深海棲艦に殺されたら、提督として戦うことになりました。(旧題)一度死んだら提督として戦うことになりました。   作:名無しの兵六

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第68話 初船団護衛任務・その6

 復路の出港は往路と違い昼過ぎとなった。那覇港から沖に出て、船団を組む。今回は、統合幕僚監部と陸軍の希望という圧力もあったことから、迎撃任務に()くはずの第1特機中隊が警戒にあたっている。ジム・スナイパーⅡは改造を施され、陸軍お馴染みの濃緑色だった機体に黒い追加装甲と増加ブースターが装着されている。ミクによると柱島泊地に戻ったら、もう少し改造を武装面で施すらしい。ジム・スナイパーⅡじゃない何かになりそうだ。

 

 10機のうち半数の5機が出ている。2機が前方警戒、残りが左右後ろの警戒。敵潜を警戒するために曳航式のソナーを装備している。主武装はロング・レンジ・ビーム・ライフルからHWF GR・MR82―90mm、通称“ジム・ライフル”を装備している。

0083のジム・カスタムが装備していたやつだ。しかし、90mmは流石に大き過ぎるので9mmとしている。90mmなんて一昔前の戦車砲と同等だぞ。まぁ、9mmのライフル弾も十分に殺意が高いよな。

 

 それと、対敵潜用にシールドに魚雷ポッドとパイルバンカーを仕込んである。ミクによると魚雷は曳航ソナーと連動したアクティブ・ホーミングらしい。水上艦相手にも使えるとか。それと、他は頭部6mmバルカンポッド、ビーム・サーベルくらいか。

 

 陽が落ちて、夕食を終え部屋に戻って仕事をしていると、艦内電話が鳴る。

 

「湊だ。どうした?」

 

「閣下、出原です。今すぐC.I.Cへお願いします。遭難信号を受信しました。」

 

「遭難信号?わかった。すぐ向かう。」

 

 上着を羽織り、部屋を出てC.I.Cへ向かう。こんな場所で遭難信号だと?他の船団が動いているという情報は無かったはずだ。厄介事のような気がする。そう思いながらC.I.Cに入る。

 

「中佐、状況を説明してほしい。」

 

「はい、閣下。7分ほど前に哨戒飛行中のガルーダ4が遭難信号を受信しました。この地点です。」

 

 印がついている場所を見る。100kmと離れていない。70~80kmほどか?

 

「数は?それとどこの船だ?」

 

「数は1。北の船です。」

 

 はい、厄介事ー。

 

「民間船か?」

 

「貨物船のようです。左舷から煙を噴いているそうです。映像を。」

 

 モニターにガルーダ4からの映像が映し出される。確かに貨物船だ。左舷側から盛大に煙が立ち上っている。灰色の中に赤い炎の色も混じっているように見える。

 

「近くにいるのは俺達だけか?」

 

「救助だけでしたら、新田原か那覇の救難隊、海保の10管だけでも大丈夫でしょう。しかし、遭難信号を発した理由が何らかの攻撃を受けてのモノでしたら我々か、佐世保鎮守府のヘリボーン艦隊しか対応できません。」

 

「あの貨物船に何が積んであるにしろ、助けないと寝覚めが悪いな。第1特機の中条大尉を呼んでくれ。至急だ。」

 

 すぐに中条大尉がやって来る。

 

「大尉、今すぐに動かせるジム・スナイパーⅡは何機だ。」

 

「私も含めて、2小隊、5機です。」

 

「臨検をやったことは?」

 

「ありません。」

 

「海難救助もないな?」

 

「はい。」

 

 俺はため息をついて言う。

 

「今からその2つをやってもらう。北の貨物船の遭難信号を受診した。助けに行く。俺もついて行こう。何かあっても俺が対処する。いいな?出撃準備だ。」

 

「了解!!」

 

 足早に去っていく大尉の後ろ姿を見送り、出原中佐に命令を下す。

 

「船団の進路はそのまま維持しろ。今から救助に向かうと無線で送れ。平文で広域無線だ。救助対象船が持たん場合は、船員だけこちらに連れてくる。その場合の監視のために何名か腕利きを待機させといてほしい。」

 

「了解しました。」

 

「それでは、後は任せた。」

 

