深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。 作:名無しの兵六
入渠終わりで良い香りのする青葉を抱きしめて10分ほど経っただろうか。そろそろ離してもいいんじゃないかと思い彼女に声をかける。
「青葉、もういいか?」
「ダメです。司令官成分の補充にあと20分は必要です。」
「なんだよ、その司令官成分って。ま、一度、離れよう。喉が渇いた。」
「むぅ、なら、仕方がないですね。」
そう言って渋々といった感じでお互いにはなれる。青葉をソファに座らせて、併設されている給湯室に行き、コーヒーと茶菓子の用意をする。あ、青葉は何がよいか聞かんとね。
「青葉―。コーヒーと緑茶どっちがいい?」
「司令官と同じものでいいですよー。」
「んじゃ、コーヒーな。」
インスタントコーヒーをちゃちゃっと淹れ、茶菓子と一緒にトレーで運ぶ。
「ほい、コーヒーと茶菓子な。鹿児島で買ったかるかん饅頭だ。」
「ありがとうございます。でも、座るならソファよりそっちがいいですね。」
そう言って青葉は俺の膝の上に座る。
「何やってんだ。俺の膝上なんて固いだけだろう?」
「さっきの続きですよ。さ、コーヒーをいただきましょう。」
こりゃ、
そんな感じで青葉とお茶の時間を過ごし、満足した青葉は部屋に帰っていった。なんかキラキラしていたけど、気のせいだろう。食器を片づけそう思って仕事を再開しようとすると、ノックも無しに扉が開く。こんなことをできるのは1人だけだろう。
「なんだ、ミク、もう整備のほうは終わったのか?」
「はいー。整備員さん達も鍛えられていますから予想よりも早く終わりましたー。メイヴも艦娘艤装も万全ですよー。」
「そりゃあ、良かった。特にメイヴは資材をつぎ込んだからなぁ。っと、ホレ、甘味だ。」
そう言って常備している金平糖を渡し、給湯室で緑茶を淹れて出す。
「ありがとうございますー。まあ、私達に出来ることをしているだけですからー。」
「それでも、助かっているのは事実だ。上申して少佐相当の階級か勲章でも貰うかい?」
「そんなもの必要ありませんよー。こうして甘味がもらえるだけで十分ですー。」
「欲が無いな。」
苦笑いしながら仕事に戻る。端末を操作していると受信メールフォルダに霞からの返信が来ていた。内容は統合幕僚監部が今回の作戦の映像データを欲しがっているというものだった。泊地に帰還後に送るようにすると返信する。すぐに了承のメールが来た。
その後も仕事を続け、特に問題も無く奄美大島沖を通過中との報告を受けた。背伸びをして時計を見ると夕食の時刻になっていた。“おおすみ”に乗艦してからは、艦娘の誰かが必ず夕食に誘いに来てくれる。今日は誰だろうかと思っていると、扉がノックされる。
「提督、扶桑です。」
「入っていいぞ。」
「失礼します。夕食のお時間ですので・・・。」
「ああ、わかった。」
そう言って、席を立ち扶桑の後を歩く。艦娘達と乗員の食堂は区切られていないので、必然的に艦娘達と俺が入ると、全員が敬礼する。それに対して答礼し、気にせず食事を続けるように言うのが今回の任務での恒例行事となっている。しかし、1日3回これをずっと繰り返すのは面倒だ。かと言って、士官食堂で食べるのは艦娘達の気が進まないらしい。帰還後には此処を要改修だな。
夕食を終え、部屋に戻り仕事の続きをしていると、中条大尉が訪ねてきた。とりあえず、ノンカフェインのコーヒーを2人分淹れ、話しを聞く。
「それで、話しとは何です?」
「はい。那覇から大阪までの復路で深海棲艦と遭遇した場合は、迎撃に第2艦隊ではなく、我々、第1特機中隊を投入してほしいのです。」
「理由を聞いても?」
「それは・・・。」
黙り込んでしまった。ふむ、思い当たるのは1つしかないけど、言ってみるかね。コーヒーを一口飲み、
「上からの命令でしょう?」
そう言うと、ハッとした表情になった。当たりっぽい。
「どうせ、空軍出向組の八島中佐達、ガルーダ隊が戦果を挙げていることに対抗してのことでしょう?第1特機中隊も先日の戦いで戦果を挙げたではないですか。」
「しかし、あれは艦上からの狙撃でした。地味過ぎたようです。上としてはもっと派手な映像が欲しいとの事で。」
馬っ鹿じゃねぇの。戦闘に地味とか派手とか無いだろう。
「大臣官房の広報課の連中ですか?」
「・・・はい。」
ハー・・・。背広組うぜぇ。いや、これは
