よし、偵察機には識別をしっかりとつけておくんだ。ガルーダ5、6にも情報を送れ。」

 

「了解。」

 

 さぁて、深海棲艦は網にかかってくれるかな。

 

 30分も経たずに赤城から通信が入る。

 

「発見しました。空母機動艦隊群です。空母機動艦隊3つと直接打撃艦隊2つで編成されています。東シナ海を北上中。」

 

「よし、『赤城、加賀は攻撃隊を編成し、空母を沈めろ。』『鈴谷、第1艦隊はあくまで船団護衛が目的だ。第2艦隊で攻撃をする。』青葉、天龍、龍田、夕張、大淀、雪風は第2艦隊として緊急出撃。旗艦は青葉。『ガルーダ5、6は足止めのためASM-2で攻撃を開始。敵航空隊が出てきた場合は交戦も許可。』」

 

『ガルーダ5、了解。』『ガルーダ6。』

 

『攻撃隊の発艦を開始します。』『鎧袖一触です。』

 

『鈴谷、了解。』

 

『青葉です。第2艦隊は5分後に出撃可能です。』

 

 よし、今のところ先手を打てているはず。

 

「閣下、第1特機中隊はどうされますか?」

 

 出原中佐が進言してくる。

 

「・・・第1特機中隊は待機だ。こちらが手薄になりかねない。代わりにガルーダ1、2を出す。」

 

 青葉達を行かせるのではなく、第1特機中隊を行かせるべきだったか?悩んでいると、ガルーダ5から通信が入る。

 

『攻撃成功。敵艦の撃沈を確認。防空軽巡2、駆逐6。これより、制空戦闘を行う。』

 

 ガルーダ5のガンカメラから送られてくる映像では、海原に8本の黒い煙があがっているのが確認できた。ガルーダ5がマッハ3で敵艦隊に近づき、ガトリング砲と対空ミサイルを斉射して一気に距離をとる。送られてくるデータと画像で敵艦載機を撃墜したことが確認できる。先の大戦時のレシプロ機程度の能力しか持っていない敵艦載機はメイヴの敵ではないことが改めて理解できた。

 

 赤城と加賀の航空隊は順調に敵艦隊へと接近しつつある。ガルーダ5、6の働きのおかげで敵要撃機とも接敵していない。つまり、被害ゼロで敵艦隊に魚雷と爆弾をお見舞いすることができるわけだ。

 

『司令官、青葉です。第2艦隊、全艦娘出撃しました。単縦陣で敵艦隊へ向かいます。』

 

「『わかった。戦果に期待するが、無理はするな。』」

 

『了解です!!』

 

 第2艦隊が船団から離れていくのをレーダーで確認する。オペレーターが詳細な進路を適宜、青葉に伝えている。

 

「ガルーダ1、2の発艦終了。敵艦隊へ誘導します。」

 

 別のオペレーターがガルーダの誘導を行う。マッハ3で飛ぶ化け物航空機が4機も制空戦闘に参加するんだ。敵の航空戦力もこれで終わりだな。

 

 ガルーダ隊4機の制空戦闘が始まってから数分で敵の戦闘機は全滅した。まさに、一方的な殺戮劇だった。マッハ3を超える簡単に超えるエンジン。滅茶苦茶な三次元運動を可能にする主翼。高度な戦術コンピューター等々を搭載したメイヴを駆るガルーダが負けるはずがなかった。そして、赤城からは朗報が伝えられる。

 

『提督、私と加賀さんの攻撃隊の急襲は成功しました。敵空母4、軽空母1を撃沈。戦艦1、重巡1を大破に近い損害を与えました。こちらの損害は被弾した機はいますが、被撃墜はゼロです。』

 

「『よくやった。攻撃隊は帰艦させろ。第二次攻撃の用意を。』」

 

『了解です。』

 

 赤城からの報告にほっと一息つく。そして、レーダーに映る第2艦隊の輝点を見つめる。空襲を受けた敵の背後から回り込むようにオペレーターに誘導させており、今のところは上手くいっているようだ。15分後には攻撃を開始できる。その間に、ミサイルと20mm弾をほぼ撃ち尽くしたガルーダ1、2、5、6を帰艦させ、ガルーダ3、4を発艦させる。

 

 ガルーダ3、4が敵艦隊上空、高度22,000mに到達したころには、20,3cm砲を搭載した青葉と大淀、夕張が砲撃を開始していた。制空権を確保しているので弾着観測射撃を電探射撃と併用して行なっている。青葉達と分かれ天龍、龍田は増速しながら剣と槍を構える。雪風はその2人の後を追うように航行している。

 

 天龍のガンカメラからの映像には、敵艦隊が接近を防ごうとあらゆる砲や機銃で攻撃してきている様子が映し出される。天龍は左手に持ったシールドで上手くいなしている。

 

『こんな攻撃じゃ、オレ達は止められねぇぞ!!』

 

 そう言いながら、艤装備え付けの14cm単装砲を撃って敵を怯ませる。相対距離が5,000mを切ったところで、青葉が魚雷発射の指示を出す。この時、第2艦隊は青葉率いる第1戦隊と天龍率いる第2戦隊にVの字形に分かれていたので発射された魚雷は敵艦隊の中心で交差し、命中する。

 

『やりました!!大型艦に命中!!敵艦隊の行き足が止まります!!皆さん、接近戦です!!』

 

『おっし、じゃあ、先陣はオレが切るぞ!!』

 