 そう言ってC.I.Cを後にし、部屋にいったん戻り、ミクを連れて格納庫へ向かう。既に中条大尉達はジム・スナイパーⅡ艤装を装着し終わっていた。装備は現在、警戒にあたっている連中と同じ物だ。俺もすぐにミョルニルアーマーを着込む。

 

 カタパルトを使って順次、射出され集合するとガルーダ4と“おおすみ”からの誘導に従って対象に向かう。増加ブースターのおかげか、中条大尉達は俺と同等のスピードで海上を移動している。

 

「『大尉、なかなか良さそうだな。』」

 

『はい、閣下。増加装甲も着込んだ時にはそれほど重さを感じませんでした。シールドのほうも、魚雷ポッドとパイルバンカーが内臓されているとは思えないほどに取り回しが良いです。』

 

 中条大尉も気にいってくれたようでよかった。さて、問題の貨物船が見えてきた。ズームして見てみると、甲板上で人のようなモノが動いて、火元に向かって放水をしている。どうやら乗員はまだ生きているようだ。

 

 さて、到着したのを知らせるか。ヘルメット内臓の外部スピーカーの音量を最大にする。生憎と韓国語は話せないので、英語で通達する。

 

「こちら、日本国海軍柱島泊地所属“おおすみ”搭載部隊だ。貴船の遭難信号を受診したので救助に来た。責任者は無事か?」

 

 すると、貨物船の外部スピーカーから返答があった。相手側も英語だ。助かった。

 

「助けてください。魚雷攻撃を受けました。」

 

 この付近で活動している海軍の潜水艦はいないはず。いたとしても民間船に魚雷なんぞ撃たん。深海棲艦がいるのか!?

 

「わかった。船はもちそうか?」

 

「わかりません。消火活動中ですが浸水が激しいです。」

 

「我々は貴船を攻撃した潜水艦を探し出し、沈める。船が持たないとなったら、救命艇を降ろせ。」

 

「わかりました。」

 

 話しのわかる相手でよかった。さて、潜水艦を炙り出すか。

 

「『中条大尉、対潜水艦戦闘だ。』」

 

『了解。』

 

 大尉が指示を出し、ジム・スナイパーⅡがバラけていく。15分ほど探索したところで、俺のソナーに引っかかるものが有った。念のために、その付近を数周する。間違いない。深海棲艦の潜水艦だ。

 

「『大尉、深海棲艦の潜水艦を発見した。データを送る。』」

 

『了解。これより、攻撃を開始します。』

 

 ジム・スナイパーⅡ5機のシールドから小型の魚雷が1本ずつ発射される。それに気づいた深海棲艦の潜水艦は逃げようとしたが、すぐに魚雷が追い付き命中する。と同時に大きな爆音と水柱が上がる。

 

「あの大きさの魚雷の威力じゃねえぞ、これ。」

 

 無線を切ってポツリと言うと、ヒョコっとミクが右肩に乗り、

 

「凄いですよねー。みんなで頑張ったんですよー。どうやったら現代の魚雷と同程度の威力を持たせることができるかって。それで、試行錯誤して、あんな感じになりましたー。」

 

「・・・ちなみに、試行錯誤の時間は?」

 

「う~ん、小1時間といったところでしょうかー。」

 

 それって、試行錯誤っていうのかね。ま、脅威の排除は終わった。

 

「あとは、あの貨物船をどうにかしないとな。」

 

 そう言って、貨物船に目をやると、鎮火したのか煙が薄くなっていた。しかし、喫水線付近に着弾したために、ドンドン海水が流れ込んでいる。船の傾斜角も徐々にだが増していっている。これは、船員だけでも退避させるか?色々と外交上、面倒なことになるが。そこにミクが素晴らしい提案をしてくれた。

 

「あー、あの程度なら私だけでも直せますよー。流入した海水は自力で排水してもらわないとですけどー。30分ほどお時間戴けますかー?」

 

「直せるのか!?よし、わかった。船長と話してみよう。」

 

 と言うことで、大尉達と合流し、船長にミクの話しを持ちかける。彼は諸手(もろて)を挙げて承諾してくれた。ミクが作業する間は、ミクの直衛に俺。貨物船の全周囲警戒に大尉達をあたらせた。

 

「ところで、船長、この船の積み荷は?」

 

「食糧ですよ。」

 

「修理が終わったら、臨検しても?」

 

「どうぞ。」

 

「よいのかね?船長が決めても。政治委員がいるのでは?」

 