「わかりました。復路で深海棲艦と遭遇した場合は第1特機中隊を出します。」
「ありがとうございます。」
「しかし、
ミクを呼ぶと寝室からフヨフヨとやって来た。
「はいー、なんです?」
「話しは聞いていただろう?復路の航程に入るまでに第1特機中隊のジム・スナイパーⅡに追加装甲つけるんだ。ああ、重量が増えるからその分の増加ブースターも忘れずにな。できるだろう?」
「はいー、おまかせあれー。それじゃあ、今からとりかかりますねー。」
「頼んだ。」
ミクはそのまま部屋から出て行く。妖精さんの見えない中条大尉には、急に扉が開いたように見えただろう。
「大尉、今の妖精さんとのやり取りを聞いていたと思いますが、ジム・スナイパーⅡを強化します。中隊の整備員にも周知してください。」
「了解しました。要望をお聞きくださりありがとうございます。」
そう言って敬礼をして、部屋を出て行く。俺はラフに答礼して見送った。そして、少し考えてから、夕張を呼び出す。
「お待たせ、提督。どうしましたか?」
「ん、いや、大したことじゃないんだ。ミクがな第1特機中隊のジム・スナイパーⅡに追加装甲と推進装置を取り付ける作業に入っている。見学したければ許可を出すぞ。」
「ホントですか!?ぜひ。」
「そんじゃあ、これ持ってけ。」
そう言って、簡易的な許可証を渡す。夕張は喜色満面の笑みで受け取り、
「ありがとうございます!!」
と言って部屋を出て行く。念のために第1特機中隊の整備班に事前連絡を入れておく。ミクのほうは大丈夫だろう。さて、やることも済ませたし寝るか。
当直士官からの艦内電話で目を覚ますと、もうすぐ那覇港に到着すると報告してくれた。着替えて艦橋に上がると出原中佐がいた。
「おはよう、みんな。」
艦橋要員の敬礼に答礼をしながら、言う。司令官席に腰掛けると、コーヒーを持ってきてくれた。礼を言って受け取る。
「これで、まあ一安心ですかな。」
同じくコーヒーを受け取りながら出原中佐が声をかけてくる。
「ま、ここまで来れば、空軍と第5航空群の援護にも期待ができるからな。ああ、そうだ、事前の打ち合わせ通り、半舷休息をとらせるように。那覇港には丸二日もいる予定だからな。」
「ええ、その件は大丈夫です。」
そして、手招きして周囲に内容が漏れないように小声になって言う。
「沖縄地本からの連絡では、市民団体が抗議のため集まっているそうです。」
「その件も関わらないように周知してあります。」
「杞憂でしたね。」
「いえ、ありがとうございます。」
出原中佐は礼を言って艦長席に向かう。ふう、こんな状況になっても反軍・反戦・反艦娘団体の動きが活発なのがムカつく。物資が来なくなって干上がりかけたことを忘れているんじゃないか?いや、忘れているんだろう。ま、地本と警察が上手くしてくれるだろうさ。事前に説明しているとはいえ、鈴谷達には余計な精神的なダメージを与えたくないからな。
さて、那覇での休息は予想よりも良かったようだ。港の付近には地本も把握していなかった、友好的な市民団体が多数を占めており、艦娘には花飾りを送ったりしてくれた。反軍・反戦・反艦娘団体は隅っこのほうで拡声器と街宣車を使いがなり立てていたが、地本が車とバスを手配してくれていたので、乗員達や艦娘達はそれを無視して市街地へと向かうことができた。
みんなが楽しむ一方、俺は地本で本部長の中間陸軍少将と面会をしていた。
「沖縄にも鎮守府とまではいかないまでも泊地ができればいいのですが・・・。」
「まあ、全ては妖精さん次第ですから。今のところ泊地として稼働しているのが、私が指揮する柱島泊地のみということもその事実を物語っています。」
「大将閣下のお力でどうにかできないでしょうか?」
「私のパートナーである妖精さんに相談してみましょう。海軍司令部壕に沖縄方面根拠地隊という先の大戦の前例がありますので。しかし、司令部を設置できる状況下なのでしょうか?」
「知事や県議会、各市町村長に議会は是が非でもといったところでしょうか。市民団体も以前のように反軍・反戦・反艦娘団体が活動中ですが、友好的な団体が増え、抑えとなっています。」
「私は、艦娘達が県民から理不尽なことをされないか心配なのですよ。こちらの都合で召喚建造しておいて、県民が反感の意思を持って接するなどあってはならないことですから。」
「ええ、その通りです。地本が総力を挙げ支援します。」
さて、ミクはどんな返事をしてくれるかねぇ。
見てくださりありがとうございます。