 すぐに天龍が鋭く加速して、敵艦隊の反撃を無視しながら接近し、一番手近なイ級駆逐艦に刀を突き立てる。イ級は赤い炎を傷口から吐き出しながら、小規模爆発を繰り返し沈んでいく。天龍は次にル級戦艦に狙いを定めて、シールドを顔面に突き立てると同時に、シールドに内蔵されているパイルバンカーを打ち出す。一気に顔を吹き飛ばされたル級は仰向けに倒れそのまま沈んでいく。

 

 雪風のガンカメラの映像もまた凄かった。配布した近接戦闘パッケージのナイフとM6H ハンドガンを使い、人型は目の部分を正確に貫き、人外型は12,7cm連装砲の近距離で怯んだところを脳天にナイフを突き刺し唐竹割りをしていっていた。いつもの愛らしい姿からは想像もできない戦い方だ。まぁ、龍田も同様なんだが。

 

 青葉、夕張、大淀の3人は、大型艦を常に3対1の構図に持ち込み、20,3cm砲の集中砲撃で適切に沈めていく。小型艦には副砲代わりの高角砲と機銃で牽制を行いながら、接近しナイフで仕留めていく。

 

 第2艦隊の交戦から1時間と()たずに、戦闘は深海棲艦空母機動艦隊群の全滅で終わった。帰ってきた青葉達は返り血とかすり傷だらけだったので、すぐに入渠を命じた。

 

「終わりましたな。」

 

 出原中佐が声をかけてくる。

 

「ああ、終わった。しかし、あの方面からだと台湾海峡を通るはずだ。中国軍や台湾軍は何もしなかったのか?」

 

「したくてもできなかったのでしょう。艦娘が召還されているのは、限られた国だけですから。」

 

「今のところはな。さて、今は悪石島の西方沖か。明日には那覇港かね?」

 

「おそらくは。」

 

「部屋に戻っている。何かあったら呼び出してくれ。」

 

「了解。」

 

 そう言ってC.I.Cを出る。

 

 部屋に戻って、第2艦隊が帰艦してからしばらくすると八島中佐が今回の空戦の報告書を持ってきてくれた。流石、仕事が早いな。

 

「今回は、ガルーダを全機、逐次に投入してしまいました。最初から全機投入すればよかったと後悔していますよ。」

 

「仕方ありません。“おおすみ”での運用は今回が初めてでした。意見具申をしなかった小官にも責はあります。」

 

「確かにそうですが、中佐の上官は私です。私の失態です。さて、報告書の提出、ありがとうございます。今後の運用に活かさせてもらいます。ご苦労様でした。」

 

「はい、失礼しました。」

 

 敬礼と共に退室する。俺は扉が閉まったのを確認して大きく伸びをする。さて、俺も艦隊指揮についての報告書を仕上げるかね。端末に向き直り、報告書を書いていく。

 

 報告書を書き終わり、チェックのために霞の秘書艦用端末にメールを送信する。自分で淹れたお茶で一息ついていると、扉がノックされる。

 

「青葉です。」

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼します。」

 

 青葉が扉を閉める。

 

「今は2人だけだから口調もいつも通りでいいよ。」

 

「ホントですか!?ありがとうございます!!では、早速報告です。第2艦隊全員、入渠をすませて部屋で交代まで待機中です。」

 

「で、それだけを言いに来たんじゃないんだろう?内線で十分のはずだ。」

 

「それでは、司令官、今回の戦闘のMVPはだれでしょうか!?」

 

「は?」

 

 MVP?なんだそれ。

 

「あ、実はですね。司令官は以前からその時に一番活躍した艦娘に甘味券などのご褒美をあげていたじゃないですか。」

 

「うん、まあ、しているね。」

 

「でも、霞准将から司令官が青葉達の想いについて知っていると聞きまして、そうであるならこれは普通のご褒美では足りないんじゃないかと艦娘達の間で話し合いになりまして、活躍した艦娘をMVPとしてもっとこう、何と言えばいいのか、司令官の想いがわかるご褒美が欲しいのです!!」

 

「お、おう。わかった。でも、先日の戦闘の後には、鈴谷達は何も言わなかったぞ?」

 

「それは、司令官が一緒に戦って、鈴谷さん達以上の活躍をしていたから言いにくかったんだと思いますよ。」

 

「なるほど、わかった。それでは、今回のMVPを伝えよう。青葉、君だ。初旗艦を務めて第2艦隊をよく指揮していた。」

 

 そう言うと、青葉はポカンとした表情で固まったあとにワタワタとし始めた。

 

「え?青葉がですか?」

 

「そうだ、理由も述べたぞ。さて、ご褒美は何がいいかね?女性の喜びそうなモノについてはあまり知識が無いんだ。青葉は何がいい?」

 

 青葉は顔を真っ赤にし、俯きながら、小声で言う。

 

「・・・てほしいです。」

 

「ん?すまん、もう一度。」

 

「だから、ギュッと抱きしめてほしいです!!」

 

 聞き返したら大声で返事が返ってきた。防音部屋だからよかった。普通の部屋なら廊下まで筒抜けだぞ。まぁ、いいか。青葉の望みを叶えるかね。そう思いながら席を立ち、青葉に近づく。すると、青葉は後退(あとずさ)る。

 

「おい、青葉、それでは抱きしめられんぞ。」

 

「へ!?いや、その、心の準備がですね・・・。」

 

「ハイハイ、大人しく抱きしめられなさい。」

 

 そう言いながら、スパルタンとしての身体能力を活かして青葉に向かってダッシュする。青葉はそれに反応できずに固まっている。俺はそのまま青葉を優しく抱きしめた。

 

「これで、良かったか?」

 

「ふぁい・・・。もう少しこのままで。」

 

「ああ、いいぞ。お前の気の済むまでしといてやるから。」




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