「私が兼任していますので。」

 

「なるほど。」

 

 そして、本当に30分も経たずに魚雷で穴の開いた船体の修理が終わった。ミクが言うには「竜骨(キール)にダメージが少なかったから。」らしい。船長には、帰国後は念のためドック入りしてキチンと整備するように伝え、ミクと中条大尉のみを伴い、積み荷の確認をしていく。

 

 2時間ほどで確認は終わり、申告の通りすべて食糧だった。しかし、ミクの早業には驚いた。流石は妖精さんだ。

 

 船長を始めとした船員達に見送られ、貨物船を後にする。

 

「『中条大尉、よくやってくれた。』」

 

『いえ、閣下の助けがあってこそです。』

 

 謙遜しながらも、嬉しさが声色に混じっているのに気づくが、あえてそこはつつかないでおく。“おおすみ”にも帰艦する旨を通信で伝える。まぁ、なんとか終わってよかった。

 

 はい、よくなかったです。帰艦してミョルニルアーマーを脱いで自室に戻るなり、鈴谷、熊野、青葉、扶桑に拘束されて、艦娘居住区画の娯楽室で“おおすみ”乗艦中の艦娘に囲まれた。ちなみに、ミクは逃げた。ちくせう。

 

「なんでこうなっているかわかる?」

 

 鈴谷が問う。

 

「わからん。俺は何かしたのか?」

 

 赤城がため息交じりに言う。

 

「なぜ、今回の出撃、貨物船の救助に私達、艦娘艦隊を投入しなかったのですか?速力は劣りますが、後衛は十分に果たせると思いますが。」

 

「え、いや、君達には往路で活躍してもらったから休んでもらおうと思って。」

 

 そう言うと、鈴谷がダンッ!!と壁に拳を打ち付ける。強化されているはずの壁がへこんでいる。

 

「鈴谷達は!!そんなに弱くない!!鈴谷達は、みんなを守るために、提督のために存在しているの!!」

 

 鈴谷が涙を流しながら叫ぶ。他のみんなも今にも泣きそうな顔をしている。

 

「提督、超人的な力を持つ提督から見たら私達は頼りないですか?」

 

 扶桑が尋ねてくる。俺は首を横に振りながら答える。

 

「そんなことはない。みんなのことは頼りにしている。」

 

「それならば、なぜ今回は第1特機中隊と提督のみの出撃だったのですか?理由をお聞かせ下さい。」

 

 目を潤ませながらも、落ち着いた扶桑の声に、俺はため息まじりに言う。

 

「このことは、絶対に外に漏らすな。いいな?この部屋を出たらすぐに忘れるんだ。実は統合幕僚監部と陸軍の圧力があった。第1特機中隊の活躍が少なすぎるとな。それで、復路の船団護衛や迎撃任務には第1特機中隊についてもらった。以上だ。」

 

 そう言うと、みんなポカンとした顔をして、次第に怒りに顔を歪ませ始めた。これはマズイと思い、

 

「おい、俺達は軍人だ。上からの命令は絶対だ。それを忘れるな。その怒りはこの部屋の中だけにとどめておけ。いいな。」

 

「でも、提督、鈴谷達は艦娘なんだよ!?深海棲艦と戦うために生まれてきたんだよ!?鈴谷達の存在意義がなくなっちゃうじゃん!!」

 

「無くならん!!お前たちは、艦娘で軍人で俺の部下で、しっかりと人権を持った1人の日本国民だ。この世に生まれた時点でお前たちには、存在意義がある!!」

 

 そう俺が言うと、一気に静まり返った。鈴谷も涙が引っ込んだようだ。そして、逆にいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべ、

 

「ふーん、ならさ、今回のこの騒動の原因は、提督の部下である鈴谷達にしっかりと事前に説明をしなかった提督に非があるよね?」

 

「否定はせんよ。」

 

「なら、鈴谷達の心を傷つけた補償をしてもらいます!!」

 

「何を企んでいる鈴谷?」

 

「なーんにも。ただ、補償のために鈴谷達、全員にハグしてほしいなぁと思っただけ。慰めて?」

 

 最後は天使のような笑顔で言ってきた。俺はため息をつき、両手を広げる。そして、1時間以上の時間をかけて鈴谷達を順番にハグしていった。美女、美少女達を抱擁(ほうよう)出来て役得なのだろうけど、なんか素直に喜べない。




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